災害危険情報の公開による住民の防災対策実施効果(調査結果の発表)

記者発表資料

平成14年5月2日
内閣府(防災担当)

災害危険情報の公開による住民の防災対策実施効果

(調査結果の発表)

今回の調査について

 本年2月、内閣府防災担当では、過去に豪雨災害等を経験し、その後、行政が積極的に災害危険情報を提供してきている広島県広島市、呉市、高知市の3市の市民(計900人)に対して、地域の住民がこれらの情報を入手・理解し、防災対策に結びつけているかを把握するためのアンケート調査を実施しました(回答率44.1%)。

 結果の概要については、別紙を参照ください。


 本件については、官邸記者クラブ、警察庁記者クラブ、国土交通記者クラブで同時に発表しています。詳しい説明をご要望される場合は、下記担当までお問い合わせください。

本件に関する問い合わせ先
内閣府 災害予防担当参事官補佐  中川 雅章
TEL 03−3501−6996


別紙
災害危険情報の公開による住民の防災対策実施効果

 近年、災害を経験し、行政が積極的に災害危険情報を提供してきている広島県広島市、呉市、高知市3つの市(計900人 回答率44.1%)において、地域の住民がどれほど情報を入手・理解し、防災対策に結びつけているかを、アンケート調査によって把握した。

○継続的な広報が必要

 3市とも、平成11年〜13年に「災害危険区域図」や「防災マップ」を配布している。 配られたマップを「自分が見た」人は、3市を平均すると約50% で、まったく知らなかった人も約25%いた。

 また、市別に見ると、「自分が見た」人の割合は、呉市、広島市、高知市でそれぞれ4割、5割、6割となっている。市によって差が出た理由としては、呉市が「自治会を通しての回覧方式」をとっているのに対し、広島と高知では「新聞折り込みによる全戸配布」方式をとったためとみられる。特に高知市は、平成11年から毎年6月に「防災マップ」を配布しているため、「自分が見た」人が最も多くなったと見られる。

災害危険区地図、防災マップの認知状況

○すぐ取り出せる所に保管している人は16%

広島市では、平成12年に「土砂災害危険図」を、平成10年には地震に備えるための「防災マップ」を全戸に配布しているが、半数前後は保管場所が不明であったり、すでに捨てられてしまっている状態であり、「すぐ取り出せる」状態で保管していた人は、16%にすぎない。

住民の防災対策実施効果結果円グラフ1住民の防災対策実施効果結果円グラフ2

○情報を理解できたと答えた人は約8割

 「災害危険区域図」や「防災マップ」を自分で見たり家族から聞いたりした人のうち、地域の災害危険度がわかった(よくわかった+まあわかった)と答えた人は、3市平均で約8割となっている。

住民の防災対策実施効果結果棒グラフ1

○家族で災害対策を話し合うきっかけになっている

 防災マップ等を見たり聞いたりした後に実施した防災対策については、「家族で話し合った」や「家族や近所の避難体制を決めた」が多く、家族単位で災害対策を話し合うきっかけになっていると考えられる。一方、地域単位で実施する訓練や避難体制づくりなどは低調であり、地域の災害対策実施にまでは至っていないと見られる。

 一方、数は多くないものの、行政が作成した防災マップをベースに、地域独自の防災マップを作成している例もある。広島市では、防災活動に熱心ないくつかの自主防災会で独自の土砂災害防災マップを作成し、訓練や避難体制づくりに役立てている(下図参照)。また、高知市でも、住民が、豪雨災害時の被災箇所など町内の危険箇所を実際に見て回り、地区独自の防災マップを作成した地区があった。

住民の防災対策実施効果結果棒グラフ1

 広島市伴地区の防災マップ
出典:広島市安佐南区三城田町内会自主防災会(平成11年)

○住民は身近で具体の行動に結びつく防災情報を求めている

 住民に、今後、特に充実してほしい防災情報を聞いたところ、「今後、災害で被害を受ける可能性が高い場所を示した地図」が最も多かった。また、地域の災害に備えるために必要な情報では、「安全な避難場所と避難経路」が最も多かった。このことから、住民が求めているものは、どこで災害が起きる可能性があり、その時、どこに逃げればよいかという身近で具体の行動に結びつく防災情報であると考えられる。

地域の災害に備えるために必要な情報1地域の災害に備えるために必要な情報2

最近では、各地の自治体で、防災地図等が数多く提供されるようになった。しかし、アンケートでは、配られた防災マップを自分が見ている人の割合や、すぐに取り出せる状態で保管している人の割合は低く、提供された情報が十分活かされていない状況が見られる。
 行政は、単に地図を配布して対策を終えるのではなく、普段から広報を行うなど継続して取り組んでいくとともに、住民側の関心に応じて、町内や小学校区ぐらいの範囲の地図に、災害種類別の危険箇所や避難場所・避難経路を明示するなど、身近で具体的な防災情報をわかりやすく伝える努力が必要である。
 一方、住民は、居住地域の災害発生可能性を正しく理解し、災害対策の課題を確認するとともに、行政と連携しつつ、地域のコミュニティレベルで相互協力できる体制を確立することが重要である。
 地域の防災能力を高めるためには、行政、地域、市民が、地域の防災情報を共有し、連携して地域の災害対策を実施していくことが重要である。

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