特集 知って備える水害・土砂災害

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洪水・高潮氾濫からの大規模・広域避難に関する基本的な考え方

1 はじめに

平成27年9月に発生した関東・東北豪雨災害では、市町村の区域を越えた広域避難の課題が明らかになりました。特に三大都市圏において、大河川の洪水や高潮により氾濫が発生した場合には、その浸水区域の広さ、避難対象人口の膨大さ、浸水継続時間の長さ等から、大規模かつ広域的な避難の在り方について具体的な方策を示すことが必要です。

これを受け、中央防災会議のもとに「洪水・高潮氾濫からの大規模・広域避難検討ワーキンググループ」(以下、「WG」という。)を設置し、大規模・広域避難の計画(以下、「広域避難計画」という)策定に必要となる基本的な考え方を示すことを目的として議論が行われ、平成30年3月、「洪水・高潮氾濫からの大規模・広域避難に関する基本的な考え方(報告)」がとりまとめられました。

図1 三大都市圏のゼロメートル地帯

図1 三大都市圏のゼロメートル地帯

2 報告の概要

(1)課題

大規模・広域避難に対する事前の対策がない場合、多数の居住者等が浸水区域内に留まり、二次的な人的リスクが増大することが懸念されます。また、対策にあたっては、自市町村内に避難することが基本となる一般的な避難と異なり、浸水区域外への立退き避難(域外避難)や浸水区域内での立退き避難及び屋内安全確保(域内避難)について、これらの適切なバランスを考える必要があります。


(2)重要な視点

上記の課題を踏まえ、以下の視点に基づき、各地域の地域特性を踏まえて広域避難計画を策定することが重要です。

【視点①】避難対象者全体を考えた大規模・広域避難の全体像の構築
避難対象者全体を考えた避難行動の最適化を目指し、避難行動の全体像の構築が必要です。また、大規模・広域避難の基本的な考え方や、広域避難計画を策定するための具体的な計算手法が必要となります。

【視点②】複雑に絡み合う課題の分類と段階的な検討
様々な要素が関係するため、相互影響の少ないように課題を分類して手順毎に検討を進め、フィードバックを繰り返しながら段階的に検討することを前提としつつも、可能な限り手戻りが少なくなるよう検討を進めることが必要です。

【視点③】広域避難計画の実効性の確保
避難対象者が多く、避難行動も複雑になることから、避難行動等の不確実性等を考慮した実効性のある計画とすることが必要です。


(3)具体的な検討手順

図2の手順により、広域避難計画(案)を策定し、フィードバックを繰り返しながら段階的に検討を実施します。まずは問題の本質を損なわない程度に検討の対象とする地域や災害について基本的なケースを設定し、手順1~7で検討を実施します。その地域における災害特性に習熟した上で、対象災害を過酷化する等した応用ケースで検討を実施します。

図2 広域避難計画策定のための検討手順

図2 広域避難計画策定のための検討手順

(4)計画の実効性の確保

広域避難計画の実効性を確保するためには、域外避難者数(及び域内避難者数)等に一定の増減を見込んだ幅のある計画とすることや、計画に柔軟性をもたせること、避難勧告の発令等の運用面や域外避難者を受け入れる自治体の視点も踏まえた検討をすること、計画の実効性を高めるための中長期的な対策が必要となります。また、広域避難計画に基づいた的確な避難行動の実施のための具体的な対策や、居住者等や企業・学校等への理解促進が重要です。



3 おわりに

WG の報告では、実効性のある計画とするためには、都道府県防災会議の協議会や大規模氾濫減災協議会等を活用して計画策定の体制を構築すること、市町村間で整合のとれた計画とするためには都道府県には主体的な役割を担うことが期待されるとともに、基本的な考え方の具体化に向けた取組を進める際には、関係機関の参画を得て、都道府県のみならず国も主導的な役割を担うことが必要であることが示されました。この報告を踏まえ、大規模・広域避難の社会的な実装に向けた検討を行うため、平成30年6月、内閣府(防災担当)及び東京都は、「首都圏における大規模水害広域避難検討会」を設置しました。この検討会において、行政機関等の関係機関が連携して取り組むべき事項について整理するとともに、関係機関間の連携・役割分担のあり方について検討してまいります。


●なお、本報告については、内閣府防災担当のHP に公表しておりますので、ご参照ください。

▶https://www.bousai.go.jp/fusuigai/kozuiworking/index.html QRコード


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