特集2 いざという時に役立つ「みんなの防災手帳」

特集2 いざという時に役立つ「みんなの防災手帳」

災害に備え、日頃どのような準備をしておくべきか。災害時に身を守るためにはどう行動すべきか。
そうした情報がコンパクトにまとめられた「みんなの防災手帳」を東北大学災害科学国際研究所が制作しました。

「みんなの防災手帳」は、必要な情報が一目で分かるように編集されている(東北大学災害科学国際研究所 提供)

東北大学災害科学国際研究所(IRIDeS)は、2012年4月に設立された研究組織で、東日本大震災の被災地の復興・再生に貢献するとともに、自然災害に関する世界最先端の研究を推進する機関です。

同研究所は、国民一人ひとりが自然災害から生き抜くための力を身につけるためのアクションプランや啓発ツールを開発し、普及させることを目指す「『生きる力』市民運動化プロジェクト」を今年1月に立ち上げました。そのプロジェクトの成果が、「みんなの防災手帳」です。

「みんなの防災手帳」は、災害の発生前から復旧・復興までが時間軸によって編集され、それぞれの段階で必要な情報が盛り込まれています。被災した時でも直ぐに読めるように、イラストを多用し、文章は約140文字で簡潔にまとめられています。また、ほとんどのページに、東日本大震災の教訓を伝える被災者の声を短くまとめたコラムが掲載されています。

「『みんなの防災手帳』は母子手帳から発想を得ました。母子手帳は、子どもが生まれる前から、生まれた後もしばらくの間、使われますが、それと同じように、『みんなの防災手帳』も、災害の発生前から、発生後の復旧・復興まで使い続けられるような構成にしています」と制作を担当した東北大学災害科学国際研究所助教の佐藤翔輔さんは言います。

「みんなの防災手帳」は、手に取り易いA6サイズ。全7章で構成されています。序章から5章までは、約120ページにわたって、どの地域でもいざという時に役立つ汎用性の高い情報が盛り込まれています。6章には各自治体の“オリジナルの地域情報”を組み入れることができます。

全国に先駆けて、宮城県多賀城市が「みんなの防災手帳」の導入を決めています。多賀城市内では、東日本大震災により188名の命が失われ、1万1000棟を超える家屋が被害を受けました。多賀城市は、この震災で得た教訓や知見を活かし、災害による被災を最小化する「減災対策」を進めています。その一環として、「みんなの防災手帳」を今秋、市内全世帯約2万5000世帯に配布する予定です。多賀城市版「みんなの防災手帳」では、6章のオリジナルの地域情報として、多賀城市の津波ハザードマップ、大雨時の雨水浸水ハザードマップ、大規模避難所や一時避難所マップ、復旧・復興の手続き関係の対応窓口一覧などの情報が掲載されます。

東北大学災害科学国際研究所は、今年12月6日に「『生きる力』市民運動化プロジェクト シンポジウム in 関西」を関西大学ミューズホールで開催します。「東日本大震災を踏まえた南海トラフ地震のための防災教育」をテーマにするこのシンポジウムでは、「みんなの防災手帳」に関する報告も行われます。

この他、同研究所は、「みんなの防災手帳」の利用を地域に根付かせ、広げるキーマンを育成するために、ワークショップの開催を検討しています。

また、多賀城市以外の自治体に対しても、自治体オリジナル情報の監修など、「みんなの防災手帳」の制作を支援します。同研究所のもとには既に、制作を検討する複数の自治体から問い合わせが寄せられています。

「いつでも持ち運びができる手帳サイズにしていることが、『みんなの防災手帳』の利点です。各家庭での家族会議、自治体や学校の防災訓練などで活用して欲しい」と東北大学災害科学国際研究所副所長の今村文彦さんは話しています。

「みんなの防災手帳」に関する問い合わせは、東北大学災害学国際研究所の佐藤翔輔助教まで。
電話:022-795-7515
e-mail: ikiru2013@irides.tohoku.ac.jp

「みんなの防災手帳」の内容

序章  「わが家の防災手帳」
血液型やアレルギーの有無などの家族情報や、災害時の連絡先、災害後の役割分担など家族で決めたルールを、各家庭で書き込むページ。

1章 発災前 生きるための備え
災害を知り、災害に備えるために、津波警報や大雨警報など各種警報、住宅の耐震補強、地震保険など、自然災害や防災に関する必要最低限な知識・情報を紹介。

2章 発災〜10時間 命を守るために
風水害、地震、津波など自然災害に直面した場合、「海では」、「山では」といった場所に応じて、どのような方法で身を守るか、そのノウハウを紹介。

3章 10〜100時間 生きのびるために
被災生活を送る中で、水、トイレ、火などを確保する方法、正確な情報入手の方法、避難所での暑さや寒さへの対策などを紹介。

4章 100〜1000時間 生きぬくために
長期にわたる避難生活の中で、避難所の衛生状態や被災者の精神状態の悪化を防ぐ方法を紹介。

5章 1000〜10000時間 よりよく生きるために
罹災証明など、被災者が生活再建を進めるために必要な手続きや支援を紹介。

6章 各自治体情報

序章「わが家の防災手帳」には家族情報を記入します(東北大学災害科学国際研究所 提供)

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内閣府政策統括官(防災担当)

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