特集 東日本大震災

甚大な被害を及ぼした東日本大震災から約3ヶ月。広範囲にわたる地域が被害を受けたことから、まだ全容が明らかになっていない部分もありますが、現時点での大震災の概要をお伝えします。

堤防を乗り越えて町に押し寄せる津波
(田老町漁業協同組合 提供)

1.東日本大震災の概要

マグニチュード9.0

東日本大震災は、2011年3月11日14時46分頃に発生。三陸沖の宮城県牡鹿半島の東南東130km付近で、深さ約24kmを震源とする地震でした。マグニチュード(M)は、1952年のカムチャッカ地震と同じ9.0。これは、日本国内観測史上最大規模、アメリカ地質調査所(USGS)の情報によれば1900年以降、世界でも4番目の規模の地震でした。

被害概要

被害状況等については、まだ行方不明者も多く、全容は把握されていません。緊急災害対策本部資料によると、震災から3ヶ月を超えた6月20日時点で、死者約1万5千人、行方不明者約7千5百人、負傷者約5千4百人。また、12万5千人近くの方々が避難生活を送っています。

震度

本震による震度は、宮城県北部の栗原市で最大震度7が観測された他、宮城県、福島県、茨城県、栃木県などでは震度6強を観測。北海道から九州地方にかけて、震度6弱から震度1の揺れが観測されました。
 その後も強い揺れを伴う余震が多数観測されています。気象庁によると、4月7日に宮城県沖を震源として発生した震度6強の余震をはじめ、5月31日までに発生した余震は、最大震度6強が2回、最大震度6弱が2回、最大震度5強が6回、最大震度5弱が23回、最大震度4が135回観測されました。

3月11日 東日本大震災の震度分布図(気象庁 提供)

地殻変動

全地球測位システム(GPS)による国土地理院の観測では、今回の地震に伴う地殻変動で、東北地方から関東地方の広い範囲で東向きの地殻変動が見られました。宮城県牡鹿半島は、東南東方向に約5.3m水平移動し、約1.2m沈降。また、同県沿岸部の海抜0m以下の面積は、震災前の3.4倍の56km2になっていることなどが確認されています。

未曾有の 大津波

今回の大震災では、岩手、宮城、福島県を中心とした太平洋沿岸部を巨大な津波が襲いました。
  各地を襲った津波の高さは、福島県相馬では9.3m 以上、岩手県宮古で8.5m 以上、大船渡で8.0m以上、宮城県石巻市鮎川で7.6m以上などが観測(気象庁検潮所)されたほか、宮城県女川漁港で14.8mの津波痕跡も確認(港湾空港技術研究所)されています。また、遡上高(陸地の斜面を駆け上がった津波の高さ)では、全国津波合同調査グループによると、国内観測史上最大となる40.5mが観測されました。
  国土地理院によると、青森、岩手、宮城、福島、茨城、千葉の6県62市町村における浸水範囲面積の合計は561km2。これは、山手線の内側の面積の約9倍にあたります。また、同院が公開した浸水範囲概況図から、今回の津波が、仙台平野等では海岸線から約5km内陸まで浸水していることが確認できます。

(気象庁 提供)

大量の帰宅困難者、液状化現象

震度5強が観測された首都圏では、交通機関が不通となったため、大量の帰宅困難者が発生する事態となりました。徒歩で帰宅を試みる人々で歩道は大混雑。また、帰宅できなかった多くの人々が勤務先や駅周辺あるいは、都が開設した一時収容施設等で一夜を明かしました。東京都の発表によると、3月12日午前4時現在で、約9万4千人が都の関係施設や都立学校、区市町の一時受け入れ施設を利用していたということです。
 関東では、茨城、千葉、東京、埼玉、神奈川の広い範囲で液状化現象が発生しました。重いマンホールが持ち上がるほどの砂の噴出や、家屋、電信柱などの傾斜や沈下、また、水道、電気、ガスといったライフラインが一時ストップする被害が生じました。

東日本大震災による浸水範囲概況図
東日本大震災の概要

(出典 6 月20 日17:00 現在 首相官邸 緊急災害対策本部発表)

2.各地の状況

岩手県宮古市

宮城県気仙沼市

福島県相馬市

千葉県浦安市で起きた液状化現象

復旧・救援活動

最大時10万人規模の隊員が派遣された自衛隊をはじめ、警察、消防、海上保安庁等からも多数の隊員や医療スタッフが派遣され、被災地での捜索活動や救援・復旧支援活動にあたっています。

警備犬を使った捜索・救助活動(警視庁ホームページより)

岩手県立宮古病院の災害対策本部で活動中の
横浜労災病院災害派遣医療チーム(DMAT)
(労働者健康福祉機構 提供)

緊急消防援助隊による消火活動
(宮城県気仙沼市西みなと町付近)(東京消防庁 提供)

岩手県島越漁港で捜索を行う巡視船「おき」・「でじま」潜水士
(海上保安庁ホームページより)

捜索活動を行う自衛隊隊員(宮城県亘理郡山元町)
(防衛省ホームページより)

3.政府の対応

3月 11 日
14時50分

政府は、発災直後に官邸対策室を設置するとともに、緊急参集チームを招集しました。また同時刻、総理大臣から、「①被災状況の確認、②住民の安全確保、早期の避難対策、③ライフラインの確保、交通網の復旧、④住民への的確な情報提供に全力を尽くすこと」との指示がありました。

15時14分 東北地方太平洋沖地震災害の応急対策を強力に推進するため、災害対策基本法に基づき、同法制定以来初めて、内閣総理大臣を本部長とする緊急災害対策本部が閣議決定により設置されました。

15時37分 第1回緊急災害対策本部会議が開催され、災害応急対策に関する基本方針が決定されました。この方針に基づき、政府が地方自治体と緊密に連携し、被災者の救援・救助をはじめとする災害応急活動に総力をあげて取り組むこととしました。
 発災当日には、さらに2回の緊急災害対策本部会議が開催されました。
 また、首都圏では、地震直後から全ての鉄道が運行を見合わせ、多数の帰宅困難者が駅に滞留するなどの問題が発生していたことから、19時23分に開催された第3回緊急災害対策本部会議の後、官房長官から帰宅困難者の対策についての指示があり、東京都を中心に、首都圏に所在する国の施設等を、帰宅困難者の一時滞在施設として開放することなどの対応が行われました。

18時42分 現地の被害状況を詳細に把握するため、内閣府副大臣を団長とする政府調査団が現地に派遣されました。

3月 12 日

前日の閣議決定に基づき、12日6時に、内閣府副大臣を本部長とする緊急災害現地対策本部が宮城県に設置されました。また同日、岩手県、福島県にも政府調査団が派遣され、それぞれ現地連絡対策室が設置されました。現地対策本部は、政府一体となって推進する災害対策について、被災地において機動的かつ迅速に処理するとともに、地方公共団体の災害対策本部が行っている災害応急対策に対して、政府として最大限の支援、協力を行うことを目的としています。
 津波により、役場の機能が失われたところや孤立者が多数発生したことから、発災翌日の3月12日の第6回緊急災害対策本部会議においては、総理大臣から、人命救助に関して自衛隊の部隊の積極的投入や地方自治体へのサポートを強化するようにとの指示がありました。

避難所で被災者から話を聞く松本防災担当大臣(中央)(宮城県牡鹿町)

緊急災害現地対策本部(宮城県)

3月 17 日

発災から1週間となる3月17日までに開催された12回にわたる緊急災害対策本部会議において、応急対策を推進するための総合調整が進められ、また災害救助法・被災者生活再建支援法の適用や激甚災害・特定非常災害の指定、物資支援に係る予備費使用などの緊急的な対応が行われました。
 3月17日に開催された第12回緊急災害対策本部会議においては、今後の被災者の生活支援が喫緊の課題であることに鑑み、本部の下に「被災者生活支援特別対策本部」を置くことが決定され、これまでに緊急災害対策本部内の事案対処班が担っていた地方公共団体で実施する被災者に対する物資の調達や輸送、広域医療搬送や海外からの支援受け入れなどのほか、各省庁を横断する様々な支援施策を強力に推進することとしました。

被災地を視察する東内閣府副大臣(右端)(岩手県宮古市)

被災地で関係者から説明を受ける阿久津内閣府大臣政務官(左から2人目)
(宮城県石巻市)

建設が急ピッチで進められている仮設住宅(社団法人プレハブ建築 提供)

4.海外からの支援

数多くの支援

東日本大震災被災者のための支援活動の輪は世界中に広がっています。
 日本政府に対し、世界各国・地域及び国際機関からお見舞いや応援のメッセージが相次いで送られてきたほか、5月30日現在、159カ国・地域及び43国際機関から支援の申し出がありました。
 55カ国・地域・機関からは救援物資が、81カ国・地域・機関からは寄附金が届けられています。また28カ国・地域・機関から救助隊が派遣され、被災地で救援活動が行われてきました。
 東日本大震災においては、特例で、日本の医師免許を持たない外国人医師による医療支援活動が可能となっており、既に医療支援チームが来訪し活動を行いました。
 「Pray for Japan」(日本のために祈りを)、「I Love Japan」、「私たちの心は日本の人々と共に」。暖かい応援メッセージとともに、世界中で一般市民が被災地のために積極的に支援活動を行ってくれています。追悼式典やチャリティーコンサート、スポーツの試合が開催され、多くの救援物資や募金が寄せられています。

マーシャル諸島では、日の丸をかたどったアクセサリー販売による
募金活動が行われた(外務省ホームページより)

トモダチ作戦

アメリカ軍は、「トモダチ作戦」と名付けた被災地支援活動を展開してきました。
 震災当日の11日夜、外務大臣から駐日米国大使へ在日アメリカ軍による支援の要請が正式に行われたことから、これまでアメリカ海軍・海兵隊・空軍・陸軍も連携した大規模な支援活動が実施されました。
 最大時には1万6千人を超す人員が支援活に参加したほか、15隻の艦船、140機の航空機が投入されました。
 行方不明者の捜索救助活動や仙台空港の復旧支援、また、大量の救援物資の搬入や瓦礫の撤去、被災施設の清掃、鉄道の復旧支援など、自衛隊やボランティア、また被災者の方たちと協力しながら行われた活動は多岐に渡りました。

アメリカ軍上陸用舟艇(LCU)による物資輸送(宮城県気仙沼- 大島間)
(防衛省ホームページより)

5.避難所・避難者

自治組織

6月20日時点で、約12万5千人の方々が避難生活を送っています。
  不自由な生活を余儀なくされる避難所生活の中、各地で被災者による自治組織づくりが始められました。避難所では、食料の分配やゴミの分別などで混乱が生じることもあります。また、市町村職員の多くも被災しており、避難所をとりまとめる人員が不足しているといった問題もありました。このような問題を解決するため、被災者の中から自発的に自治組織づくりの動きが起こったのです。
  被災者をいくつかの班に分けて、補給物資の配給や炊き出し、トイレ掃除などを当番で行う。定期的に開かれるミーティングでは、情報や課題の共有を行う。また、町の体育委員長や保健師が音頭をとり、毎朝ラジオ体操を行う避難所もあるそうです。
  地域社会のまとまりが復活することで、トラブルが減少するだけでなく、役割分担を持つことが避難所生活でのリズムづくりにもつながっています。

学生、子どもの活躍

避難所で自発的に行動を起したのは大人たちばかりではありません。避難所の皆を助けようと、力仕事やトイレ掃除などのボランティアに率先して取り組む中学生や高校生。地域の学校が避難所になっていることから、ボランティアに参加する卒業生たちの姿も数多くみられました。また、「大人たちを元気づけよう」と避難所での明るいニュースを紹介する壁新聞を毎日発行する小学生・中学生のグループも。子どもたちも各地の避難所で活躍しています。

避難所の様子(宮城県気仙沼市)

6.支援活動

 支援活動には、さまざまな方法があります。情報を収集し「自分にできること」を少しずつ始めてはいかがでしょうか。被災地には、息の長い支援が必要です。

「助けあいジャパン」
 「助けあいジャパン」とは、東日本大震災発生をきっかけに立ち上げられたプロジェクトです。内閣官房震災ボランティア連携室と連携し、現地からの情報提供を受けながら、インターネットを通じてボランティアによる救援を支援しています。
 複数の社会人・学生有志、企業の協力のもと運営されており、現在、「助けあいジャパン ボランティア情報ステーション」(東京都港区)を中心に、情報収集・発信活動が行われています。
 同サイトでは、政府や自治体、交通機関からの最新情報や、被災地の方に向けた生活情報、ボランティアの参加方法や支援物資・寄付の受付先など、被災地の方と被災地外で支援を考えている方どちらにも役立つ情報が掲載されています。

ボランティア活動
 既に、災害ボランティアセンターが開設され、ボランティアの受け入れ態勢も整いつつあります。
 厚生労働省の発表によると、災害ボランティアセンターの設置状況は、岩手県 24 ヶ所、宮城県12ヶ所、福島県30ヶ所などです(6月13日時点)。また、これらの災害ボランティアセンターの仲介によりボランティア活動を行った人の延べ人数は、岩手県約9万3200人、宮城県約20万7600人、福島県約6万6600人となっています(6月5日時点)。
 ボランティア活動に参加する際は、事前に「助けあいジャパン」や被災地の社会福祉協議会ホームページなどで注意点や必要要件などを確認されることをおすすめします。

ボランティア活動の主な注意点1被災者中心の活動2十分な準備3事前に情報確認

ボランティアは、そろいの緑のベストを着用し、
避難所で支援物資の仕分けをお手伝い(宮城県気仙沼市)

義援金と支援金
 募金には、大きく分けて、二つの種類があります。長期的な復興を視野に被災者に分配される「義援金」と、今すぐ必要とされる支援活動をサポートするために、被災地で活動するNGO・NPOの活動資金になる「支援金」。どちらも必要なお金です。
  なお、募金を偽装した詐欺が発生していますので、寄付をする際にも、正しい情報を調べるなどの注意が必要です。

支援物資
 「どこで、だれが、何を」必要としているのか。物資の適切な送り方や送付先は、各都道府県や団体等のホームページでも確認できます(災害時に被災者へ物資を送る際の留意点については、21頁掲載の「防災Q & A」を併せてご参照下さい)。

岩手県トラック協会が支援物資の荷捌き支援

7.地震のメカニズム

  地球の表面は、海や陸など、いくつかのブロックに分かれた、厚さ数10〜200km程度のプレート(岩盤)で覆われています。
 海の下では、常に新しいプレートが生まれています。これが海底を形づくる海のプレートで、1年間に数cmの速さで広がり、陸地を形づくっている陸のプレートの方へ押し寄せています。
  地震は、これらのプレートが、周囲から押されることにより、ある面を境として“ずれる”現象で、プレートの境界では、プレートどうしの押し合う力によって地震が発生しています。

日本周辺のプレート図

海溝型地震
 日本列島は、海と陸の4枚のプレートの境界に位置しています。東日本大震災は、太平洋プレート(海のプレート)と北米プレート(陸のプレート)の境界にあたる水深6,000m 以上の深い溝(海溝)で起きた「海溝型地震」でした。
 太平洋プレートは、北米プレートの方へ年8〜10cm 程度の速さで押し寄せ、海のプレートは陸のプレートよりも重いため、その下へ沈み込んでいます。
 プレートが接する面の摩擦により、海のプレートは、陸のプレートの先端を引き込みながら沈み込み、そこにひずみが蓄積します。
 ひずみが限界に達すると、陸のプレートの先端が一気に跳ね上がり、地震が発生します。この地震に伴い海水が押し上げられることで、今回の震災のように、津波が発生する場合があるのです。

海溝型地震の仕組み

広範な震源域
 地震による岩盤の“ずれ”(断層)が始まったところが震源、そして、その“ずれ”が地震波を周囲に発しながら広がり、最終的にずれ破壊を生じた領域全体が震源域です。
 気象庁によると、本震は、複雑なかたちで3つの巨大な破壊が連続して発生した、極めて稀な地震でした。
 断層の破壊は、宮城県沖から始まり、岩手県沖の方向と、福島県・茨城県沖方向に伝播し、その震源域は、岩手県沖から茨城県沖にかけて、長さ約450km、幅約200kmと広範囲にわたりました。
 地震の規模は、これら震源域の複雑な破壊過程を解析した結果、マグニチュード9.0とされました。

8.津波のメカニズム

 地震が発生すると、海底が隆起あるいは沈降します。これに伴い海面が変動し、大きな波となって四方八方に伝播するのが津波です。

津波は猛スピードで襲来
 津波は海が深いほど早く伝わり、水深が浅くなるにつれて速度は遅くなります。しかし、遅くなるとはいっても、その速度は、海岸近くでもオリンピックの短距離選手並みです。

津波の速度

津波は膨大な力を持つ
 津波は、波浪とは発生の仕組みも、その力にも大きな違いがあります。
 波浪は、風の力で海面付近の海水だけが動きますが、津波は海底から海面までの全ての海水が動くのです。
 また、波長(波の山から次の山までの長さ)が長く、数kmから数百kmにも及びます(波浪は数mから数百m程度)。波の高さは同じでも、津波で沿岸に押し寄せる海水の量は、波浪よりも桁違いに多く、すさまじい力で陸上に流れ込み、そして引いていくのです。

津波と波浪

津波は繰り返しやってくる
 津波は、何度も押し寄せることがあります。また、第一波の津波が一番高いとは限りません。
  津波が陸地に近づいて速度が遅くなると、後ろの波が前の波に追いつき、複数の波が重なって、その後繰り返しやってくる波の方が高くなることがあるのです。

地形によって大きく変化
 津波の高さは海岸付近の地形によって大きく変化します。また、今回の大津波のように20m、30mと津波が陸地を駆け上がる(遡上する)こともあります。
  岬の先端や、三陸地方に特徴的なリアス式海岸にも多くみられるV字型の湾の奥などでは、津波の力が集中し、局地的に高くなることがあります。

宮古市田老地区周辺の被災状況(新旧画像)

(国土地理院 提供)

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内閣府政策統括官(防災担当)

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