・200403:2004年(平成16年) 台風23号
【概要】
(1)被害の概要
平成16年10月13日9時にマリアナ諸島海域で発生した台風23号は、18日18時に大型で強い勢力となり沖縄の南海上を北上した。19日に沖縄本島から奄美諸島沿いに進み、20日13時頃、大型の強い勢力で高知県土佐清水市付近に上陸した後、15時過ぎ、高知県室戸市付近に再上陸した。その後、18時前、大阪府南部に再上陸して、近畿地方、東海地方に進み、21日3時に関東地方で温帯低気圧となった。
○被害状況
・全国各地で8月末から10月下旬にかけ、台風第16号、18号、21号の大型台風により、豪雨、暴風の結果、山などの保水能力が低下して、斜面崩壊や土砂流出が発生しやすくなっているところに、さらに大規模な降雨があったことから、大きな被害につながった。
・全国で人的被害は、死者95名、行方不明者3名、重傷負傷者121名、軽傷負傷者431名、住家被害は、全壊893箇所、半壊7,764箇所、一部破損10,841箇所、床上浸水14,330箇所、床下浸水41,228箇所となった。
・特に被害が大きかったのは兵庫県である。兵庫県豊岡市では、円山川と出石川が氾濫し市内は泥水の海のようになった。
表1 人的・住家被害(兵庫県・香川県・京都府)
(2)災害後の主な経過(兵庫県)
・兵庫県但馬地域では、200mm/24hを超える雨が10月20日の8:00~22:00に、淡路地域では、300~350mm/24hを超える雨が、特に20日6:00~18:00の12時間に集中して降った。
・10月20日15:40に自衛隊へ孤立住民の救助に関する災害派遣要請を行い、同日16:40に災害対策本部を設置した。また、災害救助法が5市13町に適用された。
・11月18日に、兵庫県「災害復興対策検討チーム」が設置され、後の「災害復興室」に引き継がれた。
表2 災害後の主な経過(兵庫県の取組状況)
7:00 兵庫県全域に暴風警報が発表されたことから、災害警戒本部を設置 災害救助法の適用を決定(洲本市、西脇市、城崎町、日高町、出石町、西淡町、養父市、黒田庄町、氷上町、津名町、三原町、一宮町、五色町、和田山町、小野市、南淡町、豊岡市、但東町) 知事現地視察 政府調査団到着。県から国に対し、早期復旧・復興に向け緊急提言 自衛隊の撤収要請 兵庫県「災害復興対策検討チーム」を設置 災害対策本部の廃止
【参考文献】
1)兵庫県『平成16年災害復興誌』平成20年3月。
2)内閣府ホームページ『平成16年に発生した風水害教訓情報資料集 9台風23号』。
3)豊岡市ホームページ『被害状況(豊岡市台風23号災害報告3)』(../../../../../tolink/out53.html)。
○趣旨
・兵庫県では、台風等の自然災害の被災者に対する被災着生活再建支援法の積極的活用を図る観点から、平成16年10月28日府政防第842号内閣府政策統括官(防災担当)通知「浸水等による住宅被害の認定について」について、その趣旨を最大限に生かすとともに、被害認定事務の簡素化、効率化を図るための解釈を示した。
○各部位の損傷程度の考え方
内閣府の運用指針では、部位ごとの損傷程度が、それぞれ2段階で設定されている。本県においては一連の台風による浸水被害の甚大さを考慮して、各部位の損傷程度を以下のとおり取り扱う。
表 各部位の損傷程度の考え方
(注)内閣府の運用指針では、柱については水流等の外力による被害が生じている場合のみ、損害を認定できることとなっている。しかしながら、柱については、外力による被害が生じていなくとも、長時間浸水することにより、腐食の発生が助長され、将来において構造的な欠陥が生じるおそれがあること等から、本県においては、このような場合でも柱の損害を認定できることとする。
○初期の概要把握
・初期は、商工会議所が全会員に対して独自に実施した調査や、地場産業である鞄協会が実施した調査で被害を把握した。
・それ以外に、市でも独自に調査を実施した。
○被害額の推計
・県の指導で、各行政区単位の家屋被害率と事業所数・従業員数のデータを作成した。今回の災害では、3,462事業所の内、1,800を越える事業所で被害があった。
・被害額の推計に際しては、県とデータをやりとりして、県がデータの加工・処理を行った。売上額のデータなどについては、県民局の持つ所得申告の額なども必要だった。
・中小企業関係の激甚指定にあたっては、激甚被災地では対象事業所の約4割、その他の場所では約2割の事業所の実態調査が必要とのことであった。今回は、約650件について、土地、建物、機械設備、商品・原材料被害などについて、実態調査データを作成して報告した。調査は、11月から初めて、中旬まで実施した。
○高松市では川の氾濫などで発生した土砂を特殊処理し、建設用土としての再利用を試みた。
○概要
・河川の浚渫工事現場などで用いられる技術を転用し、土砂の有効利用と処理費の縮減につなげる。
・泥土に特殊な固化材を混ぜて粒状土に変える「泥土均一粒状化工法」により、被災地から回収した土砂を道路の盛り土材などとして再利用することで、埋立処分に比べ安いコストで処分可能。
○経緯
・台風23号では、淡路、但馬地域を中心に死者が26人、家屋の全半壊が約1万世帯、床上・床下浸水が約1万1千世帯など甚大な被害が発生した。
・これまでの災害復旧・復興は、担当する個々の組織(部局)が個別に対策を実施することが一般的だったが、今回の災害では、起こった現象に対して、被害原因の分析により、横断的・総合的な復旧・復興対策を推進する必要が生じた。
・兵庫県では、農林水産部と県土整備部及び県民局の連携を図るため、本庁に「災害復興室」を、県民局に「但馬地域災害復興室」(但馬県民局)及び「淡路地域災害復興室」(淡路県民局)を設置した。
・災害復興室では、台風23号の被害原因と対策を分析するとともに、災害から早期復旧・復興を目指し、農林水産部と県土整備部が連携・調整すべき重点地区・重点路線などについて、めざす復興後の地域の姿を念頭に置きつつ、復旧・復興事業推進計画(中間報告)を取りまとめた。
図 本庁の災害復興室の構成
・兵庫県は、「兵庫県台風第23号災害検証委員会」を設置、分野別にワーキング部会(構成:担当委員、行政(県、市町)、関係団体等)を設置し、検証担当委員を中心に具体の課題抽出、対応方策の検討等を行ったうえ、委員会で横断的に検討し、取りまとめを行った。
図 検証体制
【参考文献】
1) 兵庫県『平成16年災害復興誌』平成20年3月。
2)兵庫県台風第23号災害検証委員会『台風第23号災害検証報告書』平成17年12月。
○復旧・復興事業推進計画(中間報告)の概要
・台風23号による被災原因分析と対策の検討を踏まえ、重点地区・重点路線の復旧・復興対策(案)、復興対策提示上の留意事項、めざす復興後の地域の姿などを提示。
・さらに、農林水産部及び県土整備部が各部で実施する事業と、連携・調整する重点地区・重点路線を明示した。
○仮設住宅の代わりとして、43戸の民間アパートを提供した。
○民間アパートの確保・契約
・宅建業界但馬支部に協力を要請して住宅情報を把握した。なお、制度の対象とならない被災者に対しても、相談に乗ってくれるよう要請した。
・民間アパートの提供については、光熱費は自己負担となるが、家賃、共益費、敷金・礼金、仲介料、保険などの扱いが問題となった。最終的には、家賃、共益費、仲介料、損害保険料は災害救助法で支出されることとなった。
・各家主との契約では、敷金・礼金はなしとした。ただし、退去時の現状復旧費用として2ヶ月分を先に支払うこととなった。家主との契約は、6ヶ月単位。契約時に3ヶ月分、そこから年度末までの分、4月から契約終了までの分の3回の支払いとした。
・アパートの条件は、応急仮設住宅の29.7㎡を念頭に置いて、家族数に応じて必要な広さを確保した。
・家賃の目安は、あまり新しくないアパートを想定して、5万円以下とした(概ね築15〜20年)。応急仮設住宅の代わりなので、新築に入居するというのは避けた。また、みんなが希望すると戸数を確保できないことから、戸建ては除外した。
・入居期間については、持ち家が被災した人は1年、アパートが被災した人は6ヶ月とした。これは、水害であること、被災者にできるだけ自立してもらおうということで決めた。
○被災者への対応
・11月2日からの相談は全部記録し、併せて、所得調査に関する委任状を提出してもらった。これは、所得証明にも費用がかかり、住民票を異動しておらず他市町村から所得証明を入手する必要があるケースなどもあり、その被災者の手間を軽減させようとしたものである。
・各世帯の希望をできるだけ入れながら宅建業界但馬支部から得た情報をもとに、部屋を借りおさえした。希望の多かったのは自宅に近いところ、児童・生徒がいる家庭では学区が変わらない範囲、というものだった。坂がある、部屋が小さい、ペットが飼えない、町中にしかアパートがないので畑仕事に行けない、などの理由で辞退した人もいる。
・最初に申し込んだ人と後になって申し込んだ人とで、入居した部屋のレベルに違いが出てしまった面がある。初期は、アパートが被災して部屋がなかったが、しばらくすると復旧して、後に申し込んだ人が自宅の近くに住めたり、家賃が高くて残っていたアパートに入居できたりした。
○台風23号などの被災者に対して、兵庫県では、各種支援制度を創設した。
(1)住宅再建支援制度
・国の被災者生活再建支援法の年収・年齢要件を緩和し、年収800万円以下なら年齢にかかわらず、支給を受けられるようにした。
・さらに再建・補修経費として、全壊100万円、大規模半壊75万円、半壊50万円、床上浸水25万円を独自に上乗せ支給。
(2)「住宅復興ローン」創設
・阪神・淡路大震災時の例にならい、「ひょうご住宅災害復興ローン」を新たに創設。
・住宅の再建・補修を行う世帯が対象で、再建には最高800万円が融資される。金利は、住宅金融公庫災害復興住宅融資に連動。現在は1.8%。同融資など他の融資との併用も認められる。
・同ローンや同融資などを利用する世帯には、2.5%を上限に5年間、県と市町で利子補給を行う。
(3)一時転居者支援制度
・自宅の再建や補修が終わるまで、仮設住宅や県営住宅の空き家提供を利用せずに、民間賃貸住宅に入居する世帯に、家賃の半分(上限3万円)を原則6カ月まで県と市町で助成する。
(4)耐震化工事助成事業枠の拡大
・耐震化工事に対する最高50万円の助成事業について、それまで対象とならなかった1981年以降に建築された家屋でも、台風で耐震性が低下している場合は助成対象に加える。
(5)小規模ながけの崩壊対策事業の実施
・人家に被害を与える可能性が高い急傾斜地について、擁壁を設けるなどの緊急対策を行う。
・傾斜度30度以上のがけで、高さが5メートル以上あることが要件。
・国の補助事業は、人家が2戸以上で事業費も600万円以上の場所が対象だったが、今回は一戸だけでも対象とし、事業費も100万円以上とした。県と市町が負担する。
○被災者生活再建支援法で措置されない住宅等再建費用の3/4を京都府と市町村で補助する制度を創設。
表 補助金制度の概要
○高齢者・障害者・母子寡婦世帯で低所得世帯(生活保護基準の8倍以内)については、対象経費万円までは自己負担なし。
○実施方法の検討
・担当課としては、職権による減免が実施の手間がかからない方法だったが、国の通知では申請主義となっていること、市民に減免が実施されることを知ってもらうことの重要性、の2つの観点から、申請で対処することとした。
○適用方法
・住民税、国保税については、住宅被害の二次調査の判定率をもとに減免率を決定した。3割以上の被害となる場合に適用される。
・固定資産税については、全ての建物が対象になることから、従来と同様に一次調査の結果から、浸水深に応じた減免率(床上40cm、90cmで区分)とした。この減免率は平成2年の水害の際に作成したものである。なお、償却資産については、申告に基づいた。
・一世帯が一回で申請ができるような申請書を作成して、被災者の手間を軽減した。
・固定資産税の減免に関する申請率は、制度対象者の概ね70%程度だった。合併もあり、年度内の事務処理が必要なことから、申請は1月20日で締め切った。過去の災害では、期限後に申請要望が出るなどのトラブルがあったが、今回は周知も徹底したためもあってか、トラブルはほとんどない。
○被災地を支援する市民活動への助成
○対象活動:台風23号または新潟県中越地震の被害を受けた地域(災害救助法適用地域)で市民団体が自ら企画・提案、実施する活動で、以下のもの。
A:被災地におけるボランティア活動をコーディネートする活動。
B:被災地における市民活動のニーズを把握し、発信・提案する活動。
C:阪神・淡路大震災の教訓を活かし、被災地における市民生活の課題を具体的に解決する活動(義援金、生活物資の募集、送付活動を除く)。
○助成金額
・助成対象経費の合計額の範囲内で50万円を限度
○助成実績:26件
○初期の概要把握
・初期は、商工会議所が全会員に対して独自に実施した調査や、地場産業である鞄協会が実施した調査で被害を把握した。
・それ以外に、市でも独自に調査を実施した。
○被害額の推計
・県の指導で、各行政区単位の家屋被害率と事業所数・従業員数のデータを作成した。今回の災害では、3,462事業所の内、1,800を越える事業所で被害があった。
・被害額の推計に際しては、県とデータをやりとりして、県がデータの加工・処理を行った。売上額のデータなどについては、県民局の持つ所得申告の額なども必要だった。
・中小企業関係の激甚指定にあたっては、激甚被災地では対象事業所の約4割、その他の場所では約2割の事業所の実態調査が必要とのことであった。今回は、約650件について、土地、建物、機械設備、商品・原材料被害などについて、実態調査データを作成して報告した。調査は、11月から初めて、中旬まで実施した。
○被害状況
・台風第23号では、兵庫県の但馬地域や北播磨地域、淡路地域などで多くの中小製造業が水害による被害を受た。地場産業では、豊岡の鞄、西脇の播州織、淡路の淡路瓦や線香などの産地が大きな被害を受け、とりわけ豊岡鞄、播州織産地では、産地全体の生産供給体制に支障を生じるに至った。
○取り組み
・兵庫県では直ちに被害状況調査を実施すると共に、北播磨、但馬、丹波、淡路及び神戸に金融等特別相談窓口を開設した。
・併せて、現地での課題解決を図るための被災中小企業総合支援チームが派遣した。
・また、1)経営円滑化貸付(災害復旧枠)の拡充、2)県制度融資等の2,000万円までの融資に対して3年間実質無利子化する利子補給制度の創設、3)地場産業等振興資金を拡充しての事業者向け及び産地組合向けの災害復旧貸付制度の創設、4)被災地場産業のための政府系金融機関からの借入金に対する利子補給及び商工組合中央金庫と連携した融資促進のための損失補償、を実施することとした。
・さらに、産地の復旧をアピールするため、見本市出展等を支援する被災地場産業イメージアップ対策事業などの支援策を講じた。
○台風23号により農作物に深刻な被害が出たのを受け、兵庫県南淡路農業改良普及センターでは、農家の緊急支援を実施。
○緊急支援の内容
・職員らは台風が通過した翌日から、現地調査班と事務所での電話対応で、被害の取りまとめや被害状況マップづくりに着手し、被災市町や農協とも連携し、情報の共有を図った。
・海水が流れ込み塩害を受けた田畑の土壌の調査を実施。
・農家への支援策として、傷んだ農作物ごとに最適な薬剤の種類や散布方法などを指導。冠水した苗の植え直しや、農業用施設や排水路の復旧に向けた助言を実施。
・被害の程度に合わせて、ほ場整備や苗の管理、衛生上の注意などを盛り込んだ資料をつくり、農協を通じて農家に配布。
○兵庫県森林災害復旧対策委員会
・台風23号災害等により30〜40年生を中心としたスギ、ヒノキの壮齢林が倒伏、幹曲がり、折損に加え、林地崩壊や林道・作業道にも多大な被害が発生した。
・兵庫県では、造林、生態、木材構造、木材搬出、砂防工学の専門家からなる「兵庫県森林災害復旧対策委員会」を設置し、被害メカニズムの解明と風倒木の安全な搬出方法や利活用方策、災害に強い森づくりについて検討を行い、報告書をとりまとめた。
○報告書では、以下の内容が示された。
(1)被害メカニズムの解明
(2)風倒木の処理及び利用(安全な風倒木の搬出方法、有効な風倒木の利活用方策)
・風倒木の損傷程度に応じた利活用に当たっての基本方針
・風倒木の用途(集成材用ラミナ、土木工事用資材、チップとしての利用)
・二次災害防止と林地の保全対策
(3)災害に強い森づくり(被災を受けたスギ・ヒノキ林における復旧方法、管理方法等)
○舞鶴市では、台風で甚大な被害を受けた農地等について、農地、農業用施設災害復旧事業の対象とならない田畑の石、ゴミの片づけ、用排水路の泥上げ等にボランティアを募り、派遣する事業を実施した。
○主催者:まいづる農業災害ボランティアセンター事務局(舞鶴市経済部農林課内)
○募集条件
実施日:土・日曜日(平成16年度中)
実費:1000円(風呂代)
持ち物:昼食、飲み物、雨カッパ、長靴、軍手、タオル、着替え、ぼうし
服装:汚れてもいい服(作業服)で参加