3−7 十勝沖地震



3−7 十勝沖地震

(1)災害の状況
 平成15年9月26日4時50分頃,釧路沖深さ45kmでマグニチュード8.0の地震が発生し,北海道新冠町,静内町,浦河町,鹿追町,幕別町,豊頃町,忠類村,釧路町及び厚岸町で震度6弱,北海道帯広市,釧路市,厚真町,足寄町,本別町,更別村,広尾町,弟子屈町,音別町及び別海町で震度5強を観測したほか,北海道地方から中部地方にかけて震度1以上を記録した。また,この地震により,広尾町十勝港(検潮所)で高さ2.5m,えりも町百人浜で遡上高4.0mなど,北海道から東北地方にかけての太平洋沿岸で津波が観測された。
 同日6時8分頃,十勝沖深さ約21kmでマグニチュード7.1の地震が発生し,北海道浦河町で震度6弱,北海道新冠町で震度5強を観測したほか,北海道地方から中部地方にかけて震度1以上を記録した。
 地震活動は本震〜余震型で推移し,太平洋プレートと陸のプレートの境界で発生したもので,この地震は,昭和37年3月4日に発生した十勝沖地震(M8.2)のマグニチュード,震源位置,プレート境界型地震,本震〜余震型での活動推移などの特徴がほぼ同じであることから,地震調査委員会が想定していたM8クラスの十勝沖地震(想定M8.1前後)と考えられた。
 この地震により,北海道及び東北各県に被害が発生し,行方不明者2名,負傷者849名,住家全壊116棟,住家半壊368棟,住家一部破損1,580棟,床下浸水9棟の被害が発生したほか,合計37,176人に避難勧告が出され,7,429人が避難した。
 ライフライン関係においては,北海道・東北電力管内で延べ約379,000戸が停電となったほか,上水道については,北海道で延べ15,956戸が断水した。携帯電話基地局は,29局が停波した。
 港湾施設については,苫小牧港等8港108施設で,エプロン沈下,道路陥没等の被害が発生した。
 河川施設等では,十勝川水系等5水系の直轄河川14河川において,堤防天端亀裂や堤防沈下等80か所の被害が発生した。
 下水道施設等については,釧路市等14市町で下水道管路等に被害が発生し,音別町の一部地区では下水道使用不可となった。
 道路については,高速自動車国道,国道及び県道等累計68か所で通行規制が行われた。
 鉄道については,根室本線の橋梁破損によるほか,北海道内のJR等各線で運休が発生した。
 釧路空港においては,管制塔及び空港ターミナルビルに被害が生じ一時閉鎖となった。
 公共土木施設では,河川51か所,海岸5か所,道路(橋梁を含む)226か所,港湾45か所,下水道110か所,公園7か所で被害が発生した。
 農林水産業関係では,農地8か所,農業用施設28か所,治山施設2か所,林地2か所,林道等191か所,漁港等59か所に被害が発生した。
 文教施設では,国立学校施設5校,公立学校施設239校,私立学校施設7校,社会教育・体育施設102施設,文化財等5件,その他1件で被害が発生した。
 社会福祉施設等では,老人福祉施設10か所,児童福祉施設30か所,障害者施設10か所に被害が発生した。
 また,9月26日4時52分頃,苫小牧市の出光興産北海道製油所において火災が発生し,同日12時09分に鎮火したものの,9月28日10時46分頃再び火災が発生し,9月30日6時55分に鎮火した。この影響で,定期航路7航路に係る船舶の運行が欠航となった。
(2)国等の対応状況
 地震発生後ただちに,各省庁の防災担当者が官邸危機管理センターに参集し,自衛隊,警察,消防,国土交通省などのヘリコプターからの映像や消防の固定カメラ映像を含めて,迅速な情報収集を行うとともに,内閣府の地震防災情報システム(DIS)を稼働させて,建物被害や人的被害などを推計し,概括的な被害規模の把握に努めた。また,官邸危機管理センターに参集した関係省庁の局長級職員などによる緊急参集チームにより,収集された情報を集約・確認することにより,政府として被害の実態把握と対応方針の決定を早期に行った。
 9月26日8時30分には内閣府において災害対策関係省庁連絡会議を開催し,被害情報や各省庁の対応状況について情報の共有を図り,対応方針を決定した。また,同日6時49分には情報先遣チームとして内閣府職員3名を,同日16時54分には佐藤内閣府副大臣を団長とする現地調査団12府省庁36名を北海道へ派遣した。
 また,被災者生活再建支援法に基づく被災者生活再建支援金支給制度を,適用日を9月26日として北海道全域に適用した。
 さらに,16年3月9日閣議決定,同12日公布・施行により,「平成15年十勝沖地震による災害」として局地激甚災害に指定し,公共土木施設災害復旧事業等に関する特別の財政援助等を適用した( 表1−3−4 )。

平成15年局地激甚災害適用措置及び対象区域(その1)
 内閣府は,9月26日5時15分,情報対策室を設置し,関係機関から情報収集を行うとともに,官邸,関係省庁との情報連絡や災害対応の調整を行った。
 警察庁は,9月26日5時,災害警備本部を設置し,北海道警察機動警察通信隊等による通信手段の確保を図る一方,関係道県警察ではヘリコプター等による情報収集活動や交通規制等を実施した。また,苫小牧市の製油所火災の消火活動に使用する消火剤を搬送する車両2台を先導して緊急輸送を実施した。
 防衛庁は,9月26日5時15分,災害対策室を設置し,北海道知事からの災害派遣要請を受け,9月26日から10月3日までに人員約1,160名,車両約290両,航空機45機により,航空偵察,給水支援,消火剤輸送等を実施した。
 消防庁は,9月26日4時50分,災害対策本部を設置し,関係機関との連絡調整に当たるとともに,緊急消防援助隊の北海道への出動を要請した。また,9月26日から10月21日の間に,緊急消防援助隊は消防防災ヘリコプターによる被害情報収集を行うとともに,苫小牧の出光興産北海道製油所タンク火災の消火活動等に車両延べ381台,隊員1,417人により応援を実施した。これに際して,9月26日から10月21日の間に延べ33人の消防庁職員を現地に派遣した。また,関係都道府県及び在日米軍に消火剤の提供支援を要請するとともに,自衛隊に消火剤の輸送を要請した。
 海上保安庁は,9月26日5時0分,地震災害対策本部を設置し,巡視船艇延べ83隻及び航空機延べ17機により,被害状況調査及び行方不明者の捜索活動を実施した。津波に関しては,航行船舶等に対し,日本航行警報,NAVTEX航行警報等を発出した。また,製油所火災に際しては,苫小牧港への入港規制を実施した。
 総務省は,9月26日5時15分,対策本部を設置した。また,北海道静内町,浦河町,池田町及び豊頃町に対し,11月に定例交付すべき普通交付税の一部を繰上げ交付した。
 文部科学省は,9月26日6時10分に災害情報連絡室を設置,9月26日11時に災害応急対策本部を設置した。また,9月26日,地震調査研究推進本部地震調査委員会(臨時会)を開催し,この地震についての分析・評価を行った。さらに,9月29日,被害を受けた学校施設の調査のため,職員等4名を現地へ派遣した。
 厚生労働省は,9月26日8時,災害対策本部を設置した。
 農林水産省は,9月26日6時40分,関係局庁連絡会議を開催した。また,10月6日,被害漁業者等に対する経営資金等の融通及び既貸付金の償還猶予等が図られるよう関係金融機関に依頼するとともに,漁業被害に係る迅速かつ適切な損害評価等の実施及び保険金・共済金の早期支払い等について関係機関を指導した。
 中小企業庁は,9月26日,政府系中小企業金融三機関,信用保証協会,商工会議所,商工会連合会及び北海道経済産業局に対して,災害に係る特別相談窓口設置を指示するとともに,政府系中小企業金融三機関に対して災害復旧貸付の要請を行った。
 国土交通省は,9月26日4時50分,非常体制をとるとともに,ヘリコプターによる情報収集活動を行い,国土技術政策研究所から河川,道路,港湾,下水道,建築,ダムの専門家を現地に派遣し,現地調査を実施した。9月30日より職員2名を緊急調査のため,現地へ派遣した。また,10月3日から十勝川及び石狩川の2水系の特に被害の甚大な箇所について,直轄河川緊急復旧事業に着手した。
 気象庁は,9月26日5時に警戒体制をとり,津波予報や地震情報等の発表に万全を期し,防災関係機関や住民に提供した。同日14時30分,土砂崩れ等の二次災害防止の観点から当面の間,北海道太平洋沿岸地域における大雨注意報・警報の暫定基準による運用を開始,また,同日18時に4時50分頃に北海道沖で発生した地震について「平成15年(2003年)十勝沖地震」と命名した。9月26日には職員を現地調査に派遣し被害調査等を実施した。また,気象庁は大学等津波合同調査班と協力して津波の痕跡等の現地調査を行った。


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