特集 地震を知って地震に備える!

様々な分野で進む地震研究を私たちの“安全”に役立てたい 
一人ひとりの意識こそ防災力

地震のメカニズムの解明や長期予測をどのように防災につなげるか。阪神・淡路大震災以降、様々な分野で地震による被害を少しでも減らすための研究が進められています。その最前線を人と防災未来センターの越山健治氏にうかがいました。

地震被害の予測研究は防災への第一歩

地震という自然現象のメカニズムを解明することはとても大切なことですが、それだけでは被害は減らせません。阪神・淡路大震災以降進んだ研究の一つに“被害想定”と呼ばれるものがあります。これは地震の揺れによってどのような被害が起きるのかを予測するもの。どのくらい建物が壊れるのか、道路やガス、水道はどうなるのか、どのくらいの人が死んでしまうのか、企業はどのくらい潰れてしまうのか、経済的な被害がどのくらいになるのか……こうした様々な被害を予測式を基に割り出していくのです。

この分野の研究で重要な役割を果たしたのが、阪神・淡路大震災における被害の緻密な実態調査です。詳細な情報をベースにすることで、より確かな予測が可能になったのです。

また、災害が、人間の心や身体にどんな影響を及ぼすかも、心理学・医学などの分野で研究されています。

被害が想定できれば、具体的な対策を構築できる。被害想定は防災の基礎になる大切な研究なのです。

地震被害の予測研究は 防災への第一歩
イラスト:井塚 剛

4つの段階の対策研究で被害の減少を目指す

 では、想定される被害をどう減らすか。現在、“予防対策”“準備対策”“対応対策”“復旧対策”という4つの段階で研究が進められています 。“予防対策”とは、例えば家が潰れないようにする研究。材料、設計、地質など、様々な角度から研究し、耐震性能の高い建築物を造る。電気、ガス、水道、道路などにしても同様の研究がされ、実際の対策に活かされています。ただ、実際に揺れが起これば建築物が壊れることもあります。水道がとまった場合の復旧にかかる時間を予測できれば、水の備蓄量を割り出すことができる。それが“準備対策”です。“対応対策”では地震が発生したら生活や社会にどんなことが起こるのか、どう対応すればいいのか、などを研究。安否確認、帰宅困難者の発生、避難所の生活など、災害の応急対応に関して、様々な対策が練られています。では、その後、街をどう回復させるのか。プログラムを作っておかないと実行に移せません。それが“復旧対策”です。

 こうした数々の研究成果を踏まえ、減災のための対策が実行に移されています。国も地震防災戦略を作成し、予想される地震被害の減少を目指しています。

地震研究の貴重な成果は私たちにも活用できる

 被害想定を実際の対策に役立てる。これは私たち一人ひとりができることでもあります。地震防災研究のベースになっているのは、阪神・淡路大震災を含めた実際の地震被害の体験。あなたの街で震災が発生した時にも現実に起こりうることなのです 。人間には災害など自分にマイナス要因となることを正しく理解しない傾向があります。「自分の地域は何年も大きな地震が来てないから大丈夫」という人もいますが、そこには大した科学的根拠はありません。日本のどこの地域でも大地震が発生する可能性はある。今の科学で地震の発生を防ぐことはできないのですから、被害をどう防ぐか、被害が起きた時にどうするかは一人ひとりにかかってきます。まずは地震に関する情報を把握して、地震が起きたらどんなことが起こるのか、イメージしてみてください 。避難所の共同のトイレはイヤだという人は自分で準備するしかない。自分の家が壊れそうだと思ったら、耐震補強工事をする必要があります。でも、補強工事を行うのが難しいなら、寝ている所を安全にするなど、できる対策はいろいろあります。できる範囲で少しずつ準備していきましょう。継続していくとひとりでは難しい対策もみえてきます。家族、隣近所、自治会……と対策の輪を広げることも大切。そうすれば、いざという時に助け合えます 。防災への意識を持ち続けることは日常の生活の安全を守る上でも効果があるのです。
人と防災未来センター 研究主幹
越山健治

こしやま・けんじ
阪神・淡路大震災当時、神戸大学の4年生。平成9年神戸大学大学院自然科学研究科を卒業後、防災の研究を続け、現在に至る。専門分野は都市安全・復興計画、住宅再建、行政災害対応。地域安全学会論文奨励賞受賞。工学博士。

できることから始めよう 〜今すぐできる「7つの備え」〜

  1. 自助、共助
    災害被害を少なくするには、自分の身を自分で守る「自助」、地域や身近な人同士で助け合う「共助」が大きな力となります。平時から、「自分でできること」、「家族でできること」、「ご近所と力を合わせてできること」などについて考えておくことが大切です。
  2. 地域の危険を知る
    地域の安全を知るには、自然災害が発生した場合の被害状況や避難・救援活動に必要な情報が掲載されている防災マップ(ハザードマップ)が有効です。また、家族や近所の人たちで、危険な場所や防災施設を発見する「ぼうさいまち歩き」もしてみましょう。
  3. 地震に強い家
    昭和56年に住宅の耐震基準が大きく変わりました。自分の家がそれ以前に建てられている場合、必ず耐震診断を受け、必要に応じて補強しましょう。それ以降に建てられていても、危険がないわけではありません。市区町村役場の防災担当課に相談してみましょう。
  4. 家具の固定
    大きな家具や電器製品の下敷きにならないよう、できる限り固定しましょう。また、ガラスや食器などが飛散しないための対策も必要です。特に寝室の安全や複数の逃げ道を確保しておきましょう。生き残るため、死なないための備えが大切です。
  5. 日ごろからの備え
    外出時に常に身に付けておきたいもの、家庭やオフィスに常備しておきたいものなど、非常時への備えは、その人の事情や家族構成などで変わってきます。市区町村役場のホームページには、防災関連のサイトが設けられていますので、それらを参照してみましょう。
  6. 家族で防災会議
    災害は、家族がそろっている時に発生するとは限りません。安否の確認方法や避難場所を確認するために、家族で防災会議をしましょう。安否の確認には、災害伝言ダイヤル171、携帯電話の災害用伝言板サービス、web171災害用ブロードバンド伝言板があります。
  7. 地域とのつながり
    大規模災害時の救助や避難には、日頃の近所付き合いが力を発揮します。また、お年寄りや障害のある方など、災害に弱い方々への心配りも大切。地域の防災訓練に参加し、安否確認や救出・救護、炊き出しや避難訓練、避難所生活などを体験してみましょう。
「7つの備え」の詳細は、内閣府(防災担当)の「減災のてびき」をご参照ください。
https://www.bousai.go.jp//kyoiku/keigen/gensai/index.html

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