Disaster Management News—防災の動き

南海トラフの巨大地震モデル検討会

内閣府では、南海トラフの巨大地震を対象として、これまでの科学的知見に基づき想定すべき最大クラスの対象地震の設定方針を検討することを目的として、平成23年8月に「南海トラフの巨大地震モデル検討会」(以下「本検討会」)を設置した。

本検討会では、平成23年12月27日に南海トラフの最大クラスの地震・津波の検討方針や新たな想定震源断層域・想定津波波源断層域を公表し、平成24年3月31日に、最大クラスの震度分布・津波高(50mメッシュ)の推計結果を第1次報告として公表した。以下、第1次報告の内容を説明する。

公表した震度分布・津波高は、「東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会」報告の考え方に沿って推計したものである。特に、津波高については、同報告に示されている二つのレベルの津波のうち、「発生頻度は極めて低いものの、発生すれば甚大な被害をもたらす最大クラスの津波」に相当するものである。同報告は、このような最大クラスの津波に対しては、住民等の避難を軸に、土地利用、避難施設、防災施設などを組み合わせて、総合的な津波対策により対応する必要があるとしている。

以上のように、今回の推計は、東日本大震災の教訓を踏まえた新たな考え方、すなわち、現時点の最新の科学的知見に基づき、あらゆる可能性を考慮した最大クラスのものとして推計したものである。その結果、東北地方太平洋沖地震と同様に、マグニチュード9クラスの規模(強震断層モデルのMw が9.0、津波断層モデルのMwが9.1)の巨大な地震・津波となった。

なお、本推計結果は、南海トラフ沿いにおいて次に起こる地震・津波を予測したものでもなく、また何年に何%という発生確率を念頭に地震・津波を想定したものでもない。また、地震調査研究推進本部が、今後30年以内の地震発生確率(※注)を公表している南海トラフの地震は、いずれも本検討会で示すマグニチュード9クラスの地震を対象としているものではないことに留意する必要がある。

○ 震度分布・津波高の推計の考え方・推計結果

(1)考え方
強い揺れ(強震動)を引き起こす地震波は、震源断層面に一様に発生するのではなく、特定の領域(強震動生成域)において発生することが知られている。そのため、震度分布を推計する強震断層モデルについては、平成23(2011)年東北地方太平洋沖地震や世界の巨大地震の特徴等を踏まえて、強震動生成域を4ケース設定することとし、それぞれのケースについて強震波形計算を行い、250mメッシュ単位で震度を推計した。さらに、これを補完するため、経験的手法(震源からの距離に従い地震の揺れがどの程度減衰するかを示す経験的な式を用いて震度を推計する手法)による震度も推計した。防災対策の前提とすべき最大クラスの震度分布は、これらの震度の最大値の重ね合わせとした。
津波を引き起こす断層のすべりについても、震源断層面に一様に発生するのではなく、特定の領域が大きくすべる(この領域を「大すべり域」及び「超大すべり域」という。)ことで大きな津波が発生することが知られている。そのため、津波高を推計する津波断層モデルについては、平成23(2011)年東北地方太平洋沖地震や世界の巨大地震の特徴等を踏まえて、大すべり域と超大すべり域を11ケース設定することとし、それぞれのケースについて、50mメッシュ単位で津波高を推計した。防災対策の前提とすべき最大クラスの津波高は、これらの11ケースの津波高の最大値を重ね合わることとした。

(2)推計結果
防災対策を検討する基礎資料となる最大クラスの震度分布は、図1のとおりである。関東から四国・九州にかけて極めて広い範囲で強い揺れが想定される。具体的には、震度6弱以上が想定される地域は、24府県687市町村、震度6強以上が想定される地域は、21府県395市町村、震度7が想定される地域は、10県153市町村となる。
防災対策を検討する基礎資料となる最大クラスの津波高は、図2のとおりである。関東から四国・九州の太平洋沿岸等の極めて広い範囲で大きな津波が想定される。具体的には、満潮位の津波高10m以上が想定される地域は、11都県90市町村、満潮位の津波高20m以上が想定される地域は、6都県23市町村となる。

図1 最大クラスの震度分布想定

図2 最大クラスの津波高想定

(3)主な留意点
以上の推計結果については、以下の点に留意すべきである。
・ 今回推計した震度分布・津波高は、広範囲の領域の全体を捉えた防災対策の参考とするために推計したものであり、必ずしも各局所的な地先において最大となる震度分布・津波高を示しているものではない。
・ 地震・津波は自然現象であり不確実性を伴うものであることから、今回推計した震度分布・津波高はある程度幅を持ったものであり、それらを超えることもあり得ることに注意することが必要である。したがって、今回の検討は、一般的な防災対策を検討するための最大クラスの地震・津波を検討したものであり、より安全性に配慮する必要のある個別施設については、個別の設計基準等に基づいた地震・津波の推計が改めて必要である。
・ 今回推計した震度分布・津波高は、今後実施する予定の詳細な浸水域や被害想定を検討する過程において、改めて検証した結果、修正されることがある。
(※注)
地震調査研究推進本部公表の今後30年以内の地震発生確率は、想定東海地震88%、東南海地震70%程度、南海地震60%程度(いずれもマグニチュード8クラスを想定)。

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