02.漁村集落の生活様式からアパートでの都市的な生活への変化は、近隣間で勝手の違いを生み出した。


【区分】
第6期 第5期以降も続く課題
6-1.生活の再建
5.市民生活
【教訓情報】
02.漁村集落の生活様式からアパートでの都市的な生活への変化は、近隣間で勝手の違いを生み出した。
【文献】
◆災害後の現在における近隣関係について、災害前の近隣関係に比較しつつ事例的に行った聞き取り調査によると、近隣関係の変化としていくつかの点が明らかになった。そのひとつは、災害前では自宅を留守にする時、鍵をかけることはなかったが、災害後においては、施錠するようになったということである。この変化の原因として次のことが指摘される。まず、もっとも大きな原因は、災害後、復興計画によって高台地区への住居移転がなされたことである。このために漁家層を中心に職住の空間的分離が大きくなった。高台にある自宅から離れた海と海岸において就業する場合、両者に距離があることから留守宅の管理に目が届きにくくなった。しかも災害前であれば、熟知しあった近隣がいたから、島外に出かける場合でも、施錠しないで留守宅をこの近隣に依頼することができた。しかし災害後は、居住地が復興計画に依拠して展開したことから、近隣それ自体が災害前の近隣とは異なることになった。そのために近隣に留守宅を頼み得る関係性がまだできあがっていない。それゆえ住宅に施錠しなければならない条件が生じた。さらに、住宅が近代的な様式の新築住宅となったことから施錠が容易になった。とくに公営住宅に入居する世帯は、アパート形式の住宅であることから鉄の扉に施錠することが習慣とならざるをえなくなった。いずれにしても、住宅の施錠行為の出現は、地域生活の再建過程に伴い顕著になった現象である。このような施錠行為が習慣化するか否かは、今後における近隣関係の展開を見極める論点のひとつになるものと思われる。[『北海道南西沖地震に伴う家族生活と地域社会の破壊と再組織化に関する研究』北海道大学文学部(1999/11),p.114-115]
◆ふたつに、災害後、朝起きてから屋外に出て近隣に出会った時、気軽に「おはよう」という挨拶ができにくくなったということである。単純なこの挨拶の言葉がかけにくくなったいうこのような変化は、災害後の居住地が復興計画に依拠して展開したことから、近隣それ自体が災害前の近隣とは異なることになったということにかかわる。同じ青苗地区の住民であるから、災害前からお互いは顔見知りではあるけれども、災害前の近隣とは異なる隣人の存在は、知り合いの度合いにおける微妙な違いから一種の違和感がみられるようになった。馴染みの程度の微妙な差異が挨拶のしかたに現れているという。もっとも、区画割に際して、親戚同士が隣り合わせに居住区を希望したり、元の住居跡に近い区画を希望した結果、元の近隣と隣り合わせになったという場合がある。こうした場合の近隣関係は、微妙な違和感は回避しやすい。[『北海道南西沖地震に伴う家族生活と地域社会の破壊と再組織化に関する研究』北海道大学文学部(1999/11),p.114-115]

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