不屈の大地 Build Back Betterの軌跡



東日本大震災からの復興 平成23年(2011年)福島県

地図

 福島県相馬市の松川浦は、南北方向に6kmにわたって延びる砂州により太平洋から隔てられた潟湖です。大小の島が点在する風光明媚な景観が広がるなか、浅瀬で波も穏やかな自然環境を生かした海苔の養殖が盛んに行われており、青海苔の生産高は松川浦だけで年間4億円(全国2位)を誇っていました。また多様な生物の生息地としても知られており、潮干狩りや海水浴など、年間約97万人の観光客が訪れる観光地でもありました。

 平成23年の東日本大震災で震度6弱の揺れを観測した相馬市では、高さ9mの津波が押し寄せ、400名を超える尊い命が失われ、1800棟の住宅が全半壊する甚大な被害を記録しました。太平洋と穏やかな松川浦を隔てていた砂州はえぐられて分断され、海岸堤防も破壊されたことで、背後にある市道大洲松川線は全区間にわたって流失してしまいました。海苔も壊滅的な打撃を受け、松川浦の豊かな恵みは津波に奪われてしまいました。

 平成30年4月、市道大洲松川線が海岸堤防と一体型構造の道路となって7年ぶりに復旧しました。海岸堤防は震災前から1mかさ上げしてT.P.+7.2mとなり、基礎部分も強化されたほか、全体を50cmのコンクリートで被覆するなど「粘り強い工法」を実現することで、津波が堤防を越流した場合でも、壊れにくい構造となっています。

 海岸堤防の強化は松川浦の再生を後押しすることになることはもちろん、道路の復旧により、分断されていた磯部地区と尾浜地区が再び結ばれることとなり、地域の利便性向上に加えて、観光や地域産業の活性化にも期待がかかります。

風光明媚な景観と海苔の養殖(現在)

風光明媚な景観と海苔の養殖(現在)

<p> 松川浦付近の震災直後(上)と現在(下)の比較(国土地理院航空写真より)

松川浦付近の震災直後(上)と現在(下)の比較(国土地理院航空写真より)


相馬市伝承鎮魂祈念館

表紙の写真

太平洋と松川浦を隔てる砂州の上に海岸堤防と一体構造の道路として再整備された市道大洲松川線。北端には震災伝承看板「『松川大洲・大浜地区海岸堤防』の復旧」が設置されています。

表紙絵

Build Back Betterとは

「Build Back Better(より良い復興)」 とは、2015年3月に宮城県仙台市で開催された「第3回国連防災世界会議」の成果文書である「仙台防災枠組」の中に示された、災害復興段階における抜本的な災害予防策を実施するための考え方です。

本シリーズでは、災害が発生した国内外の事例を紹介し、過去の災害を機により良い街づくり、国土づくりを行った姿を紹介いたします。

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