Disaster Management News―防災の動き

「首都直下地震緊急対策推進基本計画」の変更について

1 はじめに

首都地域は、政治・行政・経済等の首都中枢機能が極めて高度に集積し、かつ人口や建築物が密集しており、大規模な地震が発生した場合には広域的な災害応急対策に不可欠な政治・行政中枢機能や、我が国の経済中枢機能などの首都中枢機能の継続性の確保が課題となります。また、他の地域と比べ、格段に高い集積性から人的・物的被害や経済被害は甚大なものになると予想され、防災・減災対策の推進は、我が国の存亡に関わる喫緊の根幹的課題であるといえます。
そのため、政府は「首都直下地震対策特別措置法」(平成25年12月施行、以下「措置法」といいます。)に基づき、首都直下地震緊急対策区域を定めるとともに、「首都直下地震緊急対策推進基本計画」(以下「基本計画」といいます。)を策定し、円滑かつ迅速な首都直下地震対策を図ることとしました。さらに、平成27年3月には、基本計画の変更を閣議決定し、期限を定めた定量的な減災目標を設定するととともに、当該目標を達成するための具体的な方策等を定めたところです。

首都直下地震緊急対策区域

2 基本計画の変更の概要

首都直下地震に対する定量的な減災目標として、平成27年度から今後10年間で、東京都区部の南部を震源とする地震が発生した場合に想定される死者数(最大約2万3千人)及び建築物全壊・焼失棟数(最大約61万棟)からそれぞれを概ね半減することが目標として定められました。
減災目標を達成するための施策について、首都中枢機関が実施する対策を「首都中枢機能の継続性の確保」、国及び地方公共団体等が実施する対策を「膨大な人的・物的被害への対応」として取りまとめ、防災・減災対策を推進していくこととしており、主な具体目標等は次のとおりとなります。

【主な具体目標等】

(1)首都中枢機能の継続性の確保
・参集要員へ参集を指示するシステム及び職員安否確認システムの構築率 平成28年100%
・参集要員の1週間分及び参集要員以外の職員等の3日分程度の食料、飲料水、医薬品、毛布、簡易トイレ等の物資の備蓄率 平成28年100%
・代替庁舎の確保率 平成27年100%

(2)膨大な人的・物的被害への対応
・住宅の耐震化率 平成32年95%(全国)
・延焼のおそれのある密集市街地における感震ブレーカー等の普及率 平成36年度25%(緊急対策区域)
(感震ブレーカー等の普及に向けた取組については次ページのコラムにて詳しく説明しています。)
・石油コンビナート防災対策としてのエネルギー・産業基盤災害即応部隊 (ドラゴンハイパー・コマンドユニット)の編成 平成30年度12部隊(全国)
・災害廃棄物処理計画の策定率 平成36年度ほぼ全て(1都3県の全市町村)

3 今後の取組

首都直下地震対策には、各府省、自治体等の関係機関が認識を共有するとともに、地域住民、自主防災組織、地域の企業との連携などあらゆる力を結集し、社会全体で自助・共助・公助により、取り組んでいく必要があります。
政府としては、今後、基本計画に盛り込んだ定量的な減災目標を達成するために、関係機関等と緊密な連携を図りながら、建築物の耐震化等その具体的な実現方策に取り組み、適切にフォローアップを行うこととしております。
さらに、政府の災害対策本部と被災自治体との情報共有・連絡体制の構築や発災時の具体的な応急対策に係る計画策定などを着実に推進することにより、対策に万全を期してまいります。
首都直下地震関連の資料等は、内閣府のホームページ(https://www.bousai.go.jp/jishin/syuto/index.html)に掲載しています。

内閣府政策統括官(防災担当)
防災計画担当

感震ブレーカー等の普及に向けて

平成25年12月に中央防災会議首都直下地震対策検討ワーキンググループより報告された「首都直下地震の被害想定と対策について(最終報告)」等を踏まえ、内閣府、消防庁、経済産業省の共同事務局による「大規模地震時の電気火災の発生抑制に関する検討会」が開催され、感震ブレーカー等の性能評価や普及方策等について検討が行われました。検討では、大規模地震で発生した火災の過半数を電気に起因する火災が占めることを再確認するとともに、性能評価や普及方策等の検討が行われ、その成果として、平成27年2月にはガイドラインを、3月には報告書を取りまとめ公表しています。

大規模地震時には電気関係の火災が6割以上

ガイドラインについては、感震ブレーカー等の性能評価の手法等について定め、第三者認証による性能の確認体制の確保や、感震ブレーカー等の設置時の留意点等が取りまとめられ、これを踏まえ、現在、各メーカーにおいて様々な取組が進んでいます。
まず、ガイドラインで定めた性能評価に関し、(一財)日本消防設備安全センターの消防防災製品等推奨制度による推奨品として、平成27年5月に初めての認証がなされました。第三者機関の認証を得ることで、消費者における所要の性能の確認や、普及に向けた公的な支援の検討がなされる際の一定の目安としての活用等が期待されるものです。
また、検討会の報告を踏まえ、新たな製品開発に取り組んでいるメーカーの事例として、作動に伴うユーザー側の不便等の解消に向けた「総合タイプ型」の検討が進んでいます。このような多機能の製品が開発・販売されることは、消費者のニーズに合わせた使用と製品選択の幅が広がることになります。

住宅用感電総合システム

報告書では、ガイドラインの内容に加え、自治体等の取組や普及に向けた今後の取組についても言及されています。中でも当面の普及目標として、「延焼のおそれのある密集市街地のうち、特に切迫性の高い首都直下地震対策特別措置法に基づく緊急対策区域等について重点的に取組みを進め、10年を一つの区切りに25%以上の世帯への普及に向け、総合的・継続的な取組が進められることが期待される」との提言がなされており、これを踏まえ「首都直下地震緊急対策推進基本計画」の防災・減災のための具体目標が定められています。
今後、具体目標達成に向けて、報告書の提言を踏まえ、木造住宅密集市街地を中心としたモデル調査等の検討を行うとともに、関係者が一体となった大規模地震時の電気火災の発生抑制対策の推進を図ることとしております。

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内閣府政策統括官(防災担当)

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