防災リーダーと地域の輪 第34回

神奈川県大和市「大和市少年消防団」

防災リーダーと地域の輪 第34回

平成5年に設立された「大和市少年消防団」は、小学4年生から中学3年生までが入団対象となっており、平成29年度は小学生116名、中学生48名の計164名が活動。平成28年防災功労者防災担当大臣表彰、平成29年防災功労者内閣総理大臣表彰を受賞するなど、長年にわたる活動が高く評価されている。大和市消防本部参事兼予防課長の竹内洋消防監にお話を伺った。

「当初は小学4〜6年生を対象に定員40名で発足しましたが、その活動が市内でも認められていったことに加え、阪神・淡路大震災や東日本大震災などで防災の重要性が注目を集めたことから参加人数も増加。積極的な募集活動も功を奏し、ここ3年ほどは毎年100名を超え、少年消防クラブとしては規模が非常に大きくなっています。」

少年少女による自主的な防災組織である「少年消防クラブ」は、全国に約4,500団体、約41万人が活動しているが、その中で大和市少年消防団が高い評価を受けている理由は、規模の大きさ以外にどういったことがあるのだろう。

「他団体の場合、企画・運営については消防団や子供会など地元の方々が中心となって手がけ、訓練だけを消防署が担当している場合が多いようですが、当団では署内のさまざまな部署が協力して企画から訓練までを行っているため、毎年コンスタントに活動できるのが強み。年間の活動回数は、他団体に比べるとかなり多いのではないでしょうか。市長をはじめとした行政の全面的なバックアップもあり、“オール大和”で推進する体制が整っています。」

月2回ほどのペースで消防や防災に関する多彩な活動を実施。小学生は“生きる力を育む”ことをテーマに、火災や大地震の際など“いざという時”に自分たちで考え、行動できるようになることを学ぶ中で、初期消火や応急手当などの基礎的な技術を習得していく。一方、今年度から対象となった中学生は、防災対策や避難所運営などのより高度で実践的な訓練を行うと同時に、年下の小学生たちの面倒を見ることで指導者としての人格を身に付けることも目指している。

「中学生になると体力的にも大人とそれほど変わらず動ける子も出てきます。平成28年熊本地震の際に避難所で中学生ボランティアが活躍していたように、大規模災害時に自主的に行動できる人になって欲しいと考えています。」

消防本部庁舎を使用して段ボールや毛布だけで一夜を明かす避難所体験訓練なども実施。さらに、毎年5月に開催される「大和市民まつり」のパレードへの参加や老人福祉施設の訪問、団員間の絆を深め協調性や積極性を育む宿泊研修、クリスマス会などもある。

「堅苦しい訓練や研修ばかりでは、子供たちも付いてきません。楽しい雰囲気の中で、さまざまな学校の子供たちと親しくなれるような活動も大切だと考えています。」

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(写真左)心肺蘇生法やAEDの取り扱いを習得。(中)水平に張られたロープを渡る訓練も。(右)消防本部庁舎での避難所体験訓練。
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(写真左)消防体験訓練の一コマ。(右)消防出初式では災害時における一連の対応を披露。一つひとつの演技に観客から盛大な拍手が送られる。

子供たちのため想いを込めて

年間の活動回数が多いぶん、それを支えるための入念な準備も欠かせない。

訓練ひとつとっても、前年までの内容が本当に良いのか逐一検証しながら、実施する順番なども含めて常に見直しを行っているという。その陰には、子供たちへの通知の作成・配布など、地味ながらきめ細やかな対応が不可欠なものも多数ある。さらに、一番の見せ場ともいえる消防出初式では、日頃の成果を市民の前で披露するため、段取りやフォーメーションなどの集中訓練も必要だ。

「主役は、あくまでも子供たち。通常の消防業務を行いながらの準備は苦労も多いですが、『自分の子供だったら、どうやって教えるだろう?』と考え、訓練の中に取り入れるようにしています。知識だけを詰め込むのではなく、心からの想いがあるからこそ子供たちに伝わるのだと思います。」

年度末には、一年間の活動の様子を収めた写真入りDVDも子供たちに配布しているが、「『自分があまり写っていない』と悲しむ子が出ないように」との配慮から、職員たちが撮影した写真の枚数も大量になってしまうのだとか。そうしたエピソードからも、取組みに対する想いや意気込みが伝わってくる。

「いろいろな学びを積み重ねていくうちに、仲間同士で声をかけて助け合うようになったり、だんだんと自信を身に付けて積極的に発言するようになるなど、子供たちの成長を目にすることができるのは大きな喜びです。発足から25年が経ち、かつての団員に子供が生まれ、その子が入団してくるケースも出てきました。」

防災の知識や技術を身に付けた子供が成長し、やがて地域に根付いていく。防災リーダー育成のサイクルは確実に定着しているようだ。

(画像提供:すべて 大和市少年消防団)


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