200406:2004年(平成16年) 新潟県中越地震・小千谷市

【概要】

(1)被害の概要

○市勢

表1 小千谷市の概要
人口等人口41,314人、12,375世帯 (平成16年9月末・住民基本台帳)
地理新潟県の中央部に位置し、信濃川が中央部を貫流。河岸段丘と中山間地に展開する田園都市。
特産等小千谷縮、錦鯉の原産地。

○被害状況

表2 中越地震の主な被害状況(小千谷市)
項目被災状況等備考
①死亡者19人市民17人
②負傷者重傷者 120人軽傷者 665人計 785人
③家屋被害
(棟・%)
全壊大規模半壊半壊一部損壊無被害合計・住家のみ
・共同住宅1棟として算出
・平成19年1月16日現在
622棟3702,3867,514710,899
5.71%3.4021.8968.940.06100.0
④孤立地区21地区431世帯1,472人10月29日に解消
⑤避難所避難所数 136箇所避難者数 29,243人10/27時点(12/20解消)
⑥救援食糧ピーク時配食数 42,680食10/28時点(日2食)
⑦避難勧告29箇所(地区)532世帯平成18年4月14日解除
⑧火災・その他・火災 住宅1件(2棟)
・床上浸水20棟  ・床下浸水31棟

(出典)小千谷市『10・23新潟県中越大震災からの教訓』。

表3 被害額(推計値)
施設等の区分想定被害額(億円)
1 公共土木施設関係(市)51
 ○道路関係45
 ○河川関係5
 ○除雪関係1
2 公共土木施設関係(県)320箇所165
 ○道路関係【240箇所】124
 ○河川関係【80箇所】41
3 農地・農業用施設関係380
 ○農地・農業用施設226
 ○治山・林道施設116
 ○農産・園芸・畜産施設28
 ○農産物10
4 下水道・農業集落排水関係104
 ○公共下水道78
 ○農業集落排水26
5 ガス・水道・工業用水道関係40
 ○ガス8
 ○水道30
 ○工業用水道2
6 公共施設関係50
 ○本庁舎(耐震)10
 ○学校教育関係6
 ○社会教育関係6
 ○社会体育関係14
 ○福祉施設関係13
 ○その他公共施設1
7 ごみ・廃材等収集、運搬、処理72
 ○ごみ収集、運搬、処分50
 ○仮置場2
 ○廃材収集、運搬、処分19
 ○その他1
8 ごみ・し尿・埋立処理施設関係52
 ○清流園(し尿)5
 ○サンクリーン時水(焼却)5
 ○クリーンスポット大原(埋立)42
9 医療施設・設備関係80
 ○建物関係60
 ○医療・事務機器15
 ○その他5
10 商工業関係2,003
11 錦鯉・養殖施設関係50
12 一般住宅関係325
13 税・利用料・使用料等の減免額3
 ○市民税0.27
 ○固定資産税0.60
 ○都市計画税0.08
 ○国民健康保険税1.15
 ○介護保険料0.13
 ○保育料0.30
 ○介護保険利用料0.28
 ○下水道料0.06
 ○水道料0.13
14 防災整備関係70
合計3,400

(出典)小千谷市『10・23新潟県中越大震災からの教訓』。

(2)災害後の主な経過

表4 災害後の主な経過(小千谷市、地震後3年間の取組状況)
住居・生活関係インフラ、産業等復興の進め方
H1610月10.23 地震発生新潟県中越大震災小千谷市災害対策本部設置
被災宅地建物危険度判定開始
義援金受け入れ開始
住宅相談窓口開設
り災調査開始
仮設住宅入居希望調査
地元協議会災害対策本部設置
ボランティアセンター設置
中小企業相談窓口開設
市街地に通水
11月仮設住宅建設開始
健康状況調査、相談
仮設第1次募集
生活再建支援相談窓口開設
り災証明書発行
ガス供給開始
商工業者の被害調査
雇用相談会
清掃工場再開
応急給水活動終了
12月仮設第2次募集
1次募集仮設入居開始
2次募集仮設入居開始
義援金配分開始
ボランティアセンター閉鎖
H171月自衛隊による仮設住宅除排雪復興支援プロジェクト
市民ワークショップ
3月(財)新潟県中越大震災復興基金設立
4月震災復興市民大芸能祭開催
復興記念ウォーク開催
市民ワークショップ
復興計画策定委員会
5月知事とのタウンミーティング
6月白山運動公園牛の角突き開催
7月東山地区5町内避難勧告解除
(荷頃,岩間木,首沢,中山,小栗山)
小千谷市復興計画策定
8月錦鯉の里再開
震災復興祈願おぢやまつり開催
市民プール再開
H181月第四次小千谷市総合計画策定
第1回復興推進委員会
4月東山小自校で授業再開
災害公営住宅(木津)入居開始
市内全ての避難勧告解除
6月三仏生地区住宅移転用地竣工牛の角突き小千谷闘牛場復活第2回復興推進委員会
7月千谷地区住宅移転用地竣工ちぢみの里ふれあい公園復旧
8月第3回復興推進委員会
9月震災復興記念シンポジウム
10月総合防災訓練実施
市民震災復興イベント開催
中越大震災復興記念式典
11月小千谷市行革大綱見直し
集中改革プラン策定
12月災害公営住宅(千谷,千谷川)入居開始
H191月第4回復興推進委員会
3月一般県道小千谷長岡線開通
5月第5回復興推進委員会
7月第6回復興推進委員会
10月応急仮設住宅全員退去復興記念メモリアルコンサート
11月中越大震災復興記念式典
12月一般県道川口岩沢線開通第7回復興推進委員会
H201月市民ワークショップ
3月第8回復興推進委員会
5月第9回復興推進委員会

(出典)小千谷市『小千谷市復興検証』平成20年5月。

【20040601】被害認定訓練にもとづく被害調査(小千谷市)

○建物の2次調査に際して小千谷市では、富士常葉大学、防災科学技術研究所・地震防災フロンティア研究センターが中心となって開発された、写真と図を用いて被害認定のプロセスの訓練を行うDATS(Damage Assessment Training System) という手法で被害調査を実施している。

○これは、内閣府の認定基準を簡便化した調査票を用いて、非専門家も対象に建物被害認定の簡易なトレーニングを実施した上で調査を行うというものである。今回の調査に際しては、職員に対してスライドによる調査書の書き方の指導など、事前に半日の講習を行っている。講習では、多数の写真から、どこが判定のポイントとなるか示しながら、被害認定のトレーニングが行われた。


図 住家被害調査票

【20040602】復旧・復興体制の構築(小千谷市)

  • 小千谷市では当初、復旧・復興への取り組みについての特別な体制づくりは行われず、災害対策本部として対応していた。その後、仮設住宅の解消と併せて平成19年10月31日に災害対策本部が解消し、復興推進本部が設置されている。
  • 復興計画の策定については、地震で壊滅的被害を受け、市民からも行政と市民が一緒に復興計画に取り組む必要があるとの声があがった。そこで、次図のような全体の枠組みが構築された。
  • 復興計画策定手順の概要は次図のとおりである。復興計画策定までの主な経緯を、次表に示す。企画財政課が事務局となり、大学、市職員によるワーキングが組織され、ワークショップなど、市民も参加して計画づくりが進められた。

図 復興計画の策定体制

(出典)小千谷市『小千谷市復興計画』平成17年7月。


図 復興計画の策定手順

(出典)小千谷市『小千谷市復興計画』平成17年7月。

表 小千谷市復興計画策定委員会の構成メンバー等(敬称略)
委員長丸山久一(長岡技術科学大学理事・副学長)
副委員長重川希志依(富士常葉大学教授)
委員
新潟県議会議員
新潟県長岡地域振興局長
小千谷市議会議長
小千谷市議会震災復興特別委員会委員長
小千谷市教育委員会委員長
小千谷市魚沼市川口町医師会副会長
介護老人保健施設 春風堂 事務長
越後おぢや農業協同組合組合長理事
小千谷商工会議所会頭
本町商店街振興組合組合長
小千谷観光協会会長
小千谷市建設業協会会長
連合魚沼地域協議会議長
東山地区振興協議会会長
前吉谷地区町内会長協議会会長
東小千谷町内会長・区長協議会会長
真人地区町内会長協議会会長
小千谷市総合計画審議会委員長
小千谷市総合計画審議会副委員長
小千谷市総合計画審議会委員3名
幹事長助役
副幹事長収入役
幹事教育長
下水道課長
富士常葉大学助教授
総務課長
企画財政課長
税務課長
市民生活課長
健康福祉課長
高齢福祉課長
農林課長
商工観光課長
消防課長
会計課長
議会事務局長
学校教育課長
社会教育課長
社会体育課長
監査委員事務局長
ガス水道局長
広域事務組合事務局長
第1分科会
総務課長
広域事務組合事務局長
消防課長
健康福祉課長
高齢福祉課長
市民生活課長
第2分科会
建設課長
ガス水道局長
下水道課長
農林課長
商工観光課長
議会事務局長
会計課長
第3分科会
学校教育課長
社会教育課長
社会体育課長
企画財政課長
税務課長
監査委員事務局長
第1分科会ワーキング
市民9人
職員16人
第2分科会ワーキング
市民16人
職員16人
第3分科会ワーキング
市民9人
職員13人

(出典)小千谷市『小千谷市復興計画』平成17年7月。

表 復興計画策定への取り組み経緯
月日会議名等審議内容等
H17.1.5中越地震復興支援プロジェクト講演会とパネルディスカッション
 京都大学教授 林春男、神戸市収入役 金芳外城雄、富士常葉大学教授 重川希志依、同志社大学教授 立木茂雄
1.19職員の意見募集(~1.31)復興に向けたまちづくりについて
1.28第1回職員ワークショプ小千谷市の復興について(現状分析)
2.10市民の意見募集(~2.28)復興に向けたまちづくりについて
2.20第1回市民ワークショップ小千谷市の復興について(参加者105名)
2.28地区別町内会長会議(~3.3)復興計画についての説明ほか
3.2第2回職員ワークショップ復興課題と方針について
3.24第3回職員ワークショップ復興課題と方針について
4.10第2回市民ワークショップ復興目標、復興方針、施策の検討(参加者54名)
4.12第1回幹事会復興計画の骨子資料について
4.18第1回復興計画策定委員会正副委員長の選出と復興計画の骨子資料について
4.21町内会長会議復興計画骨子資料(復興目標、方針、施策)の説明ほか
4.26市議会震災復興特別委員会正副委員長・正副部会長へ計画についての説明
5.9第2回幹事会復興計画骨子素案の検討
5.10ワーキング全体会作業内容確認と所属分科会選定
5.16第2回復興計画策定委員会復興計画骨子の検討
5.17
~26
第1分科会ワーキング(2回開催)
第2分科会ワーキング(2回開催)
第3分科会ワーキング(4回開催)
個別事業の検討
 ワーキングメンバー79名(市民34名、職員45名)
5.25パブリックコメント(~6.7)復興計画骨子についての意見募集
5.30議員協議会復興計画骨子の説明
5.30幹事会第2分科会個別事業の分科会案の検討
5.30幹事会第3分科会個別事業の分科会案の検討
5.31幹事会第1分科会個別事業の分科会案の検討
5.31幹事会第2分科会個別事業の分科会案の検討
6.3第3回幹事会事業計画案の検討
6.6第4回幹事会事業計画案の検討
6.7第5回幹事会事業計画案の検討
6.13第3回復興計画策定委員会個別事業計画案の検討
6.24市議会震災復興特別委員会からの提言
6.24第6回幹事会復興計画素案の検討
6.27第7回幹事会復興計画素案の検討
7.3第4回復興計画策定委員会復興計画素案の検討
7.4議員協議会復興計画素案の検討
7.12第8回幹事会復興計画案の検討
7.16第5回復興計画策定委員会復興計画案の最終確認と市長への報告
7.19小千谷市復興計画決定小千谷市復興計画決定

(出典)小千谷市『小千谷市復興計画』平成17年7月。

【20040603】復旧・復興計画の策定(小千谷市)

・ヒアリングでは、小千谷市復興計画の特色として、次のような点が上げられた。
1.市民参加の計画策定
 何をしたいか、どんな復興とするかについては、市民の意見に基づいて決めた。
2.自助、共助、公助のまちづくり
 復興は、行政だけの力ではできない。
 市民、企業、行政の協働による復興。
 復興の進み具合も、市民の手で確認をする。
3.1,500件を越える意見を整理して計画を策定
復興計画の策定にあたっては、自助・共助・公助のなかで、「あれも、これも」ではなく、「あれか、これか」の選択が必要であった。そのため、これまで以上に市民からのアイデア・意見を集め、その中で行政は何をすべきかという検討が進められ、復興計画がとりまとめられていった。収集された意見は1,500件を超える。それらは以下の図に示す施策体系として整理された。


図 復興計画施策体系

(出典)「小千谷市ホームページ」。

○なお、復興計画では、復興計画と市の総合計画との関係は次のように説明されている。
・「小千谷市にとって最上位の計画は、平成17年度を最終年度とする第三次小千谷市総合開発計画です。また、17年度中に次期総合計画として第四次小千谷市総合計画を策定することとしています。本来、復興計画は中越大震災からの復興のための個別計画ですが、その被害はあまりにも大きくまた全市的です。小千谷市にとって緊急かつ最大の課題は震災からの復興にほかならず、当面はあらゆる施策に優先して考える必要があります。したがって、計画の策定順序は、復興計画を先に策定し、その内容を第四次小千谷市総合計画に反映させることとします。」
・平成18年1月に第四次小千谷市総合計画が策定されており、その前期基本計画の中に、復興計画に示された事項が優先的に取り込まれた。
○復興計画の検証
・小千谷市では、復興計画の中で市民に進捗や結果を説明する必要があるとして、「復興の検証及び新たな社会・経済情勢の変化等に対応して、途中必要な見直しを行う」こととしており、平成20年5月に検証結果の報告が行われている。
・検証作業にあたっては、行政による事業の進み具合の把握、市民へのアンケート、市民ワークショップなどが行われ、復興計画における復興課題ごとの取り組み状況の検証、今後の取り組み方針などの検討が進められている。
○震災で顕在化した課題
・ヒアリングによれば、震災によって次のような課題が顕在化したとのことである。
・地震前から商店街の衰退や山間部での過疎化が進んでいたが、これらが地震により顕在化し対処が必要となった。
・商店街では、復興基金等を利用しながら振興策に取り組んでいるが震災前のレベルに利用客が戻らない状況が継続しており、産業育成、商店街振興は、大きな課題の一つとなっている。
・山間部の東山地区については、地震の前310世帯から約170世帯程度になるなど過疎化も急速に進んだ。この地域では、もともと勤め先が平地にあり、被害を契機に地域を出た世帯も多かったようである。表は、東山地区の世帯数の変化を防災集団移転促進事業の対象の有無別にみたものである。防災集団移転促進事業の対象外の集落でも、地震後、世帯数が4分の3に急減している。

表 東山地区の世帯数変化(住民基本台帳)
東山地区の集落平成16年9月末現在の世帯数(1)平成19年12月現在の世帯数(2)率(2)/(1)(%)
防災集団移転促進事業が実施された集落塩 谷512141%
十二平1100%
荷 頃421433%
蘭 木341544%
首 沢1833%
朝 日412868%
小 計1978443%
防災集団移転促進事業の対象外集落岩間木362569%
寺 沢252080%
中 山1516107%
小栗山362364%
小 計1128475%
合 計30916854%

○住宅再建

  • 住宅復興は最優先課題として、各種事業が実施されている。特に大きな被害を受けた一部の集落では防災集団移転促進事業により住宅の移転・再建を支援している。また、自力で住宅再建が困難な被災者には市内4箇所に災害公営住宅が建設された。
  • 応急仮設住宅入居者は、ピーク時の平成17年5月には684世帯2,328人にのぼったが、平成19年10月末までに全世帯の退去が完了している。応急仮設住宅入居者の住居の確保状況は以下の表のとおりである。また、防災集団移転・個別移転についても平成19年12月までに移転を完了している。
表 災害公営住宅の概要
名称敷地面積m2構造・階数間取りタイプ
木津のぞみ団地住宅 2,861.0鉄筋コンクリート造 4階建1LDK(50.8㎡)10戸、2DK(50.8㎡)6戸、 2LDK(59.8㎡)8戸、3DK(67.7㎡)4戸、4DK(84.8㎡)4戸
千谷のぞみ団地住宅  5,600.0鉄筋コンクリート造 4階建1LDK(52.19㎡)8戸、2DK(52.9㎡)16戸、 3DK(68.39㎡)12戸、4DK(77.48㎡)4戸
千谷川のぞみ団地住宅 2,260.5鉄筋コンクリート造 4階建1LDK(52.91㎡)8戸、2DK(52.91㎡)8戸、 2LDK(67.46㎡)4戸、3DK(68.39㎡)4戸
ペット同伴公営住宅木造2階建木津団地内3戸、日吉地内6戸

(出典)小千谷市『復興計画によるまちづくり』。

表 応急仮設住宅退去世帯の再建方法(平成19年10月31日現在)
再建方法世帯数比率
新築・修繕・中古購入59877.1%
公営住宅11314.6%
民間賃貸住宅496.3%
親族等と同居91.2%
施設入所30.4%
死亡退去40.5%
776100.0%

○商店街
・地震により小千谷市の中心部にある商店街は大きな被害を受けた。市では、復興イベント、チャレンジショップ、仮店舗設置、復興まちの駅※ 設置への支援などを実施して、被災した商店街の早期復旧を目指した。しかし、本町、東大通、中央通、寺町商店街の会員数は、平成16年4月には237名だったものが3年後の平成19年4月には218名に減少している。また、東小千谷地区の商店街では、スーパーマーケットの撤退も影響し、売り上げは震災前の6割程度までしか回復していない。
※小千谷市本町商店街の中心部に平成18年7月7日にオープンしたスペースであり、震災復興・観光・行政・商店街の情報提供、無人野菜販売など行っている。

○販路拡大と観光振興
・地震による知名度アップを生かし、特産品の販売、地域情報の発信及び観光の推進などを行うため、会員制の「おぢやファンクラブ」が立ち上げられた。これは、復興計画で提案されたもので、財団法人小千谷市産業開発センターを窓口としてスタートした。
・平成20年2月末には会員が1,570人となった。会員には首都圏生活者が多いなどの特徴があり、今後は、このファンクラブを物産・観光の総合窓口として発展させ、特産品の販路拡大と交流人口の増加につなげることが期待されている。

○農村振興
・ヒアリングによれば、小千谷市では、震災前から配置していた地域支援員が、次に示すような重要な役割を果たしたとのことである。
・地域支援員を3地域(東山、真人、岩沢)に配置していた。これは、地域を育てたり、地域の良さを見つけることを目的としており、それぞれの地区に連絡所があり、支援員が配置されていた。地震後、地域の実情をよく把握していた支援員は、きめ細かな地域の情報を市に提供した。
・また、震災直後しばらくして落ち着いてくると、要求だけではなく自分たちも汗を流さないといけない、という自覚が市民に芽生えた。そうした中で、支援員が地域に本当に必要なものは何かを見定めて、地域の方々と話をしながら優先順位を考えるなどの取り組みを進めていった。山間地では田畑が崩落、養鯉池が被災したなどの場合、復興基金のメニューが役立ったが、その際に地域の人と市の担当部署を繋いだのが地域支援員だった。「道路が被災したが、それが復興基金の対象になるか」というような相談が多かったそうである。住民は、例えば自分の田が被害を受けたとき、農林課の復旧補助事業や復興基金の補助と自己負担の関係がわからない。そこで支援員が復興基金の勉強をして、具体的な住民の相談にきめ細かく対応している。当時は、係長相当職のある程度、決定権のある人が配置されていたことも有効だったようである。
・農村部では、こうした支援員のサポートなども受けながら農産物の販路開拓、まちづくり・村おこしへの取り組み(例えば、岩沢地区の「狼煙の会」、若栃地区の「わかとち未来会議」、吉谷地域の「小千谷市の棚田を守る会」など)、各種交流を促進するような取り組みなどが行われている。
・市では市民農園を整備するとともに、農産物の加工品づくりや農家民宿などの起業化のための支援を実施しており、その結果、震災前は20件だったアグリビジネス(農業関連産業)の取り組み件数が平成19年度には33件に増加している。また、都市住民に対する情報提供や受入れ、交流可能な集落づくりの取り組みも進められている。

【20040604】仮設住宅の建設・提供(小千谷市)

  • ○仮設住宅への入居は、普通は住宅が全壊した人だけが対象だが、今回は、余震や雪による倒壊が怖いという人すべてを受け付けた。
  • ○建設にあたっては、用地の確保にたいへん苦労した。用地は、公共用地が中心で、民地では工場跡地を1箇所使用している。また、3つの小中学校のグラウンドも使用している。
  • ○小千谷市は都市ガスだが、仮設住宅用地には都市ガスが確保できず、プロパンガスで対応しなければならなかった。しかし、市内の業者ではプロパンガスが必要量確保できず、遠方から調達することになり費用が嵩んだ。水道がなく、100〜200トンの受水槽を設置した所もある。

【20040605】仮設住宅の建設・提供(小千谷市)

  • ○入居は2回に分けて行った。1次入居は、近隣コミュニティごとにまとまる形で、できるだけ希望に添うようにした。しかし、2次入居では住宅の規模と世帯規模とのつりあいもあり、バラバラになってしまったが、基本的には、各自の希望を受け付ける形で場所を決定した。なお、コミュニティごとの入居が大事といわれるが、実際には、知っている人とはいやだという例も多い。
  • ○独居高齢者や歩行に障害のある人には、市街地の近に入居できるよう配慮した。

【20040606】災害弔慰金の支給(小千谷市)

  • ○小千谷市の死者数は12名、うち住民以外の者が2名だった。これらについては、すべて警察が確認したもので、県から連絡があった。死因は、家屋の下敷き・地震によるショック 併せて9名、エコノミー症候群1名。
  • ○災害弔慰金の支給
    • ・死亡診断証明に「地震」の言葉が入っていなければ災害弔慰金の対象にはしなかった。11月28日までに上記10名の確認がとれた。
    • ・遺族から死者が地震によるものではないかとの相談はあった。そのような場合は、死亡診断書を書いた医師に改めて意見書を書いてもらい、その意見書で判断することとしている。
    • ・「関連死」認定による災害弔慰金の支給が課題となっている。被災地全体で広域的な判定委員会を設置すべきと思ったが、県も国も、市町村の考えでやればよいとの回答だった。市町村の判定結果を国が認めてくれるのかどうかが問題である。関連死の認定は、義援金等も関係してくるため、非常に取り扱いが難しい。

【20040607】税の減免と被害認定との調整(小千谷市)

  • 税の減免措置に関して、損害程度の割合と被害認定結果との対応をどう図るかが難しかった。
  • 従来から自治省の通知に基づく減免の要綱はあったが、その被害割合が全壊・大規模半壊・半壊などの被害認定と異なっている。そこで今回は、8/10以上を全壊、6/10以上8/10未満を大規模半壊、4/10以上6/10未満を半壊、4/10未満を一部損壊とした。
  • ・なお、本来は条例が必要だが、県から要綱でもかまわないという通知があった。また、県から、税の前納者への減免も可能との見解が示された。

【20040608】防災集団移転事業による取り組み(小千谷市)

今回の地震で小千谷市では、6集落から2つの住宅団地への防災集団移転が行われた。小千谷市へのヒアリングから得られた防災集団移転促進事業に関する取り組み状況と課題等を以下に示す。


図 移転集落と移転先住宅団地

(出典)国土交通省『小千谷市の防災集団移転促進事業の変更計画概要』平成18年7月10日。

○主な経過

防災集団移転促進事業に関する主な取り組みの経過は表のとおりである。

表1 合併に伴う人口・世帯数・面積の変化
平成17年1月県が防災集団移転促進事業と小規模住宅等改良事業に関する説明会を開催。
2月9日住宅移転について、市全域を対象に説明会(第1回)を開催。
3月3日から26日各集落別に仮設住宅で説明会を開催。
3月7日十二平集落の住民より防災集団移転促進事業の話を聞きたいという要望があり、説明会を開催。
4月11日蘭木集落より要望があり説明会を開催。
4月19日第2回説明会(2月9日全体の説明会参加者+東山地域の住民)
参加者対象にアンケートを実施。
→移転先として千谷の希望者が多かった。
5月28日移転候補地の木津、城内、小粟田、千谷を視察。
参加者対象にアンケートを実施。
→移転先として千谷の希望者が多かった。
7月地権者に数回の説明会。概ね同意を得る。
9月21日移転先の三仏生団地造成工事契約。
12月26日用地交渉同意。移転先の千谷団地造成工事契約。
12月27日十二平地区の災害危険区域指定を公示。
平成18年4月7日十二平以外の地区の災害危険区域指定を公示。
7月三仏生団地、千谷団地造成工事完了。

(出典)小千谷市『防災集団移転促進事業スケジュール表(千谷団地、三仏生)等』。

○各集落の移転希望

  • 各集落からは、市に対して次表に示すような要望書が出された。最も早く集団移転の要望が出された十二平地区では、隣接する堀之内町で過去に実施された雪崩に関する防災集団移転促進事業の事例を知っている住民がおり、集落でそうした情報交換をしていくうちに、全員が移転することになり、要望書が出された。
  • また、表中で要望書が「住民1世帯ずつ提出」とあるのは、町内でとりまとめた要望として提出することができないというようなケースである。蘭木地区では、町内会で意向を把握して、移転したいという方の意向を踏まえて災害危険区域の設定がなされた。首沢地区は町内としてではなく、戸別に要望が提出される形となり、それぞれの住宅が掛かるように危険区域の設定がなされた。塩谷地区については、移転や残留の要望、あるいは、当時建設が決まっていた千谷団地以外の公営住宅(木津団地)を希望する住民などもいた。なお、朝日地区、荷頃地区は説明会などにより市で移転希望の把握をしていたことから、特に要望書という形のものは出されていない。
表 要望書の提出状況
十二平平成17年3月10日 集団移転の要望
平成17年4月28日 移転先地の要望
蘭木平成17年5月2日 移転団地内の借地、公営住宅に関する要望
首沢平成17年4月26日 ~5月9日 住民1世帯ずつ提出、計8世帯分
塩谷平成17年6月3日 千谷団地、団地内公営住宅、地区内移転の要望

(出典)小千谷市『防災集団移転促進事業スケジュール表(千谷団地、三仏生)等』。

○地権者との同意
・移転先の住宅団地の場所については、5ヵ所の移転候補地を設定し、住民の視察が実施された。市内全域に被害があり他の地域にも移転希望者がいたため、防災集団移転に関して把握していた以上に住宅団地の敷地が必要となった。
・移転先住宅団地については、住民自らが場所を設定して地権者と話を進めるようなケースも見られた。例えば、十二平では住民が直接交渉して、三仏生の地権者との話が進められ、平成17年4月には地権者からある程度の合意を得ていた。その後、三仏生については、首沢の住民が自ら3区画を交渉して確保した場所も含まれることとなった。

○危険区域の設定
防災集団移転促進事業を担当した職員へのヒアリングでは、次のような点が、危険区域設定の難しさとして指摘された。
・危険区域の設定に掛かる不在地主について、誰と交渉すればよいかわからず、同意の取り付けに時間を要した。
・塩谷では、比較的集落が平らな地形なため災害危険区域の設定が難しいことがあり、県との協議に時間を要した。
・危険区域の設定では、その土地が「将来危険になるかもしれない」というアプローチとなるので、危険区域に掛かる地主への説明が難しい場面が生じた。また、地域に残る方に関連した復旧事業等の障害とならないような配慮も必要とされた。

○その後の状況
・千谷の造成団地の用地については、借地は2件にとどまり、残りはすべて移転希望者に売却された。平成19年12月にはすべて売却等処分が終了し、集団移転者は全員移転している。移転先造成地の同意が進まず着工が遅れていたので、住民は待ちに待っていた状況であった。そのため、造成で宅地の形ができた状態ですぐに家を建てたい、という要望を受けて、処分終了前の事前着工を認めるなどの特別な措置も図られた。(次頁参照)
・なお、防災集団移転促進事業での農地買取は行っておらず、移転した多くの人が通いで、従来の場所において養鯉や農業を続けている。


図 移転先住宅団地(千谷)の土地利用

(出典)国土交通省『小千谷市の防災集団移転促進事業の変更計画概要』平成18年7月10日。

【20040609】下水道の復旧(小千谷市)

○下水道地震対策技術検討委員会の提言
・被災地では、液状化により多数のマンホールが浮き上がる現象が起きた。地震後国土交通省は「下水道地震対策技術検討委員会」を設置し、下水道埋設について、(1)土の密度を高める締め固めの徹底、(2)液状化しにくい砕石の利用、(3)セメント混合による土の硬化の3つが推奨された。
・これを受けて、小千谷市は以下のような対応を実施した。
○小千谷市
・小千谷市はアスファルト再生砕石で埋設する手法を選択した。
・埋設の際に、下水管周辺はセメント改良土を使うが、それ以外は復旧工事で生じたアスファルトの殻を再利用することとした。

【20040610】孤立地区等における災害査定(小千谷市)

○現地での調査ができない孤立地区等について、全国初のモデル適用地区という方法で査定が実施されている。これは、モデルの地区を査定して、査定出来なかった地区については、モデルを基準に大きさを調整するもので、これによって予算の枠(平成16年度繰り越し) が確保された。
○一度全地区で説明会を行っているが、個人負担についての確認作業はまだであり、今後意志の確認と受益者の確定、事業実施の優先順位等の調整を行っていく。
○被災者は、作付けしたいという人が多い。ただ、山には入っていないため、田畑がどうなっているかわからない状態である。被害の程度は地域によって差があるので、被災していない田畑で作業ができるよう、道路、水路の復旧を優先する。

【参考文献】
1)小千谷市『10・23新潟県中越大震災からの教訓』。
2)小千谷市『小千谷市復興検証』平成20年5月。
3)小千谷市『小千谷市復興計画』平成17年7月。
4)「小千谷市ホームページ」。
5)小千谷市『復興計画によるまちづくり』。
6)小千谷市『応急仮設住宅入居者 再建状況内訳』平成19年10月31日作成。
7)国土交通省『小千谷市の防災集団移転促進事業の変更計画概要』平成18年7月10日。
8)小千谷市『防災集団移転促進事業スケジュール表(千谷団地、三仏生)等』。

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