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震災対策総合条例の改正とその取り組み—渋谷区

平成8年に、全国に先駆けて「震災対策総合条例」を制定した渋谷区。
安心・安全なまちをつくるため、その後もさまざまな改正を行ってきました。その内容と取り組みを紹介します。

1─渋谷区におけるこれまでの災害時要援護者対策

 渋谷区では、1993(平成5)年から災害時要援護者登録制度として、本人の同意を得て地域の自主防災組織に情報提供をする「手上げ方式」による登録を行ってきました。
 本人や家族から登録の申し出があると、情報を提供することに同意してもらうための「同意書」を記入してもらい、これに基づいて名簿を作成、区内に105ある自主防災組織の各会長に、それぞれの地域の名簿を交付していました。
 区長は、自主防災組織の会長から個人情報の管理に対する誓約である「覚書」と「名簿受領書」を受け取ります。その後自主防災組織の役員等が名簿登録者本人と面談し、個別の「避難計画」を作成してきました。
 さらに、1996(平成8)年度から寝たきり高齢者の居る世帯、身体障害等のいる世帯に対して、3点まで無料で転倒防止金具の取付を行う事業を行っています。

2─震災対策総合条例の改正

 2006(平成18)年年3月に災害時要援護者の避難支援ガイドラインの改定がされました。
 渋谷区では、災害時要援護者対策の充実を図るために、これまでの「手上げ方式」では、災害発生時に区民を守る対策が充分ではないことから「関係機関情報共有方式」を採用することとしました。
 「関係機関情報共有方式」を採用するに当たっては三つの手法があると考えました。
 一つは「渋谷区個人情報保護条例の一部改正」を行う方法、二つ目は震災対策の基本条例である「渋谷区震災対策総合条例の一部改正」を行う方法、三つ目は「渋谷区個人情報の保護及び情報公開審議会」の意見を聴いて定める方法です。
 当初は、三つ目の「渋谷区個人情報の保護及び情報公開審議会」に諮って、目的外利用と外部提供を行うための準備を進めてきました。
 その中で、区民の生命や財産に関わる重要な事項であることから、審議会に諮るよりも、区民の代表である区議会の中でしっかり審議してもらい、条例で規定し、区民に知らせる方がより適切ではないかという考えに至りました。
 条例改正をする場合には、一つ目の「個人情報保護条例」を改正する方法がありますが、渋谷区では、1996(平成8)年から施行している、基本条例の「渋谷区震災対策総合条例」があったので、その中の第36条に「災害弱者」を規定する条文を改正するほうが、災害時要援護者対策の位置づけが明確になると考え、条例改正によって行うこととしました。
 「渋谷区個人情報保護条例」の第14条第2項第1項では「法令に定めがあるときは本人の同意を得ないで目的外利用ができる」と定められています。また、第15条第2項第1号では「法令に定めがあるときは本人の同意を得ないで外部提供ができる」と規定されています。
 また、渋谷区個人情報保護条例では「緊急かつやむを得ないと認められるときには、本人の同意なくして目的外利用と外部提供ができる」と規定しています。しかし、この規定は、災害が発生した直後に要援護者の個人情報を目的外利用及び外部提供を可能にするもので、事前の対策においては有効ではありません。

3─震災対策総合条例の改正の概要と特徴

(1)用語の変更
「災害弱者」を「災害時要援護者」に変更
(2)目的外利用と外部提供の規定整備
 災害時要援護者に係る個人情報の目的外利用等の規定整備として、第36条に「区長は、震災発生時の災害時要援護者の救助又は援護する体制の整備、又は災害時要援護者が被災した場合の援護を行うため、次の方法により必要な個人情報を共有させることができる」の規定を追加しました。これは、災害時要援護者のための目的外利用を行うことと、自主防災組織、民生委員、消防団、消防署及び警察署等に対して外部提供を行うということです。
 さらに、2005(平成17)年に実施した「渋谷区震災対策基礎調査」に基づく建築物の個別情報に含まれる個人情報の外部提供の規定整備を行いました。同じく第36条に「区長は、震災発生時の災害時要援護者の救助又は援護を行うため、震災対策基礎調査結果に基づく建築物の個別情報を自主防災組織等に提供することができる」の規定も追加しました。
 また、この条例は震災対策として規定していますが、その他の災害対策への準用として、第42条に「災害時要援護者の援護の規定を震災以外の災害にも準用する」という規定を追加しました。
(3)対象者
 介護保険・身体障害者手帳交付情報から、一人暮らしで避難にあたり支援が必要な高齢者及び身体障害者としました。
(4)災害時用援護対象者名簿の交付
 登録された要援護者の名簿を、自主防災組織等に順次交付を行ってきましたが、自主防災組織については地域ごとに、民生委員、消防団については担当する区域ごとに、名簿を作成しました。交付に当たっては、それぞれ名簿の受領書を提出してもらう他に、自主防災組織に対しては各組織において「情報管理者」を指定し個人情報保護に対する「覚書」を交わしました。

4─条例をもとにした取組み

(1)避難支援プランの作成
 交付された名簿をもとに、各地域において自主防災組織、民生委員及び消防団の協力により、面談方式による要援護者個々の避難方法、避難場所、緊急時の連絡先、避難支援者等の支援プラン作成を進めています。
 作成された支援プランを活用して、地域の要援護者マップの作成もあわせて進めています。
(2)木造住宅耐震化促進及び耐シェルター・防災ベッドの普及
  1. 木造住宅耐震改修助成事業
     昭和56年3月以前に建築工事に着工した木造住宅を対象に、耐震診断の結果、構造評点が1.0未満の建築物に対して、一般住宅で構造評点を1.0以上にする耐震改修を行う場合に改修工事に要した費用の1/2(限度額100万円)。高齢者等の住宅の場合は、限度額150万円までの助成を行う。また、構造評点を0.7以上にする簡易改修を一般住宅で行う場合には限度額60万円。高齢者等の住宅の場合は限度額100万円までの助成を行う。
  2. 耐震シェルター等設置助成事業
     木造住宅に居住する高齢者等の区民を対象に、地震による建物倒壊から生命を守るために、建物の1階部分に耐震シェルター等の設置に係る費用を全額補助する。
     また、渋谷区で実施した震災対策基礎調査結果で、倒壊危険度の高い建物に居住する要援護者に対し、建物倒壊による被害を少なくするために、耐震化促進助成及び耐震シェルター・防災ベッドの無料設置を要援護者支援プラン作成時に啓発しています。

防災ベッド。10tの荷重にも耐えられる構造。

木質耐震シェルター。2台のベッドを置ける広さ。

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内閣府政策統括官(防災担当)

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