200703:2007年(平成19年) 能登半島地震・穴水町

【概要】

(1)被害の概要

○町勢

・隣接する門前町との合併を目指し平成15年4月に合併協議会を設置していたが、門前町からの離脱申し入れにより同17年1月に合併協議会を解散

表1 穴水町の概要
人口等人口:10,734人、世帯数:4,093世帯(平成19年4月1日現在)
地 理能登半島の先端部・基部からそれぞれ約50kmの中央に位置。北部・西部は丘陵地、南部は七尾北湾、東部は富山湾に面する
特産等農林水産業が主な産業であり、牡蛎貝、ナマコ、メバル、クロダイ、スイカ、栗などが特産。市街地に約1kmに及ぶ商店街があり、能登では有数の商業地でもある。のと鉄道及び能登有料道路の終点であり、中心市街地は能登空港に最も近い市街地であるなど交通の要所であるため、営業所、支店等が周辺市町と比較して多い。

○被害状況

表2 人的被害・建物(平成19年4月23日午後4時現在)
人的被害(人)建物被害(棟)
死者負傷者住家被害非住家被害
重傷軽傷全壊半壊一部損壊
0336791002,318248

(出典)石川県『平成19年能登半島地震災害記録誌』平成21年3月25日

・特に、穴水駅前の中心市街地である大町川島地区における建物被害が集中した。
・このため、中心市街地における3つの商店街(大町、中央、川島東)では、179件中69件が半壊以上の被害を受けた。

(2)災害後の主な経過

表3 災害後の主な経過(政府、石川県、穴水町の取組状況)穴水町
月日■穴水町の対応  □石川県の対応  ◇政府等の対応
平成19年3月25日

地震発生【最大震度6強】

■災害対策本部設置
□災害救助法の公示(3市4町に適用) ◇災害救助法適用
27日◇平沢副大臣を現地に派遣 (県・7市町)災害復旧に関する緊急要望
29日◇被災者生活再建支援法に係る技術指導
30日□応急危険度判定調査完了
(県・市)緊急要望

のと鉄道が応急復旧、運行再開

31日□住宅相談窓口、営農相談窓口の設置
※この日より、石川県・輪島市で行われていた現地合同会議に穴水町参加
4月2日被災者生活再建支援法適用(適用日3月25日)
□被災者生活再建支援法の公示、県の上乗せ、横出し制度の創設
3日□罹災証明に係る外観調査研修会を開催(奥能登総合事務所)
□総理大臣への被害等の説明及び要望
6日□被災者生活再建支援相談に係る市町職員説明会を開催(奥能登総合事務所)
7日

8:00 水道が復旧

(県・市)生活再建相談窓口の設置
8日□自衛隊災害派遣撤収要請
9日◇応急修理説明(14:30-18:00)
10日(7市町)首長が官邸、各省庁へ訪問、緊急要望書の提出
□中小企業復興支援基金の創設を発表
14日※第17回 合同会議(応急対策ほぼ終了。以後、月・水・金に開催)
18日□石川県能登半島地震復旧・復興本部の設置
20日◇復旧・復興対策に関する関係省庁局長会議(第1回) ◇激甚災害の指定(公布25日)
24日※合同会議 解散式  □現地災害対策本部を解散  ◇政府現地連絡対策室閉鎖
25日■能登半島地震穴水町災害復旧・復興対策本部設置
30日■穴水町大町の応急仮設住宅、入居開始
5月1日■復興対策室を新設
17日■「復興対策会議」準備会開催
25日「復興対策会議」第1回開催
5月27日◇被災者生活再建支援制度に関する検討会が被災地視察
6月6日■市議会震災復興対策特別委員会・市震災復興委員会が新潟県被災地を視察研修(~7日)
19日◇復旧・復興対策に関する関係省庁局長会議(第2回)
22日「復興計画策定委員会」第1回開催
7月3日□能登半島地震被災中小企業復興支援基金(300億円)を創設
15日■能登半島地震復興イベント「第45回長谷部まつり」開催
18日「復興対策会議」第2回開催
8月20日□(財)能登半島地震復興基金を創設(8月31日「能登半島地震復興基金」500億円を創設)
24日「復興計画策定委員会」第2回開催
9月13日■2級河川「真名井川」災害復旧工事着手
10月3日□能登半島地震復興プラン(第1次計画)策定
下旬■「穴水町復興計画(素案)」公表
11月16日◇被災者生活再建支援法改正(12月14日施行)能登半島地震に遡及適用
12月17日□改正被災者生活再建支援法の説明会開催(穴水町のとふれあい文化センター)
平成20年3月3日■「大町川島地区土地区画整理事業」知事認可
11日■「都市計画道路本町線街路事業」認可
14日「復興対策会議」第3回開催、「穴水町復興計画」策定
19日■「穴水まちなか再生協議会」設立
22日■能登半島地震復興記念イベント「メモリアルカフェローエル325」開催
23日■震災復興祈念式典開催
5月13日■「都市計画道路大町通り線街路事業」認可
6月6日■災害対策本部を解散  □災害対策本部を解散
8日■穴水町中心市街地創造的復興プロジェクト事業起工式
10月4日■能登ふるさとモデル住宅が完成

【20070301】復旧・復興体制の構築(穴水町)

○「能登半島地震穴水町災害復旧・復興対策本部」と「復興対策室」
・震災1カ月後の平成19年4月25日、穴水町は「能登半島地震穴水町災害復旧・復興対策本部」を設置した。ただしヒアリングによれば、これは実質上は災害対策本部の延長のようなものとなっており、本部会議として特に復旧・復興のみのために会議が開催されることなどはなかった。
・同年5月1日には、復興対策室が新設された。ヒアリングによると、復興対策室への職員配置は、以下のようなものであった。
・専属職員として室長、次長、係長2名、女性事務員1名が配属され、主に復興計画策定を担当。
・上記に加えて、財政、健康福祉、環境、企画、都市基盤の5課より兼任の職員が配属となり、それぞれ各課に関連の強い業務を担当。

○穴水町復興計画策定委員会、幹事会、テーマ別計画策定チーム
・復興計画の策定にあたり、学識経験者、町議会、庁内各団体代表者による「穴水町復興計画策定委員会」が設置された。委員会メンバーは、表のとおりである。
・同委員会の下部組織として、町役場内では、以下の2つの体制が整えられた。
1復興計画策定幹事会:町各課の課長からなる会議体。
2テーマ別計画策定チーム:「安心・安全」「活力再生」「人材育成」という3つの柱(目標)をもとに、関係各課が集まって構成。
・ヒアリングによると、計画策定チーム、幹事会での検討に際し、後述の「復興対策会議」から出された意見、提案を盛り込む形で復興計画づくりが進められた。

表 穴水町復興計画策定委員会 メンバー
委員長金沢大学 経済学部 准教授 飯島泰裕氏
副委員長穴水町議会 復興対策特別委員長
委員あおぞら農業協同組合 組合長
区長・町内会長連絡協議会 会長
穴水町教育委員会委員長
穴水町社会福祉協議会会長
穴水町商工会副会長
穴水町商工会青年部部長
穴水町商店振興会会長
穴水町住民代表
穴水町副町長
アドバイザー石川県企画振興部企画課

(出典)穴水町『穴水町復興計画策定委員会名簿』。

○穴水町復興対策会議
・住民主体の組織として、商工会、商店街・町内会、飲食店組合の代表者や、既往の地域活性組織である「街中活性化委員会」「まいもんまつり実行委員会」などの関係者、さらには仮設住宅の代表者など、住民代表30名による「復興対策会議」が設置された。事務局は穴水町商工会に置かれた。
・復興対策会議には、下部組織として以下の2つの部会が設けられた。
1街並み復興検討部会:主としてハード面の整備を検討。
2活力再生検討部会:主としてまちの活性化を検討。
・復興対策会議は、5月17日の準備会を経て上記の2部会を設置、半壊以上の住宅・店舗に対するアンケート調査、商店街の全店舗に対するアンケート調査を行った。その後、5月25日(第1回)、7月18日(第2回)、11月3日(第3回)の会合が開催されている。
・ヒアリングによると、町(行政側)の基本的なスタンスとして、行政主導ではなく住民中心で進めることが重要と考えており、商工会に働きかけて対策会議を設置してもらったとのことである。

○復興計画策定の全体体制
・復興計画策定は、上述のとおり、行政側の「復興計画策定委員会」と、住民主体の「復興対策会議」によって、図のような体制で行われた。


図 穴水町の復興計画策定体制

(出典)穴水町『穴水町復興計画(素案)ダイジェスト版』。

○まちなみ交流サロン
・商店街が主体となり、誰でも参加できて自由に意見交換ができる場として「まちなみ交流サロン」が設置された。「交流サロン」は、その後、穴水町の中心市街地に設立されたまちづくり協議会「穴水町まちなか再生協議会」(平成20年3月19日設立)における交流の場としても位置づけられた。
・ヒアリングによると、この背景、内容等は、以下のとおりである。
・平成19年5月17日に開催された復興対策会議の準備会で、「誰もが気軽に参加できるサロンのような集まりが必要」という声が出され、開催されることとなった。この集まりは、毎週1回、金曜日に開催されていたことから「金曜サロン」とも呼ばれていた。
・開催会場は、商工会の2階会議室である。気軽に参加でき、また、住民等が主体であることを明確化するため、意図的に町役場以外の場所を会場とした。
・京都大学防災研究所の有識者、災害関連のNPO団体関係者などが参加した。
・まちの活力向上などについて、どう話合いをすればよいかわからなかったのだが、京都大学の大学院生が段取り等を支援してくれた。
・町としては、この場で出されたさまざまな意見をハード面の計画に活かすことができればと考えていた。しかし当初は、「そもそもこの町をどうしたいか」というような理念的な話題が中心であり、「早く街並みの図面を描きたい」という町側の担当者とは温度差があった。しかし、その後、こうした取り組みも必要だったと考えている。
・もともと町内の商店街は、廃業が続いて空き店舗が多く、関係者に問題意識があった。このため、サロンは約1年間、毎週1回の開催が続いた。2009年2月現在でも毎月25日に開催されている。
・中心市街地の復興プロジェクトには、このサロンで出された意見が反映されたものもある。(例:復興シンボルロード、アンテナショップ設置など)
・復興計画の策定に関わったコンサルタントの担当者も、この「交流サロン」にしばしば参加し、関係者の議論・意見を参考とした。

【20070302】復旧・復興計画の策定(穴水町)

○復興計画策定への取り組み経緯
・「復興計画」の取りまとめ経緯は、図のとおりである。
・ヒアリングによると、復興計画の策定経緯は、以下のとおりである。
・復興計画(素案)を発表した平成19年10月以降、具体的な事業メニューとしていく際には、復興対策室の計画担当者が県復興基金事業などをまとめて整理した。
・素案がまとまった時期は、県の復興計画が出たタイミングとほぼ同時だった。まず、県から新潟県の基金事業一覧に近いものが渡されたので、各課へ流して、できそうな事業、やりたい事業を検討した。その後、石川県が見直して絞り込みをかけるたびに、町としても何度も見直しを行った。


図 穴水町の復興計画策定フロー(穴水町提供資料にヒアリング結果を加筆)

○復興計画の概要
・復興計画では、「震災をバネによみがえる“あなみずまち”」を目指し、復興の目標として図のように3つの柱が立てられている。


図 穴水町復興計画 体系イメージ図

(出典)穴水町『穴水町復興計画』平成20年3月。高島正典『自治体の被災者生活再建支援業務の課題と効率的な支援態勢のあり方―復興カルテの取り組みを通じて―』、災害復旧・復興対策セミナー(静岡会場)講演,平成20年11月28日

・3つの目標別の整備方針概要は、以下のとおりである。

(安心・安全)
安心・安全な暮らしと災害に強いまちづくり
自力復興を目指す方には住宅の再建、補修に対する支援、自力復興が困難な方にたいしては災害公営住宅や住宅地区改良で支援します。
若者の定着促進、雇用並びに高齢者対策などに対して経済的な側面からの支援や環境づくりを進めます。
災害に強い社会基盤の整備を検討します。

(活力再生)
活気と賑わいのあるまちづくり
中心商店街の活力再生支援策として街なみ環境整備や区画整理事業、県道整備、などを検討します。
中小企業ファンドを利用して店舗の早期復興や風評被害対策、商品開発、新規ビジネスなどに対し支援を行い、商店街の活力再生や賑わい創出に取り組みます。

(人材育成)
ふるさと教育の充実と地域リーダーが育つまちづくり
石川職業能力開発短期大学校、日本航空専門学校空港技術科、県立穴水高等学校の連携を活かした人材育成を目指します。
地域でのイベント開催支援、域外の大学との交流を通じ地域の活性化と豊かな人材育成を図ります。

(出典)穴水町『穴水町復興計画(素案)ダイジェスト版』。

・復興計画の計画期間は平成20年度〜24年度の概ね5年間とされ、下記のように区分されている。

1復興期間(前期)3年間= 平成22年度まで
住民生活の再建や商店活動の再開に必要な個人住宅、社会生活基盤等の復旧と整備を早期に進め、安定した生活や商店活動を取り戻すための期間
2 発展期間(後期)2年間= 平成24年度まで
穴水町が更なる発展を遂げ、新たな魅力と活力にあふれ、災害に強いまちとして復興を遂げ、安心で安全なまちとなるよう取り組む期間

○住宅再建の支援
・被害を受けた住宅の再建は、震災直後の穴水町でも大きく懸念された。しかし、平成20年12月半ば現在では、全壊・大規模半壊住宅の75%を超える住宅が再建を完了している。(次頁参照)
・ヒアリングによると、このように比較的早く住宅再建が進んだ背景としては、以下のような点が指摘されている。
・持ち家志向が非常に強いこと、土地が自身の所有地であったこと、子どもからの再建支援があったこと等に加え、被災者生活再建支援法の改正があったことがあげられる。
・住宅を再建する世帯は、最大770万円(支援法300万円、県上乗せ100万円、義援金170万円、能登ふるさと住まい・まちづくり支援200万円)の支援に加え、「まちなみ環境整備事業」で前面分の2/3、上限150万までの支援が出ることとなった。これらの活用により、中規模・平屋の新築費用(約1,500万円)の半分以上に相当する支援が受けられた。

○借り上げ公営住宅
・災害復興公営住宅については、町として建設するのではなく、借り上げが選択された。
・ヒアリングによると、この背景となった考え方等は、以下のとおりである。
・中心市街地が被災したことから、その空洞化を防ぐことも重要であり、町長は早くから公営住宅も市街地に造るという方針を掲げていた。
・しかし、公営住宅の土地取得費に対する国の補助はないことから、町が中心市街地の土地を購入することは困難であった。このため、民間の土地所有者に住宅を建設してもらい、それを借り上げるという考え方となった。

表 穴水町における住宅の再建状況等(穴水町提供資料)
平成20年12月16日現在(基盤整備課)
(1)戸数(2)再建済み戸数再建済み率 (1)/(2)
全壊住宅906673
建設・購入402768
補修1414100
賃貸住宅77100
その他291862
大規模半壊住宅33100
建設・購入11100
補修22100
賃貸住宅
その他
みなし全壊住宅99100
建設・購入99100
補修
賃貸住宅
その他
合計1027876
建設・購入503774
補修1616100
賃貸住宅77100
その他291862

1復興支援室への相談(聞き取り)による
2被災者生活再建支援法の申請による(応急修理、建築確認申請等で確認した件数)

・また、同じ地震被害を受けた隣接の輪島市で行われた「寄付された私有地における災害復興公営住宅の建設」は、穴水町でも検討されたものの採用は見送られた。ヒアリングでは、この背景として以下のような点が指摘されている。
・私有地寄付による災害公営住宅の建設は、土地代が比較的安い場所であれば実現可能と考えられるものの、穴水町のように中心市街地が被災した場合は、土地代が高く成立しない。
・穴水町でも、類似の枠組みを検討し、途中段階では仮設住宅の入居者に提示して聞き取り調査を行ったが、ほとんどは770万円の支援を受けて自力再建する方を選んだ。1世帯、やや興味を示した方がいたが、その方も最終的には自力再建を選んだ。

【参考文献】
1)石川県『平成19年能登半島地震災害記録誌』平成21年3月25日。
2)穴水町『穴水町復興計画策定委員会名簿』。
3)穴水町『穴水町復興計画(素案)ダイジェスト版』。
4)穴水町『穴水町復興計画』平成20年3月。
5)高島正典『自治体の被災者生活再建支援業務の課題と効率的な支援態勢のあり方―復興カルテの取り組みを通じて―』、災害復旧・復興対策セミナー(静岡会場)講演,平成20年11月28日。
6)重川希志依・田中稔・高島正典『3.1.2 一元的危機管理対応体制の確立』、首都直下地震防災・減災特別プロジェクト 3. 広域的危機管理・減災体制の構築に関する研究 平成19年度・成果報告書。
7)石川県・穴水町『穴水中心市街地創造的復興プロジェクト事業』パンフレット、平成20年6月。
8)穴水町復対策会議『穴水町復興まちづくりレター』第1号 平成20年1月30日。
9)穴水町まちなか再生協議会『穴水町復興まちづくりレター』第2号 平成20年4月25日。
10)穴水町まちなか再生協議会『穴水町復興まちづくりレター』第4号 平成20年11月1日。

【20070303】くらしの再建カルテ(穴水町)

○導入の背景・経過等
・新潟県中越地震の際の小千谷市における被災者相談窓口対応に関する調査研究結果などから、学識者が「被災者生活再建カルテ」を研究・開発していた。
・本震災後の平成19年4月11日、穴水町に対し、当該学識者からこのカルテシステムが提案され、導入が決められた。同4月17日の被災者生活再建支援相談窓口の設置から、本格導入された。
・導入にあたり、カルテの名称は「くらしの再建カルテ」と決定された。

○カルテの概要
・カルテは1世帯ごとに作成され、世帯の構成・所得、被災状況、これまでの相談内容、それに対する町役場の対応内容、支援制度の利用状況など、各種情報の記載された書類を2穴式のフラットファイルで管理された。
・情報の内容は、大きく以下の2種類に区分されている。具体的な内容は、表のとおりである。
1基礎情報:毎回の相談、種々の生活再建支援制度で繰り返し参照される、世帯に関する基礎情報
2相談シート・申請書類:毎回の相談に固有の書類

表 「くらしの再建カルテ」に含まれる情報
1基礎情報2相談シート・申請書類
・相談シート(初診用)■
・資格要件チェックシート◇
・り災証明書のコピー■
・所得証明・住民票の閲覧同意書■
・所得証明・住民票の発行手数料減免申請書■
・所得証明書のコピー□
・収入を計算したもの■
・世帯照会確認画面を印刷したもの■
・住民票のコピー□
・その他居住の実態を証明する書類△
(ライフラインの領収書、民生委員による証明書、賃貸契約書等
・通帳のコピー□
・被災者が持ち込んだ図面、写真などのコピー◇
・申請書への添付書類□
・申請書のコピー□
・相談シート(再診用)◇
(各回の相談シートの後ろにその相談で提出された書類が続く)

■:初回相談時に確保する書類;◇:相談の都度に確保する書類
□:申請書提出時に確保する書類;△:必要に応じて確保する書類
(出典)重川希志依・田中稔・高島正典『3.1.2 一元的危機管理対応体制の確立』、首都直下地震防災・減災特別プロジェクト 3. 広域的危機管理・減災体制の構築に関する研究 平成19年度・成果報告書、をもとに作成。

・書類は、1基礎情報、2相談シート・申請書類の順で下から並ぶように整理され、カルテの1頁目に最新の相談シートが来るようになっている。また、1基礎情報と2相談シート・申請書類の間は、仕切り紙によって分けられている。カルテの表紙・裏表紙には、世帯主名(フリガナ付)のラベルが貼られ、世帯主名の五十音順にファイルが整理されて棚に並べられた。
○カルテの利用状況
・被災した164世帯に関して、カルテが作成され、活用された。各業務・各課のカルテ利用状況は、表のとおりであり、被災世帯に対する一貫した相談サービスの提供、部署を超えた被災世帯に関する情報共有のため、有効に機能したと評価されている。(次頁参照)
・一方、カルテはすべて紙ベースで管理されていたことから、ある世帯のカルテを複数の職員が同時に利用できないこと、被災世帯数がより多くなった場合の管理が困難であることなどが課題となった。このため穴水町では、順次、カルテの電子化も進めることとなった。

◎:情報提供+利用,○:情報提供,△:情報利用,×:情報提供、利用共に無し(出典)重川希志依・田中稔・高島正典『3.1.2 一元的危機管理対応体制の確立』、首都直下地震防災・減災特別プロジェクト 3. 広域的危機管理・減災体制の構築に関する研究 平成19年度・成果報告書。

表 生活再建支援業務とカルテの利用状況
業務担当課利用状況
被災者生活再建支援金健康福祉課
義援金健康福祉課
福祉資金(生活、母子寡婦)健康福祉課
各種保険料、医療費の減免等健康福祉課
税の減免税務課×
応急修理産業建設課
災害復興住宅融資の利子補給健康福祉課
災害廃棄物処理市民課
仮設住宅産業建設課
仮設住宅入居者への意向調査復興対策室

◎:情報提供+利用,○:情報提供,△:情報利用,×:情報提供、利用共に無し(出典)重川希志依・田中稔・高島正典『3.1.2 一元的危機管理対応体制の確立』、首都直下地震防災・減災特別プロジェクト 3. 広域的危機管理・減災体制の構築に関する研究 平成19年度・成果報告書。

【20070304】中心市街地の復興(穴水町)

○穴水中心市街地創造的復興プロジェクト事業
・「穴水町復興計画」の3本柱の1つである「活気と賑わいのあるまちづくり(活力再生)」に向け、県・町・地元が一体となって各種事業を一体的に進めるプロジェクトとして、「穴水中心市街地創造的復興プロジェクト事業」が発足した。
・同プロジェクトの下で実施されている各事業の内容は、概ね以下のとおりである。


図 穴水町まちづくり協定の区域

(出典)石川県『平成19年能登半島地震災害記録誌』平成21年3月25日、にに加筆・変更。

【土地区画整理事業】
1穴水町大町川島地区土地区画整理事業(町):家屋の倒壊が多く見られた区域(約0.7ha)において、区域内の道路整備に合わせ、良好な住環境を創出、被災住宅再建の受け皿とする。
【街路・道路事業】
2本町街路事業(県):商店街の中心約220m区間を優先して8mに拡幅。
3穴水・剱地線道路事業(県):踏切から東側約160m区間を8mに拡幅。
4復興シンボルロード整備(県):駅と商店街を直接結ぶ幅員8mの道路(約160m)を新設。

【河川整備】
5真名井川河川整備(県):趣ある石積護岸の修景整備に加え、土地区画整理区域内で船着き場を整備。

【モデル住宅建設】
6能登ふるさとモデル住宅(県):被災者の住宅再建の参考とするためモデル住宅を建設・展示。店舗部分で町・地元商店街による特産品展示を行うとともに、住宅内で被災者の住宅相談を実施。

【防災拠点整備】
7被災地における復興まちづくり総合支援事業(町):平成20年度新規施策(国土交通省)により、JR跡地を活用した防災拠点整備等を推進。

【まちなみ環境整備】
8まちなみ環境整備事業(町):街路・住宅等の修景整備など、中心市街地の活性化に向けた事業を後述の「まちなか再生協議会」における検討をもとに推進。
・ヒアリングによると、これら事業の背景等は以下のとおりである。
・穴水町における被害の約7割は中心市街地に集中しており、それ以外の周辺地域における課題は個々の住宅再建のみだった。このため、復興まちづくりは中心市街地のみとなった。
・大町川島地区は、特に面的に被害を受けたため、土地区画整理事業を実施するとともに、3本の街路・道路事業(拡幅2本、新設1本)、まちなみ環境整備(修景事業)等を実施することとなった。
・このうち、新設する街路「復興シンボルロード」は、従来は計画がなかったものであるが、回遊性の向上を図るという「交流サロン」からの提案で新設することとなった。
・平成19年10月に県から復興対策室へ出向となった職員が土地区画整理、街路・道路整備などに詳しく、これら事業のうち主としてハード整備を担当した。
・平成20年6月8日、土地区画整理事業、街路・道路事業及びモデル住宅建設工事の起工式が行われ、復興に向けたまちづくりが本格的に始まった。

○穴水町まちなか再生協議会
・平成19年11月26日、「復興対策会議」合同部会で「水辺に人が出会い、憩い、育つ じんのびなまち」を基本コンセプトとして今後の中心市街地におけるまちづくりを進めることが決定された。
・この「まちづくり」推進のため、平成20年3月19日、中心市街地の復興に向けた住民参加によるまちづくりの中心的組織として「穴水町まちなか再生協議会」が設立された。ヒアリング等によると、「まちなか再生協議会」の位置づけは、以下のとおりである。
・復興計画の策定に関わった「復興対策会議」が計画の完成とともに役目を終え、発展的に解消するとともに、その後の検討する場として新たに「まちづくり再生協議会」が設立された。
・復興基金の「能登ふるさと住まい・まちづくり支援事業」による住宅再建支援を受けるためにも、協議会設置が必要だった。
・協議会メンバーは、商店街の商店主、元・学校教員、地元町内会の区長などである。
・「まちなか再生協議会」の組織体制は以下の図のとおりである。「復興対策会議」の2部会が継承されるとともに、新たに「女性部会」が設けられ、商店街におけるソフト施策の検討を担当した。

○まちづくり協定
・平成20年9月16日、駅前中心市街地内の建物の建築ルールとなる「穴水町まちづくり協定」が定められ、このルールに基づいて外観修景を行う際には表の補助金等が支給されることとなった。

表 穴水町まちづくり協定のルールに基づいて修景を行う際の補助額等一覧
整備項目補助対象行為・規模補助金額
補助率限度額
1建築物外観の修景事業屋根屋根の新設、修繕、模様替え3分の2全体で150万円
庇の新設、修繕、模様替え
外壁壁の新設、修繕、模様替え
2外壁の修景事業建築設備、屋外階段屋外に露出しているエアコン室外機、プロパンガスボンベ、電気メーター等の建築設備や屋外階段などに対する木枠等による目隠しや被覆の新設、修繕、模様替え
垣、柵、塀など板塀、土塀、石垣、生垣、竹垣の新設、修繕、模様替え
植栽樹木の新設(※鉢植えやプランターの植栽、および草花は除く)
3屋外広告物の修景事業看板固定看板の新設、修繕、模様替え
4その他の修景事業自動販売機に対する木枠等による目隠しや被覆の新設、修繕、模様替え

(出典)穴水町まちなか再生協議会『穴水町復興まちづくりレター』第4号 平成20年11月1日。

○まちづくりに関する広報
・ヒアリングによると、このまちづくり活動に関する広報(情報発信)の状況は、以下のとおりである。
・「復興対策会議」を開催している時点では、検討経過等を広く知らせるための情報発信は、あまり行われていなかった。
・「まちなか再生協議会」の発足後は、「まちづくりレター」が計4回発行され、住民代表(区長)に依頼して回覧された。

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