災害対応資料集

・200401:2004年(平成16年) 福井豪雨

【概要】

(1)被害の概要
平成16年7月13日から15日にかけて新潟県に豪雨を降らせた梅雨前線が、16日ころより南下をはじめ、18日未明から昼頃にかけて嶺北地方を中心に停滞した。この梅雨前線に向かって、下層の非常に暖かく湿った空気が日本海を通って流れ込み、足羽川沿いを中心とした幅30~50km、長さ100~120km程度の限られた領域で強い雨雲を次々と発生させた。このため、福井県内では18日早朝から昼前にかけて嶺北地方の各地で激しい雨が降った。

写真1 福井市蔵作町稗苗川上流崩壊

写真2 福井市蔵作町足羽川の破堤

(出典)福井県土木部砂防海岸課『平成16年7月福井豪雨 土砂災害 復興の記録』平成21年3月。

○被害状況
・嶺北地方を中心に降り続いた豪雨は、死者・行方不明者5名、負傷者19名にのぼる人的被害や住宅の全半壊、床上・床下浸水等の物的被害をもたらした。特に、集中して降雨があった福井市、美山町、鯖江市、今立町、池田町では、山間集落において土砂災害が多発するとともに、福井市内における足羽川の決壊、国県道等の路体流出、5箇所に亘るJR越美北線の鉄橋流出など被害が甚大であった。
・被害額では、繊維、眼鏡、漆器等の商業・サービス業と福祉施設等を併せ147億円、農業、林業など農林水産業関係で185億円、道路、河川など県、市町村管理の公共土木施設で268億円と総額で600億円に上った。

表1 福井豪雨による被害状況(平成16年9月1日福井県災害対策本部公表)

人的被害(人) 住家被害(世帯) 避難勧告・避難指示

(世帯・人)
農業被害(箇所)

 
林業被害(箇所)

 
公共土木施設被害(箇所)
区分 細分 被害額
死者 4 147
行方不明 1
負傷者 19
全壊 66
半壊 135
一部破壊 229
床上浸水 4,052
床下浸水 9,675
対象世帯 41,944 185
避難人数 9,141
畦畔等崩壊 1
水路・ため池・農道等 1,386
集落排水施設等 21
山腹崩壊・渓流荒廃等 303
法面崩壊等 907
苗畑・ホダ木埋没 6
畜産・漁業等被害(式) 畜舎浸水等 1
決壊 2 268
護岸被害 36
越水等 41
がけ崩れ等土石流 120
通行規制等(路線) 29

 

(2)災害後の主な経過
・7月18日早朝からの豪雨により、美山町、福井市、大野市、鯖江市、今立町、池田町、松岡町で避難勧告が出され、福井県に災害対策本部が設置された。翌19日に福井市、鯖江市、今立町、美山町、池田町に災害救助法が適用された。
・8月21日に福井市災害復旧対策会議、8月24日に鯖江市復興支援会議、8月31日に美山町災害復旧連絡会議、池田町災害復興支援室がそれぞれ立ち上がった。

表2 災害後の主な経過(福井県の取組状況)

平成16年 7月18日 7月19日
月日 項目
早朝から昼前にかけての豪雨、土砂災害が発生
6:05 美山町に
8:10 福井に
9:00 福井市災害対策本部設置、に
9:05 に
9:34 
10:24
11:20
11:40今立町に避難勧告
13:45
福井市、鯖江市、今立町、美山町、池田町に災害救助法適用
福井市、松岡町に避難勧告解除
7月30日 今立町に避難勧告解除
8月2日 鯖江市、大野市、池田町に
8月3日 自衛隊災害派遣撤収要請
8月21日 福井市災害復旧対策会議の設置
8月24日 鯖江市復興支援会議の設置
8月31日 美山町災害復旧連絡会議、池田町災害復興支援室の設置

 

【参考文献】
1) 山間集落豪雨災害対策検討委員会『山間集落豪雨災害対策検討委員会報告書~安全で安心な農山村づくりのために~』平成17年3月。
2)福井県土木部砂防海岸課『平成16年7月福井豪雨 土砂災害 復興の記録』平成21年3月。

 

○ごみ・泥土の処理
・粗大ゴミは近隣の公園、ヘドロは道路に搬出するよう広報するが、発災直後からゴミ、がれき、廃材等が道路の脇に大量に出され、これをいかに回収するかが大問題だった。
・この回収には、100以上の自治体からの応援を得て実施した。被災後の最初の土日(24、25日)にダンプ、パッカー車、トラック等が自前で来た。最初の土日でかなりのゴミが回収できたのは大きかった。
・泥土は、現在整備中の運動公園の埋め立てで処理した。
・不法投棄の苦情は非常に多く、市清掃課も広報したが、結局すべて処理するしかなかった。
・分別は、泥とそうでないもの程度しか対応できなかった。
○労働組合との連携
・自治労の近畿地方連絡協議会からの積極的な申し出があった。ただし、職員や車両が動くために、組合同士での実施には限界があり、知事名での依頼文で知事宛に出してもらった。
・近畿の労働組合が統一して窓口になってもらったのが、混乱せずとても良かった点である。労働組合が連絡窓口となり、どこから何台来るとかの情報を調整した。この連携がなければもっと活動は遅れていただろう。

 

・8月21日に福井市災害復旧対策会議、8月24日に鯖江市復興支援会議、8月31日に美山町災害復旧連絡会議、池田町災害復興支援室がそれぞれ立ち上がった。
・福井県は、洪水被害の再発防止のため今後の治水対策等の方向性を検討することを目的として、専門家、気象庁、国土交通省、福井市副市長、福井県土木部長の委員からなる「平成16年7月福井豪雨足羽川洪水災害調査対策検討会」を設置した。
・また、福井県では、豪雨災害に強い農山村づくりを進めるため、平成16年8月、森づくり課・農村振興課・砂防海岸課の3課を事務局に、専門家、有識者で構成する「山間集落豪雨災害対策検討委員会」を設置し、上記の「平成16年7月福井豪雨足羽川洪水災害調査対策検討会」と連携を図りながら、足羽川の上流部についての検討を行った。
【参考文献】
1)福井県「豪雨対策の調査結果と今後の対策平成16年7月福井豪雨災害」『㈱山海堂土木施工Vol.46No.6』平成17年6月。
2) 福井県ホームページ『平成16年7月福井豪雨による災害に関する情報 被害および復旧状況等について』。
3) 平成16年7月福井豪雨足羽川洪水災害調査対策検討会『足羽川洪水災害調査対策検討報告書』平成17年3月。

 

・本災害では、全体的な復旧・復興計画は立案されていないが、足羽川破堤により福井市街地に甚大な被害があったことを受けて、福井県「平成16年7月福井豪雨足羽川洪水災害調査対策検討会」を設置し、被災住民や行政からアンケート調査を行い実態把握するとともに、福井豪雨の特性の解析や危機管理状況についての妥当性の検討等を行った。平成17年3月に、今後の治水対策、情報提供のあり方等について提言を行った。
・また、福井県「山間集落豪雨災害対策検討委員会」では、農山村における被害の発生状況とその要因、今回荒廃した渓流や山腹斜面の崩壊地における危険性について分析・検討を行い、平成17年3月に、今後の農山村のあり方、土砂災害を防止するための具体的な事業の実施方法について、提言を行った。

【参考文献】
1)福井県「豪雨対策の調査結果と今後の対策平成16年7月福井豪雨災害」『㈱山海堂土木施工Vol.46No.6』平成17年6月。
2) 内閣府ホームページ『平成16年に発生した風水害教訓情報資料集 2平成16年7月福井豪雨』(https://www.bousai.go.jp/fsg/)。
3)福井県土木部砂防海岸課『平成16年7月福井豪雨土砂災害復興の記録』平成21年3月。

 

○財団法人全国市町村振興協会の低金利融資をもととした都道府県の市町村振興資金貸付事業により、被災者支援を行う市町村の財政負担に対する支援を実施。
○被災者住宅再建への補助金に係る市町村負担金相当額について、「市町村振興資金貸付事業」の中に特別枠を設け、無利子で貸付け。

 

○生産設備復旧支援事業
・生産設備等の更新、修繕に要する経費の一部を助成。
・補助率2/3以内 補助限度額1企業当たり300万円。
○生産促進・需要創出事業
・越前漆器:需要を創出する取組みの経費の一部を助成
・越前和紙:楮、三椏など原材料の共同購入経費の一部を助成

 

○認定農業者営農継続支援事業
・農業協同組合等が被災した認定農業者に対し農業機械等をリースする場合、その購入費の一部を助成。
・補助率県1/3、市町村1/6
○ハナエチゼン・コシヒカリ刈取り応援事業
・農業機械が失われ稲の収穫ができない被災地区の刈取り作業を支援するため、不足コンバインの調達経費等を助成。
・事業主体:被災地区の農業協同組合、補助率1/2。

 

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