大雪による農業被害(JA鳥取)
壊れたビニールハウスの様子
『援農』で撤去作業を行っている様子
- 苦い経験機にマニュアル作成〜雪が降る前の対策をまとめる〜
- ハウスの撤去作業は『援農』で 〜農家・行政・業者の連携で復旧すすむ〜
- 雪で痛んだ野菜も工夫のレシピで活かす〜白ネギのお好み焼きや、かき揚げ天ぷら〜
- 被害情報入手に手間取る〜道路も農道も積雪多く〜
なにせ重たい雪で、大晦日の夕方から夜にかけてズンズンと積もってしまったわけです。これは大変だと。自分の家のビニールハウスがどうなったか、ナシの木やブドウの木がどうなったかを見に行こうにも、農道自体がかなりの積雪で歩いて行ける状況ではありませんでした。
公共の道路でしたら行政に除雪してもらえることもあるわけですが、農道はその対象になっていませんので、自分たちで雪かきをして通れるようになった時には、もう2週間ぐらい経ってしまっていたという農家もありました。
積もった雪の重みでペシャンコになったハウスが多く、春菊は収穫不能に陥り、ストックは花軸が折れてしまい出荷できなくなりました。被害も広範囲にわたっていますので、その実態を把握するのにも随分と時間がかかりました。
で、この苦い経験を機に、野菜等のハウス、またはナシ、ブドウ等の果実棚に対して、雪が降る前にどのような対策をしていったらいいかということを、農協の指導員、技術員や県の担当者の力を借りてマニュアル(第一版)にまとめました。
これを新たに配布して、降雪の季節、12月までには生産者に周知徹底していこうと思っています。
【有識者からの一言コメント】
- 広範囲にわたる被害状況を知るためにも農協でスノーボートを購入することをお勧めします。冬季だけ借りることも良いと思います。
スノーボートがあれば、情報収集・伝達、救護活動や物資の搬送など雪道では大いに役立つと思います。
今回の経験を教訓にマニュアル(第一版)ができ、生産者に配布するとのことですが、今後もアンケート等で多くの意見やアイディアを収集し、既存のマニュアルに加筆してほしいと思います。 - 苦い経験を踏まえてのマニュアルづくり。
素晴らしい取組みです。
備えておけば被害を大きく減らせることですから、これこそが「減災」の取組みです。
大勢の方に周知して頂いて、万一の被害を最小限にして頂ければと思います。
豪雪地帯ということもあって、パイプも太目の32ミリのパイプを使ったり、横に桟を入れたりといった丈夫なビニールハウスも最近は増えてきてはいました。
今まで40センチぐらいの雪が積もっても、この辺のハウスは倒壊していませんでしたが、今回の雪は大体0.8mから1.0メートルありましたからね。倒れたハウスを回ってみると、支柱がちゃんとあっても、倒れてしまったところもありました。
本当に積雪が多いものですから、復旧作業が始まるまでにも時間がかかっています。倒壊したハウスの撤去などは1人や2人ではできないものですから、農家の方はもちろんですが、行政の方や業者の方に作業の応援、いわゆる『援農』ということで協力をいただきながら、復旧に全力を挙げています。
ここはスイカの産地でもあるんです。いつもは3月の1日からスイカの定植が始まるわけですが、それまでにつぶれたハウスを撤去して、新しいハウスを建てて、元肥とか植え付けの準備をしなければいけない。
どうして3月1日かというと、熊本のスイカに始まって、それが終わってから鳥取のスイカになって、それから次は石川、福井、長野とかいうように順番に行くものですから、スケジュールが狂うと出荷時期が重なって販売価格に影響が出てしまうのです。
一般のボランティアの方には、ビニールハウスの撤去作業などはちょっと難しいものですから、農家の仲間同士、力を合わせて頑張っています。
【有識者からの一言コメント】
- ビニールハウスの雪害対策として筋交いや横に桟を入れたり、太いパイプを使ったりなど補強をしたハウスが増えてはきたものの、 支柱がちゃんとあっても倒れてしまったハウスもあったので、更なる補強が必要です。
『援農』という言葉を初めて知りました。農家の方が行政や業者の方の協力を得て作業をするという とても良いシステムだと思います。 - 困ったときこそお互い様。
農業仲間の協力関係が普段からしっかりと築けているからこその対応です。
平時の関係づくりこそが非常時の力になります。
ちなみに新潟では「田人(とうど)」といって、農繁期に助っ人を頼むとき「田人を頼む」と言います。
大切な文化です。
雪の重みで白ネギが途中で折れ曲がったり、ブロッコリーが倒れたりしました。運悪く収穫間近の時期だったので被害額も大きいものになりました。
通常ですと、市場出荷規格というのがあって、『秀』だったらこうで、『優』だったらこうですよと決められているわけですけれども、その規格に当てはまらない状態になってしまいましたので、関係者とも相談しながら、普段はないのですが、秀の次は『良品』とか『難品』というような規格を作って、市場の方にも出荷しました。
知事さんも「逆に雪の下になれば甘みが増すんだよ」と言って、トップセールスを展開していただきました。それから、どうしても市場に出せない場合でも、食べられる部分があれば、鳥取管内8店舗ある直売所の方で販売するようにしています。
それから、販売対策費用を1/2助成してくれるということになったので、白ネギを入れたお好み焼きやら、野菜のかき揚天ぷらやら、ちょっと工夫してレシピを作って県内の直売所の店頭で販売しました。
せっかく作った野菜などを無駄にしないよう、少しでも収益を上げられるように、みんなで頑張っていこうと思っています。
【有識者からの一言コメント】
- 特例として「良品」、「難品」という規格を作って市場に出荷したことは、とても良い判断だったと思います。
全国には被災地をなんとか応援したいと思っている人は沢山います。
「豪雪の下で頑張った野菜たちです。召し上がってみてください。」などと書いて販売をしたら、喜んで買ってくれることと思います。
ねぎは青い部分が痛んでいても、白い部分は十分使えるので、寸法が短くても出荷を認めたことは良い措置だったと思います。
このことをテレビで全国放送したことも広報につながりました。 - 規格外品を、手を変え品を買えムダにしない。
そのたくまさしさこそが大事な姿勢です。
災害時には市場もある程度理解してはくれますが、それ以上に生産者側の知恵と工夫が試されます。
そうして生まれた知恵は平時でも生かせるのではないでしょうか。
12月31日から雪が降り始めました。その前から雪が降るという情報はありましたので、注意喚起のファックスは流していたのですが、休みに入ってしまいましたからね。
1月1日の積雪状況を見て、ずっと気になっとったんですが、1日は集落の会議があったので、2日に農協に出ました。被害状況はと確認したら、「あまり被害はないようです」っていうことでね。
まあ、1つか2つビニールハウスが倒れているかもしれないなっていう感じでしたが、3日、4日と日にちが経つに従って、あそこもここもということになりました。
「現場に行ってみなきゃいけん」ってことで、地域を回ってみると、やっぱり次々とやられていて、被害が大きいことに驚きました。ハウスほどではありませんが、牛舎も被害を受けていました。
今思えば、2日に、被害があまりないようだという話になったのは、現場からの情報が入ってこなかったからなんですね。畑と住居が離れている農家も多いので、道路も農道も雪が深くて行きたくても行けなかったというのが実情でした。
後から聞いた話ですが、大晦日の夜の10時ごろに、家族中でブドウ棚を揺すって雪を落とし、難を免れた農家もあったそうです。それから、ハウスとハウスの間にU字溝を作って絶えず水を流すようにしているところもあるそうです。
雪は固まっちゃうと解けなくなりますからね。水を流したり、クワで突っついたり、やっぱり構ってあげないといけないものなんだなと思いました。
【有識者からの一言コメント】
- 雪が降る前の対策の一つに、ハウスとハウスの間にU字溝を作って絶えず水を流すようにする、降った後の対策の一つに何度も雪落としをする等があることがわかりました。
これらのことも マニュアルにも盛り込んでほしいと思います。 - 「雪は構ってあげないといけない」。
その通りですね。
ふわふわで降ってきた雪もすぐに重くなりガチガチに固くなって手に負えなくなります。
柔らかい内に処理できれば最善なのですが。
深い雪の時にせめて様子を見にいけるように、「かんじき」か「スノーシュー」を備えてはいかがでしょう。