13.6.28 中央防災対策第2回

中央防災会議議事録

中央防災会議事務局

中央防災会議議事次第

日時:平成13年6月28日17:00 ?18:00

場所:官邸大客間

  • 1.開会
  • 2.会長挨拶(内閣総理大臣)
  • 3.議題
    • (1)三宅島噴火災害及び有珠山噴火災害等に関する報告
    • (2)総理指示3事項に関する報告
      • A 政府の防災情報体制等の点検
      • B 地震対策状況の再点検
      • C 東海地震対策の充実強化
    • (3)災害に係る住家の被害認定基準改定及び防災基本計画の修正に関する基本的方針の説明
    • (4)その他
  • 4.閉会
○防災担当大臣  中央防災会議を開催いたします。本日は皆様には大変御多忙のところ御出席いただきまして、厚く御礼申し上げます。防災担当大臣を拝命しております村井仁でございます。総理を始め、各委員の御指導の下、防災対策の推進に万全を期してまいりたいと存じます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 さて、今回は、小泉内閣の下で最初の中央防災会議でございますので、本来なら、御出席の閣僚の方々、その他の委員の皆様全員からご挨拶をいただくべきところでありますが、時間の関係もございますで、座席表を配付してございますので、それで御承知をいただきまして、まず当会議の会長でございます小泉内閣総理大臣から御挨拶をいただきます。
○内閣総理大臣  小泉内閣として第1回目の中央防災会議の開催にあたりまして、一言ご挨拶申し上げます。
 御承知のように、我が国は世界でも稀なほど災害の頻発する国であり、災害から国民の生命及び財産を守り、安定した経済社会生活を維持することは、国政の最重要課題の1つであります。災害対策については、これまでも政府として過去の幾多の災害からの教訓を踏まえ、施策の積み重ねに努めてきたところでありますが、不断の努力により、一層の充実を図ることが必要であります。
「治にいて乱を忘れず」とは、大規模災害の備えにも通ずる政治の要諦であります。国民が真に安心して安全に暮らせる日本の実現を目指して私も全力を尽くしてまいりますので、委員各位の大所高所からの御議論を期待し、私の挨拶とさせていきます。よろしくお願いいたします。
(報道関係者退室)
○防災担当大臣  どうもありがとうございました。
 それでは、時間の関係もございますので、早速議事に入らせていただきます。
 本日の議題はお手元に配付しております資料をごらんいただきたいと存じます。時間の制約がございますので、議題の第1「三宅島噴火災害及び有珠山噴火災害等に関する報告」から、第3の「災害に係る住家の被害認定基準改定及び防災基本計画の修正に関する基本的方針の説明」までを一括して事務局から御説明させていただきます。
○政策統括官  御説明させていただきます。資料の1をごらんいただきたいと思います。目次をめくっていただきまして、1ページは三宅島噴火災害の状況であります。三宅島の火山活動が始まってからちょうど1年になります。大量の有毒ガスの放出が続いておりまして、いまだ終息の見通しは立っておりません。
 2ページにありますように、全島の避難から10か月近く経過いたしまして、これまでもさまざまな生活支援策を行ってきておりますが、避難生活の長期化に伴い、今後とも支援策の検討が必要だと思います。
 また、これまでも近くの島から日中だけ島に渡りまして、安全を確認しながら観測体制を整備、都道や電力の確保、応急的な泥流対策などに努めてきておりますが、来月からは有毒ガスへの対策を講じた上で、作業員が夜間も島に滞在し、集中的に泥流対策の工事等を実施することとしております。
 また、家屋の被害を受けた世帯などにつきまして、島に渡って被害を確認していただくことを予定しております。
 3ページは、島の全体図であります。
 4ページ、5ページは、有珠山関係の災害の状況でございます。現在は火山活動が停滞いたしまして、6月20日に火口から200 メートルの範囲を除きまして、避難指示が解除され、最大1万5,000 人以上に上りました避難指示対象の事態は解消されました。
 6月23日には、虻田町でタウンミーティングが開催され、火山との共生、火山の恵みを生かした地域づくりが議論されました。今後は今なお仮設住宅にいらっしゃる1,500 名以上の方々の対応を含め、地域の復旧、復興が課題となってございます。
 5ページは、これまでの避難指示区域の推移を掲げてございます。
 次に議題の第2といたしまして、前回の会議での総理指示事項等について御説明いたします。
 まず6ページの「政府の防災情報体制等の点検」につきましては、関係省庁や地方公共団体と連携しながら検討を進めているところでございます。
 1.A地方公共団体の防災情報システムを官邸に設置すること。
 2.A被災地の画像を電送するヘリコプターの位置を表示するシステムの構築など、ITを活用しながら、ソフト、ハードの両面にわたる整備検討を進めて、防災情報体制の充実を図ってまいりたいと存じております。
 7ページから8ページの「地震対策状況の再点検」につきましては、体制、施設整備の両面から調査を行ってまいりました。これまで特に阪神・淡路大震災の後、整備が進められてまいりましたが、実効性に問題が見られるところもあり、また、個人の住宅、公共的建築物、施設を通じまして、耐震化はまだまだ進んでいない現状にあります。今後、体系的に現状把握を行いまして、8ページに掲げますような実践的なマニュアルづくりでございますとか、あるいは耐震改修推進の隘路打開などの課題に関して検討を行っていきたいと存じます。
 このため、本会議におきまして、御了解をいただければ、専門調査会を設置し、御検討いただきたいと存じております。
 次に9ページの「東海地震対策の充実強化」につきましては、前回の中央防災会議以降、溝上委員を座長といたします専門調査会で検討が行われ、先日19日に想定震源域の検討がとりまとめられたところでございます。今後、著しい被害が予想される地域の範囲等を含めて検討が行われまして、更に必要に応じ強化地域、防災計画の見直し等が行われることとなります。
 10ページは専門調査会の名簿でございます。
 次に、議題の第3のうち「災害に係る住家の被害認定基準及び運用指針について」御説明いたします。
 11ページにございますように、災害時の全壊、半壊等の被害の報告のための基準が昭和43年に策定されておりますが、特に住家につきましては、建築基準の改定等によりまして、倒壊する家が少なくなり、被害の実態に合わないとの指摘がなされておりまして、委員会を設置いたしまして、見直しを行ったところでございます。
 併せて、新基準に基づき市町村が被害調査を実施するためのマニュアルとなる運用指針を策定いたしました。今回の新たな変更点といたしましては、11ページの下の方に書いてございますとおり住家の損壊を居住のための基本的機能の喪失といたしまして、建物の傾斜でございますとか、浸水による断熱材の吸水等を損害の判断基準に加えたことでございます。
 また、次の12ページにございますように、被害認定の対象を主要構造部から、住家の主要な構成要素と変更いたしまして、床、内壁、天井、建具等を被害認定の判断基準に加えました。
 3番目に、被害の算定を部位別の損害割合で判定することといたしまして、効率的に被害の程度の判定できるようにいたしたところでございます。
 以上、本会議で御了解いただければ、市町村等の周知に努めていきたいと存じます。
 13ページに新しい基準を、現行の基準と併せて併記してございます。
 14ページが御検討いただきました委員の名簿でございます。
 次に、防災基本計画の修正についてであります。15ページにございますように、近年の災害に対応いたしまして、地下街の洪水対策、土砂災害対策、高潮対策などについての修正を行いたいと存じます。原子力災害対策についても修正を行いたいと思います。
 計画の内容が専門的事項に及びますことから、専門調査会を設置して、検討をお願いしたいと考えておりますので、この点につきましても、御了解をいただきたいと存じます。  最後に16ページは、前回の会議以降の会長専決事項の御報告でございます。防災週間についての通知を始め、合計25件の処理をしておりますので、御報告いたします。
 以上でございます。
○防災担当大臣  ただいま事務局から御説明申し上げました事項につきましての御質問、御意見は後ほどまとめてお受けすることとさせていただきます。なお、有珠山の噴火災害につきましては、先ほどの説明のとおり、火山活動が落ち着き、また、今後は復興、復旧を一層支援するということが課題になってまいりましたので、私を議長とし、関係省庁の局長級で構成する有珠山噴火災害復旧・復興対策会議というものを設置をいたしまして、併せまして昨年噴火以来設けてございました政府の有珠山噴火非常災害対策本部を廃止することといたしました。この点、御報告申し上げます。
 次に、東海地震に関する専門調査会の座長を務めておられます溝上委員から、あらかじめ資料をちょうだいしておりますので、専門調査会の検討経緯の御報告も兼ねまして、御発言をお願い申し上げたいと存じます。
○溝上委員  では、お手元の資料2にしたがって、御報告いたします。
 まず表紙をめくり1ページ目を見ますと、想定される東海地震の発生の仕組みの図とその説明が書いてあります。この図の右側が太平洋、左側が本州内陸に対応し、東海地方を東西方向によぎる垂直断面を示しています。深さについては、地表からおよそ40キロメートルまでの地下構造を示しています。
 さて、太平洋沖から海洋プレートという海底を覆う岩盤が東海地方を乗せた陸のプレート下に海溝から沈み込んでいる有様が矢印によって示されています。このような海洋プレートの沈み込みにより、陸のプレートは内陸に向かって押し歪められその先端部は下方に引きずり込まれます。その結果、海溝に沿う陸のプレートの内部では歪みの変形が進行し、応力が蓄積されて行きます。その歪みが臨界レベルに達しますと、陸のプレートの先端部が急激に跳ね返り、それまで蓄積した歪みを地震のエネルギーとして解放します。これが東海地震のメカニズムです。東海地震のような地震を海溝型巨大地震といいます。
 ここで重要な点は、陸のプレートとその下に沈み込む海洋プレートが摩擦力によって強く結合し、固着域という領域を形成していることです。歪みの蓄積の進行に伴って、陸のプレートの跳ね返りの力が固着域の摩擦力と拮抗するようになると、固着域の状態が変化しやがて陸のプレートと海洋プレートとの結合状態に緩みが生まれ、両者の間に部分的な剥がれが生じてきます。やがて最終段階が目前に迫ると、陸のプレートと海洋プレートの境界、つまり固着域でゆっくりとした滑りが部分的に起こり始めます。これを前兆滑りあるいはプレ・スリップといいます。いったん前兆滑りが発生すると、2、3日あるいはもっと短い時間のうちに前兆滑りはプレート境界の断層に沿って急激に加速、拡大して行きます。そしてついには、長さ約100キロメートル、幅数十キロメートルという巨大断層が急激にずれ動き最大数メートルに及ぶ断層ずれを伴って東海地震が発生します。
 前兆すべりとは、東海地震に伴うプレート境界の巨大な断層運動の初期状態ですから、この前兆滑りを可能な限り早期に検出し予知情報に結びつければ人的被害などを大幅に軽減することが可能です。この手法を直前短期検知といいますが、この手法は癌を早期に発見することによって、致命的な事態を避けることと同じです。その点で、東海地震の予知は、実は「予知」ではなく、「地震発生の早期発見」というべきでしょう。なぜなら、前兆滑りが検出された時点では、もうすでに東海地震に向けて断層が動き始めているのですから。
 想定される東海地震に対して的確な体制を構築するためには、この地震の全体像を実証的な手法によってなるべく正確に把握する必要があります。「戦いは、まず敵を良く知ることから」というわけです。2ページ目には、二十数年間に蓄積された新たな知見を箇条書きで示しています。
 まず、地震観測網などの整備によって、地下のプレートの形状や動きについて新たな多くの知見がえられました。とくに、沈み込む海洋プレート、つまりフィリピン海プレートはその傾きの方向や角度が場所によって異なり、複雑な形状をしていることが分かってきました。
 1944年東海地方の西隣にあたる熊野灘から遠州灘にかけてのプレート境界が大きく破壊され東南海地震が発生しました。その時の破壊領域と、破壊されずに取り残された未破壊領域との境界はどの辺にあるのかといった推定もついてきました。また特筆すべきことは、災害予測の手法が大きく進歩したことがあります。これまでも震度予測の手法を含め多くの進展がありましたが、最近では単に震度の予測だけではなく、各地点の地盤の揺れの地震波形そのものを予測する手法が開発されました。これと同様に、津波についても津波の高さだけではなく、津波の波形そのものを予測する手法が開発されています。これらの手法によって地震の揺れや津波を、時間的および空間的に変化するものとして捉え、より現実に近い状況の予測が行えるようになりました。
 宇宙技術の利用も進みました。その代表的な事例がGPSによる地殻変動観測です。GPS観測網が全国に展開されたおかげで、日本列島が水平方向、上下方向に時々刻々と動いている有様がほぼリアルタイムで把握されるようになりました。これにより日本列島周辺のプレートの動きや地震に伴う断層運動や火山噴火を引き起こす地下のマグマの動きが正確に捉えられるようになりました。
 海底探査技術の進歩により、海底の地形や地殻構造が詳しく調べられるようになりました。海溝から沈み込む海洋プレートの形状の詳細や、海洋プレートの上に覆い被さる堆積層に刻み込まれた断層や、プレートの沈み込みと共に地下深部に引きずり込まれつつある古い火山体など多くの新たな知見が次々と得られつつあります。
 また、東海地震のような海溝型巨大地震が繰り返し発生するプロセスを、コンピュータ・シュミレーションによって再現・予測し観測事実と比較・評価することも可能になってきました。
 これらの知見や関連するさらに多くの研究・観測成果に基づいて、直前短期予知の可能性を踏まえた東海地震の想定震源域についての中間報告が、去る6月19日に専門調査会でできあがりました。
 この中間報告の結果を見ますと、従来の想定震源域は駿河トラフから内陸に向かって傾き下がる長方形の斜面というごく単純な形状のものでしたが、今回の再検討による想定震源域は3次元的に複雑な凹凸のある形状をしており、かなり震源域の姿をリアルに浮き彫りにしたものと考えられます。
 この震源域の想定に関わる作業と並行して、地震による地盤の揺れの強さや津波の高さなどの予測手法の検討を行い、これら2つの作業を併せて次の作業の流れにつながります。その段階では、各地域で、予想される地盤の揺れの強さや津波の高さを定量的に推定し、その結果に基づいて著しい被害を受ける範囲について再検討し、より的確な防災体制につないで行くというフローになっています。
 その次のページには、今回の中間報告による東海地震の立体的な想定震源域の形状が、瓢箪型のブルーの環で囲んで示されています。比較のために、現在の長方形の想定震源域とそれに基づく地震防災対策強化地域を示してあります。
 東海地方は、1854年安政東海地震から現在までの147年間にわたり未破壊領域として取り残されてきました。その結果、歪みの蓄積はすでに臨界レベルに達しているため、東海地震はいつ起こっても不思議ではないと考えられています。一方、1944年と1946年に南海トラフで東南海地震及び南海地震という海溝型巨大地震が相次いで発生しましたが、これらの地震は、図に示すように100年から150年の間隔で過去に幾度も周期的に繰り返し発生してきた海溝型巨大地震の仲間の一つにすぎません。これから30年後ないし40年ほど経つと次の地震サイクルが来るので、再び南海トラフで巨大地震が発生することになります。もしそれまでに東海地震が発生していれば、浜名湖付近の沖合以西から四国の西端までを震源域として巨大地震が発生することになるでしょう。もし次のサイクルまで東海地震が発生しないなら、駿河湾から四国の西端までを震源域として巨大地震が連動的に発生することになるでしょう。いずれにしても、今世紀の前半に南海トラフに沿って巨大地震が発生することはほぼ確実です。
 このような状況を考えると、中部圏、近畿圏などで防災対策を急速に確立する必要があります。こうした巨大地震が発生すると当然多くの人命が失われ、あるいは多大な経済的損失が発生します。その復旧のための費用は莫大なもので、これに対する事前の予防対策のための費用と比較すると、復旧のための費用というものは実に膨大なものになります。
 社会全体のコストを考えますと、来るべき巨大地震の全体像を事前に把握し、的確な備えをすることによって、費用を有効に活用して、迅速で効果的な防災対策を立ち上げることが、一層重要になってきます。このようにターゲットとすべき地震像をしっかりと的確にとらえることによって、必要な防災対策を検討していくことが重要であると考えております。以上でございます。
○防災担当大臣  どうもありがとうございました。なお、溝上委員の御報告に関連しまして、本日静岡県議会が開催されておりますために御欠席の石川委員から、資料3のとおり御意見を寄せられておりますので、ちょっと御紹介をさせていただきます。
○政策統括官  資料3に石川委員から提出されました文書を出してございます。朗読させていただきます。
 先日、6月19日に専門調査会で示された、東海地震の新たな想定震源域は、静岡県の中部から西部地域が広く含まれる他、遠州灘の海域にもかなり広範囲に広がっているなど、重大な関心を持って拝見しました。
 従来より西へ震源域が広がることにより、静岡県をはじめ強化地域6件への影響が従来と異なってくるのか来ないのか、来るとすればそれへの対応を図る必要が生じてきます。その意味で中央防災会議としてできるだけ明確に、かつ早急に具体策を示していくことが重要であると考えます。
 同時に、東海地震の予知観測の面では、新たな想定震源域に対応した観測体制の充実・強化も必要になってくると考えます。
○防災担当大臣  ただいまの溝上委員のお話の中に東南海、南海地震等の防災対策の確立が重要だという御指摘がございました。東南海、南海地震については、中部圏、近畿圏の被害も懸念されるわけでありますが、一方、平成10年に中央防災会議の大都市震災対策専門委員会におきまして、中部圏、近畿圏についても、地震対策の大綱を作成する必要性が指摘されております。このようなことを含めまして、専門調査会を設けまして、十分検討してはいかがかと考えております。
また、この東南海、南海地震につきましては、現在、文部科学省の地震調査研究推進本部により検討が進められ、長期予測評価が9月ごろに公表されると聞いておりますが、その結果等も活用し、関係機関で連携して検討を進めていくことといたしたいと思っております。
それでは、ただいまの溝上委員のお話や、先ほど事務局が御説明いたしました事項につきまして、御質問、御意見等ございますれば、お願いを申し上げます。
○外務大臣  私、6年半か7年前にこちらで阪神・淡路大震災がありましたときに閣僚として参加しておりまして、あのときのことをもう一回思い出しましたんですけれども、一番の問題は、初動体制をどうするか。それが理念では分かっておりましたけれども、実際にはなかなか機能しませんで、そのことが大変後々まで大きく影響いたしました。
 また、省庁間の連携プレーというものも、なかなかうまく実際には現場とも連動しませんで、かなり立ち遅れたということがございましたので、そういうことを実務的にどのようにして、どのボタンを押せばどう動いて、どう連携するかということをアクション・プランのようなものをしっかりとつくっておかないと、理念だけで終わってしまうというふうに思います。
 2点目、あの当時も地震の予知ということに大変熱心になりまして、当時4省庁だか6省庁、科技庁と運輸省と国土庁は覚えておりますが、それらで連携して話をする会合を私は立ち上げましたんですけれども、その後それがどのように機能しているか。
 例えば、ここにも今おっしゃったような東南海の地震が今世紀の前半に発生することが懸念されていると。これはGPSによる調査でありますのか、あるいは地殻の探査をほかの方法で海洋でなさったのか、そういうことがパニックにならずに、かなり確率の高いものであるかどうか。諸外国では地震の予知というのはほとんどできないと聞いておりますが、日本はできるできると言って学者中心にやっているんですが、現実的にどういうふうな論拠でこれをおっしゃっているか。その2点について、特に後半の方でございますけれども、是非教えていただきたい。政界の地殻変動は今うまく機能していると思いますが、実際の地震の方はいかがでしょうか。
○防災担当大臣  1点目でございますけれども、これはある意味では私ども、いろいろな形で進めている点だと思っておりますので、時間の関係もございますから、2点目、溝上先生から。
○溝上委員  一般論としては地震予知はきわめて困難であることは、田中外務大臣のご指摘の通りです。日本付近で発生する地震のうち、大きな被害を生むものには、主に2種類の地震があります。その一つは1995年の阪神・淡路大震災を引き起こした兵庫県南部地震のような内陸直下型地震です。もう一つは関東地震、東海地震、南海地震などのような海溝型巨大地震です。内陸直下型地震は地震発生の繰り返し間隔が何千年あるいは中には何万年というような場合があり、時間間隔がきわめて長く、しかも多くの断層が力学的な相互作用を及ぼし合いながら地震を発生させるので、いつどこで地震が発生するかを予測することはきわめて困難です。さらに地震を発生させる断層そのものがどこにどのような状態で潜伏しているのかについての十分な知識がまだありません。さらに、一つの断層を特定しても、その断層がいくつものセグメントに区分されていて、次にどのセグメントで地震が発生するか特定することもきわめて困難です。
 一方、海溝型巨大地震の震源域は、日本列島の太平洋沖の海溝に沿っており、それぞれの巨大地震が固有の震源域をもっていて、隣接する巨大地震の震源域とは画然とした境界があり互いにその領域を越えることはありません。さらにそれぞれの震源域では、その場所に固有の間隔でほぼ同じメカニズム及び同じ規模の地震が幾度も繰り返し発生します。このように震源域発生間隔、地震の規模などが一定していて変わらないという特性を持っている地震のことを「固有地震」といいます。実際の海溝型巨大地震は自然現象ですから、理想的なモデルの固有地震とは若干異なり、地震発生のサイクル毎に震源域、発生間隔、地震規模などに揺らぎを伴いますが、これらが一定しない内陸直下地震に比べる地震発生の場所、時間、規模の予測がはるかに容易であることがお分かりいただけると思います。日本の地震学者は海溝型巨大地震について、プレート理論誕生するはるか前の明治時代から、注意深い観察から永年的な沈降が引き続いた後、この沈降が停滞しさらに隆起に転じて巨大地震が発生するという事実を突き止めていました。さらに最近は、地震観測網、GPS、体積歪計などで24時間監視をしていることですから、海溝型巨大地震については直前予知の可能性は高くなってきたといえます。
○外務大臣  GPSで変化がわかっているわけですね。
○溝上委員  ええ。GPS観測により、太平洋側から日本列島へ向かって押し寄せてくるプレートの運動により、日本列島が圧縮されて時々刻々と歪んでいく様子がほぼリアルタイムで観測されています。
○総務大臣  先ほどお話のありました関係機関における情報共有体制の強化につきましては、通信衛星を利用した地方公共団体と、総務省を結ぶネットワークは、平成14年以降、データ通信が可能となるところでございまして、国と地方の防災情報共有のためにこれをできるだけ活用して協力してまいりたいと考えております。
 また、地震対策状況の再点検のお話がございましたが、地震防災対策の在り方を検討するに当たっては、地方における防災対策の主体的な取り組みを尊重して、地方団体の意見等が十分反映されるように、これからとりまとめる上でよろしく御配慮を賜りたいと思います。
 以上です。
○宮津委員  今、総務大臣がふれられたので、情報通信の関係について申し上げると、阪神・淡路大震災のときに、それ以前には余り話題になりませんでしたが、被災直後の個人ベースのミニコミ的な情報の流通がうまくできなければいけないと相当話題になりました。あれから6年経って通信手段もすっかり変わりました。あの頃はまだ電話が中心で、パソコン通信が始まったくらいでしたが、今はすっかり様子が変わり、携帯電話なども相当普及しています。もう一つは、放送と通信が融合するという話がビジネスの話としても出てきていますが、災害対策という意味でもまさに必要と考えています。NHK等の放送機関は災害情報を集めるのが早いのですが、そういった情報はすぐ流さなければいけないことから、放送の手段と通信の手段が融合してくるのではないかと思います。
 この数年間の動きを見ると、特にそのあたりが大きく変わりましたので、あの当時にも随分検討されて実行に移っている項目がいろいろあるのは確かなのですが、少し見直し等をしなければいけないのではないかと思っております。
○総務大臣  取り入れているんじゃないの。それは直した方がいいですね。
○防災担当大臣  それに関連して海老沢委員、何かありますか。
○海老沢委員  私ども阪神・淡路大震災の反省として、震災の全体像と言いますか、どのくらい被害が大きいのかというのを把握できなかった。つまり、飛び道具であるヘリコプターの出動が遅れてしまったという反省があります。そういう面でいかにヘリコプターを早く飛ばせるかというのが大きな課題であって、その後、東京を中心に24時間体制で、いつでもヘリコプターが飛び出せるような体制にもっていこうと努力しております。
 そういう面では、先ほど田中外務大臣から話がありましたように、緊急時は初動で決まるということで、初動体制、特にヘリコプターの活用が大事だろうと思っております。
 そういう面で、自衛隊なり警察庁なり海上保安庁なり、いろいろヘリコプターがありますので、NHKも勿論ヘリコプターはあるんですけれども、一番早いところがその情報をほかの機関にも流してもらいたい。我々も当然生中継をやるわけですから、当然それは活用してもらいますし、自衛隊にそういう映像がありますれば、すべての報道機関に開放して、それを報道する。それによって全体像をつかまえて適切な対応を取る。それが一番大事だろうと思っております。
 同時に、私ども今東京での地震を想定して、できるだけ放送の方も24時間体制で1秒の遅れもなく放送ができるようにということで、毎晩、200 人程度が放送センターに泊まっております。いつでもニュース対応ができる。
 もう一つは、1時間以内にそういう災害報道担当の職員は集まれるようにということで、5キロ以内に400 人の人間を住まわせて、官邸なり市町村にも行けるように、あるいは放送センターに来るように、そういう体制を取っております。
 もう一つ、人事異動とかあるものですから、たゆまざる訓練と言いますか、やはり実地訓練をしませんと、どうしても頭で考えているだけでは災害対策はできません。ですから、何かあれば実地訓練をさせる。
 それと同時に、静岡県とか関係団体と常に連絡を取り合いながら、そういうマニュアルを修正しながらやっていくと。それが大事だろうと思っています。
○防災担当大臣  ありがとうございました。
○国土交通大臣  一番最初の資料1の8ページの「地震防災体制の整備について」に、災害時の実践的なマニュアルの情報収集・伝達体制等々を書いてございます。各都道府県でマニュアルをつくっておりますけれども、先ほどお話になったときに、1点ありましたけれども、昨年の鳥取西の地震のときに、ちょうど8月に防災訓練をして、マニュアルの点検をしました。そのときに知事さんがおっしゃるには、マニュアルの点検をしたときに、全部マニュアルどおりやってみたら、自衛隊と書いてあって、どこへ電話して、だれが出るのか、何にも書いていない。ただ、自衛隊と書いてある。では、どこへ電話していいのかわからない。そういうマニュアルの点検をしたために、例えば自衛隊のどこの基地の、どの電話番号の、どの担当にというまで書き替えたところ、1か月後に地震があったということで、災害を最小限に抑えられたという事例もございます。
 もう一点、こんなつまらないこととお思いになると思いますけれども、このマニュアル点検のときに、交通が中断して食料が途絶えます。そうしますと、このマニュアルには、変な話ですけれども、今スーパーマーケットとか、24時間のマーケットというのがいっぱいあるわけです。それがマニュアルには書いてない。けれども、そこには食料品があるというのが災害に遭って始めてわかったとおっしゃるので、形式的なマニュアルではなくて、実質的なそういう、いざなってみたら食料品が、あそこのセブンイレブンにあるとか、そんなつまらないことだけれども、それがすごく大事だとおっしゃいましたので、役所でつくる、あるいは地方自治体でつくる形式的なマニュアルではなくて、是非実質的なそういう体験をなさった方がたくさん各県おりますので、そういう意味で、各都道府県に対しては、このマニュアルの再点検の中にそういう経験を盛ったことを是非明記していただきたい。
 それから、できればその県によって結構ですけれども、いざ災害が起こったときに、救助隊が出たときに、自分の家族は全部家から出たよというマークを張ってほしいというんです。そうすると、お年寄りが残っているのか、家族のだれでもいいけれども、全部うちは外へ出ましたよというマークを半分、家が倒れていても張ってもらうと、そこは救助隊が素通りするということで、早く次の家に移れるということで、それも是非考えていただきたいとおっしゃっていましたので、地震が起こったときに、あるいは何かのときにそういうことも今後、地方自治体によって知恵を出していただきたいという経験に基づいた御提言がございましたので、是非御参考にしていただきたい。
○防災担当大臣  ありがとうございました。
 まだ御意見もたくさんあろうかと存じますが、時間の関係もございますので、ちょっと整理をさせていただきたいと存じます。
 1つは、情報収集の点でございますけれども、映像というのは非常に重要でございます。 もう一つ、安否情報をどう交流させていくか。これは宮津委員からも御指摘ございましたけれども、非常に個人情報は重要だというのはそのとおりだと思います。
 それから、マニュアル再点検の問題でございますけれども、これは本当に現実的なものであるかどうかという辺りのところをずっと詰めていくことがあることは、今、御指摘のとおりだと思います。片山鳥取県知事が非常に見事な対応をされたということは、これは私も聞いておりますので、非常に貴重な御意見をちょうだいしたと存じます。
 大変恐縮でございますが、それでは重川委員から資料が提出されておりますので、これに関連いたしまして、お話を承りたいと思います。
○重川委員  それでは、お手元の資料4に基づいて御説明させていただきます。
 私はどちらかといいますと、災害と闘う側の人間の立場から防災対策ということにずっと取り組んでおります。まず1ページ目をごらんいただきたいんですけれども、このグラフは、阪神・淡路大震災から5年後に神戸市が被災者に対して行ったアンケートの結果です。震災から5年経って、暮らしの再建のために何が大事だったか、あるいは何を課題と感じているか、これは被災者の方たちのお答えです。
 一番多かったのが「すまい」という答えでした。つまり、住まいがやっと元に戻る、あるいは家族が一つ屋根の下で暮らせるようになる住まいが戻るということが暮らしの再建にとって非常に重要だと。
 2つ目に多かったのが「つながり」ということです。これは人と人とのつながりを表わしています。家族であったりボランティアであったり、行政の人とのつながりがあったり、いろいろなつながりがあります。
 そして、意外だったのは、例えば行政の対応が悪い、あるいは暮らし向きや景気がよくならないと生活再建はままならないといったような声が予想以上に少なかったという結果が出ております。
 次のページをごらんいただきたいんですけれども、では、あの震災のときに人がなぜ傷付いたのか、なぜ死ななければいけなかったのか、既に御承知かもしれませんが、亡くなられた方の9割は自宅で発生しています。更に、96.3%の方はほぼ即死の状態でございました。救助の遅れ、あるいは医療体制の不備、そういった問題が解決されれば救える命もございましたけれども、それ以前に命を落としてしまっていた方が大部分であったのがあの震災の教訓でございます。
 3ページ目ですけれども、更にその後起きましたのが、揺れが収まった後の救助の問題でございます。数万人にのぼる生き埋め者が発生した中で、では一体だれがたくさんの命を救い出していたのか、自衛隊、消防、警察、いわゆる制服を着たプロの方たち、合わせて約5,000 人の命を救っております。つまり、言い換えますと、残りの大部分はその場にいた一人ひとりの市民の方たちが自分たちで、自助努力で救い出していたことがわかっています。
 更に、4ページ目をごらんいただきたいんですけれども、今のような教訓を踏まえると、あるいはその後各地で起きている噴火災害、地震災害、水害、そういったものを考えたときに、一体我々の暮らしや命を守るために、何が大事なのか、やはり1つ目に大事なのは「予防」と書いてありますが、まず、被害を出さない、とりわけ我々にとって生活再建の基本となる住まいを災害から守る、そのために一人ひとりの住民が災害に備える知識を持つということが非常に大切だと思います。
 あるいは起きてしまった後の応急というふうに書いてありますが、ここではやはり命と暮らしを守る救助の問題、あるいは必要な物資を安定供給するシステムを確立する。つまり、心の安定、生活の安定を図っていくシステムが非常に重要になると思います。
 更に、復興の問題になってきますと、災害前の状態に戻ることはあり得ません。失ったものは二度と戻ってきません。その代わり、よりよい暮らしを災害の前よりももうちょっといい暮らしを新しくつくり上げていく。そのためには、雇用や収入を安定する、あるいはコミュニティー、人とのつながりが保たれる、ということが私たちにとっては非常に重要になると思います。
 この3つ、我々が自助・共助でやっていくべきことなんですが、やはりそれを支えるには、行政による公助、防災対策というのが当然重要になってまいります。
 次のページをごらんいただきたいんですけれども、では、翻って我々が住んでいる大都市、首都圏ではどうなのか。やはりいまだに既存不適格で被害を大きくし得る住宅、住まいがたくさん残っております。勿論、それ以外のビルもたくさんそういった良くないストックが残っております。
 関東大震災クラスの地震が起きれば、何百兆という単位で、これは直接的な被害が発生することが予想されております。
 さっき申し上げましたように、被災者への行政対応というのが、結局のところ、住まいを失った人への対応というふうに言い換えることができるかもしれません。阪神・淡路大震災で住まいを失って、避難所、それから仮設住宅、災害復興公営住宅、そういった道を進まれた方に対して、1人当たり大体2,000 万円ぐらいの税金を投じられているという推計も出ております。
 そうやって考えますと、災害が起きても、被害をまず出さない環境づくりというのが非常に経済的に見てもこれから重要になっていくのではないかというふうに考えております。 6ページ目は、更に首都圏、東京都で、では一体そういう状況がどれぐらい残されているのかということを示した図でございます。
 最後の7ページにいきたいと思いますが、今のようなことから、よりよい暮らしを創造する、こういうことを目ざした復興支援というのが事前、事後対策でも重要になると思います。
 1つは、暮らしが戻る。もう一つは生活基盤をどう戻すか、これなくしては実はこれから起こるであろう災害後に我々がふたたびよみがっていくためのファイトがなかなかわいてこないというふうに思います。
 実は、さっき御説明があった三宅島でも、問題を先延ばししてきた感があります。島に帰られる、帰れない、いろいろなことを前提として、いずれにしても、噴火前よりもいい暮らしを再建していける、そういうシナリオを被災者の方が自分たちでつくっていけないものだろうか、そういうシナリオ・プランニングの手法を早急に我々が協力してつくり上げていく必要があると思っています。これは、三宅の問題だけではなくて、来るべき東海地震あるいは東南海地震、南海地震、更に首都圏がやられてしまうだろう南関東地震、こういった地震が起こりますと、その地域の問題だけでなくて、日本全体に影響が起こりかねない事態が起こります。
 そこからよみがえるために、やはり何が必要なのか、行政がつくる復興プランも重要です。あるいは、公共施設の復旧も大切です。ただ、やはり我々被災者が主役となって一体どういう復興ビジョン、あるいはどういう生活を取り戻していくべきなのか、そういったことを考えるための手法を確立していく、更に、真ん中の四角に書いてありますように、そのために幾つか○を付けて具体の対策が書いてありますが、こういった事前対策を今すぐにでも実施していくことが重要なのではないかというふうに考えております。
 以上でございます。
○防災担当大臣  どうもありがとうございました。
○内閣総理大臣  5,500 人のうち96%即死。
○防災担当大臣  5,500 のうちの9割が自宅で、そのうち96%。
○重川委員  いえ、亡くなられた方の検死の結果。午前5時46分に圧死ですね。
○内閣総理大臣  そんなにすぐ死んじゃうのか。
○重川委員  はい。午前5時46分に圧死です。
○内閣総理大臣  どういう形で死んじゃうんですか。
○国土交通大臣  直下型だからです。
○重川委員  たんすとか本棚が倒れたんですね。一瞬にして。
○防衛庁長官  防衛庁と自衛隊は、総理指示事項のうち、南関東などの地震対策につきまして、各自衛隊の派遣計画を修正しました。また、東京都などが実施する防災訓練に積極的に参加しまして、自治体との連携強化に努めておりますが、先ほど、扇大臣も言われましたように、日ごろからフェース・ツー・フェース、どこにだれがいて、どこに連絡をすればいいかということと、実際の予行訓練が大事だというふうに思っております。
 また、東海地震対策の充実強化は、各自衛隊の対処計画の見直しを行っておりまして、東海地震に関する専門調査会の検討結果によりまして、地震防災対策強化地域の見直しがされた場合には、防衛庁の見直し作業をいたしまして、よりよいものに整備をいたします。今後とも各省庁、自治体とも連携を強めてまいりますが、私見としては、やはり実際の場合のヘリポートの確保、それから、周波数帯の確保、また、交通整理が重要というふうに思っていますので、よろしくお願いいたします。
○防災担当大臣  ありがとうございました。ほかによろしゅうございますか。
 大変いろいろ貴重な御意見をちょうだいいたしまして、誠にありがとうございました。お伺いいたしました御意見につきましては、私どもまた整理をさせていただきまして、今後の防災行政に幅広く生かすようにしてまいりたいと存じます。
 それから、先ほど事務局、それから溝上委員から御提案がございました今後の地震対策の在り方、それから、東南海、南海地震等の防災対策の充実、更に、防災基本計画の修正、この3つの事項につきまして、中央防災会議に専門調査会を設けまして検討をお願いいたしたいと思います。
 それから、事務局から説明のありました住家の被害認定基準につきまして、これは御了承いただいてよろしゅうございましょうか。
○藤森委員  ちょっとよろしいですか。これは、今、ここで拝見しますと、これは事後における被害の認定ということですね。つまり、事後における措置のための認定というふうに伺いましたけれども、例えば、災害救助法の発動の要件の中にも被害状況というのはあると思うんですが、それと連動しているのかどうかということ、これは事務局に伺いたい。
○政策統括官  住宅の全壊、半壊というのは、ただいま藤森委員もおっしゃいましたが、災害救助法とか、いろいろな法律にこのごろ使われておりまして、例えば、被災者生活再建支援法でお金が出るとかというところにもつながっております。
 そういうものを統一した基準としてこういうふうな基準にしたらどうかということでございます。ただ、災害救助法などは、すぐ発動しなければなりませんので、必ずしもこういう経済的なところまで見られるかどうか、まず、応急的に見て、一見、全壊か半壊かでまずやってみて、それから後から詳細に調べてみて、全壊がだんだん増えてくるということは当然あろうかと思いますが、基本的には全部に統一した基準と考えております。
○藤森委員  そうですか。救助法は今おっしゃったように、緊急の暗やみの中でも発動しなければいけないわけですね。そのときにえらい精緻な基準で全壊100 戸以上とか、床上浸水何戸以上ということを精緻にやられたら発動できません、実際は。
 ですから、事後の措置としてはこれはいいと思いますが、緊急にやるのはそれなりの対応をしてもらわないと実行できません。
○防災担当大臣  つぶれていなくても、例えば、中に入っています断熱材などが水に濡れてしまってもう使い物にならない、したがって、この住宅はだめだというので拾うというような趣旨でございますので、どちらかというと緩めになっているというふうに私は理解をいたしております。
 それでは、そういうことでよろしゅうございましょうか。
○内閣総理大臣  せっかくの機会で教えていただきたいんだけれども、プレートが動いているというのを、どうやって予知できるんですか。
 それともう一つ、管を何キロ下まで日本全国に入れていて、これである程度火山活動が見られる。だから、富士山がもう噴火するんだとか、何百年ごとに周期が来ているなどの話がなされているが、そういう点について、この機会に詳しく教えてくれませんか。
○溝上委員  プレート運動は、地球表面を覆う岩盤の動きのメカニズムで。
○内閣総理大臣  それは衛星でわかるんですか。
○溝上委員  これはGPSによる観測から分かります。それから、大洋をはさんで大陸と大陸の間の長距離区間を測定する別の方法もあります。どれくらい実測精度が高いかというと、例えばプレート運動は地球規模の現象ですから、プレートは常にほぼ一定の方向に一定の速度で移動しています。ところが、プレート上に火山がありそれが噴火すると、その火山特有のローカルな動きによる異常が観測されます。噴火活動が終息すると観測値は再びプレート運動の方向に戻る。国土地理院は全国に千点以上のGPS観測点を設置しており、日本列島の地殻がプレート理論の理屈通りに一定の方向と速度でひたひたと動いていることが確かめられています。そのデータをさらに詳しく解析して地下での動きをさぐると、プレート運動に伴うグローバルな地球の動きのメカニズムにぴたっと合う。理屈通りに動いている。ですから、そこまで科学は及んだといえます。見えない地下深部まで観測の目が及ぶようになったという、そういう画期的な時代に今われわれはあるといえます。
 それから、予知については、さらにもう一歩踏み込まないと、地球の動きの全体像がマクロにわかっても、個々の地震については、なかなか人間の知恵の及ばない神様の領域のところがまだ残っていますから、その点についてはまさに個人個人の健康診断を行いながら明日はどうなるかというところまで踏み込んだような臨床的な観測や解析が必要になります。東海地震については、そこまで踏み込もうというので、24時間体制で気象庁が事態の変化を見張っている。これは重症患者を集中治療室に入れて、じっと見守るのと同じことです。
○内閣総理大臣  その管はどうなっているの。
○溝上委員  管、つまり深井戸観測の一番重要な点は、地表ノイズの除去にあります。地震計や歪み計などの測器を、1,000 メートル、2,000 メートル、3,000 メートルの深さに入れていきますと、地表の人工的ノイズや降雨の影響などは全くなくなってしまい、地下深部から伝わってくるシグナルだけが記録されるようになります。けれども、深度が増すにつれて温度が上昇するので、非常に精巧で半導体などを含む観測器がそれに耐えうるかというもう一方の問題があります。観測装置を地下深部に埋設するということは、日本の都市部のように人口密度の高い場所で高精度の観測をするとき、地表ノイズを数学的な手法によるフィルターで除去するよりは、物理的に地下深部に潜った方がはるかに有利で効果的です。
○内閣総理大臣  それをやっているんですか。
○溝上委員  それは非常に限られた地点でのみ行われています。首都圏での3,000 メートル級3点とか。それを全国遍くやると大変な経費になります。これは井戸が深くなればなるほど高くなります。
○外務大臣  役立っていないから今まで予知ができていないのではないでしょうか。学説的にはそれはわかりますし、宇宙からの観測もそうですけれども、それが機能していれば、学説とかロジックではわかりますけれども、阪神・淡路後に何も予知したことがなかったじゃないですか。
 したがって、我々はやることはもっと基本的なマニュアルづくり、初動的な、先ほど扇大臣が言われた電話番号が違うとか、ヘリポート、小泉総理と以前、聖路加の院長先生とお会いしたときにおっしゃったじゃないですか、こういう都心部で起こったときに何が一番大事かといったら、日野原先生がおっしゃったのはヘリポートがない、患者を輸送するときにヘリポートが全然ない、だから病院につくってほしい、住宅密集地の一般の場所につくってほしい、そういうものの確保、それからヘリコプターがぶつからないようにすると、これのマニュアルを絶対に、練習も防災の日にやった方が私はいいと思います。
○溝上委員  田中大臣が勘違いしておられるところは、地震をみんな同じものと思っていることです。人間の病気でも治療可能なものと、全くできないものとがありまして、先ほどからおっしゃっている地震はすべて内陸直下型の地震で、地震発生の繰り返しサイクルの間隔も2000年、3000年あるいは何万年ときわめて長い。ところが、今議論している海溝型巨大地震では、繰り返し間隔が80年とか100 年という場合すらあり、我々が生きている間にもう次の地震が近づいて来るという、地震の規模は内陸直下地震の20数倍とか30倍なのに、非常に規則的で短いサイクルで発生するメカニズムをもっているんです。これは、同じく地震と言いますけれども、実はそれぞれ発生の仕組みが全く違うわけで、一方は歪みの蓄積や前兆が測定可能、他方はとてもとても今の技術で測定に引っかけて何とかすることはできない。この両者をはっきりと分けて考えないと地震防災の戦略を間違うことになります。
○防災担当大臣  司会者が余りよけいなことを言ってはいけませんが、有珠山でございますが、これは非常に予測が可能な現象であるということで、避難指示を解除するということをしたわけであります。
 時間の関係もございますので、それでは、今日付議した事項につきまして、御了承をちょうだいするということで進めさせていただいてよろしゅうございましょうか。
(「異議なし」と声あり)
○防災担当大臣  ありがとうございました。
 それでは、これで会長でございます内閣総理大臣から御発言をいただきます。
○内閣総理大臣  今日はありがとうございました。またいろいろいい御意見をありがとうございました。この御意見を参考にして、これからも防災対策強化に御努力をいただきたいと思います。災害は忘れたころにやってくると言いますけれども、忘れないうちにやってくる場合もありますから、よろしくお願いいたします。
 今日は本当にありがとうございました。
○防災担当大臣  ありがとうございました。  ただいまの総理の御発言を真摯に受け止め、今後とも災害が頻発する我が国におきまして、対策の一層の充実に努めてまいりたいと思います。委員の各位の御協力をお願いしたいと存じます。
 これをもちまして、本日の会議を終了させていただきますが、中央防災会議運営要領第8の規定に基づきまして、会議終了後、私の方から御審議の内容を記者発表させていただきたいと存じます。その際、この会議の資料も公表することとさせていただきたいと存じますが、よろしゅうございましょうか。
(「異議なし」と声あり)
○防災担当大臣  それでは、そのように扱わせていただきます。
 本日はお忙しいところ大変ありがとうございました。

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