特集 風水害から身を守る

特集 風水害から身を守る

昨年の夏は大雨や竜巻等による災害が発生し、全国各地で大きな被害をもたらしました。
今年もこれから風水害が多く発生する季節です。今まで被害がなかったからといって、油断は禁物です。平常時にこそ、風水害が発生した時に何が必要か、どのように行動すべきかを考え、準備することが大切です。日頃の備えを十分に行うことが、風水害の被害を抑えます。

大雨による災害

日本は季節の変わり目に梅雨前線や秋雨前線が停滞し、しばしば大雨となります。また、7月から10月にかけては、日本に接近・上陸する台風も多くなります。傾斜が急な山や川が多い日本では、前線や台風によって毎年のように川の氾濫や土砂災害などが発生し、人々の生活や命が脅かされています。
昨年も、6月から8月にかけて、梅雨前線が九州から本州付近に停滞し、九州から東北にかけて大雨が降りました。特に、島根県、山口県、秋田県、岩手県等で記録的な豪雨となり、家屋の倒壊、土砂災害などが発生、死者・行方不明者17名という被害をもたらしました(平成25年10月7日現在。内閣府「梅雨期における大雨等による被害状況について」)。
また、10月には大型で強い勢力の台風第26号が伊豆諸島北部を通過、東京都大島町では、狭い範囲に猛烈な雨が数時間降り続きました。この記録的な大雨により、流木を伴う大規模な土砂災害が発生、死者・行方不明者が39名にのぼっています(平成25年11月25日現在。内閣府「平成25年台風第26号による被害状況等について」)。

平成25年10月、台風第26号によって大きな被害を受けた東京都大島町(写真 アフロ)

大雨による災害から身を守る
大雨や台風から身を守るためには、情報の収集が大切です。台風や大雨は、いつ、どこで、どのくらいの強さで発生するか、ある程度予想することができ、気象庁はそうした情報を「防災気象情報」として発表しています。テレビ、ラジオ、気象庁のホームページなどで最新の防災気象情報を収集するように心掛け、時間を追って段階的に発表される「注意報」や「警報」を活用して、早め早めの安全確保行動をとるようにしましょう。
また、気象庁は警報や注意報に先立ち、「大雨に関する気象情報」や「台風に関する気象情報」を発表しています。天気予報やニュースで「気象庁では大雨(台風)に関する情報を出して警戒を呼びかけている」という言葉が流れたら、その後の気象情報に注意して下さい。

各種防災気象情報のタイミングの例(出典 気象庁)
・土砂災害の危険度が非常に高まったときは、都道府県と共同で「土砂災害警戒情報」を発表します。
・防災上重要な河川については、国土交通省または都道府県と共同で「指定河川洪水予報」を発表します。
・数年に一度の猛烈な雨を観測した場合には 「記録的短時間大雨情報」を発表します。

日頃の備え
台風や大雨の備えとして、強い風や雨が始まる前にしておくべきことがあります。日頃から次のような備えをしておきましょう。
・懐中電灯、携帯ラジオ、救急薬品、衣類、非常用食品、飲料水など、非常持ち出し品を準備する
・市町村が作成しているハザードマップで、危険箇所や避難場所を確認する
・瓦、アンテナ、雨樋、プロパンガス容器などの屋外設置物が、風に飛ばされないようにしっかり固定されているか確認する
・水の流れをスムーズにするために、側溝、排水路を掃除する

避難の時の注意
市町村から避難勧告・避難指示が発令されたら、安全なルートで避難場所にすぐに避難して下さい。避難勧告・避難指示が発令されていなくても、危険な場所にいる場合、避難に時間がかかる場合は、早めに自主的に避難して下さい。
ただし、大雨や浸水の中での避難は、マンホールや側溝に転落するおそれがあるなど、危険で困難です。無理に避難するよりも、自宅の高い階に避難したり、その場に留まったほうが安全な場合もあります。周りの状況を慎重に判断して、行動しましょう。

局地的大雨や集中豪雨への注意
最近は、ごく狭い範囲に短時間で強い雨が降る「局地的大雨」や激しい雨が数時間にわたって降り続く「集中豪雨」などによって引き起こされる災害も増えています。こうした雨は狭い地域に限られ突発的に降るため、発生の予測は難しく、突然状況が変わります。特に、屋外では次のような場所は、急激に水が流れ込んだり、増水したりして危険です。少しでも異常を感じたら避難しましょう。
・地下街などの地下施設
・住居の地下室、地下ガレージ
・道路のアンダーパス
・川原、中洲、親水公園
・下水道管、用水路

平成20年7月、兵庫県神戸市灘区の都賀川が局地的大雨によって急激に増水。親水公園で水遊びをしていた子どもたちなどが流され、5人が亡くなった。(写真提供:神戸市)

大雨による土砂災害

大雨の時に注意しなければならない災害の一つが、土砂災害です。日本は国土の約7割が山地や丘陵のため、大雨、台風、地震等によりしばしば土砂災害が発生します。土砂災害には次の3種類があります。

1.がけ崩れ
斜面の地表に近い部分が、雨水の浸透や地震等でゆるみ、突然崩れ落ちる現象

2.土石流
山腹や川底の石、土砂が長雨や集中豪雨等によって、一気に下流へと押し流される現象

3.地すべり
斜面の一部あるいは全部が地下水の影響と重力によって斜面下方に移動する現象

全国でこうした土砂災害が発生する恐れのある危険箇所は、実に約52万箇所にのぼります。全国の土砂災害の発生は、年平均約1000件に達します(http://www.mlit.go.jp/river/bousai/saigai/pdf/h25/h25_overview.pdf 別ウインドウで開きます別ウインドウで開きます)。
土砂災害は一瞬にして多くの人命や財産を奪う危険な災害で、しかも予測の難しい災害です。土砂災害から身を守るためには、どのようにすべきでしょうか。

危険な場所を知る
土砂災害が発生する危険性のある地区は、「土砂災害危険箇所」もしくは「土砂災害警戒区域」に指定されています。国土交通省砂防部のホームページ(http://www.mlit.go.jp/river/sabo/link_dosya_kiken.html別ウインドウで開きます) や自治体に問い合わせて確認しておきましょう。

雨に注意する
雨が降り出したら「土砂災害警戒情報」に注意しましょう。土砂災害警戒情報は土砂災害の危険性が高まったときに都道府県と気象庁が共同で発表します。土砂災害警戒情報は、テレビ、ラジオ、防災無線、気象庁や各都道府県の砂防部局のホームページなどでも確認できます。都道府県によっては、携帯電話等に土砂災害警戒情報を自動送信するサービスを提供している場合もあります。
また、都道府県と気象庁は、土砂災害警戒情報を補足する情報として、市町村内のより詳しい危険度がリアルタイムで分かる「土砂災害警戒判定メッシュ情報」(http://www.jma.go.jp/jp/doshamesh/別ウインドウで開きます)等を提供しており、各都道府県と気象庁のホームページで確認することができます。
土砂災害警戒情報が発表されたときには、市町村では、土砂災害警戒区等のうち、これらのメッシュ情報で危険度が高まっている領域に対して避難勧告などの発令が検討されます。

土砂災害警戒判定メッシュ情報の例(新潟県の府県ページ)(出典 気象庁HP)

前兆現象を知る
土砂災害には、前兆現象が現れることがあります。前兆現象に気づいたら、直ぐに周囲の住民や自治体などに連絡し、避難しましょう。

がけ崩れの主な前兆現象
・ がけにひび割れができる
・ 小石がパラパラと落ちてくる
・ がけから水が湧き出る

土石流の主な前兆現象
・ 山鳴りがする
・ 急に川の水が濁り、流木が混ざり始める
・ 腐った土の匂いがする

地すべりの主な前兆現象
・ 地面がひび割れ・陥没
・ がけや斜面から水が噴き出す
・ 井戸や沢の水が濁る

竜巻による災害

竜巻は、発達した積乱雲に伴う強い上昇気流によって発生する激しい渦巻きです。その直径は、数十メートルから数百メートルにおよぶものもあり、非常に早いスピードで数キロメートル以上にわたって移動することがあります。竜巻は、台風や寒冷前線、低気圧に伴って、季節を問わず全国各地で発生していますが、特に積乱雲が発生しやすい台風シーズンの9月、10月に集中的に発生しています。

昨年は9月2日に埼玉県さいたま市から茨城県坂東市にかけて竜巻が発生し、負傷者67名、全壊13棟、半壊38棟など、埼玉県越谷市や千葉県野田市を中心に大きな被害をもたらしています。被害の範囲は長さ19キロメートル、幅約300メートルでした(平成25年10月7日現在。内閣府「9月2日及び4日の竜巻等による被害状況等について」)。

竜巻発生の兆しを知る
気象庁は、竜巻等による激しい突風が予想されるときに、「竜巻注意情報」を発表しています。竜巻注意情報は、気象庁のホームページ、テレビ、ラジオ、自治体のメールサービス等から入手できます。また、気象庁は、「竜巻が今にも発生する(または発生している)可能性の程度」を推定する「竜巻発生確度ナウキャスト」を発表しています。竜巻等が発生しやすい地域の詳細な分布と発生確度を10分ごとに更新・提供しています。気象庁のホームページの他、携帯電話サイトでも提供されており、屋外で活動する際の利用も可能です。
特に、建設現場、人が大勢集まる野外イベント、テントの使用や、子ども、高齢者を含む野外活動など、安全確保にある程度の時間を要する場合には、あらかじめ気象情報に注意する必要があります。
竜巻注意情報が発表され、次のような変化が現れてきたら、直ぐに安全な場所に避難して下さい。

竜巻が発生する兆し
・低く黒い雲(積乱雲)が接近する
・雷鳴や雷光が見える
・急に冷たい風が吹く
・大粒の雨や「ひょう」が降る

竜巻が接近したときの特徴
・黒い雲の底が漏斗状に垂れ下がる
・物やごみ等が巻き上げられ飛んでくる
・“ゴーッ”という音がする
・(気圧の変化により)耳に異常を感じる

竜巻が接近したときの退避行動
竜巻の恐ろしさは、巻き上げられた物が猛スピードで飛んでくることです。そうした飛散物の直撃を受けると、命を落としたり重傷を負ったりします。竜巻が接近したときは次の退避行動をとって下さい。

屋内の退避行動
・雨戸、窓、カーテンを閉める
・家の1階で中心部に近い、窓のない部屋(トイレ等)や地下室に避難する
・浴槽や机の下など、頑丈な物の影に入り、両腕で頭と首を守る

屋外の退避行動
・コンクリート製等の頑丈な屋内に避難する
・頑丈な構造物の側にうずくまったり、側溝等に伏せる
※橋や陸橋の下、車庫、物置、プレハブには避難しない

竜巻が接近したときの退避行動(出典 内閣府・気象庁)

風水害から身を守るためには、日頃からの備えが大切です。これからの季節、気象情報には十分気をつけ、雨の降り方に注意しましょう。自治体が準備しているハザードマップに目を通し、家族との連絡方法、身近な危険箇所、安全な避難場所を確認しておきましょう。

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内閣府政策統括官(防災担当)

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