防災リーダーと地域の輪 第9回

高校生による災害被害からの復旧・復興支援活動

兵庫県立佐用高等学校では、町の水害復興支援から始まった防災活動が今、東日本大震災の被災地支援へと繋がっている。

2009年8月、佐用高校がある兵庫県佐用郡佐用町は、台風9号などによる豪雨で甚大な被害を受けた。この時、町内唯一の高校である佐用高校の生徒たちはすぐに、「自分たちに出来ることをしたい」と町の復興支援に立ち上がった。

我が町を勇気づけたい
水害直後は、生徒や教師がJR姫路駅前で募金活動を実施。また、土砂の片付けなどの復旧ボランティアには、約1週間の活動に、教師・生徒合わせて延べ500人が参加した。
水害翌年の2010年は、地域復興支援の一環として、農業科学科を中心に“農業の力”を活かした取り組みも行われた。
そのひとつは、自分たちで栽培した草花を植えた手作りプランターの製作だ。県内の別の高校や、大学とも協力して、メッセージカードを添えたプランター合計約100個を商店街の人たちに配布したところ、商店街が明るくなり、多くの被災者の方からも感謝の言葉をかけられた。
地域とのつながりを一層強めたこれらの取り組みにより、佐用高校は、2010年度の防災教育チャレンジプラン「防災教育特別賞」及びぼうさい甲子園「優秀賞」を受賞した。

佐用高校が行った東日本大震災支援活動の様子。(左上から時計回り)姫路駅前での募金活動、宮城県石巻市での花壇づくりボランティア(農業科学科)、子どもたちに送る「防災座布団」づくり(家政科)、被災地に桜の絵を千枚届けるという兵庫県の絵画教室の取り組みに賛同して佐用高校生も桜の絵を描いて参加した

広がる復興支援活動
そして2011年、東日本大震災が発生。佐用高校では、「2年前に全国から助けられたお礼をしよう」と、学校をあげて積極的に被災地支援活動に取り組み、その中で家政科の生徒を中心に“家庭科の力”を活かした防災活動も開始している。
これは、手作りの「通園セット」を被災地の子どもたちに送るプロジェクトだ。セットの中身は、通学バッグ、コップ入れ、シューズ入れ、お弁当袋、防災座布団、メッセージカードの6品が入っている。家政科系の学科がある他の県立5高校にも協力を呼びかけて、各校がそれぞれ1品を担当。佐用高校は、頭巾にもひざ掛けにもなる防災座布団を製作した。
「授業があるため、生徒がボランティアに行くことは難しいですが、『自分たちが普段やっている、作品づくりもボランティアになるのでは』と生徒に提案したんです」と今回のプロジェクトを始めた家政科担当の田村倫子先生は話す。「効率よく作業できるように、布の裁断や縫製の係りを決めて、まるで工場みたいに。生徒は自分たちで考えて動いていました」
被災地の入園・入学シーズンに間に合わせようと生徒たちが大奮闘した結果、100セットが約3週間で完成し、4月末には無事被災地へ発送された。
そして5月には、田村先生と家政科の生徒2名が代表として宮城県石巻市を訪ねた。「通園セット」の受け取り窓口となってくれた石巻好文館高校の先生の案内で、現地の小学校や家政科がある高校とも交流することができた。
その後は、生徒どうしで相談するなど、さらに支援のアイデアを練っているそうだ。また、6校による第2回目の「通園セット」づくりも、すでに検討が始められている。
佐用高校では、今年度から防災教育に関する項目が教育方針に盛り込まれた。豪雨災害の教訓を活かし、生徒たちが成長して欲しいとの想いが込められている。
(写真提供 兵庫県立佐用高等学校)

防災リーダーの一言

3月の終わり、学校が実施した東日本大震災の募金活動に参加させてもらったときに、純粋に「人の力ってすごいな」と思ったんです。保護者を亡くした子どもも多いと聞いたので、「自分たちの“家庭科の力” で何かできることはないか」と考えて、被災地の子どものための「通園セット」づくりを呼びかけました。
活動には、6校で500人ぐらいが携わったと思います。ひとりひとりの作品づくりは、すごく小さいことかもしれないけれど、他の学校との協力で大きなことが出来たと思います。
今回の経験で成長させてもらったお陰でしょう、生徒たちは、「何をしたらいいのか」ということを自分たちで考えられるようになってきました。今後は、その「想い」を後輩へしっかり語り継いでいってくれればと思っています。

田村 倫子
たむら・ともこ
兵庫県立佐用高等学校家政科 教諭

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内閣府政策統括官(防災担当)

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