防災リーダーと地域の輪 第17回‐内閣府防災情報のページ

「アヤメの里」で活躍する中学生の防災リーダー

秋田県大館市の大館市立第二中学校は、地域の人々と共に防災活動を行うことで、生徒が地域の頼れる防災リーダーに育っている。

秋田県大館市の芝谷地湿原は、約7haの広さで手つかずの自然が残されており、その湿原植物群落は国指定天然記念物になっている。毎年、5月下旬から6月上旬にかけては、美しいアヤメが咲き誇る。
この芝谷地湿原から歩いて10分ほどにある大館市立第二中学校(生徒数141名)は、2011年に「アヤメの里の防災リーダーを目指して〜雨にも負けず雪にも負けず」のタイトルで防災教育チャレンジプランに応募し、採択された。その地域に根ざした防災活動は高く評価され、2012年2月に防災教育チャレンジプラン「優秀賞」を受賞している。
「本校のチャレンジプランのキーワードは、『助けられる人から助ける人へ』です。地域の方々との防災活動を通じて、生徒を地域の防災リーダーに育てることを目標としました」と大館市立第二中学校校長の貝森登さんは言う。
地域との防災活動を進めるために設立されたのが「地域防災組織」である。「地域防災組織」は大館市立第二中学校の生徒、教員、18ある町内会の会長や防災担当者で構成される。その役割は、町内会ごとの防災活動を決め、実施すること。例えば、防災マップの作成である。生徒は自分の住む町内を住民と共に歩き、公衆電話、消火栓、AED(自動体外式除細動器)の設置場所や、災害・事故が予想される危険箇所を示した防災マップを作成し、町内の掲示板に貼ったり、各家庭に配布する。また、消火器の使用訓練や、町内の清掃、AED講習会といった活動も、住民と共に行っている。
この他、生徒は毎年9月に開催される町内のお祭りに、御神輿の担ぎ手や山車の引き手として参加し、地域住民との絆を深めている。
「様々な活動を通じて、生徒と地域の方々が知り合いになり、お互いが気軽に挨拶できるようになりました。地域の方々からは、『いざという時に頼りになる中学生がいて心強い』というお話を頂いております」と貝森さんは言う。

大館市立第二中学校の生徒による活動
冬の除雪作業(上段右)、学校での冬の避難訓練(上段左)、町内のお祭りで御神輿を担ぐ(下段右)、
防災マップを使い、小学生に町内の危険箇所を説明(下段左)

防災リーダーとして地域を守る
大館市立第二中学校の防災教育チャレンジプランでは、冬の防災活動にも力を入れている。大館市では毎年、冬になると雪が70 cm以上積もることも多い。積雪時には、雪によって避難口の扉が開かなくなることや、足下が悪いため、避難に時間がかかるといったことが想定される。そのため、大館市立第二中学校では、春に加え、冬にも避難訓練を行い、積雪時の災害に備えている。
また、防災マップも、積もった雪で見通しが悪くなる場所を書き加えるなどした冬バージョンを作成している。さらに、生徒は近隣の小学校を訪れ、この防災マップを用い、児童に対して積雪時の防災について説明も行っている。説明後には、生徒は低学年の児童と集団下校し、危険箇所を確認している。
この他、生徒はボランティア活動として、高学年の小学生と共に、一人暮らしの高齢者宅、町内の集会所、消火栓などの除雪作業も行っている。
こうした活動の積み重ねによって、生徒は防災リーダーとして自主的に行動を起こすようになっている。例えば、今年8月9日、大館市では1時間に120ミリ以上の大雨が降り、床上浸水や床下浸水などの大きな被害が発生したが、この復旧作業にも大館市立第二中学校の生徒が活躍した。夏休み中にもかかわらず、20名の生徒と6名の教員がボランティアとなり、床上浸水の被害を受けた家の清掃、道路の片付けなどを行っている。その様子は地元の新聞やテレビ番組でも紹介された。
「今回の復旧作業に、多くの生徒が自主的に参加したことは、防災教育チャレンジプランの大きな成果だったと思います。今後も、チャレンジプランの取り組みが『絵に描いた餅』とならないよう、地域の方々と共に防災活動を継続していきたいです」と貝森さんは言う。
(写真提供 大館市立第二中学校)

防災リーダーの一言

防災教育チャレンジプランを通じて、地域防災における中学生の重要性を強く感じました。防災活動によって生徒から発せられるエネルギーは、精神的な面でも、実際の行動という面でも、地域の方々に大きな影響を与えたと思っております。
生徒は特別なことをしているという意識はありませんが、地域の方々からの温かい支援があることは忘れないで欲しいです。人間は一人では生きられません。防災活動をきっかけに、人や社会との関わりを大切にできる大人へと生徒が成長することを願っています。

貝森登
かいもり・のぼる
大館市立第二中学校校長

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内閣府政策統括官(防災担当)

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