特集2 気候変動を踏まえた防災の取組~気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)を受けて

特集2 気候変動を踏まえた防災の取組~気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)を受けて

COP21

2015年11月30日から12月13日まで、フランスのパリで国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)が開催され、2020年以降の新たな地球温暖化対策の国際的枠組みである「パリ協定」が採択された。同会議には、100カ国以上の閣僚が参加し、日本からは、丸川環境大臣はじめ、外務・経済産業・環境・財務・文部科学・農林水産・国土交通省関係者等が出席し、11月30日に開催されたオランド仏大統領主催の首脳会合には安倍総理も出席した。本稿では、COP21で採択されたパリ協定を概観し、温暖化による国内外の自然災害リスクの激甚化と、これに備えるために動き始めている日本政府及び内閣府の取組について説明する。

左:議長代行する安倍総理(写真提供:内閣広報室)
右上:COP21の際に実施された日仏首脳会談(写真提供:内閣広報室)
右下:丸川環境大臣ステートメント(写真提供:環境省)

パリ協定

今回採択されたパリ協定は、1997年に採択された京都議定書に代わる、2020年以降の温暖化対策の新たな国際枠組である。京都議定書では、先進国だけが温室効果ガスの排出削減目標を義務づけられており、温室効果ガスの排出が急拡大している中国やインドなどの新興国が含まれておらず、また米国が締結しないと表明したことから、すべての国に適用される新たな枠組みが求められた。そのため、パリ協定は気候変動枠組条約に加盟する196か国・地域すべてが参加する公平かつ実効的な枠組みとなっている。

パリ協定には、以下の要素が盛り込まれた。

  • 世界共通の長期目標として、世界の温度上昇について産業革命前に比べて2℃より十分低く保つこととする目標を設定。1.5℃に抑えるよう努力を追及することも言及。
  • 今世紀後半に、世界全体の温室効果ガスの人為的な排出量と吸収量をバランスすること。
  • 主要排出国を含むすべての国が削減目標を5年ごとに提出・更新し、共通の方法で実施状況を報告し、レビューを受けること。
  • 世界全体としての進展状況を2023年以降、5年ごとに確認する仕組みを作ること。

温室効果ガスの削減に向けては、COP21に先立ち、世界のエネルギー起源CO2排出量の9割超に相当し、気候変動枠組条約への加盟国の9割を超える181の国・地域が削減目標等を国連に提出した。日本政府は2015年7月、2030年度までに温室効果ガスの排出量を2013年度比で26%減らす国際目標を掲げた。ただし、COP21では、各国が提出した削減目標に達成義務は課されず、達成に向けた国内対策を実施することが義務付けられた。

気候変動による災害リスクの激甚化

このように温室効果ガス削減に向けた努力が行われている一方で、パリ協定で気温上昇を2℃未満に抑えることを目標としていることからもわかる通り、国際社会では一定程度の温暖化は避けられないとみられている。気候変動は人間社会と地球に緊急かつ潜在的に不可逆な脅威であると認識されており、気候変動の影響に適応する能力を向上させることを目的として、パリ協定には、適応に関する項目も多く含められた。そこでまず、具体的にどの程度の気候変動が予測されていて、またどのような影響が、特に自然災害分野や健康分野について予測されているのか、以下で見ていく。

気象庁の気候変動監視レポート(2014)によると、日本における気候変動の現状は、1898年~2014年において、100年あたり1.14℃上昇していて、最高気温が35℃以上の猛暑日日数も、1931年~2014年において増加傾向が明瞭に現れている。また、降水量についても、日降水量100㎜以上、ならびに200㎜以上の日数が1901~2014年において増加傾向が現れている一方で、日降水量1.0㎜以上の日数は減少している。

20世紀末と比較した21世紀末の将来予測では、気温上昇の程度をかなり低くするために必要となる温暖化対策を取った場合は、全国平均が1.1度(0.5~1.7度)上昇し、温室効果ガスの排出量が非常に多い場合には、4.4度(3.4~5.4度)上昇することが見込まれる(気象庁、環境省「日本国内における気候変動予測の不確実性を考慮した結果について(お知らせ)」)。また降水量についても、大雨や短時間強雨の発生頻度の増加や強雨によってもたらされる降水量が増加する一方で、無降水日数の増加も予測されている。(気象庁「地球温暖化予測情報第8巻」)。

図 年平均気温の変化の分布
図 年平均気温の変化の分布
出典:平成26年12月12日報道発表「日本国内における気候変動予測の不確実性を考慮した結果について(お知らせ)」(気象庁、環境省)

このような気候変動による日本国内における自然災害分野や健康分野への影響としては、以下のような可能性が挙げられている(平成27年11月27日閣議決定「気候変動の影響への適応計画」)。

  • 水害:大雨や短時間強雨の発生頻度の増加と大雨による降水量の増大に伴う水害の頻発化・激甚化
  • 高潮・高波:海面上昇や強い台風の増加等による浸水被害の拡大、海岸侵食の増加
  • 土砂災害:土砂災害の発生頻度の増加や計画規模を超える土砂移動現象の増加
  • 暑熱:夏季の熱波が増加、熱中症搬送者数の倍増
  • 感染症:感染症を媒介する節足動物の分布域の拡大
図 人為起源のCO2の年間排出量
図 人為起源のCO2の年間排出量
代表濃度経路シナリオ(線)及び第3作業部会で用いられた関連するシナリオ区分におけるCO2単独の排出量(着色区分は5~95%の範囲)。2100年の二酸化炭素換算の濃度水準(単位はppm)。
出典:IPCC第5次評価報告書 統合報告書 政策決定者向け要約 図 SPM.5(a)

また世界に目を向けると、以下のような地域別の主要なリスクが指摘されている(「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書」)。

図 各地域の主要なリスク及びリスク低減の可能性
図 各地域の主要なリスク及びリスク低減の可能性
出典: IPCC第5次評価報告書 統合報告書 政策決定者向け要約 図 SPM.8

一般的に、島嶼国や開発途上国などインフラや社会システムが脆弱な国ほど、異常気象や自然災害などの気候変動の影響を受けやすく、またどのような開発水準にある国においても、自然災害に対して脆弱な土地に居住し、自然資源に依存した生活を形成している社会的弱者は気候変動の悪影響を受けやすいことが指摘されている(外務省国際協力局 2007年「気候変動への適応分野における開発途上国支援」)。

仙台防災枠組と気候変動

2015年は、国際防災協力の分野において、いくつかの大きな国際的な枠組みが決定され、非常に重要な年となった。まず、3月に仙台で行われた国連防災世界会議において、これまでの「兵庫行動枠組」に続く新たな国際的な防災指針として「仙台防災枠組2015-2030」が採択された。また、9月には2015年までのミレニアム開発目標を継続・発展させた「持続可能な開発目標(SDGs)」が合意された。そして12月のCOP21で、2020年以降の気候変動に関する国際合意であるパリ協定が採択された。

まず、仙台防災枠組では、事前の防災投資や「より良い復興」、多様な主体の参加によるガバナンスの重要性などが明記されたほか、災害による死亡者数の削減など7つの目標が定められた。また、気候変動を防災分野における主要な脅威と認識するとともに、定められた優先行動の中でもとるべき行動が明記されている。たとえば、「優先行動1:災害リスクの理解」の中では、「マルチハザードの災害リスクに関する包括的調査の実施、気候変動シナリオなどの地域的な災害リスク評価及びマップの開発の促進」が今後の重要な行動として定められている。また、「国際協力とグローバルパートナーシップ」の項目において、小島嶼開発途上国は、気候変動により災害の影響が悪化などする場合もあり、国際協力の強化が必要であることを再確認することや、気候変動への適応に関連したプログラムに災害リスク削減の各取組を統合することなどが定められているなど、気候変動に関していくつかの記載がなされている。

次に、「持続可能な開発目標(SDGs)」の中でも、自然災害や気候変動の脅威が指摘されるとともに、ターゲット1.5として、「2030年までに、貧困層や脆弱な状況にある人々の強靱性(レジリエンス)を構築し、気候変動に関連する極端な気象現象やその他の経済、社会、環境的ショックや災害への暴露や脆弱性を軽減する。」ことが明記されたほか、ターゲット13.1として、「全ての国において、気候関連の脅威や自然災害への強靱性と適応能力を強化する」旨が明記されている。そのほか、仙台防災枠組と同様、災害による死者数と被災者数の削減などの目標も明記されている。また、COP21決定の中でも「仙台防災枠組」について言及がなされている。

以上のように、仙台防災枠組は、2015年以降の国際的な防災の枠組みに関する初めての国際的な合意となり、持続可能な開発目標やパリ協定など、後に続いた政府間協議を進めていく上での基礎となった。このように、国際協力分野における複数の国際的な合意が一貫性を持って相互に補完し合うような形で、気候変動や激甚化する自然災害という地球規模の課題に対して国際社会が協力して解決していけるように、重層的な国際的枠組み作りが進められている。

気候変動対策分野における日本の国際協力

気候変動分野における途上国支援の具体的な内容の例としては、COP21首脳会合における安倍総理大臣のスピーチで発表された、「美しい星への行動(ACE)2.0」が挙げられる。これは2013年に「美しい星への行動(ACE)」として示した日本の気候変動対策の取組を一層強化したもので、

  • 途上国への気候変動対策の支援額を2020年に、現在の1.3倍、官民合わせて年間1兆3千億円とすること。
  • 革新的エネルギー・環境技術の開発強化に向け、2016年春までに「エネルギー・環境イノベーション戦略」を策定し、革新的技術の開発について集中すべき有望分野を特定して、研究開発を強化すること。 をその内容に含む。
スピーチする安倍総理大臣(写真提供:内閣広報室)
スピーチする安倍総理大臣(写真提供:内閣広報室)

特に適応分野においては、第3回国連防災世界会議で公表された仙台防災協力イニシアティブでは、防災と深く関係する気候変動対策を支援することが盛り込まれ、我が国は、緑の気候基金(GCF)*への15億ドルの拠出をしていることが紹介された。GCFの支援の5割は気候変動の影響への適応分野に充てられることとされており、昨年11月に最初の支援案件となる8件が採択されたことに続き、2016年には、GCFは25億ドル分のプロジェクト支援を目指している。

(* 開発途上国の温室効果ガス削減と気候変動の影響への適応を支援する基金)

また、昨年、我が国の「気候変動の影響への適応計画」(平成27年11月27日閣議決定)を策定したことを踏まえ、環境省等では、途上国における適応計画策定に関連する支援や能力開発に取り組んでいる。

気候変動に関連した内閣府防災担当の取組

内閣府防災担当においても、地球温暖化に伴う異常気象がもたらす災害の激甚化に備え、国や地方公共団体だけでなく、企業や国民一人一人の目線で必要な対策を議論するため、「『防災4.0』未来構想プロジェクト」(座長:河野内閣府特命担当大臣(防災))を立ち上げ、2015年12月24日に第一回会合が開催された。同プロジェクトでは、幅広い分野の有識者委員の参画の下、国民の一人一人が災害リスクに向き合い、社会全体として「リスクへの備え」に取り組むための方策について議論を深め、これを踏まえた提言を発信していく(詳細はこちらを参照)。

「防災4.0」未来構想プロジェクト(第一回)(平成27年12月24日)の様子
「防災4.0」未来構想プロジェクト(第一回)(平成27年12月24日)の様子

くわえて、内閣府防災担当は、COP21決定において歓迎された仙台防災枠組を、国内のみならず、アジア地域ひいては世界中で推進されるよう国際防災協力の取組を進めている。具体的には、アジア地域ならびに二国間での協力体制を築き、仙台防災枠組の実施状況を含む防災分野における情報共有などを進めている。また、途上国が仙台防災枠組を実施するのを支援する目的で、東日本大震災や阪神淡路大震災からの『より良い復興』事例を調査収集して発信する試みを行っている。さらには、国際会議などで日本の防災体制や経験についてその知見を発信し、またアジア各国の防災担当者・専門家への研修を、アジア防災センターを通して行うなど多面的な支援を行っている。
内閣府防災担当では、今後も、防災分野においてリーダーシップを発揮し、地球温暖化による災害の激甚化に世界各国が対応できるよう、引き続き国際防災協力を積極的に推進していく。

所在地 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 電話番号 03-5253-2111(大代表)
内閣府政策統括官(防災担当)

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