
渋滞した道路の様子(1)
渋滞した道路の様子(2)
- 渋滞の車に物資を配布 〜勤め帰りや帰省客で大渋滞〜
- 自家発電装置の燃料も半日が限界 〜ガソリンスタンドも停電には勝てず〜
- 雪道渋滞で嬉しかったこと、困ったこと 〜沿道住民の善意と交通整理〜
- 吹雪でヘリコプターも飛ばせず 〜リアルタイムの道路情報流せず〜
- 沿道の住民の善意に全国からお礼状届く 〜渋滞中の車に暖かいおにぎりやコーヒーを配る〜
元日の朝起きたら、いつもと違う雪景色でね。停電もしていました。とにかく歩ける道を作ろうということで、区長さんや役員さんが「スコップ持って出て来いよ」と声をかけ、集落のみんなで雪かきをしました。
その後近くの9号線まで出てみると、道路は雪で埋まっているし、車はいっぱい並んでいるという状態でした。大晦日の晩に姪っ子が大阪からバスで帰って来て、この大山町のところに入ってきたのが夜の11時。
そこからわずか2、300メートル進むのに朝6時まで、実に7時間かかったということを聞いていましたが、連なる車をみて納得しました。
私は渋滞しているみなさんに物資(毛布と乾パン、水、アルファ米など)を配る役目で、自衛隊の方と一緒に配って回りました。通常は2車線ですが、片車線は通行止めの処置がとられていましたので、近くまで車で行っては物資を下ろしました。
家族2、3人が乗っているケースも多く、米子とか境港の勤め先から帰宅途中に渋滞に巻きこまれたという人もいました。県外ナンバーの車も目につきましたから、帰省客も多かったのではないかと思います。
結局車で持っていける量というのは決まっていますから、配っている途中で物資が切れちゃうわけです。「次が来るまですいません」と言って、車のナンバーを覚えておいて、物資を取りに帰ると、今度は後ろから配りました。
さっきの車を見つけたらここでおしまいだということでね。ドライバーの方に「覚えていてくれてありがとう」と言われて、私もちょっぴり嬉しかったです。
【有識者からの一言コメント】
- 元日にもかかわらず、役場や自衛隊の方々が渋滞中の車に物資を配付したとのこと、頭が下がります。
車で移動する時は、いつ何時何が起こるかわかりませんので救急アルミックシートや簡易トイレ等は車に常備しておくことと、せめて3食分位に相当する食料(おにぎり、パン、菓子類、ゼリー飲料等)、水分等は用意をして車に乗ってほしいと思います。
ガソリンが入っていればのことですが、カーラジオで情報が入り、雨露を凌げ、懐中電灯も常備してあり、ヘッドライトはかなりの明るさが得られるなど車にも長所があることも覚えておいてください。 - 何kmも連なって動けない車列の横を抜け、物資を配りたい場所にたどり着くだけでも大変だったことでしょう。
「こんなときこそお互い様」と地域ぐるみで救援したことは、回復の見通しの無いなか困窮していた方々を勇気づけただけでなく、地域としても一つの防災訓練として貴重な経験だったのではないでしょうか。
当時、役場から気象台やライフライン関係のところに連絡しても、ほとんど連絡がつかないという状況でした。電力会社からは、どこが停電しているといった連絡がファックスで来るようになっていますから、どこの集落が停電しているのかは分かるのですが、それがいつ復旧するかというような情報がもらえませんでした。
町には防災無線がありますので、情報があれば流せるのですが、肝心の情報が入りません。けっこう雪が降っていましたから、除雪ができないと車が入って行けないので、電力会社も修理に行けないんですよね。やっぱり除雪の部分がライフライン復旧のネックだったと思います。
電話は役場に50台ぐらいありました。元日に役場に歩いて来られた職員が5、60人ですから、ほとんどが電話対応に追われた格好です。代表番号にかけてくるものはどの電話からでも取れるようになっていますからね。
庁舎には自家発電装置がありましたが、備蓄している燃料は半日ぐらいしか持ちませんでした。で、近くのガソリンスタンドで調達しようと出かけていったのですが、そのガソリンスタンドも停電だったため、「ガソリンを活用する装置が電気で動くものなので、供給できません」ということでした。結局自衛隊さんから分けてもらいましたけれど。
我が家も、12月31日の夜7時に停電してから 1月2日の夜8時まで電気が来ませんでした。こんなに長い間電気が止まった経験は初めてで、ましてこの冬の時期、暖をとるのにも苦労しまして、改めて電気の有り難さを痛感しました。
【有識者からの一言コメント】
- 「情報がいつ復旧するか」という情報が入らないと市民は不安になるものです。
むしろ「復旧には数時間(あるいは数日)かかる見込みです」とはっきり言ってくれた方が、復旧にはかなりの時間がかかりそうだと覚悟ができます。
電力会社は今回の復旧にどの位の時間を要したかを教訓にして、以後の情報開示に生かしてほしいと思います。 - 日本は世界有数の停電率の低い国です。
それ故に停電が起きると電気依存を痛感させられます。
手動ポンプを備えているGSもありますが10リットルくみ上げるだけでも大変な重労働とのこと。
手動で効率の良いポンプを各GSで常備するようになると良いと思います。
電気のいらないストーブと十分な燃料も備えが必要ですね。
外を見たら車が全然動いていないというのが分かります。沿道の住民たちも「トイレを貸してください」と言われれば、当然「どうぞ、どうぞ」ということでね。お腹がすいていると言えばおにぎりをあげたりして。 車はほとんど動きませんから、車を降りて近くのコンビニに食料を買いにいく人もいました。
ちょうど初詣の時期でしたから、渋滞の列の中に観光バスが紛れていたんです。30人ぐらいの方が乗っていたかと思いますが、出雲大社にお参りに行った帰りで、鳥取方面に行く途中とのことでした。三朝温泉に宿泊予定だったのかもしれません。
大勢ですからね。「公民館を開けるのでそこで休んで下さい」と公民館を開放し、そこで炊き出しをして、広間で休んでもらったということでね。その公民館は停電していなかったんです。
それを聞いて嬉しく思いました。大変だったのは交通整理でした。JRが止まっているため代替バスを汽車が止まっている場所に向かわせるということで、観光会社のバス2台が警察に先導されて規制のかかっている片側の車線を走って行くと、その後ろに一般車がついていってしまうのです。知らない人が見ればただの観光バスとしか見えませんから、「もう通っていいんだ」とね。
1台がそうするとつられて何台も続いてしまって、制止してもなかなか止まってくれません。バスに「緊急車両」とかの表示を付けておけば良かったなと思いました。
【有識者からの一言コメント】
- 「困った時はお互い様」と助け合う情景が目に浮かぶようです。車の渋滞に巻き込まれた人たちは沿道の住民からトイレやおにぎりの提供を受けたり、観光バスに乗った人たちは地域住民の機転で停電していない公民館を開放してもらうなど、ありがたい体験をしています。
今回 そうした善意を受けた人たちは逆の立場になった時、必ず良い支援ができると思います。
役場の車両には常に「緊急車両」と書いた表示板を入れておくと良いと思います。日常から準備しておかないと、いざ!という時に気がまわらないものです。 - 交通整理は平時なら警察の仕事ですが、非常時になると役場の職員も借り出されます。
特にこういう状況になると、イライラしているドライバーを相手に難しいさばきになりますからご苦労をされたことでしょう。
「緊急車両」という表示も待たされている車両の皆さんによく見えるよう大きく目立つものが必要ですね。
雪のない時であれば、町道・農道等の迂回道路がありますので、そこに職員を走らせて通行可能となれば、警察などに電話をして「こちらの道に迂回させてください」と言えるのですが、雪の中では、迂回させたのはいいけれど、雪で木が倒れていたりしてストップしてしまうと同じことになってしまうので、的確な指示ができないという難しさもあります。
「国道9号の迂回路」という案内看板はあるのですが、迂回路がきちんと除雪ができていない状態でした。路面が完全に見えるような除雪をしていないと、逆に事故が発生する可能性の方が大きくなるので、今回は迂回させませんでした。あと3年程度で新しい道路が全線開通することになっており、迂回路として利用できるためそれを心待ちにしています。
また、普段なら渋滞の様子は県のヘリコプターが撮った映像が送られてくるのですが、当時のように雪がたくさん降っていると県もヘリコプターを飛ばせませんから、どこからどこまで渋滞しているのかという情報が全然ありませんでした。渋滞現場まで歩いていくと2時間、3時間かかってしまい、その間に状況が変わってしまうといった具合でした。
道路のポイントポイントに設定されたカメラの映像を役場でも見られるようになっていたのですが、職員が何度アクセスしてもぜんぜん駄目でした。県の方では見られたところもあったようですが、アクセスが集中したせいかなと思っています。
とにかくみなさんがリアルタイムの道路情報を知りたがっていたと思いますが、全戸に防災無線というか音声告知のシステムが導入されていますが、情報が入ってこなかったこともありそれを活用し詳細な情報を提供するところまでいかなかったのが正直なところで、この教訓を次に活かしたいと思っています。
【有識者からの一言コメント】
- 道路のポイント、ポイントに設定されたカメラの映像も見られず、降雪中でヘリコプターを飛ばすこともできない時には役場に情報が全く入らない状況になります。
そんな時の備えとして、普段から9号線沿いの住民の中から登録制で情報通信ボランティアを育成しておき、いつもの道路情報や交通情報等を町役場にあげてもらうようにしておくと、豪雪時や緊急時にも活用できると思います。
また、配達で道路事情に詳しい郵便局員や商店から日常的に積雪情報を収集しているところ(岩手県)もあります。 - 吹雪で空からの情報収集ができなかったのは大きな痛手だったことでしょう。
雪で視程が悪化したときに道路状況をどう把握するかは大きな課題です。
CCTV映像を画像処理して雪を消して鮮明化する技術、携帯電話やGPSナビの基地局情報を加工して交通流を把握する技術の開発が進んでいます。
導入を検討してはいかがでしょうか。
今回の大雪は大変な被害をもたらしましたが、9号線沿線の住民の方がまさに『共助』をやっていただいたということが、ひとつの救いだったのではないかなと思います。
除雪機械も動かない状況の中で、一人ひとりができる限りのことをしてくれたと思いますね。
町役場が水やご飯を配ったり、毛布を配ったりしたのは結果的には遅い方でして、その前に沿線の方々が「水はあるかい?」と聞いてはコーヒーや暖かい飲み物を提供したり、家にあるありったけのお米を炊いて配ったりというのをずっとやってくれていたのです。
その後、全国からたくさんのお礼状などが役場に寄せられたわけですが、渋滞に巻きこまれた観光バスに乗っていたというお年寄りの方からメールが来ましてね。「12月31日の夜、大雪の中を暖かいおにぎりを差し入れてもらい、しかも子供さんが持ってきてくれたということをガイドさんから聞いて、とても感動しました」という内容でした。
何としてもお礼を言いたいので、名前や住所等を教えて欲しいということでした。色々調べたところ、大山町に隣接する集落の子供さんではないかということになり、そこの区長さんに聞いたところ、「ああ、あそこのお孫さんが来とって、手伝いをしていたな」と言われるので、早速知らせてあげました。
その方は二日間バスの中にいたとのこと。みなさんの善意が本当に嬉しかったのだと思います。
【有識者からの一言コメント】
- 自分が困っている時に助けてくださったご恩は一生忘れられないものです。
寒い時に温かいおにぎりを持ってきてくれた子どもさんに直接お礼を言いたいという気持ちはよくわかります。
そのお子さんを捜すのに手間どりはしましたが、役場のほうでは むしろ9号線沿線の住民の善意を誇りに思っておられました。
人の心を和ませるとてもいい話です。 - 吹雪で立ち往生したときに沿道住民の善意の炊出しで救われたという話は、豪雪のたび各地で話題になります。
こういう話を聞くと日本人もまだまだ捨てたものではないと誇りに思います。
その善意を、次の機会に誰かに返すという連鎖が必ず社会を良くしていくことでしょう。