3−7 平成19年(2007年)能登半島地震



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3−7 平成19年(2007年)能登半島地震

(1) 災害の状況

平成19年3月25日9時41分,能登半島沖の深さ11kmでマグニチュード6.9の地震が発生し,石川県七尾市,輪島市,穴水町で震度6強,石川県志賀町,中能登町,能登町で震度6弱,石川県珠洲市で震度5強を観測したほか,北陸地方を中心に北海道から中国及び四国地方にかけて震度1以上を観測した。9時43分には,石川県の沿岸に津波注意報が発表され,同注意報が解除された11時30分までに石川県珠洲市長橋及び金沢で0.2mの津波が観測された。

この地震により,死者1名,負傷者336名,住家全壊609棟,住家半壊1,368棟,住家一部破損12,326棟の被害が発生したほか,合計で13人に避難勧告が出され,最大で2,627人が自主避難した。

土砂災害については,天然ダム3件,地すべり10件,がけ崩れ51件が発生した。

ライフライン関係においては,北陸,中部電力管内で延べ約160,000戸が停電となったほか,上水道については石川県,富山県内の13,328戸が断水した。また,電気通信関係では,石川県で221 回線の電話が不通となったほか,携帯電話基地局10局が停波した。

道路については,能登道路,能越自動車道,県管理道路等において落石や陥没等により通行規制が行われた。鉄道については,JR西日本七尾線及びのと鉄道七尾線で被害が発生し運休したほか,北陸地方のJR等の各線で点検のため運転を中止した。空港についても,能登空港の滑走路に被害が発生し,3月26日の8時まで閉鎖となった。

公共土木施設では,河川151か所,海岸10か所,砂防施設等18か所,道路(橋梁を含む)666か所,港湾35か所,下水道17か所,公園3か所に被害が発生した。

農林水産関係では,農地199か所,農業用施設等479か所,林地荒廃等29か所,林道施設等293か所,漁港施設等186か所等で被害が発生した(平成19年4月27日現在)。

文教施設では,国立学校施設5校,公立学校施設179校,私立学校施設32校,社会教育・体育,文化施設等155施設,文化財等16 件で被害が発生した。

社会福祉施設等では,高齢者関係施設32 施設,児童関係施設68 施設,障害者関係施設20 施設,その他社会福祉施設2 施設に被害が発生した。

医療施設関係では,4施設に被害が発生した。

(2) 国等の対応状況

地震発生後直ちに,関係省庁の局長級職員からなる緊急参集チームをはじめ,防災担当者が官邸危機管理センターに参集し,警察,消防,自衛隊,海上保安庁,国土交通省などのヘリコプターからの映像等により迅速な情報収集を行うとともに,内閣府の地震防災情報システム(DIS)を稼働させて,建物被害や人的被害などを推計し,概括的な被害規模の把握に努めた。内閣総理大臣からの「被害状況の確認と住民の安全確保に万全を期すように」との指示の下,政府一体となって初動対応に当たった。発災直後には,溝手防災担当大臣を団長とする政府調査団を現地に派遣,同日,輪島市役所内に政府現地連絡対策室を設置し,現地での情報収集や地元地方公共団体との連絡調整に当たった。

3月25日17時に,内閣府において災害対策関係省庁連絡会議を開催し,被害状況や各省庁の対応状況についての情報を共有するとともに,今後の対応を確認した。3月26日18時30分には,溝手防災担当大臣が出席し,内閣府において災害対策関係省庁連絡会議を開催し,被害状況や各省庁の対応状況についての情報を共有するとともに,次の4項目を確認した。①引き続き,被災公共団体と連携して被害状況の的確な把握に努めること,②被災者が1日も早く安心した生活に戻れるよう,災害時要援護者をはじめ,避難者等の支援対策に万全を期すこと,③道路や水道等のライフラインの応急対策や災害復旧に適切に対応すること,④その他被災者の支援,被災地の早期復旧・復興に向けて,被災公共団体からの要望等も的確に把握し,関係省庁の連携を密にしていくこと。さらに,3月30日17時にも,内閣府において災害対策関係省庁連絡会議を開催し,被害状況とこれまでの対応,地元からの要望事項及び各省庁における当面の課題と対応状況についての情報を共有するとともに,今後の対応についての申し合わせを行った。

4月13日には,安倍内閣総理大臣による現地視察を実施した。

適用日を3月25日として,石川県が七尾市,輪島市,珠洲市,志賀町,中能登町,穴水町及び能登町に対し,災害救助法を適用した。これに基づき石川県は仮設住宅334戸を建設することとした。

また,適用日を3月25日として,石川県が県内全域に対し,被災者生活再建支援法に基づく被災者生活再建支援金支給制度を適用した。

さらには,この災害について,「平成十九年能登半島地震による石川県鳳珠郡能登町等の区域に係る激甚災害及びこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令(平成19年4月20日閣議決定,4月25日公布・施行)」により激甚災害として指定し,公共土木施設災害復旧事業等に関する特別の財政援助等の措置を適用した。なお,指定にあたっては,公共土木関係及び農地等の措置について,査定見込額が明らかに現行の指定基準を超えると見込まれる場合には,中小企業関係の特例又は森林関係の措置と同一政令において,早期に指定を行えるよう局地激甚災害指定基準を改正し(平成19年4月19日中央防災会議決定),この災害に遡及適用した。

各府省の対応については,次のとおりである。

内閣官房は,3月25日9時45分,官邸対策室を設置した。

内閣府は,3月25日9時53分,災害対策室を設置し,関係機関から情報収集を行うとともに,官邸,関係省庁との情報連絡を行った。

警察庁は,3月25日9時45分,災害警備本部を設置し,関連情報の収集,関係機関との連絡調整を行うとともに,愛知,岐阜,福井及び新潟各県の警察広域緊急援助隊246名を石川県に派遣した。また,機動警察通信隊は,災害発生直後から警察通信の確保に当たり,官邸等へ現場映像の伝送等を実施した。

消防庁は,3月25日9時42分,災害対策本部を設置し,関係機関との連絡調整を行うとともに,石川県からの派遣要請を受け,京都府,福井県,滋賀県,富山県,東京都,大阪府,兵庫県の緊急消防援助隊87隊349名を石川県に派遣した。

海上保安庁は,3月25日9時45分,災害対策本部を設置し,巡視船艇・航空機により,被害状況調査及び沿岸状況調査を行った。

防衛省は,3月25日9時45分災害対策室を設置し,石川県知事からの災害派遣要請を受け,3月25日から4月8日までに,人員約2,730名,車両約1,050両,航空機約60機により,給食・給水支援,入浴支援等を実施した。

金融庁は,石川県銀行協会等に対し,貸出金の返済猶予等災害被災者の便宜を考慮した適宜的確な措置を講ずることを要請した。

総務省は,3月25日9時57分,緊急事態対策本部を設置した。また,3月28日以降,石川行政評価事務所内に震災特設行政相談所を設置するとともに,4月13日には石川県輪島市,4月25日には石川県穴水町において,特別総合行政相談所を開設した。さらに,4月12日,石川県内の3市4町に対し,6月上旬に定例交付すべき普通交付税の一部を繰上げて交付した。

法務省は,3月25日9時55分,災害情報連絡室を設置した。

文部科学省は,3月25日9時53分,災害情報連絡室を設置,同日13時,災害応急対策本部に格上げし,教育委員会等の関係機関から被害情報を収集するとともに,二次災害防止策等適切な対応をとるよう指示した。また,3月26日,地震調査研究推進本部の地震調査委員会が臨時会を開催し,地震活動及び地殻変動の総合的な評価を行った。

厚生労働省は,3月25日10時2分,災害対策本部を設置した。また,被災者の心理的な問題を把握し,適切な対応を行うため国立精神・神経センター精神保健研究所の専門医2名等を被災地に派遣した。

農林水産省は,3月25日10時,関係局庁連絡会議を設置した。また,被害農林漁業者等に対する資金の円滑な融通及び既貸付金の償還猶予等が図られるよう,関係金融機関に依頼した。さらに,農地・水路復旧支援室を輪島市に設置するとともに,農村災害復旧専門技術者制度を活用した技術支援を行った。

経済産業省は,3月25日10時30分,防災連絡会議を設置した。

資源エネルギー庁は,災害救助法適用市町村及び適用市町村に隣接する市町村において被災した需要家に対して,電気及びガス料金の支払期限の延長等の災害特別措置を認可した。

中小企業庁は,石川県内の政府系中小企業金融機関,信用保証協会,主要商工会議所,商工会連合会,中小企業基盤整備機構及び中部経済産業局に対し,災害に係る特別相談窓口設置を指示するとともに,政府系中小企業金融機関に災害復旧貸付の適用,政府系中小企業金融機関及び信用保証協会に既往債務の返済条件緩和等に関する企業の実情に応じた対応を指示した。

国土交通省は,3月25日9時42分に非常体制をとり,ヘリコプターの活用等による情報収集を実施するとともに,照明車14台,衛星通信車4台等を被災地に派遣した。また,住宅・宅地関係では石川県及び富山県において実施した被災建築物応急危険度判定業務,被災宅地危険度判定業務の支援を実施した。さらに,災害対策現地支援センターを輪島市に設置し,現地支援を行った。

国土地理院は,3月25日9時57分,災害対策本部を設置し,災害状況及び被害状況の正確な把握のために電子基準点観測データの緊急解析を実施するとともに,空中写真撮影や現地緊急測量調査を実施し,地殻変動の把握及び災害状況図等の作成を行った。

気象庁は,3月25日9時45分に非常体制をとり,地震機動観測班等による被害状況の調査を実施した。また,震度5強以上の揺れを観測した地域に対して,暫定的に大雨の注意報・警報基準を引き下げて運用した。さらに,この地震について,「平成19年(2007年)能登半島地震」と命名した。

環境省は,3月26日に一般廃棄物処理の関係団体にバキューム車,パッカー車の派遣協力を要請した。


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