防災リーダーと地域の輪 第24回

女子学生の目線で防災力をアップ

神戸学院大学(兵庫県神戸市)の女子学生が結成した「防災女子」は若い女性ならではの視点を生かし、行政や企業と協力しながら防災活動に取り組んでいる。

神戸学院大学は阪神・淡路大震災から得られた知見を生かし、学部の枠を超えて防災や社会貢献について学べる「防災・社会貢献ユニット」を2006年に立ち上げた。学生による地域での防災教育、国内外の被災地でのボランティア活動など、フィールドワークを重視した同ユニットの実践的な教育プログラムは高く評価され、防災教育チャレンジプラン「防災教育大賞」、ぼうさい甲子園「グランプリ」、防災まちづくり大賞「消防庁長官賞」などを受賞している。2014年には、大学の学科としては全国的にも珍しい、防災を専門的に教育する「社会防災学科」を設立している。
この防災・社会貢献ユニットと社会防災学科の学生は様々なボランティア活動に取り組んでいるが、その中で最近注目を集めているのが防災啓発を目的としたサークル「防災女子」である。メンバーは25名。すべて女子学生である。
2014年6月にそのサークルを立ち上げたのは防災・社会貢献ユニットの高岸明以さん。若い女性向けの防災グッズ集めや、非常食を使った料理を持ち寄る「防災女子会」など、楽しみながら防災意識を高める「防災女子」と名付けたそのアイデアで、高岸さんは2013年に、神戸市危機管理室が主催する「暮らしの備え」アイデアコンテストで最優秀賞を受賞している。
「大学での実習や講義、東日本大震災の被災地でのボランティアを通じて、女性の視点を生かした防災の必要性を強く感じ、『防災女子』のアイデアが浮かびました」と高岸さんは言う。「賞の受賞は社会が求めているからと考え、アイデアを実現するために、友人などに声をかけ、『防災女子』を結成しました」

イベントで包装食のアレンジレシピを紹介

非常食のアレンジ料理に取り組むメンバー

非常食を身近に

防災女子の本格的な活動の第一歩となったのが、2014年11月に神戸市危機管理室と共催した「Girls Party 非常食系女子」。メンバーは、アルファ化米、缶詰など神戸市が備蓄している非常食を使い、チャーハン、オムライス、サンドイッチなど約20種類の料理を作った。非常食は普段、食べる機会がほとんどないため、多くの人にとって馴染みが薄いものである。しかし、メンバーはそうした非常食を使い、日常でも美味しく食べられる料理になるよう工夫を凝らした。

阪神・淡路大震災から20年目にあたる今年1月17日に開催された「ひょうご安全の日のつどい」では、最小限の材料で炊き出しができる調理法として注目を集めている「包装食」を紹介するブースを出展した。包装食の作り方は、ポリ袋に米などの食材を入れ、沸騰したお湯で20〜30分煮るだけ。ポリ袋に入れたまま、食器や箸がなくても、手を汚さず食べることができる。

メンバーは包装食のアレンジレシピとして、醤油バターご飯、ワカメごはんを考え、ブースで紹介した。

「日頃から食に強い関心を持っている女性や母親の方から、包装食はとても好評でした」と高岸さんは言う。「防災を考えるきっかけを作ることができて嬉しかったです。大学生として社会に貢献できる喜びを感じました」

9月1日の防災の日をはさみ、8月末から9月初めまでは、大阪市梅田のデパートで「ローリングストック」を紹介するイベントに参加。ローリングストックとは、災害時に備え、長期保存できる缶詰、レトルト食品、即席麺などの食品を普段の食事で使い、消費した分を買い足すことで、常備食を常に備蓄する方法。長期間保存できる特別な非常食は未使用のまま期限切れになってしまうことも多いが、ローリングストックであれば、こうした無駄も避けられるだけでなく、食品の選択肢が広がり、災害時にも食べ慣れたものを用意することもできる。防災女子のメンバーは、同じ大学の栄養学部の協力も得て、トマトの缶詰を使ったリゾット、ひじきとサバの缶詰を使ったパスタなど、栄養やカロリーにも気を配った8種類のレシピを考案。デパートの特設売場で、買い物客にレシピが書かれたチラシを配布した。この活動は新聞やテレビで紹介されるなど反響を呼んでいる。

防災女子は、こうした非常食に関する取り組みの他、中学校での防災に関する出前授業や、防災訓練や防災イベントへの参加なども積極的に行っている。また、神戸市内に住む女性の防災意識のアンケートを実施。10代から70代まで1,400名を超える女性を対象に、防災に関する知識、意識、行動の調査を行った。調査結果は今後の活動に役立てる予定である。

「大震災を経験した神戸でも、若い世代の防災への関心は高いとはいえません。いかに若い世代を巻き込んでいくかは大きな課題です」と高岸さんは言う。「私は来年で卒業ですが、後輩たちには防災女子を、学部や大学も越えて、広がりのある組織に育てて欲しいです」

(写真提供 神戸学院大学)

大阪のデパートで常備食を使ったアレンジレシピを配布 

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内閣府政策統括官(防災担当)

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