特集3 地震に備える
地震などの災害から自分の命を守るためには、一人ひとりが自ら取り組む「自助」が重要です。「自助」の第一歩として、まず、自宅での安全対策を行いましょう。一般の家庭でも今すぐに実行できる地震への備えを紹介します。
家具の安全を確認する
東京消防庁の調査によると、近年発生した大きな地震でけがをした人の原因は、約30%から50%が家具類の転倒・落下・移動によるものでした。家の中の家具は地震によって「凶器」にもなりうるのです。
そうした被害を防ぐためには、なるべく部屋に物を置かないことが大切です。納戸やクローゼットなどに収納するようにして、できるだけ生活空間に家具類を置かないようにしましょう。
収納ができない家具類は安全な位置に配置することが大切です。配置のポイントは次の通りです。
・ドアや避難経路をふさがないように、避難通路や出入り口には転倒、移動する家具類を置かないようにする。
・引き出しが飛び出すことで、けがをしたり、避難の妨げになることがあるので、家具類を置く方向にも注意する。
・寝る場所や座る場所には、なるべく家具類を置かないようにする。
・マンションの高層階の場合、揺れで家具類が外に落下する危険があるので、窓際には転倒・落下しやすい物を置かないようにする。
・火災の原因となるストーブやコンロなどの近くに、落下や転倒する危険がある家具類を置かないようにする。
家具類を安全な位置に配置することに加えて、家具類が転倒・落下・移動しないための対策が必要です。それが家具固定です。それぞれの家具類に応じた器具によって、対策を行いましょう。
L型金具
L字金具は家具と壁をネジ、ボルトで固定します。Lの字が下向きになるように取り付けると最も効果が高くなります。
ポール式器具(突っ張り棒)
ポール式器具は、ネジ止めすることなく、家具と天井の隙間に設置することができます。家具の両端、奥に設置します。天井板が薄い場合は、ポール式器具と天井の間に板を挟みます。
ストッパー式
ストッパー式は、家具の前下部にくさび状に挟み、家具を壁側に傾斜させます。ポール式器具と組み合わせると効果が高くなります。
マット式(粘着マット式)
マット式は粘着性のゲル状のもので、家具の底面と床面を接着させます。家電製品など比較的小さな家具に使えます。有効期限に注意が必要です。
移動防止着脱式ベルト
移動防止着脱式ベルトは、壁とキャスター付き家具をつなげ、家具の移動を防止します。日常的に移動させる家具類に使用します。
キャスター下皿
キャスター下皿はキャスターの下に置き、家具の移動を防ぎます。
食器棚などは、揺れによって扉が開き、食器類が飛び出す危険性があります。観音開きの扉には扉開放防止器具を設置しましょう。また、ガラス部分には飛散防止フィルムを貼る事でガラスの破損だけではなく、収納物の飛び出し防止にも効果的です。
また、地震の揺れに伴う電気機器からの出火や、停電が復旧した時に発生する「電気火災」を防ぐために、地震を感知すると自動的に電気を止める感震ブレーカーも設置するようにしましょう。
こうした器具の購入や設置のために、助成制度を設けている地方自治体もあるので、問い合わせてみましょう。
非常用持ち出し袋を用意する
非常用持ち出し袋は、避難したときに最低限必要なものを納めた袋です。家族構成に合わせて準備し、玄関近くや寝室、車の中、物置などに置いておきましょう。
非常用持ち出し袋に入れる中身の例
飲料水、食料品(カップめん、缶詰、ビスケット、チョコレートなど)
貴重品(預金通帳、印鑑、現金、健康保険証など)
救急用品(ばんそうこう、包帯、消毒液、常備薬など)
マスク
軍手
缶切
ナイフ
懐中電灯
衣類、下着
毛布、タオル
ライター
携帯ラジオ
予備電池
使い捨てカイロ
ウェットティッシュ
洗面用具
ヘルメット、防災ずきん
備蓄をする
大きな地震など大災害が起これば、電気・ガス・水道・通信などのライフラインや、物資の供給が止まる可能性があります。そうした場合でも、自力で生活できるように、非常用持ち出し袋に加えて、普段から自宅に飲料水や非常食などを備蓄しておくことが大切です。
災害に備えた備蓄品の例
飲料水 一日一人3リットルを目安に、3日分を用意
食品 ご飯(アルファ米などを一人5食分を用意)、ビスケット、板チョコ、乾パンなど一人最低3日分の食料を用意。
生活用品 カセットこんろ、簡易トイレ、ビニール袋、トイレットペーパー、ティッシュペーパー
非常に広い地域に被害が及ぶ可能性のある南海トラフ地震では、1週間以上の備蓄が望ましいという指摘もあります。
そこで、特別に備えるのではなく、日頃から食べているものや使っているものを少し多めに購入し、食べた分を補充しながら日常的に備蓄する(ローリングストック)ことで、無理がないだけでなく、消費期限切れなどの無駄のない備えができます。
安否情報の確認方法を決める
地震が発生したときに、家族がそれぞれ別な場所にいる場合に備えて、お互いの安否を確認する方法を家族で決めておきましょう。地震発生直後は電話がつながりにくくなるため、連絡がとれない場合があります。そうした時は、「災害伝言ダイヤル(171)」や、携帯電話会社の「災害用伝言板」などのサービスを利用することができます。
また、集合場所も事前に家族と確認しておきましょう。多くの自治体が、避難場所、避難所、給水拠点などの情報が掲載された防災マップを作成しています。防災マップは市役所などで配布されている他、インターネット上でも公開されています。お住まいの地域の防災マップを確認しながら具体的に話し合いましょう。
その他の準備
自宅の耐震性チェック
自宅の耐震性は、建築士などの専門家による耐震診断でチェックができます。特に、耐震基準が強化された1981年より前に建てられた建物は早めの耐震診断をお勧めします。耐震診断にかかる費用については国や地方自治体による助成制度も用意されています。
住宅の耐震化についての詳しい情報は、次のウェブサイトをご覧下さい。
http://www.gov-online.go.jp/useful/article/201402/3.html#anc05防災訓練への参加
いざという時に慌てないためには、日頃からの訓練が必要です。地方自治体などが行っている防災訓練に参加して、身体防護、出火防止、救出・救助、応急救護などの技術や知識を身に付けましょう。地方自治体には楽しみながら防災について学ぶことができる防災体験館を設置しているところも多いので、防災体験の第一歩として、そうした施設も活用しましょう。
地震の発生を止めることはできません。しかし、平時から備えることで、その被害を抑えることはできます。一つひとつの小さな行動が、自分自身を、家族を守ることにつながります。