防災の動き

「広く防災に資するボランティア活動の促進に関する検討会」提言について

1.概要

「ボランティア元年」と呼ばれるようになった平成7年の阪神淡路大震災以降、災害が発生すると全国から被災地にボランティアが駆け付け、被災者の支援を行ってきた。東日本大震災ではNPO等ボランティア団体による多様な活動も行われ、災害時にボランティアがその被災地において、大きな役割を担うことが広く認識されている。

他方で被災地の災害ボランティアセンターに駆け付ける個人ボランティアの受入れや、行政とボランティアとの連携等に関し、引き続き課題が指摘されており、必ずしも行政の担当者に十分な理解があるとは言い難い状況もある。

このため、今後発生が想定される大規模災害に備えて、広く防災に資するボランティア活動を促進するために、様々な活動の現状と課題の整理及び環境整備の方策等について検討を行う「広く防災に資するボランティア活動の促進に関する検討会」が平成27年度から平成28年度までの2か年度に渡り開催され、多岐にわたる議題について議論を重ね、平成29年3月提言をとりまとめた。以下、本提言の主なポイントなどを紹介する。

2.『広く防災に資するボランティア活動の促進に関する提言』のポイント

① 協働型災害VCの検討

災害ボランティアセンター(以下、「災害VC」という。)の設置・運営は、社会福祉協議会(以下、「社協」という。)が役割を担うことが定着してきているが、社協にかかる負担の大きさ(発災時には自らが被災している可能性があること、ボランティア希望者の受け入れの対応に追われ社協の強みである地域福祉の支援が十分にできない場合があること)を認識し、社協だけに任せるのではなく、社協のコーディネーションを核としながらも、地域における様々な団体等が関与・支援することで、多様なボランティア活動を希望する人・団体の受け皿として機能する協働型災害VCを目指すべきである。

防災ボランティアに関する近年の動き

② ボランティアの受入に関する情報発信の強化

被災地の地方公共団体はボランティア希望者に対する情報発信に一層注力するよう心掛ける必要がある。地方公共団体はボランティアの受入に対する理解を深めるとともに、無用な混乱をきたさないよう、報道機関に対しても理解を深める必要がある。そのためには地方公共団体に対する研修を実施するとともに、地方公共団体は報道機関に積極的な情報提供を行い、災害時には適切な報道が行われるよう努めるべきである。

「熊本地震・支援団体火の国会議」の様子
JVOAD準備会(全国災害ボランティア支援団体ネットワーク)が
熊本県域(一部大分県含む)で活動しているNPO/NGO等に対し呼びかけ、
平成28年4月19日に設立した、連携・協議を行うための会議
「熊本地震・支援団体火の国会議」の様子

③ ボランティア活動の参加促進と安定的・長期的な参加者確保について

ボランティア活動に対する参加促進を一層図るためには、参加しやすい環境整備、社会全体でボランティアを支える仕組み作りを推進する必要がある。また、安定的・長期的に被災地にボランティアを送るために、公共交通機関での交通費の割引、ホテルや旅館での宿泊代の割引など、経費負担の軽減につながる支援が広がることが望ましい。

国は、経費削減につながる支援を行う公共交通機関やホテル・旅館業の優良事例を公表するなどして、推進を図ることも一案である。

④ 顔の見える関係を構築する

災害時のボランティア活動に関する地方公共団体の理解促進のために、平時から職員を対象とした研修の実施や、ボランティア団体との交流の場を持つことにより「顔の見える関係」を構築することが重要である。また、災害時にボランティア活動に関わる様々な団体が連携するために、平時から都道府県単位でネットワーク作りを進めていくことが重要である。

⑤ 企業の積極的な被災地支援のすすめ

企業には、社員がボランティア活動に参加しやすくするために、ボランティア休暇・休職等の制度、ボランティア活動の機会や情報の提供などの支援策を導入するなど、積極的な被災地支援が求められる。また、企業は、平時よりボランティア団体・NPO等と連携し、社員に対する研修の実施・交流の場を設けることが望ましい。

一方、国は、企業による災害時の支援や、従業員のボランティア活動を広めるために、企業の制度の優良事例等について周知していく必要がある。

平成27年9月東北豪雨での事例

⑥ 支援金の必要性と意義の周知

社会全体として、広く防災に資するボランティア活動を支える文化を創るとともに、「支援金」をボランティア活動のために積極的に提供する仕組みを考えていく必要がある。内閣府は、「支援金」の必要性・意義、災害時のボランティア活動の有効性をまとめ、広く周知するとともに、企業とボランティア団体が連携した研修の実施・交流ができるよう図る。ボランティア団体等は、自らの活動実績などの情報開示、情報発信を積極的に行い、さらなる経済基盤の強化を図ることによって、活動の充実につなげていくことが期待される。

⑦ 地域における様々な担い手の交流の場づくり

平時からの『広く防災に資するボランティア活動』を促進するためには、ボランティア活動に関心があるが、実際に行動に移せていない人々、学生等の若年層、主婦層など、さまざまな担い手や世代が気軽に防災活動に参加できるような取組や、地域における防災取組を行う人材に育成が一層必要である。

また、防災以外のボランティア活動や、地域コミュニティの活動に「防災の視点」をとりいれるような取組なども推奨していく必要がある。このよう取組は、災害時の「受援力」を高めることも期待できる。

平成27年度 市民の社会貢献に関する実態調査

3.おわりに

ここまで、『広く防災に資するボランティア活動の促進に関する提言』のポイントについて紹介してきたが、ボランティアをめぐる課題は多岐にわたっており、そのすべてについて、方向性を明確に示すところまでには至っていない。特に、より多くの国民がボランティア活動に参加できる環境整備、社会全体でボランティア活動を支えていく具体的方策、首都直下地震や南海トラフ地震等今後想定される大規模災害時に機能する具体的な仕組みについては引き続き検討が必要である。

また、この提言を踏まえ、内閣府が今後実施していく取組は次のとおりである。

1. 企業、地方公共団体、NPO等ボランティア団体の取組について、優良事例等を情報発信・周知していく

2. 地方公共団体職員を対象とした災害時のボランティア活動等の研修を行う

3. 全国域、都道府県域レベルのネットワーク組織もしくは中間支援組織・機能の推進

4. 企業とNPO等ボランティア団体の交流の場を設定し、連携を促進させる

ボランティア活動の原点は、被災者のニーズに応えること、ボランティアの自主性が尊重されなければならないことを十分認識したうえで、引き続き議論を深めていきたい。

なお、本検討会については、内閣府防災担当のHPに公表しておりますので、ご参照ください。
(URL:https://www.bousai.go.jp/kaigirep/kentokai/bousai_volunteer/index.html


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