防災リーダーと地域の輪 第37回

仙台八木山防災連絡会

防災リーダーと地域の輪 第37回

宮城県仙台市の南部に位置する太白区八木山地区は、丘陵地に広がる人口約2万人の住宅街です。小中高校、大学、動物園、遊園地、放送局、病院など多様な施設が集まっているのが地区の特徴となっています。地区の開発が始まってから50年以上が経つため、高齢化率(65歳以上が人口に占める割合)は約30% と市のトップレベルです。しかし、市中心部への交通の便が良く、新しい住民も移り住み、幅広い世代が暮らす地域となっています。

この地区で防災活動を担うのが仙台八木山防災連絡会です。連絡会は平成17年(2005)に発足した「八木山防災協会」を前身とし、平成20年、町内会、PTA、福祉協議会、消防署、民間企業など20以上の団体が参加して設立されました。連絡会設立当時に発生が予測されていた「宮城県沖地震」に備え、共助に基づいた防災力を強化する活動に取組みました。

連絡会が当初から力を入れたのが、若者への防災教育です。中学校や高校で建築専門家が教える「簡易耐震診断授業」や、中高生・大学生と地域住民が防災について話し合う懇談会などを始めました。

連絡会の常任幹事で、東北大学大学院教育学研究科准教授の谷口和也さんはこうした活動の意義を次のように説明します。

「平常時に若者の防災意識を高めておくことが、非常時に担い手として地域を支える力になると思います。そのためにも、日頃から若者と大人が対話して、お互いの理解を深めることが大切です。」

連絡会の活動の成果は、東日本大震災時に現れます。八木山地区の建物の被害は少なかったものの、2週間近く断水しました。そのような状況下で、400名以上の中高生がボランティアとして、避難所となった中学校の清掃や高齢者宅への水や物資の配布などに参加しました。

震災後、連絡会の構成団体が増えるとともに、構成団体同士の連携も活発になりました。連絡会は、全体構成員が集まる年1回の総会と年4回開催される「例会」があり、「例会」開催時の全体会終了後、4つの分科会(「若者部会」「医療関連部会」「助け合い部会」「住み良い街づくり部会」)に分かれて企画会議を行っています。これが分野を超えた連携を築く土台となっています。様々な連携の中からは、連絡会オリジナルの「ぼうさいダンス」や、「防災仮面」「防災レディ」といったキャラクターも生まれました。これらは、中高生、大学生、消防団員などが参加する「八木山ぼうさいパフォーマンスチーム」によって、数多くのイベントで披露されるようになり、連絡会による活動の目玉の一つとなっています。

「連絡会の構成団体には人材や機材が揃っているので、様々な活動が可能になります。ただ、連絡会はトップダウンで活動を決めているわけではありません。それぞれの団体は、イベントやプロジェクトごとに自由に離合集散しています」と谷口さんは言います。

連絡会は被災者としての経験を踏まえ、防災活動を国内外に発信することにも取組んでいます。平成27年3月に仙台市で開催された国連防災世界会議では、「U-18 世界防災会議」を主催し、国内外の高校生による防災に関するシンポジウムや展示などを支援しました。また、平成29年11月に仙台市で開催された「防災推進国民大会2017(ぼうさいこくたい)」では、被災時の食とトイレに関する展示ブースを出展した他、防災仮面と防災レディによるパフォーマンスも行っています。

仙台八木山防災連絡会のオリジナルキャラクター「防災仮面」(左)と「防災レディ」

仙台八木山防災連絡会のオリジナルキャラクター「防災仮面」(左)と「防災レディ」

こうした活動が評価され、連絡会は平成30年に「防災まちづくり大賞」(総務大臣賞)と「防災功労者内閣総理大臣賞」を受賞しました。

現在、構成団体の数が44となった連絡会は、さらに活動の幅を広げています。新たな活動の一つが、「40人にひとり」運動です。災害時、八木山地区の避難所が受け入れられるのは住民のうち40人に1人だけと予測されています。こうした状況を踏まえ、連絡会は在宅避難者が直面する食とトイレの問題に焦点を当て、非常食の普及や非常用携帯トイレの作成・配布に力を入れています。

「携帯用非常トイレの普及のために、作り方を学んだ人が講師となり、他の人にも教えていくという活動もしています。そうして若者や住民同士が顔見知りになることで、いざという時に助け合える雰囲気を、さらに広げていきたいです」と谷口さんは今後の抱負を語ってくれました。

さらに連絡会では、「とどく!ボランティア」プロジェクトを立ち上げ、携帯用非常トイレによる被災地支援を計画しています。中学・高校の青少年赤十字クラブが中心となり作成した携帯用非常トイレを仙台赤十字病院がストックし、それを災害時に病院の救助隊が被災地に運ぶというプロジェクトです。

連絡会は今後、住民の防災意識を一層高揚させ、いざという時に役立つ取組みを進めるとともに、それが全国にも広がっていくことを目指し、活動を展開させていきます。

(写真左)「ぼうさいダンス」を披露する「八木山パフォーマンスチーム」(右)中学生から大人まで、様々な世代が一緒に防災を話し合う「地域防災シンポジウム in 八木山」
(写真左)「ぼうさいダンス」を披露する「八木山パフォーマンスチーム」(右)中学生から大人まで、様々な世代が一緒に防災を話し合う「地域防災シンポジウム in 八木山」

(写真左)仙台市民向けのイベントで津波実験装置を実演する中学生と大学生(右)防災を学ぶ授業の中で、防災計画を書き込む小学生
(写真左)仙台市民向けのイベントで津波実験装置を実演する中学生と大学生(右)防災を学ぶ授業の中で、防災計画を書き込む小学生



(画像提供:すべて仙台八木山防災連絡会)


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