【区分】
第3期 地震被害発生期
3-4. 被災者の行動
1. 避難行動
【教訓情報】
17.津波のとき「靴を履いて逃げる」余裕などは、まず、ないと思うべきである。
【文献】
◆最近のことだが「津波に襲われた時はどうする」との設問に対して「とにかく逃げる・・・・・・・」としたうえで「靴を履いて歩いて逃げましょう」と教える、ある「地震津波研究会」発行の『津波ハンドブック』というのがあって首を傾けざるをえなかった。「とにかく逃げる」も、この後で書いているように、車での避難はなるべく避けるも、そういう意味での歩いて逃げるも、全くそのとおりだが「靴を履いて・・・・・・・」は、余計なお節介と云うよりも、これまでの津波災害の教訓に照らして、不適切なアドバイスと云うほかない。けっして「揚げ足」をとっているのではない。(中略)前記のように北海道南西沖地震津波の教訓の一つとしても指摘されているが、逃げるときは、時間を無駄にしないよう、なるべく早く、速くというのが鉄則であって、情況にもよるが「靴を履いて歩いて逃げる」余裕などは、まず、ないと思うべきである。取材でたまたま奥尻島に行っていてこの津波に遇い、九死に一生をえた水中写真家・中村征夫さんの講演(「大地震からの生還」)を聞いたことがある(釜石市「地震に強いまちづくりシンポジウム」2004.11.27)。津波で全滅した奥尻島・青苗地区の岬から数軒目の民宿に泊まっていたのだという。宿泊に際して「津波が来たら高台に逃げるように」と云われていたが、いざ地震になったら、自分の中では地震と津波の発生が結びつかなかった。ところが地震の後、直ぐさま宿のおくさんが「津波が来るから早く逃げなさい」と、大声で注意してくれた。そこで「靴をはこうとしていたところ」、かさねて「靴なんか履いてる場合じゃない」と怒鳴るように急き立てられたので、裸足で屋外に飛び出し、真っ暗な夜道を高台に向かって走った。お陰で自分は、きわどいところで助かったと、宿の人たちに、たいへん感謝していた。併せて、当夜のことをいろいろと振り返り「ちょっとした油断のあった人たちが波にのまれたのではなかろうか」と話していた(『岩手東海新聞』2004・11・29)。[『津波の恐怖−三陸津波伝承録』山下文男(2005/3),p.95-96]
【区分】
第3期 地震被害発生期
3-4. 被災者の行動
1. 避難行動
【教訓情報】
17.津波のとき「靴を履いて逃げる」余裕などは、まず、ないと思うべきである。
【文献】
◆最近のことだが「津波に襲われた時はどうする」との設問に対して「とにかく逃げる・・・・・・・」としたうえで「靴を履いて歩いて逃げましょう」と教える、ある「地震津波研究会」発行の『津波ハンドブック』というのがあって首を傾けざるをえなかった。「とにかく逃げる」も、この後で書いているように、車での避難はなるべく避けるも、そういう意味での歩いて逃げるも、全くそのとおりだが「靴を履いて・・・・・・・」は、余計なお節介と云うよりも、これまでの津波災害の教訓に照らして、不適切なアドバイスと云うほかない。けっして「揚げ足」をとっているのではない。(中略)前記のように北海道南西沖地震津波の教訓の一つとしても指摘されているが、逃げるときは、時間を無駄にしないよう、なるべく早く、速くというのが鉄則であって、情況にもよるが「靴を履いて歩いて逃げる」余裕などは、まず、ないと思うべきである。取材でたまたま奥尻島に行っていてこの津波に遇い、九死に一生をえた水中写真家・中村征夫さんの講演(「大地震からの生還」)を聞いたことがある(釜石市「地震に強いまちづくりシンポジウム」2004.11.27)。津波で全滅した奥尻島・青苗地区の岬から数軒目の民宿に泊まっていたのだという。宿泊に際して「津波が来たら高台に逃げるように」と云われていたが、いざ地震になったら、自分の中では地震と津波の発生が結びつかなかった。ところが地震の後、直ぐさま宿のおくさんが「津波が来るから早く逃げなさい」と、大声で注意してくれた。そこで「靴をはこうとしていたところ」、かさねて「靴なんか履いてる場合じゃない」と怒鳴るように急き立てられたので、裸足で屋外に飛び出し、真っ暗な夜道を高台に向かって走った。お陰で自分は、きわどいところで助かったと、宿の人たちに、たいへん感謝していた。併せて、当夜のことをいろいろと振り返り「ちょっとした油断のあった人たちが波にのまれたのではなかろうか」と話していた(『岩手東海新聞』2004・11・29)。[『津波の恐怖−三陸津波伝承録』山下文男(2005/3),p.95-96]