【概要】
(1)被害の概要
○市勢
人口等 | ・総人口 92,751人(推計人口、平成21年3月1日) ・平成17年5月1日に刈羽郡西山町、同郡高柳町を編入合併している。 |
地 理 | ・面積 442.70km² ・新潟県の海岸沿いのほぼ真中に位置し、米山・黒姫・八石の刈羽三山に囲まれた刈羽平野に位置する。中心市街地は砂丘上に発展した。 |
産 業 | ・海水浴場(主に長野県、群馬県、埼玉県などからの海水浴客で賑わう)。 ・ぎおん柏崎祭りは全国的に見ても屈指の花火大会である。 ・東京電力(株)の柏崎刈羽原子力発電所が立地している。 ・自動車や産業用機械の部品を製造するメーカーである(株)リケン創業の地で、工場が市内2箇所にある。ピストンリング製造の最大手であり、柏崎工場が新潟県中越沖地震で被災した影響を受けて国内乗用車メーカー全8社が生産を一時停止するほどの影響があった。 |
○被害状況
被害の概要 | |||
---|---|---|---|
地震の概要 | 地震規模 | マグニチュード6.8 | |
最大震度 | 震度6強 | ||
災害救助法適用市町村 | 10市町村 | ||
人的被害 | 死者(人) | 15 | |
重軽傷者(人) | 2,316 | ||
住家被害 | 全壊(棟) | 1,331 | |
半壊(棟) | 大規模半壊:856 半 壊:4,848 | ||
一部損壊(棟) | 36,209 | ||
合計(棟) | 43,244 | ||
避難状況 | 避難所(カ所) | 最大 116 | |
避難者数(人) | 最大12,483 | ||
ライフラインの状況 | 電気(停電)(戸) | 約 35,000(概ね2日で復旧) | |
ガス(停止)(戸) | 約 35,000(概ね40日で復旧) | ||
上水道(断水)(戸) | 約 61,000(概ね20日で復旧) | ||
仮設住宅 | 建設戸数(戸) | 1,222 | |
入居世帯数(世帯) | 最大 1,061 | ||
入居者数(人) | 最大 3,044 | ||
公共土木施設災害(金額:査定決定額) | 県管理施設 | 277箇所 | 7,686百万円 |
市町村管理施設 | 969箇所 | 10,422百万円 | |
合計 | 1,246箇所 | 18,108百万円 | |
土砂災害対策(金額:事業採択額) | 災害関連緊急事業(県) | 17箇所 | 3,134百万円 |
地域防災がけ崩れ対策事業(市町村) | 44箇所 | 1,072百万円 | |
合計 | 61箇所 | 4,206百万円 | |
地震・被害の特徴 | 都市型・生活直撃型 ・中心市街地の個人住宅など建築物に被害 ・中越大震災の復旧復興過程での再度の被災 ・原子力発電所の被害と地域への影響 |
(出典)柏崎市『“さらなる未来へ” 柏崎市震災復興計画』平成20年3月27日。
(2)災害後の主な経過
年 | 月日 | 項目 |
---|---|---|
平成19年 | 7月16日 | 10:13 地震発生(最大震度6強) |
20:00 (新潟県)災害救助法の適用公示 | ||
20:30 政府現地連絡対策室設置(柏崎市役所) | ||
21:50 新潟県現地対策本部設置(柏崎市役所) | ||
23日 | 応急仮設住宅の着工、応急危険度判定の終了 | |
24日 | (新潟県)要望書提出(官邸、防災大臣など) | |
25日 | 被災者生活再建支援法適用(適用日16日) | |
8月1日 | 被災者相談所を開設 | |
2日 | (県)復旧・復興会議を設置、(県・市)緊急要望書提出 | |
6日 | 要望書提出(官邸、防災大臣など) | |
7日 | 激甚災害の指定(公布10日) | |
10日 | (政府現地連絡対策室、新潟県現地対策本部閉鎖) | |
13日 | 応急仮設住宅への入居開始 | |
17日 | り災証明書の発行開始 | |
21日 | (県)要望書提出(防災大臣あて) | |
27日 | 11:00 都市ガスが復旧 | |
柏崎地域などの観光関係者が柏崎地域観光復興推進協議会を発足 | ||
28日 | 市議会臨時会、平成19年度補正予算案の専決処分を承認 | |
31日 | すべての避難所を閉鎖 | |
9月1日 | 復興支援室 柏崎市中越沖地震復興本部を設置 | |
3日 | 市の被災住宅復興資金融資の受付け開始 | |
4日 | (県)義援金の第1次配分計画を決定 | |
10日 | 柏崎商工会議所の呼びかけによる「柏崎産業復興会議」初会合 | |
13日 | (59日ぶりに信越本線運転再開) | |
20日 | 全応急仮設住宅が完成し、鍵渡し | |
10月6日 | 地震の教訓と復旧・復興について地区ごとに住民の声を聴く地域懇談会スタート | |
17日 | 財団法人中越沖地震復興基金が設立、第1次26事業が決定 | |
18日 | 災害弔慰金支給審査委員会第1回会合で地震関連死3人認定 | |
19日 | 山本団地の地盤復旧へ大規模盛土造成地滑動崩落防止事業の適用を求める方針を明らかに | |
11月6日 | 激甚災害等の指定に関する政令の一部改正(公布9日)(適用すべき措置の追加) | |
12月20日 | 震災復興計画策定委員会の第1回会合 | |
25日 | 財団法人中越沖地震復興基金、第3次5事業を決定(中小企業の設備・地盤復旧支援等) | |
28日 | 第1回柏崎市震災復興計画市議会意見拝聴会 | |
平成20年 | 1月9日 | 市長が大規模盛土造成地滑動崩落防止事業採択状況等を記者会見で説明 |
17日 | えんま通りまちづくりの会が復興ビジョン「新生!えんま通りプロジェクト」を市長に提出 | |
21日 | 被災者生活再建支援法の新制度での受付を開始 | |
28日 | 震災復興計画(素案)の市民意見募集開始 | |
2月18日 | 全壊世帯、仮設住宅入居世帯を対象に住まいの再建調査を開始 | |
中越沖地震復興基金4次メニューに2事業を追加 | ||
3月1日 | 住宅再建相談窓口開設 | |
27日 | 中越沖地震復興本部会議で震災復興計画を決定 | |
4月17日 | 義援金配分委員会で第二次配分を決定 | |
5月23日 | 住宅・生活再建支援のための戸別訪問相談を開始 | |
6月2日 | 災害公営住宅の仮申し込み開始 | |
14日 | 岩手・宮城内陸地震発生、先遣隊を派遣 | |
7月16日 | 震災1周年 | |
8月25日 | 被災者向け公営住宅の追加を公表 | |
9月20日 | 中越沖地震復興基金6次メニューに5事業追加、1事業拡充 | |
10月1日 | 復興住宅の着工(完成は平成21年8月末予定) | |
11月18日 | 山本団地の24世帯・58人の避難勧告解除 | |
12月4日 | 義援金の第2回配分委員会で町内会やコミュニティセンターへの見舞金を決定 | |
5日 | 地震で被災したクリーンセンターの本煙突完成 | |
19日 | 災害公営住宅に地震被災世帯が初入居 | |
24日 | 柏崎駅前地区の土地区画整理事業へ土地所有者・事業施行者が基本協定に調印 |
【20070401】復旧・復興体制の構築(柏崎市)
○復興本部
・7月16日の地震以降、8月一杯はライフライン、住宅、道路対策に終始していたが、9月1日に復興支援室及び市長が本部長となる柏崎市中越沖地震復興本部が設置された。なお、10月1日に県防災課長補佐が復興管理監として着任し、副本部長となった。
・復興本部の事務局を担う復興支援室の体制は復興管理監の下、職員12人の体制である。ただし、復興計画策定に関しては、総合計画を担当した企画政策課の職員3人が兼務で対応した。
○復興計画策定への取り組み
・復興計画の策定体制は図のとおりである。柏崎市震災復興計画策定委員会の構成を表に示す。委員会は、委員14人、総合アドバイザー1人、オブザーバー新潟県職員2人で構成され、復興支援室が事務局を担当した。

図 柏崎市の復興計画策定への体制
(出典)柏崎市『復興計画策定への取り組み等について』。
- ヒアリングによれば、復興計画策定は復興本部中心に9月頃から始まり、10月中旬に復興計画策定の予算について議会承認を得て、11月頃から検討が本格化した。なお、柏崎市では、計画策定に際しては、まず長岡市から情報を収集している。能登半島地震で被災した輪島市に対しても、柏崎市と同様に総合計画策定後すぐに地震に遭遇したということもあり、対応状況を問い合わせている。
- 『柏崎市震災復興計画』は平成20年3月に策定されたが、見当に際しては、次のような多様な手段での市民意見把握がなされている。
- 市内の各界の代表、市民などが参加する策定委員会の設置
- 市議会からの意見把握(意見拝聴会3回開催、計画報告会1回開催)
- 市民アンケート実施(18歳以上の市民約2,000人から郵送により実施)
- 市内中学校単位で計10箇所のコミュニティセンター等での地域懇談会開催(町内会長、コミセン代表者、市民351人参加、復旧・復興に関する意見把握)
- パブリックコメント実施(市民意見募集)意見提出5人計28件
- 計画策定時の専門家・コンサルタントの関与としては、次のようなものがある。
- 防災、都市計画の専門家を委員会の委員・総合アドバイザーに委嘱
- 新潟県との連携を図るため、県職員2名をオブザーバーに委嘱
- 都市計画分野を専門とするコンサルタントに市民アンケート調査・分析、地域懇談会での意見分析、計画策定の指導助言等を委託
区分 | 役職名等(敬称略) |
---|---|
委員長 | 平井邦彦:長岡造形大学教授(新潟県中越沖地震復興ビジョン策定専門家会議メンバー) |
副委員長 | 第四次総合計画策定市民会議副会長 |
委員 | 柏崎刈羽原子力発電所の透明性を確保する地域の会会長 |
柏崎市社会福祉協議会長 | |
JA柏崎経営管理委員会長 | |
柏崎市コミュニティ推進協議会長 | |
柏崎商工会議所副会頭 | |
かしわざき男女共同参画プラン推進市民会議会長 | |
第四次総合計画策定市民会議会長 | |
西山町地域協議会長 | |
柏崎観光協会長 | |
高柳町地域協議会長 | |
柏崎青年会議所理事長 | |
柏崎商工会議所副会頭 | |
総合アドバイザー | 伊藤滋:早稲田大学特命教授 |
オブザーバー | 新潟県県民生活・環境部副部長 |
新潟県柏崎地域振興局長 |
(出典)柏崎市『復興計画策定への取り組み等について』。
【20070402】復旧・復興計画の策定(柏崎市)
- ヒアリングによれば、復興計画の策定に関しては次のような点が課題だったとのことである。
- 平成19年11月~20年3月の短期間での計画策定、市民の意見の把握が必要だった。
- 平成16年の新潟県中越地震に比べて被害が局地的だったため、県による復興計画は策定されず、復興ビジョン・指針の策定にとどまった。そのため、復興計画は市独自で策定しなければならなかった。
- 今まで柏崎市が経験したことのない大規模な地震であり、また、世界最大の原子力発電所立地地域を襲った世界的に過去に例がない地震だった。
- 住宅・宅地の被害が甚大で市民生活や地域産業に大きな影響を及ぼし、市民と共通の目標を持ち、今後の道筋を示す必要があった。
日時 | 会議名等 | 検討内容 |
---|---|---|
H19.10.6~10.31 | 地域懇談会 | 市内中学校単位で計10箇所のコミセン等にて開催、市民351人参加、各地域の復旧・復興に向けての意見交換 |
H19.11.14~12.20 | 市民アンケート調査実施 | 対象者:18歳以上の市民2,000人のうち、1,160人回答58.0% 調査方法:郵送による配布・回収 |
H19.10.16~随時 | 中越沖地震復興本部会議 | 策定方針協議、計画策定協議・検討 |
H19.11.13~随時 | 庁内部長会議 | 庁内部長級職員による計画策定協議・検討 |
H19.11.8~随時 | 庁内各課での策定業務 | 各課による現況と課題、主要施策・事業の検討 |
H19.12.20 | 第1回震災復興計画策定委員 | 震災復興計画における策定方針、主要課題等についての意見交換 |
H19.12.28 | 第1回市議会意見拝聴会 | 震災復興計画における策定方針、主要課題等について意見拝聴 |
H20.1.24 | 第2回震災復興計画策定委員 | 震災復興計画の構成(案)、骨子案についての協議・検討 |
H20.2.6 | 第2回市議会意見拝聴会 | 震災復興計画の構成(案)、骨子案についての意見拝聴 |
H20.2.26 | 第3回震災復興計画策定委員 | 震災復興計画(素案)についての協議・検討 |
H20.2.28~3.10 | 柏崎市震災復興計画(素案)パブリックコメント | 震災復興計画(素案)の市民意見募集 |
H20.3.6 | 第3回市議会意見拝聴会 | 震災復興計画(素案)についての意見拝聴 |
H20.3.17 | 第4回震災復興計画策定委員 | 震災復興計画(案)についての協議・検討 |
H20.3.21 | 市議会への報告会 | 震災復興計画(案)についての報告・説明 |
H20.3.27 | 中越沖地震復興本部会議 | 震災復興計画の決定 |
(出典)柏崎市『復興計画策定への取り組み等について』。
○復興計画策定の考え方等
復興計画の策定目標等、策定上の留意事項については、表のとおりである。
震災復興計画の5つの目標 | 1都市基盤を復旧する 2市民の生活を再生する 3まちの活力を再生する 4柏崎の魅力を再生する 5安心して暮らせるまちをつくる →目標ごとに復興方針、主要事業(14項目、61の方針)を設定 |
7つの重点プロジェクト |
|
(出典)柏崎市『“さらなる未来へ” 柏崎市震災復興計画』平成20年3月27日。
○総合計画との関係
- ヒアリングによれば、復興計画と総合計画との関係は次のような状況だったとのことである。
- 柏崎市第四次総合計画前期計画が平成19年度からスタートしたばかりのタイミングで地震が発生した。
- 本市にとって緊急かつ最大の課題は、震災からの復興であり、震災復興計画に掲げる施策・事業を優先に進めるが、市のビジョンや基本的な考え方は最上位計画の柏崎市第四次総合計画である。ただし、柏崎市第四次総合計画の前期基本計画(H19~H23)に掲げる施策・事業は、復旧・復興事業を優先することから、事業の熟度、優先順位などを考慮しながら取り組んでいる。また、震災復興計画での復興・再生から発展へと進む取り組みは、柏崎市第四次総合計画後期基本計画に引き継ぐ。
- 総合計画に関して先送りしている事業は、例えば熟度のあがらない事業などであり、財政計画の見直しも並行しながら進めている。一方、前倒しで実施している事業としては、復興計画にあげた土地区画整理事業で実施する市民会館の整備、分遣所の整備、国道8号バイパスの整備などがある。
○復興状況の評価・検証
- 震災復興計画の効率的・効果的な実現を図るため、施策・事業の進捗状況を把握し、復興の評価・検証を実施する。
- このため、市民や学識経験者等から構成される委員会を設置し、市民参加による計画の進行管理を行うことを予定している。
○全般的な状況と評価
- ヒアリングでは、復旧・復興の現状について、次のような認識、評価が聞かれた。
- 仮設住宅が8月をめどに解消する予定であり、復旧期から再生期に入りつつある。
- 復興計画では事業ごとに事業期間を明確に設定しており、今のところ、ほぼ順調に進捗している。市民の生活再建以外の復旧については、ほぼ平成20年度中で完了する見込みである。
- 地震から約1年間は人口減少が大きかったが、徐々に緩やかになりつつある。
- 平成20年は企業も復旧が終わり、これから本格的という感じがあったが、自動車関連の事業者も多く、世界同時不況の打撃を受けている。
○住宅・生活再建
- ヒアリングによれば、住宅再建については災害公営住宅の完成・入居が一つの区切りになると考えられている。現在は、応急仮設住宅入居者及びそれ以外の住宅全壊の方をフォローしており、応急仮設住宅入居者については、ほぼ住宅の目途がついているとのことである。
- なお、柏崎市では、被災世帯への訪問を中心に、次のようなきめ細かな居住安定・生活再建の支援に取り組んでいる。
1被災者台帳システムの構築
- 京都大学・新潟大学などで構成される産官学民支援チームとの協働により、被害認定結果をデータベース化した『り災証明台帳』と、『生活再建相談台帳』、『応急仮設住宅管理台帳』を結びつけた『被災者台帳システム』が、平成20年1月に実現した。
- これにより、個人ベースで生活再建の進捗状況を知ることが可能となり、その後の積極的な生活再建支援を推進する体制が整備された。
2住宅再建・生活再建に向けた訪問調査の実施
- 『被災者台帳システム』をもとに、『住まいの再建プロジェクト』を結成し、まず最優先すべき全壊世帯及び応急仮設住宅の入居者を対象とした生活再建に関わる実態についての戸別訪問調査を実施している。平成20年度末までの間に、表に示すような調査が行われた。
(1)住まいの再建に関する調査 平成20年2月16日-2月29日 |
|
(2)個別訪問調査 平成20年4月14日-4月20日 |
|
(3)個別訪問調査 平成20年5月23日-6月1日 |
|
(4)個別訪問調査 平成20年11月1日-11月10日 |
|
(出典)柏崎市『平成19年新潟県中越沖地震の対応と復興状況(ダイジェスト版)』。
3仮設住宅入居者に対する住宅再建支援のための体制強化
- 個別訪問調査により把握した住宅再建等に係る課題や困りごとをもとに、平成20年5月に応急仮設住宅入居者別の生活再建支援プランを作成。早期の住宅再建・生活再建を実現するため、6月には復興支援室内に『仮設住宅対策班』を3班体制で編成し、以後継続的な訪問活動及び個別支援プランによる支援の強化を図っている。
《応急仮設住宅入居世帯の住宅再建見込み(H21.3.31現在)》
- 再建済み 577世帯(63.5%)
- 再建中 282世帯(31.0%)
- 再建準備中 50世帯(5.5%)
4再建時期の目途が立たない方・課題ありの方への強化支援策等
- 再建時期の目途が立たない世帯に対しては、課題解決のために拡充された復興基金事業等を活用した取り組みを10月から強化実施し、個別の相談を重点的に実施。
- 住宅再建窓口相談設置支援の活用(ファイナンシャルプランナーによる住宅再建個別相談会の開催)
- 大工さん等への一時借家支援制度の活用周知
- 民間賃貸住宅入居支援制度(拡充)の活用周知
- 社団法人宅地建物取引業協会柏崎支部との連携による借家(一戸建てアパート)の紹介
5住宅・生活再建困難者等の地域情報の把握
- 今後、さらに被災者の中で取り残される世帯が出ないための情報把握を、地域(中間支援者)の協力を得て実施し、その対応にあたっている。
- ・対象地域
- 全市域
- ・調査期間
- 平成21年
- ・調査方法
- 市内の全町内会長・民生児童委員による当該地域の住宅再建・生活再建で気になる世帯の掘り起こしのための聞き取りや情報提供
- ・対象世帯
- 住宅再建が遅れていると思われる世帯や生活再建上気になる世帯
【参考文献】
1)柏崎市『“さらなる未来へ” 柏崎市震災復興計画』平成20年3月27日。
2)柏崎市『復興計画策定への取り組み等について』。
3)柏崎市『平成19年新潟県中越沖地震の対応と復興状況(ダイジェスト版)』。
4)柏崎市『小規模住宅地区改良事業(番神二丁目地区)』。
5)柏崎市『大規模盛土造成地滑動崩落防止事業』。
【20070403】小規模住宅地区等改良事業による高台宅地の復旧〔番神2丁目〕(柏崎市)
○小規模住宅地区改良事業の概要
・不良住宅が集合すること等により生活環境の整備が遅れている地区において、住環境の整備改善又は災害の防止のために、住宅の集団的建設、建築物の敷地の整備等を行なう。
事業主体 | 市町村 |
---|---|
対象地区 | 不良住宅15戸以上(過疎地域における激甚災害被災地にあっては5戸以上)かつ5割以上(震災が主因で不良住宅となったものも対象) |
国の補助 | ・不良住宅の買収除却:補助率1/2 ・改良住宅の建設(公営住宅):補助率2/3 ・用地取得、公共施設、地区施設整備:補助率1/2 (※補助事業に係る地方財政措置:公営住宅建設事業債100%) |
○地区の現況
- 柏崎港の南西側の標高約20~28mの高台に位置し、狭隘、行き止まり道路等、課題のある地域
- 整備区域:約1.1ha
- 整備区域内住宅戸数:27戸
- 不良住宅:15戸(全て撤去済み)

写真 番神二丁目地区を東側上空から望む(H19.11撮影)
(出典)柏崎市『小規模住宅地区改良事業(番神二丁目地区)』。
○事業の概要
- この制度は福岡県西方沖地震・玄界島や新潟県中越地震・山古志地区の集落再建で活用された制度である。
- 事業の対象となった番神二丁目地区は高台に形成された住宅地で、27戸のうち15戸が大規模半壊以上の不良住宅となっており、何らかの手を入れる必要があると考えられた。ここは、狭隘道路と行き止まり道路が多い等の課題を有していたが、震災を契機としてこれらの課題を解消し、住環境の整備並びに防災面の強化を図ることにより、人口の回復と災害に強いまちづくりを目指すこととした。
- なお番神二丁目では、災害公営住宅や小規模改良住宅の建設予定がない状況で、道路、公園などの土地整備に突出した形の事業が実施された点に特徴がある。また、同事業には建物の除却のメニューもあるが、これについても他の地域とのバランスを考慮して、適用していない。
- 事業年度:
- 平成20年度
- 事業費:
- 1億5千万円(国費7千5百万円、公営住宅建設事業債7千5百万円)
- 事業費内訳:
- ◇工事費 81,000千円
- ◇用地費 30,000千円
- ◇補償費 22,000千円
- ◇委託費等 17,000千円
- 事業概要:
- 関係権利者:約40名
- ◇道路L=470m
- ◇公園A=170㎡
- ◇広場A=160㎡
- ◇用地取得面積A=1,270㎡
- ◇物件補償
- ◇その他下水道等

図 番神二丁目地区 小規模住宅地区改良事業 事業計画図
(出典)柏崎市『小規模住宅地区改良事業(番神二丁目地区)』。
【20070404】廉価な住宅供給への取り組み(柏崎市)
○低コスト復興支援住宅の推奨等
- 市では、土地を所有し、被災した元の場所において自力再建をしようとする低所得者等に対して、短期間での建設が可能な低コスト復興支援住宅等の提案を行っている。
- 災害復興支援住宅『古里(ふるさと)』は、NPOが元のコミュニティで暮らしたいが銀行の借り入れができないなどの高齢被災者を支援するもので、風呂に手すりを付けるなど、高齢者への配慮も含めて個々人の生活観にあわせて、また、敷地の状況なども勘案して設計されている(次頁参照)。
区分 | 構造 | 間取り | 設備器具 注1) | 照明器具 | 床面積 単位:坪(1) | 概算工事費(税別) 単位:万円 | 坪単価 単位:万円 (4)÷(1) | 工事期間 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
工事費(2) | 復興基金補助(3) | 差引価格 (4)=(2)-(3) | ||||||||
かしかりふるさと復興住宅(復興基金事業:低コスト住宅) | 木造平屋建 | 2K | ○ | × | 15.5 | 700 | 180 | 520 | 33.5 | 約3か月間 |
木造平屋建 | 2K | ○ | × | 16.0 | 900 | 180 | 720 | 45.0 | 〃 | |
木造2階建 | 4K | ○ | × | 20.0 | 1,100 | 180 | 920 | 46.0 | 〃 | |
災害復興支援住宅『古里(ふるさと)』 | 木造平屋建 | 2LDK~3DK | ○ | ○ | 13.5 | 550 | 550 | 40.7 | 約1.5か月~2か月間 | |
木造平屋建(低コストモデル) | 2LDK~3DK | ○ | ○ | 13.5 | 640 | 180 | 460 | 34.1 | 〃 |
※注1)設備器具とは、キッチンセット・浴室・洗面化粧台・便器などであり、概算工事費に含まれている。
※建物周囲1mまでの敷地内設備配管工事費は含まれているが、それ以外のガス・上下水道の引き込み費用は別途。
また、防火等指定区域によっては、追加工事(ガラス網入れ等)となる。
(出典)柏崎市『平成19年新潟県中越沖地震の対応と復興状況(ダイジェスト版)』。
○低負担住宅……リバースモーゲージを活用した住宅再建
・借入れが困難な高齢者に対し、再建する建物・土地を担保に低利(年0.4%)で貸し付けるメニューである。
・融資限度額1,200万円(毎月返済額4,000円)。
・平成21年月3末時点で8件の利用実績がある。

写真 災害復興支援住宅「古里(ふるさと)」
【20070405】大規盛土模造成地地滑動崩落防止事業〔山本団地〕(柏崎市)
○制度の概要
- この事業は平成7年の阪神・淡路大震災や平成16年新潟県中越地震の際に大規模造成地で地滑りが多発したため、国土交通省が平成18年度に宅地造成等規制法を改正して事業化された。本来は災害予防を目的とした事業であるが、2次災害から道路や公共施設を守る目的で、今回災害後の復旧に初適用された。
- この事業の適用には、造成宅地防災区域に指定されることが必須条件であり、平成19年12月21日に関係者の同意を得て同区域が指定された。この指定によって県は勧告措置が可能となり、その結果、事業の補助が可能となった。
○被災状況
- 山本団地は昭和46年に柏崎土地開発公社が造成した団地で、74区画の団地である。
- 被害の主要因は液状化現象である。当該地区は上が砂丘地で、伏流水が全部団地の末端にきて噴出していた。地盤は常時飽和状態にあった。
危険 | 要注意 | 合計 |
---|---|---|
22 | 18 | 40 |
全壊 | 大規模 | 半壊 | 一部損壊 | 合計 |
---|---|---|---|---|
4 | 4 | 27 | 17 | 52 |

図 山本団地位置図

図 事業の計画図
(出典)柏崎市『大規模盛土造成地滑動崩落防止事業』。
○事業概要
・工法を検討した結果、道路に300mmの暗渠管を設置して水を抜くこととし、平成20年5月から工事を実施した。主たる部分の工事が終了した11月18日には、地滑りによる家屋崩壊の危険がなくなったことから、地震直後から24世帯58人に出ていた避難勧告が1年4カ月ぶりに解除された。
・事業費の最高限度額は1億6,000万円で、国、市、地元、復興基金がそれぞれ約4,000万円を負担するということで概ね了解が得られた。なお、受益の程度に応じて分担金には差がある。
全体事業費 | 国費 | 市費 | 地元 | 復興基金 |
---|---|---|---|---|
157,461 | 39,365 | 39,365 | 39,365 | 39,365 |
【参考文献】
1)柏崎市『“さらなる未来へ” 柏崎市震災復興計画』平成20年3月27日。
2)柏崎市『復興計画策定への取り組み等について』。
3)柏崎市『平成19年新潟県中越沖地震の対応と復興状況(ダイジェスト版)』。
4)柏崎市『小規模住宅地区改良事業(番神二丁目地区)』。
5)柏崎市『大規模盛土造成地滑動崩落防止事業』。