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平成26年版 防災白書|第1部 第1章 第3節 3-2 災害発生時の対応及びそれへの備え


3-2 災害発生時の対応及びそれへの備え

災害発生時においては、発災直後の情報の収集・連絡、活動体制の確立と並行して、人命の救助・救急、医療、消火等の初動の応急対策活動を迅速かつ的確に講ずることが求められる。

災害応急対策は、「災害対策基本法」上も、一次的には基礎的な地方公共団体である市町村において災害対策本部を設置して対応することとなる。風水害、津波、火山の噴火のような場合であって発生が予測できるときは、市町村長が避難勧告や避難指示を発令して災害に備えることとなる。

また、地震のように突発的に災害が発生した場合には、直ちに、被害の把握、人命救助等の初動の応急対策活動を実施するとともに、災害の状況に応じて、避難所の開設、水・食料等の確保、応急仮設住宅の建設等の応急対策活動を実施することとなる。

これらの活動に対して、災害の状況に応じて、地方公共団体間の相互応援協定等に基づく応援がなされるだけでなく、国、地方公共団体、公共機関等がそれぞれ相互に密接な連携のもとに協力して実施することとなる。

災害応急対策活動を実施するに当たっては、以下のような体制を国又は地方公共団体で整備している。

(1)緊急事態における初動対応

応急対策を講ずる上で最も重要となる情報収集・連絡体制の確立に関しては、官邸の内閣情報集約センターが窓口となり、24時間体制で情報の収集・伝達等の対応に当たることとし、関係省庁における情報の共有化を図っている。

大規模災害や社会的影響の大きい災害が発生した場合、緊急参集チームが官邸危機管理センターに緊急参集し、政府としての初動措置に関する情報の集約等を行うこととしている。

また、内閣府においては、被害規模の早期把握に関して、地震規模により異なるものの地震発生後概ね10分で被害を推計する「地震防災情報システム(DIS)」を整備し稼働させている。一方、被害規模の早期把握のため、各省庁はそれぞれの立場において現地の関係者からの情報を集約するほか、警察庁、消防庁、国土交通省、海上保安庁、防衛省においては、航空機(ヘリコプター等)、船舶や各種通信手段の活用等により情報収集を行うこととしている。

発生した災害の規模に応じて、関係省庁間での情報共有、対策の調整を行うために、関係省庁災害対策会議を開催するほか、大規模な被害が生じている場合には、内閣府特命担当大臣(防災)を本部長とする非常災害対策本部を、著しく異常かつ激甚な被害が発生していると認められる場合には、内閣総理大臣を本部長とする緊急災害対策本部を設置することができる。なお、東日本大震災を踏まえて、効率的な応急対策を実施するため、政府は情報の収集・分析や被災者の生活環境の改善に係る総合調整等の機能を充実させるとともに、併せて人員も増加し、緊急災害対策本部の体制を強化した。

さらに、被災地のより詳しい状況把握と的確な災害応急対策を講ずるため、状況により、内閣府特命担当大臣(防災)、内閣府副大臣、又は内閣府大臣政務官を団長とし、関係省庁の要員で構成する政府調査団を派遣することとしている。

また、観光庁においては、地震・津波等の災害時における訪日外国人旅行者への初動対応体制を構築すべく、平成25年10月、「災害時における訪日外国人旅行者への情報提供のあり方に関するWG」を設置し、宿泊事業者や地方自治体、外国人等の意見を聴きながら、宿泊施設・観光施設における訪日外国人旅行者への対応マニュアルの作成、IT(アプリ)を活用した訪日外国人旅行者への情報提供システムの整備、地方自治体が訪日外国人旅行者への対応を地域防災計画等に盛り込むための指針の作成等を実施した。

台風第26号の政府調査団長として被災自治体と意見交換を行う古屋内閣府特命担当大臣(防災)台風第26号の政府調査団長として被災自治体と意見交換を行う古屋内閣府特命担当大臣(防災)
(2)避難勧告ガイドライン

内閣府では、平成17年に策定された「避難勧告等の判断・伝達マニュアル作成ガイドライン」について、新たな防災情報が発表されるようになったことやこれまでの災害の教訓を踏まえて、学識経験者や地方公共団体、国の関係機関の意見を聞きながら検討を進め、改定作業を行い、全面的な見直しを完了させ、平成26年4月、「避難勧告等の判断・伝達マニュアル作成ガイドライン(案)」として都道府県を通じて市町村に通知し、避難勧告等の判断基準等について見直し又は設定を行うよう依頼した。また、都道府県、国の関係機関にも、市町村の見直し等に際して積極的な助言を依頼した(図表1-1-18)。

図表1-1-18 避難勧告等の判断・伝達マニュアル作成ガイドライン(案)の概要図表1-1-18 避難勧告等の判断・伝達マニュアル作成ガイドライン(案)の概要

このガイドライン(案)では、避難勧告等の判断基準を具体的な雨量や水位等を基準として設定することでわかりやすくするとともに、市町村が発令する避難勧告等は空振りをおそれず早めに出すこととしている。今後は、ガイドライン(案)の主旨を市町村にしっかりと認識していただくよう、周知・徹底を図り、発令基準の見直しや策定が進むよう、関係機関が一体となって支援していくこととしている。

(3)救急・救助体制

地方公共団体の対応能力を超えるような大規模災害の場合、警察庁、消防庁、海上保安庁及び自衛隊の実動部隊を広域的に派遣し、救急・救助活動を行う。

警察庁においては、東日本大震災を踏まえ、大規模災害発生時に被災地等において活動する部隊を拡充し、即応部隊と一般部隊からなる警察災害派遣隊(即応部隊規模:約1万人(広域緊急援助隊警備部隊約2,600人、同交通部隊約1,500人、同刑事部隊約1,500人、広域警察航空隊約500人、機動警察通信隊約1,200人、緊急災害警備隊約3,000人))を編成した。

消防庁においては、大規模な災害の際に全国の消防機関が相互に出動し効果的な消防応援活動を行うための部隊である緊急消防援助隊(平成26年4月1日現在の登録部隊数4,694隊(消火小隊1,649隊、救助小隊423隊、救急小隊1,057隊他))を的確かつ迅速に出動可能としている。また、被災地の消防の応援を行う体制を構築するため、緊急消防援助隊の編成及び資機材の充実強化を図っている。

また、海上保安庁においては、海上における災害に係る救助・救急活動を行うこととしており、さらに可能な場合は、必要に応じ、被災地方公共団体の活動を支援することとしている。

さらに、防衛省・自衛隊においては、都道府県知事等の要請に基づく災害派遣により、救出・救助等の災害応急対策活動を行うこととしている。

なお、平成25年度の自衛隊の災害派遣は556件(救急患者の搬送件数も含む。)に上り、延べ約89,058人の人員が派遣された(図表1-1-19)。

図表1-1-19 実動部隊の派遣体制図表1-1-19 実動部隊の派遣体制
(4)広域医療搬送等

<1> 広域医療搬送の目的と概要

広域医療搬送は、重傷者のうち、被災地内での治療が困難であって、被災地外の医療施設において緊急に手術や処置等を行うことにより、生命・機能の予後改善が十分期待され、かつ搬送中に生命の危険の少ない病態の患者を、被災地外の医療施設まで迅速に搬送し治療することを目的としている。

広域医療搬送の概要は、i.地震発生後速やかに被災地外の拠点に参集した災害派遣医療チーム(DMAT)が、航空機等により被災地内の航空搬送拠点へ移動、ii.被災地内の航空搬送拠点に到着したDMATの一部は、被災地内の災害拠点病院等で広域医療搬送対象患者を選出(トリアージ)し、被災地内航空搬送拠点まで搬送、iii.航空搬送拠点臨時医療施設(SCU)にて、搬送した患者の広域搬送の順位を決定するための再トリアージ及び必要な追加医療処置を実施、iv.搬送順位にしたがって、被災地外の航空搬送拠点へ航空搬送し、航空搬送拠点から救急車等により被災地外の医療施設へ搬送して治療、という流れになっている。

SCU内で処置を行うDMAT(平成25年9月1日広域医療搬送実動訓練)SCU内で処置を行うDMAT(平成25年9月1日広域医療搬送実動訓練)
自衛隊機へ患者を搬送するDMAT(平成25年9月1日広域医療搬送実動訓練)自衛隊機へ患者を搬送するDMAT(平成25年9月1日広域医療搬送実動訓練)

<2> 広域医療搬送計画

大規模災害発生後、速やかに広域医療搬送を実施できるよう、事前計画を策定している。現状においては、「東海地震応急対策活動要領」に基づく具体的な活動内容に係る計画、「東南海・南海地震応急対策活動要領」に基づく具体的な活動内容に係る計画及び「首都直下地震応急対策活動要領」に基づく具体的な活動内容に係る計画における広域医療搬送計画が策定されている。

また、広域医療搬送の体制等に関する検討を関係省庁等が連携して行っており、その結果は図上訓練、総合防災訓練等を活用して検証し、改善に努めている。

図表1-1-20 広域医療搬送概要図図表1-1-20 広域医療搬送概要図

<3> 人工透析の提供体制の確保等

災害時における人工透析の提供体制の確保等については、厚生労働省において、「厚生労働省防災業務計画」(平成13年2月14日厚生労働省発総第11号)に定めるとともに、都道府県及び公益社団法人日本透析医会に対し、人工透析の提供体制の確保を図るよう要請してきている。今後も、都道府県及び公益社団法人日本透析医会と連携して、大規模な災害発生時にも対処できる人工透析の提供体制の確立に向けた取組を行う。

<4> 海からのアプローチによる医療機能提供の検討

大規模・広域災害に備え、陸上の医療機能を補完し、災害時の医療機能の拡充と多様化を図るため、海からのアプローチによる医療機能の提供について、その可能性と課題を明らかにするため、内閣府等において既存船舶を活用した実証訓練を行っている。

平成25年度には、海上自衛隊輸送艦を活用し、船舶への患者搬送、船内への可搬式の医療資機材の搭載、展開等の訓練を行い、平成26年度は、民間船舶を活用した実証訓練を行うこととしている。

(5)広域的な応援体制

地方公共団体においては、あらかじめ関係地方公共団体により締結された広域応援協定等に基づき速やかに応援体制を整えることとしている。また、必要に応じて、被災市町村は他の市町村に対して、被災都道府県は他の都道府県に対して応援を求めることができる。さらに、平成24年及び25年の「災害対策基本法」の改正では、大規模広域災害が発生した場合に、地方公共団体同士の応援のみでは、的確かつ円滑な災害応急対策が実施されないような事態も想定し、被災都道府県が国に対して、他の都道府県が被災都道府県や被災市町村を応援することを求めるよう求めることができること、被災都道府県が国に対して、災害応急対策の応援を求めることができること、さらに、被災地方公共団体が事務を行うことが困難な状況においては、直ちに行わなければ、住民の生命、財産等に重大な影響を与えるような特に急を要する重要な応急措置を、国が代行しなければならないこととした。

なお、国の応援としては、国土交通省において、TEC-FORCE(緊急災害対策派遣隊、約6,600人規模)や土砂災害専門家の活動計画を確立し、大規模自然災害が発生し、又は発生するおそれがある場合において、被災地方公共団体等が行う、被災状況の迅速な把握、被害の発生及び拡大の防止、被災地の早期復旧等、災害応急対策に対する技術的な支援を行うこととしている。

平成25年度は梅雨期における大雨等、被災地域へ延べ6,150人・日の隊員を派遣し、的確な被災地支援活動を行った。

(6)円滑な物資供給体制の構築に向けた取組

<1> 大規模災害時に迅速な道路啓開を可能とする体制構築に向けた取組

平成23年3月11日に発生した東日本大震災により、東日本の太平洋岸を中心に津波が襲い、大きな被災が発生した。こうした被災地域に、いち早く救助部隊を派遣するため、道路の段差等を応急復旧し、ガレキ等を除去することにより、救援ルートを切りひらく道路啓開が行われた。被災地外からの広域的な支援を支える東北自動車道、国道4号等の広域幹線道路については発災後1日で、被災地までの直接の救援ルートは発災後7日で概ね道路啓開を完了させ、その後の復旧・復興活動を支えた。

現在、首都直下地震や南海トラフ地震等の大規模災害が想定される地域においても、広範囲の被災が想定されているとともに、災害発生時には救急・救命の観点から迅速な道路啓開が必要とされており、その体制構築に向けた取組が行われている。

その際、災害発生時に迅速な道路啓開を行うため、平素より、

  • 啓開すべきルート計画や道路管理者間の情報共有・応援体制整備
  • 人員・資機材確保のため、民間企業等との災害協定の充実や応急復旧資機材の備蓄
  • これらが迅速に機能するかを確認するため、訓練実施と計画へのフィードバック
を行い、来るべき災害に備えることとしている。

また、迅速な道路啓開を行うための法制度として、平成25年6月に「道路法」の改正を行い、道路管理者間の協議会制度、民間団体等と道路管理者との協定制度、防災上重要な道路における物件等の無電柱化に向けた占用禁止等に関する規定などを追加している。

<2> 緊急物資輸送のための航路啓開体制の構築に向けた取組

平成23年3月11日に発生した東日本大震災による津波により、コンテナ、材木、車両、建築物等が海上に流出し、航路を塞いだことで、緊急物資船を輸送する船舶の航行が困難となった。このため、海上輸送による大量の救援物資の受け入れを行うべく、船舶を接岸できるように海面浮遊物除去、航路内の支障物を揚収する航路啓開を実施した。速やかな航路啓開の実施により、3月15日に釜石港、3月16日に小名浜港、3月17日に宮古港、3月18日に仙台塩釜港(仙台港区)、3月19日に八戸港、相馬港、3月20日に久慈港、3月21日に仙台塩釜港(塩釜港区)、3月22日に大船渡港、3月23日に仙台塩釜港(石巻港区)の一部の岸壁が利用可能(船舶の喫水制限、上載荷重の制限等の利用制限のある岸壁を含む)となり、緊急物資や燃料油等の搬入が可能となった。特に仙台塩釜港においては、3月21日に第1船のオイルタンカーが入港し、被災地の燃料不足の解消に大きく貢献した。

東日本大震災の経験を踏まえ、非常災害時における港湾機能の維持に資するよう、平成25年6月に「港湾法」を一部改正し、三大湾において緊急確保航路を指定するとともに、航路啓開手順等の検討を行う国・港湾管理者からなる港湾広域防災協議会を設置した。

<3> 災害に強い物流システム構築に向けた取組

東日本大震災の支援物資物流においては、早期に物流事業者・物流事業者団体が参加していなかったこと等により、円滑な輸送や物資集積拠点の運営等に支障が生じた。そのような教訓を踏まえ、国土交通省では、平成23年度に、有識者、物流事業者・団体から構成されるアドバイザリー会議を開催し、支援物資物流に係る課題について整理・分析し、支援物資物流システムの基本的な考え方について報告書を取りまとめ公表した。

また、この基本的な考え方を踏まえ、支援物資物流において、重要な役割を担う広域的な支援物資の集積拠点を中心とした、円滑な支援物資物流の確保に向けて具体的な議論を行うため、首都直下地震、東海地震・東南海・南海地震といった大規模地震の発生が懸念されている地域を中心に、地方ブロック毎に国、地方公共団体、物流事業者等の関係者が参画する「災害に強い物流システムの構築に関する協議会」(平成23年12月より順次開催)等を設置し、発災時に取り組むべき事項や各関係者の役割分担の整理、地方公共団体と物流事業者・事業者団体の災害時における協力協定の締結に向けた調整、広域的な支援物資の集積拠点として活用する民間物流施設(以下「民間物資拠点」という)の選定及び民間物資拠点に対する非常用電源設備等の導入支援、平時における訓練の実施等といった、現場における体制づくりに関する取組を行っている。

平成25年度においては、引き続き地方ブロックの協議会の開催や、支援物資物流についてより現場レベルで検討することを目的とした関係機関の担当者等から成る「作業部会、連絡会」等を都道府県単位で開催し、災害に強い物流システムに関する取組を推進した。また、広域物資拠点の開設等に関して、関係者間で事前に準備しておくべきことや、災害時のオペレーション等について取りまとめた「広域物資拠点開設・運営ハンドブック(第一版)」を作成・公表するとともに、地方自治体の災害担当職員等を対象とした「災害物流研修」の開催、支援物資物流に関する広域的な訓練の実施等の新たな取組も行った。なお、主な取組成果の現状は以下のとおり(図表1-1-21~23)。

図表1-1-21 地方ブロック別民間物資拠点の拠点数図表1-1-21 地方ブロック別民間物資拠点の拠点数
図表1-1-22 民間物資拠点に対する非常用電源設備等の導入支援件数図表1-1-22 民間物資拠点に対する非常用電源設備等の導入支援件数
図表1-1-23 都道府県と物流事業者団体間での協力協定に関する進捗状況(震災前と平成26年3月時点)図表1-1-23 都道府県と物流事業者団体間での協力協定に関する進捗状況(震災前と平成26年3月時点)

<4> 食料等の供給における震災応急業務体制の整備

農林水産省においては、東日本大震災の教訓等を踏まえ、災害発生時における応急用食料や物資の支援・供給に関する組織体制や具体的手順等を整理した省内マニュアルを作成し、震災応急業務の体制整備を行った。

今後とも、定期的に訓練等を実施するとともに、マニュアルの点検・見直しを行っていくこととしている。

<5> 生活必需物資等の供給における震災応急業務体制の見直し

経済産業省においては、今後、発生が予想される首都直下型地震や、南海トラフ地震による被害想定を踏まえ、災害時に必要とされる生活必需物資リストの整理を行い、関係業界団体等との連絡体制の見直しを行った。

また、災害時の物資調達を円滑に実施できるよう、主要業界団体とのヒアリングを通じて、物資調達業務の概要や、調達時に使用する様式の共有等を行い、関係業界との連携強化を進めた。平成26年2月には、関東甲信地方を中心とする雪害の対応として、生活必需品の物資調達を実施。被災自治体からの要望に対し、現地対策本部や関係業界団体等と連携し、灯油缶(100缶)、融雪剤(700袋)の調達・輸送を行った。

<6> 災害に強い石油・LPガスサプライチェーンの構築に向けた取組

経済産業省においては、東日本大震災の教訓を踏まえ、大規模災害が発生した場合においても、石油・LPガスの供給を維持・早期回復させることを目的とした対策に取り組んだ。

ハード面の強化に関する取組としては、製油所・サービスステーション(SS)をはじめとする石油供給拠点の強化に対する支援や国家石油製品備蓄の増強を行った。

具体的には、製油所においては、設備の耐震強化やタンクローリー出荷設備、桟橋などの入出荷設備の増強、SSにおいては、地下タンクの入換え・大型化や自家発電機の設置等を支援するとともに、平成24年度に改正した「石油備蓄法」に基づき指定した中核SSにおける製品在庫の確保について、国と自治体の連携による支援を措置した。LPガスにおいては、輸入基地や二次基地への移動式電源車の配備、災害時に地域のLPガス供給を図るための中核充てん所の整備や、避難所となりうる需要家への燃料備蓄の支援等を実施した。国家石油製品備蓄の増強については、国内消費量の約4日分の石油製品(ガソリン、灯油、軽油、A重油)の備蓄を平成25年度に完了させた。

ソフト面の取組としては、「石油備蓄法」に基づき石油会社が策定した「災害時石油供給連携計画」に関する訓練を、平成25年6月に関係省庁や石油業界、地方自治体と共同で実施した。

平成26年度以降も引き続き、石油・LPガスのサプライチェーンの災害対応能力強化や、災害時石油供給連携計画に基づく訓練に取り組むとともに災害時の協力体制等について、石油業界・関係省庁と検討していくこととしている。

(7)情報収集・伝達体制

大規模な災害が発生した際、政府として迅速な災害応急対策がとれるよう、気象庁からの地震・津波情報、関係省庁等からのヘリコプターにより撮影された被災画像・映像、指定公共機関、地方公共団体、その他防災関係機関からの被害情報等、災害に関する情報を総合的に収集し被害規模を把握するとともに、これらの情報を直ちに総理大臣官邸、指定行政機関等へ伝達するためのシステムが構築されている。

まず、地震の情報については、気象庁は、全国約660地点に震度計と約300地点に地震計を設置してオンラインで地震の観測データを収集し、その他の機関の観測データと合わせ地震活動等総合監視システム(EPOS)により処理・解析して、緊急地震速報や地震情報を発表している。

また、消防庁は、震度情報ネットワークシステム整備事業等により全国の都道府県、市町村の約2,900地点に設置した震度計等から観測される震度情報を即時に情報収集し、広域応援体制確立の迅速化等に利用している。

一方、独立行政法人防災科学技術研究所は、全国約1,900箇所に強震計、高感度地震計及び広帯域地震計を設置し、地震情報を通信ネットワークで収集・配信するための設備を整備しており、地震発生時には気象庁が行う緊急地震速報や震度情報の発表に活かされる等、初動対応等に活用されている。

次に、津波の情報については、気象庁は、全国の沿岸約80箇所に津波観測施設を設置しているほか、関係機関(国土交通省、海上保安庁、国土地理院、地方公共団体等)が設置している観測施設からのデータも活用し、全国の沿岸約170箇所で津波の監視を行っている。また、沖合の津波監視については、国土交通省が整備したGPS波浪計や、気象庁や関係機関(海洋研究開発機構、防災科学技術研究所)が設置したケーブル式海底津波計に加え、気象庁が新たに整備した3箇所のブイ式海底津波計と合わせて約50箇所の沖合観測施設からのデータを活用している。気象庁は、地震計のデータやこれらの津波の監視に用いているデータを基にEPOSにより処理・解析して、地震により日本沿岸に津波が到達するおそれがある場合や、津波を観測した場合には、大津波警報・津波警報・津波注意報、津波予報、津波情報を発表している。

この他、防災科学技術研究所や海洋研究開発機構では、緊急地震速報や津波警報の高度化に貢献するため、海底地震・津波観測網を整備し、観測の充実を行うこととしている。

雨量・風速等気象の情報については、気象庁は、地上の気象観測を行う地域気象観測システム(AMeDAS)、降水の強さ・風の三次元分布を観測する気象ドップラーレーダー、東アジア・西太平洋域の雲の分布・高度等を広く観測する静止気象衛星等の観測データを収集し、数値解析予報システムにより解析、予測等を行っている。

気象庁で解析・処理された情報は、気象庁本庁及び大阪管区気象台に設置された気象情報伝送処理システムを介して内閣府、警察庁、消防庁、海上保安庁、防衛省等の中央府省庁と共に、国土交通省地方整備局、地方公共団体に伝達されている。このうち、気象庁の発表する気象、津波等の警報は、都道府県、市町村や関係機関を通じ、地域住民に伝達されている。予想される現象が特に異常であるため重大な災害の起こるおそれが著しく大きい場合に発表することとして平成25年8月から運用を開始した特別警報については、市町村から住民への伝達がより確実に行われるようになっている。

また、国土交通省は、河川の水位、雨量、洪水予報、水防警報等の河川情報をリアルタイムに収集し、ウェブサイト「川の防災情報」や地上デジタル放送のデータ放送において、提供している。

なお、内閣府防災担当においては、平成26年2月の大雪対応を契機として、国民が必要とする災害情報を伝えるため、内閣府ホームページやツイッターによる情報発信に加え、新たに「内閣府防災担当フェイスブック」を開設し、道路開通などの交通情報や物資供給などの避難関連情報や社会福祉協議会等が発信する防災ボランティア情報等の発信を行うこととしている。

(8)防災無線通信網

防災関係機関では、災害応急対策や救助・救命等に関わる重要な通信を確保するために、専用無線通信網を整備している。これらの無線通信網は、電気通信事業者回線が途絶した場合であっても迅速かつ確実に災害情報を伝達し、また、商用電源が停電した場合であっても予備電源等により機能を維持することを目指して整備がなされている。最近は、映像や電子データの伝送を可能とするため、通信回線のデジタル化が進められている。

我が国の防災無線網には、中央防災無線網、消防防災無線網、都道府県防災行政無線網、市町村防災行政無線網等がある(図表1-1-24)。

図表1-1-24 防災関係通信網の概念図図表1-1-24 防災関係通信網の概念図

<1> 中央防災無線網

中央防災無線網は、大規模な災害が発生した場合においても、政府による災害情報の収集・伝達を確実に行うことを目的として整備されており、総理大臣官邸や指定行政機関等(30機関)、指定公共機関(62機関(整備中を含む))及び地方公共団体(47都道府県5政令市)とのネットワークに加えて、災害発生時には現地災害対策本部等との臨時ネットワークを構築することができる(図表1-1-25)。

中央防災無線網では、電話、ファクシミリ、災害映像伝送、総合防災情報システム、ファイルサーバの利用が可能である。

中央防災無線網を構成する地上系固定通信回線、衛星通信回線、移動無線回線の概略は以下のとおりである。

  • 地上系固定通信回線

    首都圏では、マイクロ波無線による大容量の固定通信回線を構築している。さらに、国土交通省の水防道路用通信回線網(マイクロ波無線)と中央防災無線網との相互接続及び設備共用により、47都道府県と総理大臣官邸及び防災行政機関との間の通信回線を確保している。

  • 衛星通信回線

    東京都心から離れたところにある指定公共機関等については、衛星により通信回線を構築している。また、首都直下地震に対する地上系固定通信回線のバックアップとして、首都圏の指定行政機関や指定公共機関等に衛星通信装置を配備している。加えて、災害発生時に現地災害対策本部等との臨時ネットワークを構築するために、可搬型の衛星通信装置を全国20拠点に配備している。

  • 移動無線回線

    電気通信事業者の通信回線が、災害や輻輳等により使用できない状況下においても、閣僚や災害対策要員等との連絡手段を確保するために、移動無線電話を整備している。移動無線電話は、首都圏4箇所に基地局を設置し、公用車及び閣僚や災害対策要員等の自宅に移動無線電話装置を配備している。

図表1-1-25 中央防災無線網の概念図図表1-1-25 中央防災無線網の概念図

<2> 消防防災無線網

消防防災無線網は、消防庁と都道府県との間を結ぶネットワークで、地上系回線及び衛星系回線で構成されている(図表1-1-26)。

  • 地上系回線

    国土交通省の無線回線を利用して通信回線を構成しており、消防庁から全都道府県に対し電話、ファクシミリによる一斉伝達を行うほか、災害情報の収集・伝達に活用されている。

  • 衛星系回線(衛星通信ネットワーク)

    消防庁と全都道府県との間を結んでおり、通常の音声通信のほか、一斉伝達、データ通信、映像伝送等が可能で、地上系を補完する無線通信網として位置づけられている。

図表1-1-26 消防防災無線の概念図図表1-1-26 消防防災無線の概念図

<3> 都道府県防災行政無線網

都道府県防災行政無線網は、都道府県が災害情報の収集・伝達を行うために、都道府県とその出先機関、市町村、防災関係機関等との間を結ぶネットワークで、各機関によって地上系又は衛星系(衛星通信ネットワーク)の回線により構成されている(図表1-1-27)。

図表1-1-27 都道府県防災行政無線の概念図図表1-1-27 都道府県防災行政無線の概念図

<4> 市町村防災行政無線網

市町村防災行政無線網は、市町村が災害情報を収集し、また、地域住民に対し災害情報を周知するために整備している通信網である。市町村の庁舎や学校、病院等の防災関係・生活関連機関、車両等の間を結ぶ通信網と、市町村庁舎から屋外拡声子局や家庭内の戸別受信機に対し情報を周知するための同報系通信網によって構成されており、豪雨等の災害発生時における住民への情報伝達手段として活用されている(図表1-1-28)。

また、消防庁においては、弾道ミサイル攻撃に関する情報や、津波警報等の緊急情報を、人工衛星等を通じて市町村に瞬時に伝達し、同報系の防災行政無線等にも接続可能な全国瞬時警報システム(J-ALERT)を整備・運用している。

図表1-1-28 市町村防災行政無線の概念図図表1-1-28 市町村防災行政無線の概念図

<5> 防災相互通信用無線

防災相互通信用無線は、地震災害、コンビナート災害等の大規模災害に備え、災害現場において警察庁、消防庁、国土交通省、海上保安庁等の各防災関係機関相互間で、無線通信により直接、被害情報等を迅速に交換し、防災活動を円滑に進めることを目的として整備されたもので、国、地方公共団体、電力会社、鉄道会社等で導入されている。

<6> その他

総務省においては、地方公共団体等における被害情報の収集や災害応急対策の実施に必要な通信手段の不足に備え、被災地方公共団体等から災害対策用移動通信機器の貸出要請があった際に、東京、大阪等の各拠点から、移動無線機を速やかに搬出できるよう体制を整備している。

(9)防災情報の活用

収集・伝達された防災情報は、防災関係機関が密に連携し災害対応に取り組むため広く共有される必要がある。内閣府では、災害発生時に被災状況を早期に把握し、迅速・的確な意志決定を支援するため、防災関係機関間で防災情報を地理空間情報として共有する「総合防災情報システム」の整備を進めている。

総合防災情報システムにおいて取り扱う防災情報は大きく3つに分類される。

一つ目は、施設情報や基盤地図情報、災害リスク情報等、主に予め登録された情報である。これには、国土地理院が整備する電子国土基本図や「だいち」により撮影された平常時の衛星画像等の背景地図、病院・避難施設・学校等の施設情報や危険物施設等の重要施設のほか、防災計画等に定められている緊急輸送ルートやヘリポート、活動拠点等がある。

二つ目は、他機関から自動的に受信する観測情報である。これには、気象庁から配信される気象情報、地震・津波情報、国土交通省から配信される河川情報などがある。

三つ目は、災害に応じて収集・公表される情報を入力した防災情報等である。これには、関係省庁が取りまとめる被害報告、水道や通信等の被災状況、交通インフラの情報、被災地の衛星画像などがある。

これらの情報は地震発災直後には緊急災害対策本部設置の判断などに活用されるほか、応急・復旧期には関係機関により報告される被害報や活動状況等を地図上に重畳し、関係省庁会議等において情報共有される。

大規模災害の発生時には、行政の機能が麻痺し、被災状況が迅速に把握できない事態が想定されている。このような事態を回避するため、行政が保有する情報に加え民間事業者が保有するビッグデータの活用が期待されている。ビッグデータの活用の一環として、実際に自動車が走行した位置情報等から作成するプローブ情報の利用を検討している。プローブ情報は通行可能な道路の把握に有効であり、災害発生後の緊急車両の通行確保やインフラ・ライフラインの早期復旧において重要な情報であることから、これらの情報の収集に取り組むとともに、総合防災情報システムにも取り込み、地理空間(G空間)情報を活用して情報の共有を行えるよう、関係民間団体と協議を行っている。

図表1-1-29 総合防災情報システムにおいて共有される情報のイメージ図表1-1-29 総合防災情報システムにおいて共有される情報のイメージ
(10)災害対応の標準化

大規模広域災害においては、国及び地方公共団体のみならず、民間団体等様々な組織が迅速かつ効果的に連携して対応することが必要である。このため、災害対応に係る各種の業務の標準化を可能な限り進めるよう、有識者による検討会及び関係省庁からなるワーキンググループ等により検討する。


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内閣府政策統括官(防災担当)

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