防災リーダーと地域の輪 第8回

大人も子どもも一緒に行う地域防災力向上作戦

奈良県北葛城郡上牧町(きたかつらぎぐんかんまきちょう)にある西大和6自治会連絡会では、大人も子どもも、みんなが参加して「災害時要援護者避難訓練」に挑戦した。

2010年8月、西大和6自治会連絡会(以下「西大和」)は、数年来の懸案事項となっていた「災害時要援護者避難訓練」を初めて実施した。
防災教育チャレンジプラン応募がきっかけとなり、地域恒例の「子どもサバイバルキャンプ」と連携させるなど、大人も子どもも参加する災害時要援護者支援に挑戦することになった。

「子どもサバイバルキャンプ」の効果
「子どもサバイバルキャンプ」(小学生対象)は、6つの自治会の一つ、桜ヶ丘2丁目自治会が2005年から毎夏開催してきたイベントだ。1泊2日の日程で、ゲームを取りいれた防災学習のほか、消火器や救出用資器材の訓練も盛り込まれている。
「災害時要援護者避難訓練」は、役場や教育委員会などの町内の関係者や他の自治会会長らが見守る中、キャンプ第1日目午前中のプログラムとして実施された。
訓練では、住民が本部、安否確認班、救助班などにわかれ、トランシーバーで連絡を取り合いながら、要援護者に扮した住民の発見から、リヤカーや車椅子による本部への救助搬送までを行った。小学校高学年生の子どもたちで“子ども班”を編成。大人と同様のメニューを見事にこなした。
訓練後に行われた反省会では、子どもたちから「救助班が来るのが遅かった」など、真剣に取り組んでいたからこそと思われる厳しい意見も飛び出し、活発な意見交換が行われた。
「サバイバルキャンプを6年間やってきた効果かもしれません」と西大和の顧問を務める辻誠一さんは話す。「子どもは、大人のような先入観がない分、素直に説明を聞いて、よりスムーズに行動できるのではないでしょうか」

第1回、2回目の災害時要援護者避難訓練の様子。(左上から時計回り)“子ども班”による訓練出発、要援護者の搬送、医師・看護師によるケア、トランシーバーで安否確認班からの連絡を受ける“子ども班”本部
(写真提供 西大和6自治会連絡会)

「助けあい」向こう三軒両隣
初回訓練後、桜ヶ丘2丁目自治会長の椎木固(しいのきたかし)さんを中心に自治会は災害時要援護者台帳づくりに取り掛かった。要援護者の登録希望を募るため、椎木さんらが地区内全戸の戸別訪問を始めると、住民から「助ける側の登録も必要では」との声があがった。
そこで急遽「災害時支援者」も同時に募集することに。その結果、要援護者約70名に対し、支援者には約230名が名乗りをあげ、医師・看護師等の専門職や、子守り、安否確認など、さまざまな役割の登録者を得ることができた。
「予想以上の支援者登録数で、住民の方々の『助けあい』意識の高さはうれしい驚きでした」と辻さんと椎木さんは声をそろえる。
台帳づくりで高まった地域の防災意識をさらに確実なものにするため、今年1月には第2回目の要援護者避難訓練を実施。「災害時支援者登録者」85名も参加して、より実践的な訓練内容となった。
こうした一連の活動が評価され、西大和は、防災教育チャレンジプラン2010年度「防災教育特別賞」を受賞した。
西大和は、今年11月に桜ヶ丘2丁目で、災害時要援護者を含む、住民全体の総合避難訓練を実施する予定だ。もちろん子どもたちも大人と同じメニューに挑戦する。今後は、同様の訓練を徐々に上牧町全体に広げていきたいと考えている。

防災リーダーの一言

ご近所様の顔が見えることが防災です。例えば、お祭りや餅つき大会などに老若男女みんなで参加して楽しむことも防災につながります。イベントを通じて会話が広がり、皆さんの特技や経験もわかりますから、災害時の役割分担も描けてきます。
そして、住民同士の「お互い様」と言う気持ちと、「自分たちの町は自分たちで守ろう」という意識が一番大事だと思います。
負担にならないように、楽しく自主防災活動を継続していくには、若い方たちの斬新なアイデアも必要です。20代や30代、若い方たちが参加しやすく、主体となってやっていただけるようにしていきたいと思っています。

辻 誠一
つじ・せいいち
西大和6自治会連絡会 顧問

所在地 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 電話番号 03-5253-2111(大代表)
内閣府政策統括官(防災担当)

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