第6節 デジタル化等情報伝達手段の変化
情報通信の技術の進歩により、この100年間で、情報の伝達手段については大きく変化している。ここでは、関東大震災以降これまでの情報の伝達手段の変遷を見ながら、現代の情報入手の手段が更にどのように変化しているかについて述べる。
(情報伝達手段の不存在により、関東大震災の被害の把握が遅れる)
我が国において、リアルタイムで情報を不特定多数の人に配信する初めての伝達手段となるラジオ放送が開始されたのは、関東大震災後の大正14年(1925年)であった。すなわち、関東大震災が発生した際には、まだこうした媒体は存在しておらず、被害の状況を正確に把握することや、被災者に向けた情報発信は困難であった。また、リアルタイムではないにしてもマスコミュニケーションの媒体として存在していた新聞も、震災により新聞社が大きな被害を受けたことから、すぐに情報を発信することができなかった。
(その後、情報伝達の手段は大きく変化)
大正14年(1925年)のラジオ放送開始以降、戦後間もない時期にかけての30年余り、ラジオの普及率は大きく伸びていく。その後、ラジオに代わる媒体として登場するテレビの本放送が開始されたのが、昭和28年(1953年)である。伊勢湾台風が発生した昭和34年(1959年)は、ラジオの普及率が9割に達し、また白黒テレビの受信契約数が伸び始めた頃でもある。その後、カラーテレビが主流となり、平成7年(1995年)の阪神・淡路大震災では、多くの人がテレビの映像により、被害の状況を知ることとなった。加えて、その後インターネットの利用が広く普及するようになり、平成23年(2011年)の東日本大震災では、インターネットやSNSを使った情報発信も行われ、情報の発信や入手は容易になっている(図表2-16)。
(他方、世代による情報入手手段には大きな違い)
世論調査において、防災に関して活用したい情報入手手段について質問したところ、近年はテレビという回答が最も多くなっており、平成29年(2017年)に実施した世論調査においても、全ての世代においてテレビと回答した人の割合が最も高かった。他方、令和4年(2022年)に実施した調査では、調査方法がそれまでと異なるため過去の結果との単純な比較はできないが、引き続きテレビと回答とした人の割合が81.7%と最も高かった。一方で、次のラジオ(48.3%)に続き、「Twitter、LINE、FacebookなどのSNSの情報」も36.9%と高かった。これを世代別にみると、18~29歳では、テレビ(73.8%)よりもSNSの情報(76.6%)の方がより高く、30~39歳では、SNSの情報(70.9%)はテレビ(71.4%)とほぼ同程度の高さとなるなど若い世代におけるSNS情報の活用が見てとれる。他方、年齢層が上がるにつれて、テレビと回答した人の割合が高まり、70歳以上では、その割合が91.9%に上っており、世代によって情報の入手手段も大きく変化していることが分かる(図表2-17)。
このように、誰でも簡単に発信したり、情報を入手できる便利なツールであるSNSは、若い世代の主たる情報入手手段として活用されている。災害発生時には、被害の状況を迅速かつ正確に把握することが重要であることから、今後ともその特性を活かして活用していくことが期待される。他方、SNSは、意図的に、あるいは真偽不明のままに誤った情報が発信されるおそれがあるという課題も抱えている。災害時においては、このようなデマや誤情報による社会的混乱を防止するとともに、一人一人が注意しながら活用していくことが必要である。