防災リーダーと地域の輪 第28回‐内閣府防災情報のページ

人をエンパワーメントする防災

千葉県の「流山子育てプロジェクト」と「NPO法人パートナーシップながれやま」は、男女共同参画と要配慮者のための活動を行っている。

千葉県流山市で、乳幼児や高齢者、外国籍の人など、要配慮者と呼ばれる人たちを支援する防災活動を活発に展開しているのが「流山子育てプロジェクト」と、その活動をバックアップする「NPO法人パートナーシップながれやま」だ。これまでに子育て家庭向けの防災ハンドブック『私にもできる 防災・減災ノート IN 流山』の発行や、『多言語の防災ガイドブック』などを製作してきた。

活動のきっかけとなったのは、2011年3月に起きた東日本大震災だ。流山市は、2005年のつくばエクスプレスの開通によって都心へのアクセスが抜群に良くなったことから人口が増えており、特に子育て世代の若い家族の増加が目立っている。

「東日本大震災のときは、東京で働く夫は家に帰り着くことができず、不安な夜を子どもと一緒に過ごし、『自分が子どもの命を守らなければ』と強く思った母親たちが多かったと思います。私もそんな一人でした」と話すのは、「流山子育てプロジェクト」代表の青木八重子さん。しかし、いざ防災の準備をと思っても何から手をつけてよいのかわからない、そんな人も多かったようだ。

そこで「流山子育てプロジェクト」のメンバーで勉強会を開いたり、講習会に出かけるなどして、一から防災・減災への取り組みを学び、さらには体験型ワークショップなども開催して、子育て世代が災害時にどのような点に不安を感じるのかを理解してニーズを探った。

外部からは「ハンドブックをつくってもどうせ捨てられるだけ」というネガティブな意見も聞かれたため、それなら何度も読み返しながら長く使うことができるものを目指そうと奮起し、各家族でカスタマイズすることができるノート形式を取り入れ、家族写真を貼ったり、家族の状況をメモしたりするスペースを設けた『私にもできる 防災・減災ノート IN 流山』を完成させた。手にした人からは「子育てしている家庭に特化しているので、情報がわかりやすくて読みやすい」と評判を得、初版の2000部はすべて完売し、さらに増刷も行っている。

また、まとめた防災知識を実際に経験したり学べる機会をつくろうと防災キャラバン隊「防災寺子屋sole(そーれ)!」を立ち上げ、啓発活動も行っている。

そこで気づいたのは、高齢者も乳幼児も生活環境が似ているということだ。固いものが食べられなかったり、やわらかな食事が必要だったり、オムツをつけていたり、ほかの人の手がなければひとりでは逃げられなかったりと共通項が多い。それなら子育て世代だけでなく、高齢者に対しても自分たちの知識を活用してもらうことができると、寺子屋活動を推進している。

さらに、プロジェクトでは地域で暮らす外国人にも目を向けた。東日本大震災の際には「津波」や「避難」という言葉がわからなかった外国人が多くいたことがわかっている。地震を経験したことのない人も多いことから、外国人にも利用してもらえる「防災・減災ノート」づくりに着手した。

「最初は、外国人イコール英語という単純な思い込みがあったので『防災・減災ノート』の一部を英訳して地域の国際交流協会に持って行きました。ところがそこには英語を読める外国人はひとりもいなかったのです」と「パートナーシップながれやま」の山口文代代表は振り返る。南米・中国・アフリカなどさまざまな国から集まった人たちが学んでいるのは日本語。そこで、わかりやすい日本語に、英語と中国語の対訳をつけた『他言語の防災ガイドブック』をつくった。

こうした着実な活動が認められ、今年、防災功労者内閣総理大臣表彰で内閣総理大臣賞を受賞した。

「自分の暮らしの身近なところでできることに取り組んできたことを、各方面の方々に認めていただいてうれしく思っています。要配慮者が、自分ができることを知って準備することはとても大切なことだと思いますし、さらにはこれまでの防災方針に要配慮者の目線を取り入れてもらおうと意見することで、要配慮者自身に力が湧いてきたりもします。私は『防災は人をエンパワーメントする』のだと強く感じています」と青木さん。活動をきっかけにして「流山子育てプロジェクト」からは市の防災委員となる人が出るなど、メンバーの活動はさらに大きく広がっている。


  • 市民まつりで開催した防災クイズには多くの親子が参加した

  • 市民まつりで人工呼吸を指導

  • 自治会の防災ワークショップで防災リュックに入れる中身について紹介

  • 私にもできる 防災・減災ノート IN 流山
(写真提供 NPO法人パートナーシップながれやま)
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