第6節 防災におけるデジタル技術の活用
関東大震災が発生した大正12年(1923年)は、まだラジオ放送が開始される前であった。また、地震により交通や電話などのライフラインも大きな被害を受けたために、新聞も発災後しばらく東京で発刊することができなくなってしまうなど、情報が流通しなくなってしまった。
しかしながら、災害発生後、人命救助などの応急活動や、避難所生活への対応等の被災者支援など、行政が的確な対応を行うためには、まず発生した災害による被害状況を迅速かつ正確に把握することが必要となる。
この100年の間、情報通信技術は飛躍的に進歩した。これまでも主要な情報伝達手段となる媒体は、ラジオ、その後テレビと移り変わってきたところである。そして現在、デジタル技術の進展により、インターネットやSNSの活用が個人の日常生活の中でも一般的となっている。政府としても災害対応に役立つ可能性があるデータのデジタル化を推進し、活用していくことは、災害による被害状況の把握に大きく寄与するとともに、国民への情報発信の際にも必要不可欠になっていると考えられる。
政府では、デジタル技術を活用した情報収集や情報共有に取り組んでいるところであるが、デジタル技術は日進月歩であることから、今後とも更なる活用に向けた取組を進めていくことが必要である。
外国人に向けた防災・気象情報の発信
内閣府では、「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」(令和4年6月14日外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議決定)に基づき、関係省庁とともに、災害発生時に外国人が必要な情報を容易に入手できるように、多言語化等の取組を進めている。
具体的には、災害時に便利なアプリやWEBサイト等の情報をまとめた15言語※のリーフレットや、外国人にも理解しやすい「やさしい日本語」に対応したポスターを作成するなど、様々な機会を通じて周知・普及を行っている。
さらに、関係機関が外国人向けの防災訓練や研修等を行う際に活用できるよう、「外国人に向けた防災・気象情報の発信」に関する資料を15言語※で作成し、提供している。
※15言語:日本語、英語、中国語(繁体字、簡体字)、韓国語、スペイン語、ポルトガル語、ベトナム語、タイ語、インドネシア語、タガログ語、ネパール語、クメール語、ビルマ語、モンゴル語
SNSなどを通じた助け合い活動(「つながる共助」)の促進
近年のSNSなどのコミュニケーションツールの急速な普及によって、災害発生時に、これらのツールを使った助け合いが大きな力を発揮する可能性が高まっている。このため、これまで被災地支援に役立つ情報の発信等を行ってきた一般社団法人FUKKO DESIGNは、全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)と連携して、「つながる共助」という考え方を提案し、情報発信をしている。
具体的には、仲間同士の情報交換、物資・資金支援の募集と応募、復旧作業の手伝いの募集と応募などの場面でSNSなどのツールをどのように使えば良いか、また、プライバシーを守る上で留意すべき点は何かなどの情報を分かりやすくまとめた啓発資料を作成し、SNSやホームページで情報発信している。