令和7年度「津波防災の日」について

令和7年10月10日
中央防災会議決定

1.趣旨

 津波は、一度発生すると、広域にわたり、国民の生命、身体及び財産に甚大な被害を及ぼすとともに、我が国の経済社会の健全な発展に深刻な影響を及ぼすおそれがある災害である。他方、津波は、その発生に際して国民が迅速かつ適切な行動をとることにより、人命に対する被害を相当程度軽減することができることから、津波及び津波による被害の特性、津波に備える必要性等に関する国民の理解と関心を深めることが特に重要である。
 我が国は、常に、大規模な地震及びこれに伴う津波による被害を受ける危険にさらされており、多数の人命を奪った東日本大震災の惨禍を二度と繰り返すことのないよう、津波対策に万全を期する必要がある。
 平成23年6月には「津波対策の推進に関する法律」(平成23年法律第77号)が制定され、国民の間に広く津波対策についての理解と関心を深めるため、11月5日が「津波防災の日」と定められたところであり、この「津波防災の日」においては、国及び地方公共団体は、その趣旨にふさわしい行事が実施されるよう努めることとされている。
 加えて、平成27年12月には、国連総会で11月5日を「世界津波の日」と定める決議が全会一致で採択され、津波の脅威について関心が高まり、その対策が進むことが期待されている。
 また、平成29年3月に「津波対策の推進に関する法律」の一部が改正され、国及び地方公共団体は、津波対策に関する国際協力の推進に資するよう配慮することとされている。
 令和7年7月30日に発生したカムチャツカ半島東方沖の地震に伴う津波については、津波警報の発表等による避難行動において浮かび上がった課題や好事例の検証を進めるため、内閣府及び消防庁において、津波警報が発表された地方公共団体等に対し、①避難行動要支援者も含めた避難、②避難所等における熱中症対策、③屋外の指定緊急避難場所から屋内の指定避難所等への移動等について重点的にヒアリングを実施し、同年8月28日に聞き取り結果を取りまとめている。この結果を踏まえ、同年9月には、「カムチャツカ半島付近の地震に伴う津波に係る避難等の調査」を実施することとした。
 災害からの被害を軽減するためには、これまで発生した大規模自然災害から得られた教訓を的確に活かし、平素から災害時における被害軽減につながる備えを充実強化するとともに、災害時に迅速かつ適切な防災活動を行い、被災後の円滑な復旧・復興を可能としていくことが重要である。
 平常時から災害に対する備えを心掛けるとともに、発災時には、住民が「自らの命は自らが守る」意識を持って行動する「自助」、地域住民や企業等が連携してお互いに助け合う「共助」、行政による「公助」を組み合わせて、対応することが重要である。これによって社会全体における防災力を向上させるため、以下のとおり、国、関係公共機関、地方公共団体その他関係団体の緊密な連携の下に、防災に関する各種の行事、「津波防災の日」の周知や広報活動等を全国的に実施する。
 なお、防災訓練の実施に当たっては、訓練を実施する際の基本的な考え方について示す「令和7年度総合防災訓練大綱」(令和7年7月1日中央防災会議決定)を参考にするものとする。

2.実施主体

国、関係公共機関、地方公共団体、その他関係団体

3.津波防災の日に関する取組

(1) 実施期間

「津波防災の日(11月5日)」の前後の期間(主として、令和7年10月28日(火)から同年11月12日(水)までの16日間)

(2) 実施事項等

 東日本大震災から10年以上が経った現在、改めて、国、地方公共団体等は、津波及び津波による被害の特性、津波に備える必要性等に関する国民の理解と関心を深めることが特に重要である。
 こうした「津波防災の日」の趣旨を踏まえ、津波に対する日頃からの「備え」と更なる防災意識の向上を図るため、国、地方公共団体等は、「津波防災の日」の周知や、その前後の期間における津波避難訓練等の行事の実施、津波避難計画の策定等、津波防災に関連した取組の推進に努めることとする。
 また、取組の推進に当たっては、特に以下の事項に留意するものとする。

ア 一般国民の防災意識の向上と実践的行動の定着を促すため、「津波防災の日(11月5日)」に関する広報等を積極的に行い、津波に関するイベントを開催すること。また、平成27年12月に国連総会において同日が「世界津波の日」と定められたことを受けて、平成29年3月に改正された「津波対策の推進に関する法律」を踏まえ、「津波防災の日」には、津波対策に関する国際協力の推進に資するよう配慮しつつ、その趣旨にふさわしい行事が実施されるよう努めること。

イ 令和7年11月5日(水)に行われる予定の訓練用の緊急地震速報の配信にあわせた住民参加型訓練を行うなど、地震や津波に関連して発生する障害をシナリオとして組み込んだ実践的な津波避難訓練を実施すること。また、過去の災害の脅威や体験談等を語り継ぐ機会を設けるなど、主体的な避難行動をとる姿勢を醸成するための防災教育や災害伝承を推進すること。

ウ 令和4年3月に「津波対策の推進に関する法律」の一部が改正され、津波に関する防災上必要な教育及び訓練の実施等に当たっては、デジタル技術の活用を通じて、これらをより効果的に行うよう努めるものとされた。このことを踏まえ、「津波防災の日」における訓練の実施に当たっては、デジタル技術の積極的な活用に努めること。

エ 主体的な避難行動の徹底が図られるよう、以下のことについて住民に周知すること。

  • ⓵ 津波からの避難については、住民等一人ひとりの主体的な避難行動が基本となることに鑑み、強い揺れや弱くても長い揺れがあった場合には津波の発生を想起し、津波警報等の情報を待たずに自らでき得る限り迅速に高い場所(津波到達までに想定している避難場所までに間に合わないと判断した場合は、その場で一番高い場所)への避難を開始すること。
  • ⓶ 大津波警報等を見聞きしたら速やかに避難すること。
  • ⓷ 津波は、第二波、第三波等の後続波の方が大きくなったり、数時間から場合によっては一日以上にわたり津波が継続したりする可能性があること。また、強い揺れを伴わず、危険を体感しないままに押し寄せる、いわゆる津波地震や遠地地震、火山噴火等による津波の発生の可能性など様々な特性があること。
  • ⓸ 地震・津波は自然現象であり、想定を超える可能性があり、特に地震発生直後に発表される津波警報等の精度には一定の限界があること、津波浸水想定の対象地域外でも浸水する可能性があることなど、津波に関する想定・予測には不確実性があること。
  • ⓹ 家族の安否確認のために津波の危険性がある地域へ戻ったり、その場にとどまったりすることを避けるため、家族の安否確認の方法や、津波から避難した際の集合場所等の避難ルールを各家庭であらかじめ決めておくこと。なお、家族に高齢者、障害者、乳幼児等の要配慮者がいる場合は、当該要配慮者の避難行動に際し、必要な配慮をあらかじめ各家庭等で決めておくことも含まれる。
  • ⓺ 地震発生後、避難の妨げになること等を防ぐため、住宅の耐震化、家具の転倒防止対策、食器等の落下防止対策等をしておくこと。
  • ⓻ 地震発生後、速やかに安全な場所まで避難できるよう、安全な高台の避難場所や当該場所までの避難経路をあらかじめ把握しておくこと。
  • ⓼ ペットと迅速な同行避難をするための避難経路を把握しておくこと。
  • ⓽ 地震発生後速やかに避難を開始できるよう、食料や飲料水、貴重品、医薬品、ペット用品等に加え、マスク、消毒液等を非常用持ち出し品としてあらかじめ準備しておくこと。

オ 避難対象地域の指定や指定緊急避難場所の確保、避難情報の発令基準、津波情報の収集・伝達等を定めた市町村の津波避難計画について、具体的かつ実践的な訓練を行い、計画の実効性確保に努めること。その際、徒歩避難の原則と自動車避難の限界、避難誘導・避難支援等に関するルールの取決め、避難誘導や防災対応を行う消防職員、消防団員、水防団員、警察官、市町村職員等の安全確保等に十分留意すること。地震保険の加入促進に努めること。

4.その他

 参加者の防災意識の向上等が一過性のものとならないよう、1月17日の「防災とボランティアの日」等の防災に関する記念日の普及・啓発を行うなど、「津波防災の日」終了後においても防災意識が定着するような内容となるよう努めること。

所在地 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 電話番号 03-5253-2111(大代表)
内閣府政策統括官(防災担当)

Copyright 2017 Disaster Management, Cabinet Office.