(2)自然災害における「緊急事態」等への対処


(2)自然災害における「緊急事態」等への対処

東日本大震災において,「災害対策基本法」制定以来初めて緊急災害対策本部が設置され,その下に様々な対策が実施されたが,本部が有効に機能したかどうか,今後発生が懸念される大規模災害に備えるためにも,十分な総括がされなければならない。更には,緊急災害対策本部の在り方も含めて,自然災害における「緊急事態」への対応の在り方全般についての検討も必要である。

<1> 大規模災害時における緊急災害対策本部機能の強化

内閣府では,東日本大震災における初動対応や政府の実施した各種災害応急対策について,課題・教訓のとりまとめを行っているが,今後,甚大な災害が発生した際には,初動期には,適時適切な被災者支援を実施するために,緊急災害対策本部事務局(以下「事務局」という。)の機能の強化を図るべきである。

具体的には,事務局幹事会において迅速かつハイレベルな意志決定が行われるための構成メンバーの見直し,事務局の円滑な立ち上げの方策,東日本大震災時に設置された「被災者生活支援特別対策本部(後の「被災者生活支援チーム」)」の体制を踏まえた事務局体制の充実・強化,内閣府の役割等について検討し,引き続き,大規模災害発生時の災害応急対策に係る体制の強化を図ることが必要である。

<2> 自然災害における「緊急事態」への対応の在り方

東日本大震災の経験を踏まえると,今後は,現行法の基本的枠組みの見直しをしなければ適切かつ十分な対応が困難な災害が発生しうることを想定し,対策を確立することが急務である。

特に,自然災害における「緊急事態」において災害応急対策を行うに当たっては,一分一秒を争う必要があり,平時において十分な法的備えを行っておくことが,国家存立の基本として必要である。

その際,東日本大震災においては,「災害対策基本法」に基づく「災害緊急事態」の布告が発令されなかったが,その仕組みの活用の視点も重要である。

このような,言わば自然災害における「緊急事態」に関する制度的枠組みの構築に当たっては,まず,どのような自然災害をその対象とするかの整理が必要である。

この場合,被害の甚大さの程度,経済社会的影響度の大きさ,国家としての存立に必要な業務の困難性等が尺度となりうると考えられるが,この点について,自然災害における「緊急事態」と認定した場合の法的効果との関連で,その範囲を明らかにする必要がある。

次に,法的効果に関する論点として,どのような範囲で捉えるかについては,

・災害時における臨時の組織としてどのようなものが望ましいか

・国・都道府県・市町村間の事務,権限及び財政負担の在り方

・緊急時における新たな制限や平常時における一般制度の特例措置として,どのようなものを想定するか

・緊急時における法令等制定機能をどのように考えるか

等が挙げられる。

これらは,いずれも現在の「災害対策基本法」を中心として災害対策法制の基本的な考え方に大きな変更を迫るものであると同時に,緊急事態とは言え,国民の権利・義務の在り方とも絡む重要な問題をはらんでおり,我が国の法体系全体の中での整合性と言った観点からの検討も必要である。

以上,多岐にわたって重要な論点があるが,関係省庁,地方公共団体等とともに,十分に議論を行い,巨大な自然災害の発生により「緊急事態」が起きた時に備えた,制度,体制,仕組みを早期に構築すべきである。


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