NPO法人豊前の国建設倶楽部の活動


(1)地域及び組織の特徴

・ 大分県と福岡県の県境にまたがって流れる山国川流域を中心に活動する地域おこしグループである。
・ 1999(平成11)年9月、NPO法人格を取得。現在、会員は大分県民35名、福岡県民15名、計50名である。


山国川流域の位置

(2)事例の概要

県境を越えて大綱引きやサイクリングイベントなどの地域おこしを行なってきたグループ(後のNPO)の活動が、地域の防災力向上にも寄与。NPOが中心となって隣り合う県のそれぞれに属する複数の消防団と合同で防災訓練を企画。災害時の避難は行政区画の中で行うことが想定されていることが一般的だが、ここでは県境を越えて避難する訓練が実施されている。また、地域おこし活動で得たノウハウを活かして阪神・淡路大震災被災地への炊き出しボランティアも実施。

(3)経緯

・ 平松元大分県知事の提唱する「一村一品運動」の一貫である「豊の国づくり塾」に参加したメンバーが中心となって、地域づくりグループ「豊の国中津落ちこぼれ塾」を仲間13人で結成。
・ 空き缶を拾いながら山国川の下流から上流まで歩いてみる活動を行ううちに、大分県側の他の地域おこし活動団体、福岡県側の青年団や商工会青年部との交流が始まり、1986(昭和61)年にNPOの前進となる任意団体の「豊前の国建設倶楽部」が発足。活動が広がり、大分と福岡の県境を流れる山国川を舞台にした「大綱引き」のイベントを開催することで越境交流が一気に深まり、県境を越える避難訓練などの防災の取り組みにも繋がっていく。
・ また、1995(平成7)年の阪神・淡路大震災では、地域活動で得た経験を生かして被災地に乗り込み、4000人分の炊き出しボランティアを行なった。

(4)活動体制

・ 代表である木ノ下勝矢氏を中心に約30名ほどが主要メンバーとして活動。また、イベントなどの大掛かりな活動については、県境中津・豊前・築上広域観光連携推進協議会を通じて展開するなど、地域の様々な組織との連携・協力の下で活動を行っている。

(5)取り組みの内容

1)県境を越える地域おこし活動
 次のような県境を跨いでの地域おこしイベント開催を通じて、県境を越えた防災の取り組み実現の環境が整えられていった。

■大綱引イベントの実施
・ 長さ400m、直径10cm、重さ2トンのロープを、仲間10名で銀行から資金を借りて200万円で購入。「県境」をテーマにイベント「大分県対福岡県山国川水上大綱引き合戦」をまさに県境上で行い、3万人の人出を集めた。
・ 1988(昭和63)年には、茨城県龍ヶ崎市龍ヶ崎商店街で「九州対常陸の国対抗綱引き合戦」、県境はなくなりつつあるので今度は国境をなくそうと、1991(平成3)年「日米大綱引き合戦」を2千人が参加し、ロサンゼルス市郊外のズーマビーチで実施。
・ その他、北海道レンガ庁舎前での平松大分県知事(当時)、横路北海道知事(当時)を入れての大綱引き合戦を始め、山口、熊本、博多など全国20箇所以上での綱引き交流をしている。


写真 「大分県対福岡県山国川水上大綱引き合戦」の様子

■ママチャリロードレースの実施
・ 2004(平成16年)11月、福岡県側である吉冨町から大分県側に位置する旧山国町役場まで、山国川沿いのサイクリングロードを活用して県境を跨るルートを設定し、ママチャリでも参加できるサイクリングイベントを行った。「日本自転車振興会」の補助金を得て、ハンディ・キャップを持つ方々と協働運営で、イベントを実施した。

2)県境を越える防災の取り組み

上記のような地域おこしイベントを通じて県境を越えた交流が活発になり、次のような県境を越える防災の取り組みも展開されるようになった。

■消防団との合同訓練
・ NPO法人豊前の国建設倶楽部が企画を行い、行政区域を越えて各市町村の消防団に呼びかけて協力を得、隔年で合同訓練を実施している。
・ ボートを使って川を越える越境避難や、病院などで緊急時に必要な情報を県境を越えて共有するなど、県境を跨る内容の訓練も行われている。
・ また、地域の様々なNPOが参加し、一緒に土嚢積みなどの訓練を行っている。


写真 消防団との土嚢積み訓練の様子

■過疎地高齢者の支援
・ 隔年の合同訓練以外にも、災害時要援護者に対する訓練については日頃から実施。安否確認を近隣で確実に行う訓練や、緊急時の連絡体制を確立するため、親戚やかかりつけの病院などとの連絡体制を確認する訓練などを行っている。
・ これに関連して、災害時に孤立する不安がある県境の集落に対しては、実際どの家に災害時要援護者となる高齢者がお住まいかを調べる調査も行っている。

■阪神・淡路大震災における炊き出し等支援
・ 阪神・淡路大震災が発生した時に、千人分の豚汁とご飯の炊き出しを4箇所(東灘区の小学校、中学校、高校、公会堂。合計で4千人分。)で実施した。3トンの水と、米、味噌、しいたけ、肉、その他の必要な材料を4トントラック2台で持参し、マイクロバス2台で48名が被災地に乗り込んで活動した。
・ 全国的に地域づくり交流を展開していた時期でもあり、「自分たちの地域だけ良くなろうと考えてもけしてよくならない、広い地域で考えることが必要」という考え方が共有されていたところから、何か支援しょうということになった。それまでのイベントで使っていた大なべ(豚汁千人分)などの道具もあり、温かい食べ物がほしい時期だと思ったのでやろうと思った。


写真 阪神・淡路大震災での炊き出し支援の様子

3)防災力向上も狙いとした地域おこし活動

■かわりん丸(足こぎボート)の活用
・ 山国川に親しむことができるように、オールでも足こぎでもボートが使えるボート「かわりん丸」を独自に購入。このボートを活用して、子どもが川に親しむイベントを行うだけでなく、救助訓練も行っている。
・ 例えばゴムボートなどのオールで漕ぐしかないボートだと素人が扱うことは難しいが、「かわりん丸」は足こぎで普通の人にも扱える。こうしたことから、いざという時には救助、救援にも使えることを意図して購入したものである。


写真 かわりん丸

写真 かわりん丸を使った訓練の様子

4)その他の活動

■山国学習館の運営
・ 国土交通省山国川河川事務所のなかに山国川の自然、水循環、生態系などを紹介する「山国学習館」が整備され、本NPOのスタッフが常駐し、その運営・管理を担っている。


写真 山国川学習館外観

写真 山国川学習館内部

■ベロタクシーの社会実験の実施
・ 2004(平成16)年1月、山国川の青の洞門周辺において、ベロタクシー(基本的に、運転手を含めて3から4人乗りで、屋根付きの3輪または4輪自転車を使ったタクシー。「ベロ」はラテン語で「自転車」の意味。環境に優しい交通というコンセプトのもとでドイツで使われ始めた呼び名。)の社会実験を、ベロタクシーの普及活動を行っているNPO法人ベロタクシージャパンの協力を得て実施した。実験ではドイツで開発された坂道用の補助動力付きのベロタクシーが使用された。


写真 ベロタクシーの社会実験の様子

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内閣府政策統括官(防災担当)

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