【概要】
(1)災害の概要
○市勢
平成17年4月1日栗原郡10町村が合併して誕生。

佐世保 | 人口等 | 人口:約79,000人 |
地理 | 面積:約805km2(東京23区より大きく、宮城県内で最大) 市内北部には標高約1,627メートルの栗駒山がある。 栗駒山に近い北西部は雪が多く、南東部は雪が少なく温暖。 | |
特産等 | 特産品は米(ひとめぼれ)の他に、今回の地震で被害の大きかった栗駒地区では高原野菜、いちご、岩魚などがある。 |
○地震被害の概要
- 発生日時:平成20年6月14日8時43分頃
- 2震源地:岩手県内陸南部(北緯39度01.7分、東経140度52.8分)
- 3震源の深さ:8㎞
- 4規模:マグニチュード7.2(暫定値)
- 5各市町村の最大震度(震度6弱以上)
- 震度6強:岩手県奥州市・宮城県栗原市
- 震度6弱:宮城県大崎市

図2 岩手・宮城内陸地震の被害状況等(栗原市)
(出典)宮城県栗原市長佐藤勇『平成20年岩手・宮城内陸地震への対応と復興に向けて』平成21年2月13日。
死者 | 行方不明者 | 負傷者等 | 合計 | ||
---|---|---|---|---|---|
重傷者 | 軽傷者 | 計 | |||
9 | 8 | 28 | 152 | 180 | 197 |
(出典)栗原市『【岩手・宮城内陸地震】速報 第97報』(平成21年3月12日14:00現在)。
住家被害 | 全壊 | 27棟 |
大規模半壊 | 16棟 | |
半壊 | 112棟 | |
一部損壊 | 1,414棟 | |
合計 | 1,569棟 | |
道路被害(市道) | 572ヶ所 | |
その他の被害 | 1,343件 |
(出典)栗原市『【岩手・宮城内陸地震】速報 第97報』(平成21年3月12日14:00現在)。
公共施設 | 道路、公営住宅等 | 16,852 |
農林、畜産施設等 | 3,606 | |
幼稚園、小中学校等 | 877 | |
観光、病院、上下水道等 | 6,580 | |
合計 | 27,915 | |
民間施設 | 農林業(田、畑、岩魚、建物等) | 704 |
企業(事務所、工場等) | 1,333 | |
ホテル、旅館 | 1,151 | |
観光、病院、上下水道等 | 355 | |
合計 | 3,543 | |
被害額合計:314億5千8百万円 |
(2)災害後の主な経過
年 | 月日 | 項目 |
---|---|---|
平成20年 | 6月14日 | 平成20年岩手・宮城内陸地震発災 栗原市災害対策本部(本庁)、現地災害対策本部(総合支所10カ所)設置 被災建築物応急危険度判定(栗駒・花山地区小中学校及び避難箇所18棟を判定) |
6月15日~6月22日 | 被災建築物応急危険度判定(11団体 470名の判定士により2,974棟を判定) | |
6月24日 | 被災者生活相談窓口の設置(総合支所10カ所) | |
6月15日~6月20日 | 緊急点検調査(緊急災害対策派遣隊 テックフォース) 土砂災害危険箇所513カ所 道路施設点検299カ所 | |
7月11日 | 応急仮設住宅第1次引き渡し(栗駒地区6戸 花山地区4戸) | |
7月14日 | 栗原市震災復興対策本部設置 栗原市震災復興対策室事務局設置(企画部内) | |
7月17日 | 応急仮設住宅第2次引き渡し(栗駒地区11戸 花山地区23戸 一迫地区2戸) | |
7月21日 | 第1回栗原市災害義援金配分委員会開催(委員会は栗原市社会福祉協議会内に設置) | |
7月29日 | 応急仮設住宅第3次引き渡し(栗駒地区3戸 花山地区16戸) | |
9月1日 | 「被災者支援のお知らせ」 全戸配布 「被災者支援相談・申請受付窓口」の設置(総合支所10カ所) | |
9月6日~9月19日 | 栗駒地区・花山地区 被災者支援個別相談・集中相談・申請受付窓口の設置 | |
9月12日 | 宮城県災害義援金募集配分委員会で、市町への義援金第1次配分方法決定 | |
10月8日 | 栗原市災害義援金配分委員会開催(県義援金配分方法決定) | |
平成21年 | 1月7日~2月3日 | 栗原市震災復興計画 庁内ワークショップの設置・検討 震災復興計画素案作成 |
1月28日 | 宮城県災害義援金募集配分委員会で、市町への義援金第2次配分方法決定 | |
3月12日~3月18日 | 栗原市震災復興計画市民検討会設置・検討(4回開催) | |
3月9日 | 栗原市災害義援金配分委員会開催(県義援金第2次配分方法決定) | |
3月19日 | 栗原市震災復興計画策定 |
【参考文献】
1)宮城県栗原市長佐藤勇『平成20年岩手・宮城内陸地震への対応と復興に向けて』平成21年2月13日。
2)栗原市『【岩手・宮城内陸地震】速報 第97報』(平成21年3月12日14:00現在)。
【0】復旧・復興体制の構築(栗原市)
○震災復興対策本部
栗原市では、地震から一ヶ月後の平成20年7月14日に、被災者に対する生活支援とこれからの本格的な震災復興に向けた取り組みを強化し、庁内横断的な機動的体制を確保するため、副市長を本部長とする「栗原市震災復興対策本部」を設置した。同時に、復興対策本部直轄の検討組織として、企画部長を室長とし、関係部(局)の次長及び総務部財政課長で構成する、「震災復興対策室」を設置し、復興計画策定などの実務を担当することとした。
震災復興対策本部及び震災復興対策室の構成は、下図のとおりである。

図 栗原市の復旧・復興体制
(出典)栗原市『“水と緑、山の再生へ”栗原市震災復興計画』平成21年3月。
【20080102】復旧・復興計画の策定(栗原市)
○復興計画策定の経緯
ヒアリングによれば、復興計画の策定は次のように取り組まれた。
・震災復興対策室の設置された7月の段階では支援策の検討を進め、9月1日に冊子を配付した。その後は、支援策の受付・支給の調整事務や義援金に関する調整・協議関係も担当したため、本格的に復興計画に着手したのは12月となった。
・復興計画策定に着手する際には、まず平成19年新潟県中越沖地震における新潟県柏崎市や、平成16年新潟県中越地震における十日町市の復興計画を参考に、とりまとめの方針を検討した。
・復興計画の検討にあたっては、首都大学東京の中林一樹教授に、アドバイザーを依頼している。中林教授からは、10カ所あるそれぞれの総合支所で、若い世代の人たちがまずワークショップでたたき台を作り、それを具体的に詰めていくような手法がいい、という提案があったとのことである。その提案を受けて職員によるワークショップが1月にスタートしている。支所単位にはできなかったが、支所と本庁と包含するような形でワークショップを実施し、復興計画のたたき台を作成している。
・具体的には、まず各課から一般の職員を何人か出して、3つのセクションに分かれて、それぞれの部ではどういうことが考えられるかを整理している。ワークショップ・リーダー、サブリーダーは、それに具体的事業を設定しながら計画を整理していった。

図 栗原市の復興計画策定体制
(出典)栗原市『“水と緑、山の再生へ”栗原市震災復興計画』平成21年3月。
職員ワークショップと並行して、市民検討会を4回開催している。被災者の意向を反映させるよう、メンバー9人中5人を被災者とした。この検討会では、市の作成した計画を順次示しながら、検討が進められた。なお、市民検討会については、市民検討会の頭取りや委員長も加わった記者レクの様子を報道してもらうなど、報道機関にも積極的に情報を提供して報道していただいたことが、市民への情報提供として有効であった。
なお、ヒアリングによれば、復興計画への国・県の関わりについては、復興計画の検討に入る前の時点で、復旧工事などのハードは国・県が、復興計画などのソフト的な面については市が取り組むなど、それぞれが取り組む部分について概ね役割分担ができていたとされる。
○復興計画の概要
栗原市復興計画では、下図に示すような期間を想定して策定されている。

図 復興計画の計画期間
(出典)栗原市『“水と緑、山の再生へ”栗原市震災復興計画』平成21年3月。
復興計画のコンセプトは下図のとおりである。復興計画では3つの目標を設定し、「水と緑、山の再生へ」をスローガンとしている。ヒアリングでは、山の再生には観光客が来ることが必要であり、そのためには「緑と水を再生することが重要」であるとして、次のような観点が示された。
・多くの離職者に、一刻も早く仕事についてもらうためには、観光施設を再開し、そこに農家の方々が食材を供給できる環境が必要。それができれば「水と緑、山の再生へ」つながることが期待できる。
・山の再生は10年、15年の事業なので、宿泊施設があれば工事の人に提供することもでき、民家を貸すなど、新たなビジネスが生まれることも期待したい。

図 復興計画のコンセプト
【参考文献】
1)宮城県栗原市長佐藤勇『平成20年岩手・宮城内陸地震への対応と復興に向けて』平成21年2月13日。
2)栗原市『【岩手・宮城内陸地震】速報 第97報』(平成21年3月12日14:00現在)。
3)栗原市『平成20年岩手・宮城内陸地震に対する復興対策本部の設置について』平成20年7月14日。
4)栗原市『栗原市震災復興計画市民検討会設置要綱』。
5)栗原市『“水と緑、山の再生へ”栗原市震災復興計画』平成21年3月。