Disaster Report

災害復興レポート
平成18年7月豪雨災害からの復興 「安心安全なまちを目指して」 岡谷市

8人の犠牲者と家屋の全半壊27棟という岡谷市始まって以来の被害をもたらした豪雨災害から約2年。
復興に向けて着々と歩みを進める岡谷市の防災対策を紹介します。

災害復旧の状況

 累積雨量400ミリを超える降雨で発生した土石流により、12の渓流が被災しましたが、災害関連緊急砂防事業により20基の砂防えん堤が完成。また、災害関連緊急治山事業により11地区の崩落地復旧工事も完成 しました。
 被災当時から、雨が降るたびに心配と不安に包まれていた地域の住民も、今では、安心して暮らせるようになっています。
 現在も、長野県により、砂防・治山激甚災害対策特別緊急事業や、天竜川災害復旧助成事業、奥地保安林保全緊急整備事業などの災害復旧事業などに、引き続き取り組んでいます。

完成した小田井沢支川砂防えん堤。

大きな被害を受けた花岡地区に咲く枝垂桜、被害をくいとめた桜を地元では「復興のさくら」として大切にしています。

情報収集・伝達体制の強化

 いかに正確な情報を早く集め、市民、地域に対し速やかに、的確に伝達することが大切か……今回の災害での最も大きな教訓は、情報収集・伝達体制の強化でした。そこで岡谷市では以下の対策を講じています。

  1. 組織体制の見直し
     市内で何が起きているのか、どのような災害が発生しているのかを対策本部として十分に掌握するために、消防署、土木課など、いち早く現場で対応している部署から速やかに情報を収集し、共有するための準備体制として庁内に「情報連絡会」を設置するなど、緊急時における組織体制を見直し、強化を図りました。
  2. 地域との連絡体制の強化
     対策本部と各地区との相互連絡をよりスムーズに行う必要性から、連絡体制、情報収集体制強化のため、地元地区居住の市職員を中心に「地域連絡員」として状況により各区に派遣する体制を作りました。
  3. 防災ラジオの導入
     災害時における防災情報や、緊急を要する行政情報など、防災行政無線の放送内容が大雨などにより聞き取りにくかったことから、防災行政無線を自動受信できる「防災ラジオ」を市民に配布し、市からの情報を的確に伝えられるようにしました。
  4. 独自の雨量計の設置
     今回の災害では、一部の地域に大きな被害が集中したことから、市内8箇所に独自の雨量計を設置し、局地的な雨量情報を的確に把握するシステムを整備しました。
  5. 行政チャンネル(シルキーチャンネル)の開局
     地域ケーブルテレビを利用した行政チャンネルを開局し、災害時などに緊急情報を迅速に市民に提供できる体制を整備しました。
  6. 防災メール(岡谷市防災情報システム)の配信
     全職員や登録した市民に対し、防災行政無線の放送内容や、気象警報、地震情報などをパソコン、携帯電話にメールで配信し、情報提供できるシステムを整備充実しました。
情報伝達のために導入した「防災ラジオ」。

地域防災力の強化

 市内21区全てに設置されている自主防災会の横の連携を図り、災害時の相互協力体制を確立するために「自主防災組織連絡協議会」を設立し、平時から研修会の開催や合同訓練を実施するなど、地域防災力の強化に取り組んでいます。

災害に強い森林づくり

 脆弱な唐松林を中心に土石流が発生したことから、災害に強い森林作りを進めるため、被害のあった山腹に、コナラやケヤキ、トチノキなど広葉樹の苗木を、地域・市民との協働により植樹を進めています。

土石流が発生した山腹の斜面で、多くの市民が参加して、災害に強い森林づくりのため広葉樹の植樹を進めています。

市民への啓発活動

 行政のみならず、多くの住民が土石流の発生を予測できませんでした。そこで、自分の住んでいる地域の状況を理解し、早期の避難が可能になるように、土砂災害の発生の恐れがある危険渓流や地域、浸水想定区域および、前兆現象などを記載した「簡易防災マップ」を全戸配布し、災害に対する意識啓発を行いました。

教訓を忘れることなく

 岡谷市は、今まで大きな自然災害もなく比較的「安全なまち」と言われてきました。
 全国でも、その「予想もしなかった災害」が発生し、多くの犠牲者が出ています。教訓を忘れることなく、二度とかけがえのない人命を失わないよう、災害に強い安心安全なまちづくりに向け、行政、地域、そして市民が一体となり、それぞれの立場で行うべき防災対策に今後も積極的に取り組んでまいります。

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内閣府政策統括官(防災担当)

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