令和6年8月2日
中央防災会議決定
1.趣旨
我が国は、その位置、地形、地質、気象等の自然的条件から、台風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、高波、竜巻、暴風、崖崩れ、土石流、地すべり、地震、津波、火山噴火等による災害が発生しやすい国土となっている。また、今後、気候変動の影響により、災害の更なる激甚化・頻発化が懸念されている。
昨年度も、梅雨前線による大雨や台風第6号、台風第7号、台風第13号、令和6年能登半島地震等により、全国各地で様々な被害が発生した。
こうした我が国の国土の特徴に鑑み、政府、地方公共団体等の防災関係諸機関を始め、広く国民が、前述の災害についての認識を深めるとともに、これに対する備えを充実強化することにより、災害の未然防止と被害の軽減に資するよう、「防災の日」(9月1日)及び「防災週間」(8月30日から9月5日まで)を設けることとしている。さらに、平成23年6月に「津波対策の推進に関する法律」(平成23年法律第77号)が制定され、国民の間に広く津波対策についての理解と関心を深めるため、11月5日が「津波防災の日」と定められたところであり、この「津波防災の日」においては、国及び地方公共団体は、その趣旨にふさわしい行事が実施されるよう努めることとされている。
また、平成27年9月には、各界各層の団体等のネットワークを活用し、幅広い層の国民の防災意識の向上を図ることを目的として、「防災推進国民会議」が発足するとともに、平成28年8月に「第1回防災推進国民大会」が開催されて以降、これまでに8回同大会が開催されてきたところである。
加えて、平成27年12月には、国連総会で11月5日を「世界津波の日」と定める決議が全会一致で採択され、津波の脅威について関心が高まり、その対策が進むことが期待されている。こうした背景を踏まえ、平成29年3月に「津波対策の推進に関する法律」の一部が改正され、国及び地方公共団体は、津波対策に関する国際協力の推進に資するよう配慮することとされている。
そして、令和5年6月に「活動火山対策特別措置法」(昭和48年法律第61号)の一部が改正され、令和6年4月に施行された。本改正において、国民の間に広く活動火山対策についての関心と理解を深めるため、8月26日が「火山防災の日」と定められたところであり、この「火山防災の日」においては、国及び地方公共団体は、防災訓練その他のその趣旨にふさわしい行事が実施されるように努めることとされている。
災害からの被害を軽減するためには、これまで発生した大規模自然災害から得られた教訓を的確に活かし、平素より災害時における被害軽減につながる備えを充実強化するとともに、災害時に迅速かつ適切な防災活動を行い、被災後の円滑な復旧・復興を可能としていくことが重要である。
平常時より災害に対する備えを心がけるとともに、発災時には、住民が「自らの命は自らが守る」意識を持って行動する「自助」、地域住民や企業等が連携してお互いに助け合う「共助」、行政による「公助」を組み合わせて、対応することが重要である。これによって社会全体における防災力を向上させるため、以下のとおり、国、関係公共機関、地方公共団体及びその他関係団体等の緊密な連携の下に、防災に関する各種の行事、「津波防災の日」及び「火山防災の日」の周知や広報活動等を全国的に実施する。
なお、防災訓練の実施に当たっては、訓練を実施する際の基本的な考え方について示す「令和6年度総合防災訓練大綱」(令和6年6月28日中央防災会議決定)を参考にするものとする。
2.実施主体
国、関係公共機関、地方公共団体、その他関係団体
3.防災週間に関する取組
(1) 実施期間 |
令和6年8月30日(金)から9月5日(木)まで
(2) 実施事項
国、地方公共団体等は、災害が発生した場合、災害応急対策から、災害復旧・復興までの一連の対応を迅速かつ円滑に行うための備えを十分に行う必要がある。一方、国民は、平常時より災害に対する備えを心がけ、発災時には自ら身の安全を守るとともに、地域住民や企業等が連携してお互いに助け合うことが非常に重要である。
国、地方公共団体等は、こうした「自助」、「共助」、「公助」それぞれが適切に役割を果たすよう、「災害被害を軽減する国民運動の推進に関する基本方針」(平成18年4月21日中央防災会議決定)及び「令和6年度総合防災訓練大綱」に基づき、行政における十分な準備と訓練を行うとともに、国民に対する防災知識の普及・啓発を図り、災害被害を減らす取組を推進することが必要である。
これらを踏まえて、防災週間においては、地域の実情に応じて、次に掲げるような、防災週間の趣旨にふさわしい内容の行事等を実施するものとし、国は、関係公共機関、地方公共団体及びその他関係団体等に対して協力を要請するものとする。
ア 実施する行事等
「防災週間」を中心とする期間内に実施する行事等は次のものとする。
- ①実施主体は連携を強化し、より実践的な防災訓練等を行うものとする。
- a 風水害や土砂災害等各種災害の発生に備え、地域住民、地方公共団体、気象防災アドバイザー等の専門家等が連携し、ハザードマップ等に示された地域の災害リスクその他地域の実情を踏まえた避難訓練、大雨警報(土砂災害・浸水害)・洪水警報の危険度分布(キキクル)等の防災気象情報を踏まえた訓練の実施に努めるものとする。
また、地域の防災関係機関との協力体制を構築した上で、災害時に避難情報の発令の必要性を判断し、あらゆる手段を活用して躊躇なく避難情報を伝達できるようにするとともに、住民が適切に避難行動をとれるよう、職員と住民の参加による避難情報の発令・伝達、避難判断のための訓練の定期的な実施に努めるものとする。 - b 避難情報の発令・伝達の訓練に当たっては、避難情報の在り方が見直されたことを踏まえ、警戒レベル5(緊急安全確保)の発令を待つことなく、警戒レベル4(避難指示)までの段階で危険な場所から全員避難すること等について、住民等の理解が十分に促進されるよう周知徹底する。具体的な避難情報の発令基準や伝達方法、防災体制等を検討するに当たっては、「避難情報に関するガイドライン(内閣府、令和3年5月改定)」も参考にすること。
また、視聴覚障害者、訪日外国人等の情報が伝わりにくい要配慮者に対しては、デジタルサイネージ、字幕・手話放送、防災行政無線、多言語(やさしい日本語を含む。)化、津波フラッグ(津波に限る。)等の災害情報伝達ツールを活用した訓練の実施に努めるものとする。 - c 感染症拡大のおそれがある状況下での災害対応に備え、防災部局、保健福祉部局、保健所、消防等が十分に調整して、各機関が有する知見を活かし、医療専門家等の助言を受けるなどしつつ、感染症対策に配慮した避難所開設・運営訓練等を積極的に実施するものとする。
- d デジタル技術等を活用した災害対応に備え、電子地図を用いた関係機関相互の情報共有等、デジタル技術等を活用した実践的な訓練の実施に努めるものとする。
また、災害発生時の行動の適否を事後的に評価すること等を可能とする、スマートフォンアプリ等のデジタルツールを活用した訓練の実施に努める。 - e 大規模災害の発生を想定し、広域的ネットワークを活用した訓練や地方公共団体間の緊密な連携の下に地方公共団体相互で締結されている協定等に基づく広域的応援・受援訓練の実施に努めるものとする。
- f 災害時に交通通信等が途絶して孤立することが想定される地区について、孤立時の状況把握、救助救出活動や物資の輸送、交通の確保、通信の確保等について、関係機関が連携して訓練を実施するよう努める。
- ②防災に関し、災害時の防災活動の実施、防災意識の普及又は防災体制の整備の面で貢献した団体や個人(ボランティアや企業等も含む。)への表彰を行う。
- ③実践的な防災行動の促進のため、次のような活動等を実施する。
- ・ 防災意識の向上や普及・啓発の推進に係る活動
- ・映画・ビデオ上映会、被災や災害対応の体験談を語る会、防災センター等における災害擬似体験、キャンプ等による避難生活体験、防災体験ツアー、防災マップづくり体験、非常食の調理体験、その他の教育啓発活動
- ・テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、広報誌、インターネット、携帯端末、コミュニティ放送、ポスター、屋外看板、懸垂幕等多様な手段の活用による広報活動
- ・パンフレット、リーフレット、災害の危険箇所や指定緊急避難場所・指定避難所等について明らかにした防災マップ等の配布
- ・標語、図画等の募集
- ④行事等の実施に当たっては、これまでの様々な災害も踏まえ、災害への備えに関する次の事項について普及・啓発を行う。
- ・ 様々な災害(地震・津波災害、風水害・土砂災害、高潮・高波・暴風災害、火山災害、雪害等)発生時における、様々な状況下(家屋内、高層ビル内、路上歩行時、自動車運転中、登山中等)においてとるべき行動(特に子どもの指導にも留意すること)
- ・ 警報・注意報、大雨・洪水警報の危険度分布(キキクル)等の情報、風水害(津波を除く)、土砂災害における5段階の警戒レベルを用いた避難情報等、顕著な大雨に関する情報、南海トラフ地震に関連する情報、北海道・三陸沖後発地震注意情報等の発表時にとるべき行動の確認及び防災マップ等による指定緊急避難場所・指定避難所の位置や経路等の把握(特に子どもの指導にも留意すること)
- ・ 火山災害の発生に備え、登山者や火山周辺地域の施設管理者等が行うべき取組
- ・ 家族内及び事業所内における安否確認の連絡方法の確認及び指定緊急避難場所等でとるべき行動(特に子どもの指導にも留意すること)
- ・ 非常用持出品(救急箱、懐中電灯、ラジオ、乾電池等)の準備
- ・ 最低でも3日、出来れば1週間分程度の食料、飲料水、携帯トイレ・簡易トイレ、トイレットペーパー等の備蓄
- ・ ライフラインの途絶に備えた対応の確認(電気、ガス、上下水道、通信等)
- ・ 災害が長期化した場合における、トイレトレーラー等を利用したトイレ環境の確保、入浴・洗濯機会の確保に係る対応の確認
- ・ ペットの同行避難や指定避難所等での飼養等についての日頃からの準備
- ・ 家具・家電製品等の固定による転倒防止対策や配置の見直し、収納物の落下に対する防止対策の重要性
- ・ 建物の耐震診断及び補強の実施並びに耐震診断に対する地方公共団体等の助成制度、耐震化された公共建築物のリストの公表等公共建築物の耐震性に関する情報、被災建築物応急危険度判定活動等
- ・ ブロック塀等建築物の安全点検
- ・ 電気に起因する火災を予防するための感震ブレーカー等の設置
- ・ 地震保険加入の促進
- ・ 緊急地震速報を広く一般の利用に供するため、緊急地震速報の特性と限界の周知、及び受信時に利用者がとるべき行動等(特に子どもの指導にも留意すること)
- ・ 自主防災組織や次の事業所等における防災のための施設、設備及び資機材の点検
- - 危険物を有する石油コンビナート等の事業所
- - 電気、ガス、上下水道、通信等のライフライン関係及び廃棄物処理関係事業所
- - ターミナル駅、高層ビル、地下街、ホテル、百貨店、劇場、遊園地等不特定多数の者が出入りする施設や事業所
- - 病院、社会福祉施設等の施設
- ・ 避難所の備蓄品及び受変電設備の浸水対策(嵩上げ・移設)等
- ・ 自主防災活動の実施・参加及び消防団・水防団活動への参加・協力並びに地域住民、事業所従業員等と連携した防災訓練の実施
- ・ 地区防災計画の作成及び地区防災計画に基づいた訓練等の実施
- ・ 避難所開設当初から、パーティション・段ボールベッド等の簡易ベッドを設置できるような、住民参加型の避難所運営の訓練の実施
- ・ 個別避難計画の作成並びに避難行動要支援者名簿及び個別避難計画を活用した訓練等の実施
- ・ 個別避難計画と地区防災計画を連動させた訓練の実施
- ・ 企業における、災害時に備えた中枢機能・情報システムのバックアップ、ライフライン系統の多重化、要員の確保等、事業継続計画(BCP)の策定及び事業継続マネジメント(BCM)の構築
- ・ コンピュータ、情報通信ネットワークシステム等の保守点検及び機能停止に備えた代替手段の確認
- ・ 初期消火、顧客の避難誘導、負傷者・要配慮者救助の心構えと準備
- ・ 耐震自動消火装置付きの火気設備、住宅用火災警報器や防炎品、住宅用消火器等による火災対策
イ 行事等実施に当たっての留意事項
①地域における災害事例、防災体制、防災意識及び防災活動等の実情を踏まえ、かつ、東日本大震災を始めとする大規模地震・津波災害や近年の風水害・土砂災害、高潮・高波・暴風災害、火山災害、雪害等の経験と教訓を活かした効果的な行事等となるよう努めること。
②若年層や要配慮者を含めた幅広い層の住民の防災意識や災害時の行動力の向上に資するため、新技術や災害時にも活用可能な機材等の積極的な活用や体験性・ゲーム性を加味した種々の行事を組み合わせ、多くの住民が興味や関心をもって参加・体験でき、身近な防災活動に活かせることができるような実践的な内容となるよう努めること。
また、女性の積極的な参加が得られるよう努め、災害から受ける影響や被災時の支援ニーズには、女性と男性では違いがある点に留意すること。
③防災に係る既存の各種訓練や運動等の関係行事と有機的関連を保持しつつ、相互の効率を上げるよう努めること。
その一環として、自衛隊、海上保安庁等の国の機関と地方公共団体及びその他関係団体等との連携や情報連絡の緊密化等が、地域の実情に応じて更に円滑に行われるよう配慮すること。
④災害の各段階(平常時の備え、初動、避難生活、復旧・復興等)において、性別、年齢、国籍、障害の有無等の多様性に配慮した取組が更に進められるよう努めることとする。特に、女性の視点からの取組については、「災害対応力を強化する女性の視点~男女共同参画の視点からの防災・復興ガイドライン~」(内閣府男女共同参画局、令和2年5月)を参考にすること。
⑤高齢者、障害者、乳幼児等の要配慮者に十分配慮し、地域において要配慮者を支援する体制が整備されるよう努めること。
また、社会福祉施設、医療施設等に対する的確な情報提供や地域と一体となった警戒避難体制の確立等への取組が更に推進されるよう努めること。
⑥自主防災組織やボランティア、企業等民間の活動との連携を進めること。
- a 災害時における企業の果たす役割(顧客・従業員の安全、二次災害の防止、経済活動の維持、地域社会への貢献)の大きさに鑑み、各企業がその役割を十分に認識して更に防災活動を推進するよう、企業の防災意識の高揚等に努めるとともに、行事の実施に当たっては、積極的に企業の参加を得るようにすること。
- b 被災者支援を担う様々なNPOやボランティア等、これらの団体の活動調整を行う災害中間支援組織と連携を図るようにすること。
- c 一般の国民が、復旧・復興や災害予防等の幅広い局面において、NPOやボランティア活動に参加する際の情報提供等の環境整備を行うこと。
- ⅾ 避難所開設・運営訓練等の実施に当たっては、避難所運営の担い手育成の観点から、住民やNPO、ボランティア等の参加を得て避難生活環境の向上を意識した訓練となるよう努めるとともに、避難生活支援の担い手となるボランティアの確保・育成及び連携に努めること。
ウ その他の留意事項
①災害対策基本法等の一部を改正する法律(令和3年法律第30号。以下「災対法一部改正法」という。)関連
- a 令和3年5月に個別避難計画の作成が市町村の努力義務とされた。同時に、市町村が、指定福祉避難所ごとに、受入対象者を特定して指定の際に公示し、受入対象者とその家族のみの避難先であることの明確化を可能とした。そのため、指定福祉避難所等を定めるとともに、個別避難計画等を活用した防災訓練、避難支援等関係者及び高齢者、障害者等への研修等により、地域における避難行動要支援者等への支援体制を整備すること。また、防災週間等の各種機会を捉え、実効性のある個別避難計画策定に向けた取組として、避難行動要支援者本人が参加する避難訓練の実施、総合防災訓練等の各種訓練等での個別避難計画の取り上げ等を通じて市町村を支援するとともに、各種広報手段を通じて周知に努めること。併せて、市町村に対して訓練、広報等を促すこと。
- b 災対法一部改正法により、災害発生のおそれ段階において、市町村長が居住者等を安全な他の市町村に避難(広域避難)させるに当たり、必要となる市町村間の協議を可能とするための規定等が整備された。災対法一部改正法の公布にあわせて公表された「水害からの広域避難に関する基本的な考え方(内閣府(防災担当)、令和3年5月)」を参考に、広域避難の必要性の検討を行うとともに、必要な地域においては広域避難に関する周知啓発や訓練の実施に努めること。
②消防団・水防団及び自主防災組織の充実強化を図るとともに、防災訓練や防災教育の実施に当たっては、地方公共団体・警察・消防・消防団・水防団・自主防災組織・学校・企業等が連携し、地域一体となった防災体制を構築すること。
③防災教育や避難訓練を実施する際には、「防災・減災、国土強靱化新時代の実現のための提言」の中の「防災教育・周知啓発ワーキンググループ 防災教育チーム 提言」(令和3年5月)において指摘されているように、地震、水害、津波、火山噴火等、地域に応じた災害リスクや、災害時に「自分は大丈夫」と思ってしまう心の傾向である「正常性バイアス」等を踏まえ、具体的な問題意識を持って実践的に行うことが重要であること等に留意すること。
4.津波防災の日に関する取組
(1) 実施期間
「津波防災の日(11月5日)」の前後の期間(主として、10月28日(月)から11月12日(火)までの16日間)
(2) 実施事項等
東日本大震災から10年以上が経った現在、改めて、国、地方公共団体等は、津波及び津波による被害の特性、津波に備える必要性等に関する国民の理解と関心を深めることが特に重要である。
「津波防災の日」の趣旨を踏まえ、津波に対する日頃からの「備え」と更なる防災意識の向上を図るため、国、地方公共団体等は、「津波防災の日」の周知や、その前後の期間における津波避難訓練等の行事の実施、津波避難計画の策定等、津波防災に関連した取組の推進に努めることとする。
また、取組の推進に当たっては、特に下記の事項に留意するものとする。
- ア 一般国民の防災意識の向上と実践的行動の定着を促すため、「津波防災の日(11月5日)」に関する広報等を積極的に行い、津波に関するイベントを開催すること。また、平成27年12月に国連総会において同日が「世界津波の日」と定められたことを受けて、平成29年3月に改正された「津波対策の推進に関する法律」を踏まえ、「津波防災の日」には、津波対策に関する国際協力の推進に資するよう配慮しつつ、その趣旨にふさわしい行事が実施されるよう努めること。
- イ 令和6年11月5日(火)に行われる予定の訓練用の緊急地震速報の配信にあわせた住民参加型訓練を行うなど、地震や津波に関連して発生する障害をシナリオとして組み込んだ実践的な津波避難訓練を実施すること。また、過去の災害の脅威や体験談等を語り継ぐ機会を設けるなど、主体的な避難行動をとる姿勢を醸成するための防災教育や災害伝承を推進すること。
- ウ 令和4年3月に「津波対策の推進に関する法律」の一部が改正され、津波に関する防災上必要な教育及び訓練の実施等に当たっては、デジタル技術の活用を通じて、これらをより効果的に行うよう努めるものとされた。このことを踏まえ、「津波防災の日」における訓練の実施に当たっては、デジタル技術の積極的な活用に努めること。
- エ 主体的な避難行動の徹底が図られるよう、以下のことについて住民に周知すること。
- ①津波からの避難については、住民等一人ひとりの主体的な避難行動が基本となることに鑑み、強い揺れや弱くても長い揺れがあった場合には津波の発生を想起し、津波警報等の情報を待たずに自らでき得る限り迅速に高い場所(津波到達までに想定している避難場所までに間に合わないと判断した場合は、その場で一番高い場所)への避難を開始すること。
- ②大津波警報等を見聞きしたら速やかに避難すること。
- ③家族の安否確認のために津波の危険性がある地域へ戻ったり、その場にとどまったりすることを避けるため、家族の安否確認の方法や、津波から避難した際の集合場所等の避難ルールを各家庭であらかじめ決めておくこと。なお、家族に高齢者、障害者、乳幼児等の要配慮者がいる場合は、当該要配慮者の避難行動に際し、必要な配慮をあらかじめ各家庭等で決めておくことも含まれる。
- ④地震発生後、避難の妨げになること等を防ぐため、住宅の耐震化、家具の転倒防止対策、食器等の落下防止対策等をしておくこと。
- ⑤地震発生後、速やかに安全な場所まで避難できるよう、安全な高台の避難場所や当該場所までの避難経路をあらかじめ把握しておくこと。
- ⑥ペットと迅速な同行避難をするための避難経路を把握しておくこと。
- ⑦地震発生後速やかに避難を開始できるよう、食料や飲料水、貴重品、医薬品、ペット用品等に加え、マスク、消毒液等を非常用持ち出し品としてあらかじめ準備しておくこと。
- オ 避難対象地域の指定や指定緊急避難場所の確保、避難情報の発令基準、津波情報の収集・伝達等を定めた市町村の津波避難計画について、具体的かつ実践的な訓練を行い、計画の実効性確保に努めること。その際、徒歩避難の原則と自動車避難の限界、避難誘導・避難支援等に関するルールの取決め、避難誘導や防災対応を行う消防職員、消防団員、水防団員、警察官、市町村職員等の安全確保等に十分留意すること。
5.火山防災の日に関する取組
(1) 実施期間
「火山防災の日(8月26日)」をはじめとする地域の実情等に応じた適切な時期
(2) 実施事項等
災害の脅威と豊かな恵みの両面を併せ持つ火山について正しく知り、必要な備えを行うために、国民の関心と理解を深めることが特に重要である。
「火山防災の日」の趣旨を踏まえ、国、地方公共団体等は、「火山防災の日」の周知や、火山防災訓練等の行事の実施等、火山防災に関連した取組の推進に努めることとする
また、取組の推進に当たっては、特に下記の事項に留意するものとする。
- ア 一般国民の防災意識の向上と実践的行動の定着を促すため、「火山防災の日(8月26日)」に関する広報等を積極的に行い、火山防災に関するイベントを開催すること。
- イ 関係府省庁等が参加し、各地の火山防災協議会等が策定した避難計画に基づき、又はその検討状況に応じて、火山ハザードマップに即した避難訓練や住民、登山者、旅行者への情報伝達体制を確認する訓練等を実施すること。また、過去の災害の脅威や体験談等を語り継ぐ機会を設けるなど、主体的な避難行動をとる姿勢を醸成するための防災教育や災害伝承を推進すること。
- ウ 主体的な避難行動の徹底が図られるよう、以下のことについて住民や登山者等に周知すること。
- ①火山防災マップ(火山ハザードマップに避難先、避難経路及び避難手段等に関する情報のほか、住民や一時滞在者等への情報伝達手段等を付加して作成されたもの)等を確認し、噴火警報・予報の発表時には噴火警戒レベル等に応じた行動・対応をとること。
- ②噴火速報が発表された際や噴火に巻き込まれた際は、近くの山小屋や退避壕、岩陰等、頭や身体を守れる場所に一時避難すること。
- ③活火山への入山時には、火山の状態や特性を踏まえ、火山防災マップ・火山ハザードマップ、ヘルメット、ゴーグル、マスク、ヘッドライト、雨具、タオル、非常食、飲料水、携帯電話等の通信機器・予備電源、登山地図、コンパス等、必要なものを装備・持参すること。
- ④登山を行う際には、登山届(登山計画書)を作成・提出するよう努めること。
- エ 訓練の実施に当たっては、住民のみならず、登山者や観光客等についても想定し、宿泊施設、観光施設、交通施設等の訓練への参加についても推進するとともに、訓練により明らかとなった課題等について、関係者間で意見交換や情報共有を行い、避難計画等を定期的に見直し、改善に努めること。
6.その他
参加者の防災意識の向上等が一過性のものとならないよう、1月17日の「防災とボランティアの日」等の防災に関する記念日の普及・啓発を行うなど、「防災週間」、「津波防災の日」及び「火山防災の日」終了後においても防災意識が定着するような内容となるよう努めること。