防災リーダーと地域の輪 第7回

女性の視点と幅広いネットワークを生かした防災対策普及

神奈川県秦野市を拠点に活動する、市民グループ「なでしこ防災ネット」は、様々な年代、分野の人たちと助けあいながら、防災活動に取り組んでいる。

 「なでしこ防災ネット」(以下「なでしこ」)は、代表を務める吉田トシ子さんら防災士仲間の女性数名で、2005年に活動を開始した。現在のメンバーは、防災士や民生委員等の資格や経験を有する11名。これまで防災講演会や、楽しみながら防災体験ができる「サバイバルDay キャンプ」などを開催してきた。

地の利を生かした防災対策
 「なでしこ」は、防災教育チャレンジプラン実行委員会と内閣府が主催する「防災教育チャレンジプラン」において、「もしもの時の災害時協力井戸・湧水МAP」を制作し、2010年度「防災教育優秀賞」を受賞した。
 災害時には、飲料水とともにトイレや洗濯などの生活用水の確保も必要になる。秦野市では、以前、災害時に自宅の井戸や湧水を近所に開放してくれる災害時協力井戸のリストを作成したが、そのリニューアルを検討しているところだった。
  これを受けて「なでしこ」は、井戸や湧水の最新状況を調査し、その場所が一目でわかる防災マップづくりに取り組んだ。豊富で良質な湧水に恵まれ、市内各所に自噴する井戸も多い秦野市の特性を活かしたプランだ。
  調査対象の井戸や湧水は、119箇所とかなりの数だったが、市の防災課が、調査協力依頼書を事前に所有者へ送付。また、郵便局ОBが、点在する調査地を効率よく回れるルートを探してくれるなど、多くの人たちがサポートしてくれた。さらに、市を通じて募集した中高生ボランティア80名の参加も得られた。
  調査には、「なでしこ」と中高生ボランティアらが手分けしてあたった。使用状況を調査し、現地写真を撮影。ほとんどの井戸や湧水が個人宅の敷地にあるため、災害時の協力とマップ掲載の許可を求めて一軒、一軒を訪ねて回ると、合計108箇所から承諾を得ることができた。
  一般向けマップは、個人情報保護に配慮し、地区用、市内用、市外も配布可能なもの、と掲載情報の内容を変えた3種類を作成。また、ボランティア団体や障害者団体の協力で、点字訳版マップや手話・音声のDVDも準備した。

(左上)井戸や湧水の調査、(右上)市民、中高生も参加した水源地探検、
(左下)川の水を使ったビニール袋炊飯講習会、(右下)河川のゴミ拾い

チームワーク
 2010年度の活動では、秦野市立西中学校生6名が継続して活動に協力してくれた。マップの企画構成を考え、得意のパソコン作業なども担当。マップの裏面に、地域の水環境と保全活動に関する内容も掲載するなど、中学生たちのアイデアが大いに盛り込まれている。
  彼らは、「仲間と一緒だからがんばれた」、「地元の水の活用について知ることができてよかった」、「もっと地域のことを知りたいと思った」と1年間の活動を振り返った。
  吉田さんは、「皆さんの協力のおかげで、私達だけでは出来ないことが可能になっています」と話す。
  今後は、出来上がったマップの活用とともに、「災害時協力井戸・湧水の家」の看板設置もすすめる計画だ。

「もしもの時の災害時協力井戸・湧水MAP」(裏面)

防災リーダーの一言

 日中、多くの場合、家にいるのは女性です。災害が起きたとき、パニックになっては家族を助けられません。防災知識があれば、落ち着いて判断し、行動することが出来ます。
  一方、災害時の避難所では、授乳場所の確保や、プライバシーの問題など、女性が弱い立場になりやすいということがあります。
  防災の担い手と災害弱者という両面を持つ女性だからこそ、その意見が防災対策には必要だと思っています。
  お母さんが学んだ防災知識は、家族へ伝えられ、また近所づきあいから地域にも広がっていきます。地域防災における女性の影響力は非常に大きいのです。

吉田 トシ子

吉田 トシ子
よしだ・としこ
なでしこ防災ネット 代表

所在地 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 電話番号 03-5253-2111(大代表)
内閣府政策統括官(防災担当)

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