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EPCF
※「国土庁防災局」は、2001年より、「内閣府(防災部門)」になりました。
米国における地震被害軽減に関する公共政策
 
コンサルタント
L.トーマス・トビン
(L. Thomas Tobin)
 
 

地震政策に関する日米地震防災政策会議
開催地:ワシントン州シアトル市
1998年10月20日

I. はじめに
 私は、米国における地震被害軽減の公共政策に関して、概要を説明するように依頼された。米国の政策やその政策を実行するための手法は、連邦政府、州政府、地方自治体などの各種機関が関与していることから、複雑で多様なものとなっている。米国政府は分権制で多くの独立した機関が存在する。その結果 、政策は州間及び市町村間によって異なる。

 ここでは米国政府の政策を説明し、政策や計画の実例を提示する。私は、「公共政策」という用語を広義に使用しており、これには地震被害の軽減を目的とした政府の政策として、リーダーシップ、唱導、技術援助、資金提供、技術や情報の移転、法規制、所有者責任などを含めている。これらの政策やその違いを理解するためには、米国各地の地震危険度の違いや、米国の統治手法の違いを理解することが必要である。

II. 地震災害は地域により異なる
 地震災害は、米国内の地域により異なる。地震発生がほとんどない州もあれば、巨大地震がまれに発生する州や、西海岸を中心に巨大地震が比較的頻繁に発生する州もある。国内の危険がまちまちであれば、危険に対する対応への必要性や動機付けもまちまちとなる。地震災害は、西海岸の当局者にとっては重要な政策課題だが、他の州の当局者には、必要性は低い。米国の地震に対する政策や計画は、地震の脅威に対する性質や理解を反映したものとなっている。基本的な政策は、全米の当局者らに地震の危険性を通 知し、それに伴う危険への対応を促すことである。

III. 地震の脅威は、社会の全階層に影響する − 責任は分権化されている
 地震は、我々のコミュニティのあらゆる分野、政府・機関・計画の各層、各企業、各家庭に影響する。地震の被害は、我々のコミュニティのあらゆる分野に影響し、一戸建て個人住宅から、高層アパート、政府・民間部門のユーティリティや交通 機関、公営や民間の学校や病院、連邦・州・地方自治体保有または賃貸するビル、民間の店舗・商業・産業用施設などに影響する。これに関しては、江口氏や他の関係者による、ノースリッジ地震の被害推定に示されている。

・ 州・地方自治体施設への被害は約45億ドル。
・ 州・地方自治体の交通施設や道路への被害は約10億ドル。
・ 民間及び公共のユーティリティの被害は約3億ドル。
・ 個人財産の被害は約100億ドル。
・ 企業の被害は約80億ドル。

部門別ノースリッジ地震被害

部門
推定額(1,000ドル)
州・地方自治体への連邦援助
4,500
交通部門の復旧
920
ユーティリティの復旧
300
個人や家族への贈与
250
住宅や抵当への援助
1,200
住宅保険の請求
8,400
中小零細企業と住宅保有者へのローン
4,040
企業保険の請求
4,100

1. 江口他(1998年)
 地震は、生活や商取引の流れを阻害し、その影響は、被災地域だけではなく、数千マイルも離れた地域にも及ぶの。地震は、福祉計画、ユーティリティ・システム、老朽化した校舎、あるいは建物の梁と柱の接合部分など、社会の中の「(鎖の)最も弱い輪」に打撃を与える。地震の影響は広範で、その危険は個人、企業、政府機関に負担されることになるため、危険度削減の対策はこれら全員への恩恵となる。危険に対応するために被害軽減政策の採択決定は、これら各層の責任となっている。

 

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