序章 3 災害リスクの変化と国民意識



3 災害リスクの変化と国民意識

内閣府では,インターネットを利用した国民意識調査(以下「意識調査」という。)を平成21年2月28日から3月4日にかけて実施した。サンプル数は全国の20歳以上の男女1,500人であり,内訳は図表10のとおりである。地域(全国を10の地域に区分)・性・年代(20代〜70代以上)別人口構成比に沿って割り付けを実施し,各内訳で目標数に達するまで募集を行った。人口データは,平成19年10月1日現在推計人口(総務省統計局平成20年4月15日公表)を利用した。

図表10 意識調査サンプル内訳 意識調査サンプル内訳の図表
(1)災害リスクの変化についての認識
〜災害リスクが高まっていると考えている人は6割以上,75%以上が将来のリスク高まりを予想。

意識調査では,最近の災害リスクの変化についての認識を尋ねるとともに,将来的な災害リスク 11 の変化についての認識を尋ねた。また,なぜそのように思うのか理由についても回答を求めた。

結果を見ると,最近の災害リスクの変化についての認識として,「高まっている」「どちらかというと高まっている」の合計は62%となったのに対し,将来の災害リスクの変化について「高まると思う」「どちらかというと高まると思う」の合計は,更に高い76%となった。災害リスクが高まってきていると思う理由(複数回答)については,「近年の異常気象の頻繁化」を根拠に挙げる人が80%と最も高く,次いで「地域コミュニティの希薄化等による地域防災力の低下」38%,「高層ビルの林立,密集市街地などの都市化」29%と続いた。その理由については,「近年の異常気象の頻繁化」をあげる人が圧倒的に多く8割に達した。

図表11 災害リスクの認識,災害リスクが高まっていると思う理由 災害リスクの認識,災害リスクが高まっていると思う理由の図表
(2)災害発生時に役に立つ主体,役に立ってほしい主体
〜自然災害発生時に頼りになるのは家族,自分自身。しかし,具体の行動には必ずしも結びついていないのが実態。

次に,意識調査では自然災害発生時に実際に役立つと思うもの,役に立ってほしいものについて尋ねた(該当すると思うもの3つまで回答)。結果は,実際に役に立つと思うものとして,「家族」74%,「自分自身」64%,「近所の住民」43%と身近な存在を挙げる人が多かった。逆に,役に立ってほしいものについては,「行政」が74%となり,実際に役に立つと思うものとして「行政」を挙げたのが25%だったことと比べ,その差は大きなものとなっている。

家族や自分自身が災害発生時に役に立つと思っている人が多いが,実際に震災対策として講じている対策をみると,「携帯ラジオ,懐中電灯,医薬品などの準備」50%以外では,「家族間での連絡方法を決めている」は19%にとどまり,「近くの学校や公園など避難する場所,経路を決めている」も24%となっている。風水害対策をみても「家族間での連絡方法を決めている」は17%,「近くの学校や公民館など避難する場所,経路を決めている」も20%にとどまり,「ハザードマップなどにより,危険な場所を確認している」は9%に過ぎない。

災害発生時には自分自身や家族を頼るつもりでいるものの,必ずしも確実な手段が伴われていない実態が明らかになったといえる。

図表12 自然災害発生時に役立つもの,役に立つべきもの 自然災害発生時に役立つもの,役に立つべきものの図表
(3)地域の防災活動への関心,参加
〜地域の防災活動への関心には年齢差あり。しかし,条件が整えば参加したいという人は年齢問わず多い。

地域の防災活動に対する関心も尋ねたところでは,全体で見ると「非常に関心がある」「どちらかといえば関心がある」の合計は42%,「どちらかといえば関心がない」「まったく関心がない」の合計は50%と,後者の方が若干高い数字となった。しかし,この質問については,年齢層により回答傾向が分かれており,20代では「非常に関心がある」「どちらかといえば関心がある」の合計は29%にすぎないのに対し,年齢層が上がるにつれ関心は高まり,60代では52%,70代以上では59%が「非常に関心がある」若しくは「どちらかといえば関心がある」と回答している。

また,地域の防災活動への参加意向について尋ねたところ,「既に参加している」6%,「今後参加したい」8%,「条件が整えば参加したい」57%となり,実際に参加している人は少ないものの,潜在的に参加可能性のある人は過半数を超えることが明らかになった。

「条件が整えば参加したい」と回答した人を対象に,その条件を尋ねたところ,最も多かったのは「活動の曜日や時間が参加しやすいものであれば参加したい」が59%,次いで「活動内容や役割を選べれば参加したい」36%,「行政機関,自治会,ボランティア団体などから要請があれば参加したい」24%と続いた。なお,「活動の曜日や時間が参加しやすいものであれば参加したい」は年齢層が高くなるほど数字が低くなるのに対して,「活動内容や役割を選べれば参加したい」は年齢層が上がるにつれて数字が高くなり,70代以上では「活動内容や役割を選べれば参加したい」の回答が最も多くなっている。地域の防災活動への参加者を増やすためには,年齢層により優先させるものが変化していくことに留意した対応をとることが求められるといえる。

図表13 地域防災活動への関心 地域防災活動への関心の図表
図表14 地域防災活動への参加意向 地域防災活動への参加意向の図表
(4)行政に期待する防災活動
〜行政の防災活動への関心にも年齢差あり。

最後に,行政の防災活動への関心についても尋ねたところ,「非常に関心がある」「どちらかといえば関心がある」の合計は58%となり,34%の人は「どちらかといえば関心がない」「まったく関心がない」と回答した。この質問についても(3)の地域の防災活動への関心と同様に,年齢層により回答傾向が分かれており,20代では「非常に関心がある」「どちらかといえば関心がある」の合計は37%にすぎないのに対し,年齢層が上がるにつれ関心は高まり,60代では72%,70代以上では75%が「非常に関心がある」若しくは「どちらかといえば関心がある」と回答している。

また,併せて,行政に期待する具体的な防災活動を尋ねたところ,「水・食料などの備蓄」69%,「地域における防災体制の情報提供」59%,「迅速な救援活動を行う災害救助体制」58%などという結果となった。自然災害発生時に役に立ってほしいものとして74%の人が「行政」を挙げているものの,実際に役に立つと思うものとして「行政」を挙げたのは24%にとどまっており,行政に求められているニーズを的確に把握し,防災活動に取り組んでいくことが必要であると考えられる。

図表15 行政の防災活動への関心度 行政の防災活動への関心度の図表
図表16 行政に期待する防災活動 行政に期待する防災活動の図表

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