3−6 台風第14号



3−6 台風第14号

(1)災害の状況
 台風第14号は,8月29日21時にマリアナ諸島付近の海上で発生し,西に進みながら大型で非常に強い勢力に発達し,沖の鳥島付近から日本の南海上を北北西に進んだ。9月4日には,大東島地方や奄美地方が風速25メートル以上の暴風域に入った。その後進路を次第に北よりに変えて九州の南海上に接近,広い暴風域を維持したままさらに九州地方の西岸に沿って北上した。6日14時過ぎに長崎県諫早市付近に上陸した後,台風は九州地方北部を通過し,6日夜には山陰沖に抜け,速度を速めながら日本海を北東に進んだ。7日夜には北海道の檜山支庁せたな町に再上陸した後,北海道の北部を通過し,8日朝にオホーツク海に抜けた。
 この台風は,大東島地方に接近してから山陰沖に抜けるまで広い暴風域を維持したまま,比較的ゆっくりとした速度で進んだため,長時間にわたって暴風,高波,大雨が続いた。九州,中国,四国地方の各地で4日0時からの総雨量が,9月の月間平均雨量の2倍を超え,宮崎県南郷村では月間平均雨量の2.9倍となる1,321ミリに達した。九州,中国,四国と北海道地方の61地点ではこれまでの日雨量の記録を更新した。また,4日夕方から5日未明にかけては,台風の接近に伴い本州に停滞していた前線の活動が活発化し,東京都や埼玉県で一時間に100ミリを超える猛烈な雨が降った。さらに,一年を通して最も潮位の高い時期であったため,九州地方や瀬戸内海沿岸で高潮となった。
 この台風により,死者27名,行方不明者2名,負傷者179名,住家全壊1,178棟,住家半壊3,692棟,住家一部破損2,817棟,床上浸水7,159棟,床下浸水13,580棟の被害が発生したほか,最大426,878人に避難指示・勧告が出された。
 土砂災害については,土石流132件,地すべり30件,がけ崩れ201件が発生した。
 河川については,直轄区間の五ヶ瀬川水系五ヶ瀬川,大瀬川,祝子川等7水系10河川で計画高水位を超えたほか,多数の河川で警戒水位を超え,一部は危険水位に達し,各地で浸水被害等が発生した。
 ライフライン関係においては,北海道・東北・中部・北陸・関西・中国・四国・九州・沖縄電力管内で延べ約1,618,000戸が停電となったほか,都市ガスについては宮崎県及び鹿児島県内で43戸が供給停止,上水道については73,714戸が断水した。電気通信関係では,宮崎県や岡山県等の約5,700回線の電話が不通となったほか,携帯電話基地局655局が停波した。また,固定電話事業者及び携帯電話事業者において通信規制を実施した。
 道路については,高速自動車国道,一般国道,都道府県道,有料道路等1,647区間で通行規制が行われた。鉄道については,全国各線で雨量規制等のために運休が発生した。
 公共土木施設では,河川5,094か所,海岸76か所,砂防設備等462か所,道路(橋梁を含む)4,643か所,港湾138か所,下水道11か所,公園21か所で被害が発生した。
 農林水産業関係では,農地10,259か所,農業用施設6,742か所,林地荒廃等1,196か所,林道等6,779か所,森林被害394.01ha,漁港154か所に被害が発生した。
 文教施設では,国立学校施設32校,公立学校施設656校,私立学校施設85校,社会教育・体育,文化施設等151施設,文化財等72件,研究施設等1施設で被害が発生した。
 社会福祉施設等では,老人福祉施設26か所,児童福祉施設65か所,障害者施設71か所,その他福祉施設6か所に被害が発生した。
 医療施設関係では,55施設に被害が発生した。
(2)国等の対応状況
 台風第14号上陸の前日の9月5日14時,官邸危機管理センターにおいて,内閣危機管理監の主宰により,関係省庁局長級の緊急参集チームによる協議を実施し,①各省庁において,厳重な警戒,監視体制をとり,被害の発生に備えること,②国民に対し,気象,高潮,洪水,土砂災害等の防災情報を適切に提供し,避難誘導に万全を期すること,③被害が発生した場合には,迅速に被災者の救出・救助活動,災害応急対策を実施すること,④自衛隊,警察,消防,海上保安庁等の広域救援部隊を必要に応じ迅速に派遣できるよう準備すること,⑤各省庁が緊密に連携して対応することを確認した。また,同日午後の官房長官記者会見の際,細田官房長官より,緊急参集チームの協議,確認事項を説明するとともに,最新の気象情報の確認,早めの自主的な避難等による安全の確保等を国民に呼びかけた。
 9月6日16時及び9月8日14時に,内閣府においてそれぞれ災害対策関係省庁連絡会議を開催し,被害状況や各省庁の対応状況についての情報を共有し,今後の対応を確認した。
 9月9日には村田防災担当大臣を団長とする政府調査団を宮崎県へ派遣した。
 適用日を9月4日として,東京都が中野区及び杉並区に対し,鹿児島県が垂水市に対し,適用日を9月6日として,山口県が美川町及び岩国市に対し,高知県が四万十市に対し,宮崎県が高岡町,国富町,北方町,東郷町,宮崎市,延岡市,西都市,諸塚村,椎葉村,日之影町,高城町,西郷村及び北川町に対し,災害救助法を適用した。
 また,適用日を9月4日として,鹿児島県が垂水市及び錦江町に対し,適用日を9月6日として,山口県が美川町及び岩国市に対し,高知県が四万十市に対し,宮崎県は全域に対して被災者生活再建支援法に基づく被災者生活再建支援金支給制度を適用した。
 さらに,この災害について,平成17年10月25日閣議決定,10月28日公布・施行の「平成十七年九月一日から同月八日までの間の豪雨及び暴風雨による災害についての激甚災害並びにこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令」により激甚災害として指定し,公共土木施設災害復旧事業等に関する特別の財政援助,農地等の災害復旧事業等に係る補助の特別措置等を適用するとともに,山口県美川町並びに宮崎県高岡町並びに北方町及び諸塚村の区域に係る激甚災害については,中小企業信用保険法による災害関係保証の特例を適用した。
 内閣官房は,9月5日13時,官邸連絡室を設置した。
 内閣府は,9月4日18時,情報対策室を設置し,関係機関から情報収集を行うとともに,官邸,関係省庁との情報連絡を行った。
 警察庁は,9月5日13時30分,災害警備連絡室を設置して,関連情報の収集,関係機関との連絡調整及び警察広域緊急援助隊や警察用航空機の派遣調整等に当たった。また,機動警察通信隊は,災害警備活動に必要な警察通信の確保に当たった。さらに,宮崎県公安委員会からの援助要求を受けて,9月7日と8日の両日,福岡県警察広域緊急援助隊延べ約80名を同県内に派遣し,同隊は救出救助や行方不明者の捜索等に当たった。
 防衛庁は,9月6日0時40分,災害対策連絡室を設置し,北海道,山口県,熊本県,大分県,宮崎県及び鹿児島県の各知事からの災害派遣要請を受け,9月6日から9月18日までに人員約6,300名,車両約1,500両,航空機25機により,行方不明者捜索,孤立住民の救助,給水支援等を実施した。
 消防庁は,9月4日18時,災害対策室を設置し,関係機関との連絡調整に当たった。
 総務省は,9月1日20時30分,省内の情報収集体制を整備した。また,9月29日,宮崎県高岡町において,特別総合行政相談所を開設した。
 文部科学省は,9月5日9時,災害情報連絡室を設置し,教育委員会等の関係機関から被害情報を収集するとともに,臨時休校等適切な対応をとるよう指示した。
 厚生労働省は,9月5日9時30分,省内の連絡体制を整備した。
 農林水産省は,9月5日9時40分,省内関係局庁連絡会議を設置した。また,被害農林漁業者等に対する資金等の融通及び既貸付金の償還猶予等を図るよう関係機関に依頼した。
 経済産業省は,9月6日16時,防災連絡会議を設置した。
 資源エネルギー庁は,災害救助法適用地域及び隣接地域において被災した需要家に対して,電気料金の支払期限の延長等の災害特別措置を認可した。
 中小企業庁は,宮崎県内,山口県内,東京都内,高知県内及び鹿児島県内の政府系中小企業金融機関,信用保証協会,主要商工会議所,商工会連合会,中小企業基盤整備機構及び九州,中国,関東,四国の各経済産業局に対し,災害に係る特別相談窓口設置を指示するとともに,政府系中小企業金融機関に災害復旧貸付の適用,政府系中小企業金融機関及び信用保証協会に既往債務の条件緩和等に関する企業の実情に応じた対応を指示した。
 国土交通省は,9月5日10時40分に警戒体制をとり,ヘリコプターの活用等による情報収集を実施するとともに,衛星通信車等を宮崎県椎葉村に派遣した。
 国土地理院は,9月5日10時40分に警戒体制をとり,空中写真撮影を実施し,災害状況図等を作成した。
 気象庁は,計155回の全般台風情報の発表(8月29日から9月8日まで),大雨等に関する警報・注意報の発表,防災関係機関への気象情報の伝達等を行うとともに警戒を促した。

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