Disaster Management News―防災の動き

南海トラフ巨大地震対策について
(最終報告)

中央防災会議防災対策推進検討会議の下に設けられた南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループにおいては、本年5月に最終報告がとりまとめられました。その概要を紹介いたします。

○はじめに
今回明らかにされた南海トラフ沿いで発生する最大クラスの巨大地震・津波については、千年に一度あるいはそれよりもっと発生頻度が低いものであるが、仮に発生すれば、西日本を中心に甚大な被害をもたらすだけでなく、人的損失や国内生産・消費活動、日本経済のリスクの高まりを通じて、影響は我が国全体に及ぶ可能性があり、行政、企業、地域、住民等、個々の果たすべき役割を踏まえつつ当該地震への対策にも万全を期する必要がある。本ワーキンググループは、特にこのことを重視して議論を進めてきた。

○南海トラフ巨大地震対策の基本的方向
1.主な課題と課題への対応の考え方
南海トラフ巨大地震の特徴は、超広域にわたり強い揺れと巨大な津波が発生するとともに、避難を必要とする津波の到達時間が数分という極めて短い地域が存在することである。このため、その被害はこれまで想定されてきた地震とは全く様相が異なるものになると想定され、これまでの地震・津波対策の延長線上の対策では十分な対応が困難となることも考えられることから、過酷な状況における防災対策の主な課題と対応の考え方を示すこととした。
(1)津波からの人命の確保
 ・津波対策の目標は「命を守る」、住民一人ひとりが主体的に迅速に適切に避難
 ・即座に安全な場所への避難がなされるよう地域毎にあらゆる手段を講じる
(2)各般にわたる甚大な被害への対応
 ・被害の絶対量を減らす観点から、耐震化や火災対策などの事前防災が極めて重要
 ・経済活動の継続を確保するため、住宅だけでなく、事業所などの対策も推進する必要
 ・ライフラインやインフラの早期復旧につながる対策は、あらゆる応急対策の前提として重要
(3)超広域にわたる被害への対応
 ・日本全体としての都道府県間の広域支援の枠組みの検討が必要
 ・避難所に入る避難者のトリアージ、住宅の被災が軽微な被災者の在宅避難への誘導
 ・被災地域は、まず地域で自活するという備えが必要
(4)国内外の経済に及ぼす甚大な影響の回避
 ・日本全体の経済的影響を減じるためには主に企業における対策が重要
 ・経済への二次的波及を減じるインフラ・ライフライン施設の早期復旧
 ・諸外国への情報発信が的確にできるような戦略的な備えの構築
(5)時間差発生等態様に応じた対策の確立
 ・複数の時間差発生シナリオを検討し、二度にわたる被災に臨機応変に対応
(6)外力のレベルに応じた対策の確立
 ・津波対策は、海岸保全施設等はレベル1の津波を対象とし、レベル2の津波には「命を守る」ことを目標としてハード対策とソフト対策を総動員
 ・地震動への対策は、施設分野毎の耐震基準を基に耐震化等を着実に推進
 ・災害応急対策は、オールハザードアプローチの考え方に立って備えを強化

2.対策を推進するための枠組の確立
(1)計画的な取組のための体系の確立
 ・総合的な津波避難対策等の観点等から、対策推進のための法的枠組の確立が必要
 ・南海トラフ巨大地震対策のマスタープランの策定とともに、事前防災戦略の具体化に当たっては、項目毎に目標や達成の時期等をプログラムとして明示
 ・応急対策についても、具体的な活動内容に係る計画を策定
(2)対策を推進するための組織の整備
 ・広域的な連携・協働のための南海トラフ巨大地震対策協議会の積極的活用及び法的な位置づけの必要性
(3)戦略的な取組の強化
 ・府省を超えた連携、産官学民の連携など、国内のあらゆる力を結集
 ・国、地方を通じた防災担当職員の資質向上や人材ネットワークの構築が大切
(4)訓練等を通じた対策手法の高度化
 ・行政・地域住民・事業者等の地域が一体となった総合的な防災訓練の継続的な実施
(5)科学的知見の蓄積と活用
 ・地震・津波及びその対策に関する様々な学問分野の学際的な連携

○具体的に実施すべき対策
最終報告では、①事前防災、②災害発生時対応とそれへの備え、③被災地域内外における混乱の防止、④多様な発生態様への対応、⑤様々な地域的課題への対応、⑥本格復旧・復興、という構成で個別具体の対策をとりまとめた。

○今後検討すべき主な課題
①南海トラフ巨大地震の発生確率、②予測可能性と連動可能性、③長周期地震動への対応

○おわりに
発生頻度が極めて低いものであるとの認識をしつつも、国内のあらゆる力を結集し、南海トラフ巨大地震に立ち向かう社会全体の体制を一刻も早く整え、安全で安心なまちを子どもや孫の時代にしっかりと残していくことを強く望むものである。

南海トラフ巨大地震 陸側ケースの震度分布

南海トラフ巨大地震 最大津波高
※ケース①「駿河湾~紀伊半島沖」に「大すべり域+超大すべり域」を設定

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内閣府政策統括官(防災担当)

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