災害対応資料集

・200004:2000年(平成12年) 鳥取県西部地震

【概要】

(1)被害の概要
①発生日時
平成12年10月6日(金)13時30分頃
②震源地
鳥取県西部(北緯度、東経度)
③震源の深さ:約10㎞
④規模:マグニチュード7.3
⑤各市町村の最大震度(震度6弱以上)
震度6強:鳥取県 日野町根雨、境港市東本町
震度6弱:鳥取県 西伯町法勝寺、会見町天万、溝口町溝口、岸本町吉長、淀江町西原、境港市上道町、日吉津町日吉津

図1 鳥取県西部地震の震度分布図

(出典)鳥取県防災局防災危機管理課『平成12年(2000年)鳥取県西部地震 震災誌』 平成19年2月。


⑥被害状況
鳥取県西部地震による主な被害状況(人的被害・住宅被害)は下表のとおりである。負傷者の77%、住宅被害(全壊)の90%が鳥取県に集中している。
被害の特徴として、一つには、境港市、米子市を中心に液状化や地盤流動が発生した。たとえば、境港の荷揚場では1mあまりの側方流動により地盤沈下が発生し、米子市内の住宅地でも砂、水が噴き出し、基礎下の地盤が陥没した。二つ目には、老朽住宅や高齢者率の高い中山間地域において、家屋の倒壊や屋根瓦の落下、地盤崩壊、石垣の被害などが目立った。

表1 鳥取県西部地震の主な被害状況 

人的被害(人)  住宅被害(棟) 
都道府県 
死者  負傷者  全壊  半壊  一部破損 
鳥取県 141  390  2,470  13,053 
岡山県 18  31  768 
香川県
兵庫県
島根県 11  34  567  3,465 
広島県 0 6
大阪府 0 4 0 0 1
和歌山県 0 1 0 0 0
山口県
計  182  431  3,068  17,296 

(出典)内閣府「平成1220001315 

 

(2)災害後の主な経過
・地震後の応急対策について、鳥取県は、地震発生直後の10月6日午後1時30分に「県災害対策本部」を自動設置し、実施した。
・また、復旧・復興対策については、11月2日に「鳥取県西部地震災害復興本部」を設置し、土木・農林水産その他の施設の災害復旧事業や、被災住民の生活再建・生産活動の支援に関する業務などの本格的な復旧・復興対策に取り組んだ。

表2 災害後の主な経過(鳥取県の取組状況) 

10  10 1012日
年  月日  項目
平成12年 1330 地震発生
   1330 県災害対策本部自動設置(震度5強以上)
   2235 災害救助法を適用
   10    本部会議開催

仮設住宅10戸の建設準備開始
 
  「り災証明書」の様式取りまとめ、市町村配付

「鳥取県西部地震対策特別資金」を創設(融資枠30億円)
 
  1013日 全半壊世帯への見舞金(20千円)の支給を決定(専決予算対応)
   1016日 第1回国への要望活動「鳥取県西部地震に対する国(官房長官、国土庁、厚生省)への要望活動」 
   1018日 被災住宅復興支援制度の要綱策定作業に着手 
   1030日~31日 第2回国への要望活動「鳥取県西部地震に関する緊急要望(震災復興に向けた新制度の要望)の関係省庁への要望」 
   11  鳥取県西部地震災害復興本部設置、第1回復興本部会議開催(今後の復興対策の取組について) 
   1116日 第3回国への要望活動「工業用水道事業費(災害復旧)補助金の採択基準の緩和、災害廃棄物処理に対する補助制度の特例措置についての国(大蔵省、厚生省)への要望活動」 
平成15年 12  県道菅沢日野線の復旧工事完了をもって全ての災害復旧事業が完了 
平成16年 4月1日 県西部地震災害復興本部廃止 
  

【参考文献】
1)鳥取県防災局防災危機管理課『平成12年(2000年)鳥取県西部地震 震災誌』平成19年2月。
2) 内閣府『平成12年(2000年)鳥取県西部地震について』平成13年6月。
3)鳥取県防災危機管理課『平成12年鳥取県西部地震の記録』平成13年10月。

 

・建設課では、被災状況の把握を行うが、余震により被害が拡大するため、本格的な調査は余震が落ち着いた12日頃から開始した。
・橋梁の被害調査などは、余震がある程度収まらないと調査が行えなかった。

 

○応急危険度判定の実施
・応急危険度判定の内容の周知が不十分なまま、急いで実施したため、次のような問題があり、住宅被害について建築士協会が再度1件毎に説明に廻る「巡回相談」を実施した。
・危険度判定により「危険」、「要注意」のステッカーを貼られた家屋の住民に、家屋の危険状態、使用方法、今後の復旧対策の取組み方法等について、過大な心配、誤解を与えた。
・その後のり災証明の「全壊」「半壊」「一部破損」の判定に対して、危険度判定の「危険」「要注意」「調査済」の判定結果は関係ない旨の説明をしてもなかなか理解が得られなかった。
○応急危険度判定の判定士業務マニュアル
・こうした経験から、地震後に作成された応急危険度判定のマニュアルでは、以下のような住民対応を図ることとされた。
《応急危険度判定の判定士業務マニュアルより》
○判定結果の表示
・各建物判定終了後、判定結果に基づき建築物ごとに、当該建築物の出入口等見易い場所に「危険」、「要注意」、「調査済」のいずれかの判定ステッカーを貼ることとする。
・判定ステッカーには、判定結果に基づく対処方法に関する簡単な説明を記すこと。
○住民対応
1)判定士は、判定を行う場合、判定に対する住民の理解を得るために支援支部等で準備した判定のパンフレット等を持参し、必要に応じて配布する。
2)所有者(又は居住者等)が在宅していればその場で判定結果を知らせることとし、特に、判定結果が「危険」、「要注意」の建物については、そのステッカーの意味(内容)を適切かつ丁寧に説明するものとする。また、説明の際には、判定活動の目的が「余震等による建物の倒壊部材の落下等の危険性を情報提供して二次災害を防止し、住民の安全確保を図ること」である旨的確に説明すること。
3)現地で判定以外の業務を求められたら、丁寧に断り、速やかにその場を離れる。
4)所有者(又は居住者等)ともめた場合は、判定の目的、結果等について適切かつ丁寧に説明し、判定ステッカーを無理に貼らずに、調査表にその旨の記録のみ残す。(ステッカーを剥がされた場合も同様)

 

○島根県は、被災建築物と被災宅地の安全性診断・改修相談等を同時に実施した。
・実施地区:伯太町須山地区・福富地区
・実施戸数:計47ヶ所(須山地区21、福富地区22谷、母里地区4)
・実施日程:10日、11日に建築技術職員が実施した結果、地盤等に問題があるものが判明したため、12日に13件、都市計画課の宅地関係技術職員を加え再調査を実施した。
・実施内容:応急危険度判定マニュアルによる外観調査等の他、ほぼすべての建物について内部調査も行うとともに、危険度等に応じ、住民に直接アドバイス等を実施。改修の相談先や融資制度等も紹介。
○調査結果:(応急危険度判定に当てはめた場合)
    判定結果   1、調査済(緑)  3  (3)
                2、要注意(黄)  36 (43)
                3、危 険(赤)  8  (1)
・地盤の亀裂や裏山の崩壊等の危険性を含めた判定。( )内は、10日,11日調査時点で建築物のみの判定。
○主な被害状況等:
・石垣の崩壊による上部に建っている物置、風呂場等に被害
・犬走りのコンクリートの亀裂
・屋根の棟瓦のずれ
・内外壁の部分的な剥離
・建具の建て付けが悪くなったもの
・須山地区の地盤の亀裂、石垣の崩壊は地域の広範囲にわたっており、地質の専門家による調査が必要
○住民への説明:
・被災した家屋及び宅地の所有者に危険度を説明した。また、裏山の崩壊など今後も災害の進行する恐れのある宅地の所有者へは、周辺への立入禁止及び災害を助長しない措置、法面からの湧水の状況などに注意するよう助言した。
○町(対策本部)への報告:
・調査票の内容と住民からの要望等を町長へ個別に説明し、今後の対策に役立ててもらうこととした。

 

・災害救助法は、人口5千人以上15千人未満の市町村では、全壊換算で40世帯が適用となる。
・家屋の全壊・半壊等により災害救助法の適用が決められるが、中山間地域では生活のための家屋以外に別棟や蔵等もあり、それらの被害の取扱い方法に戸惑った。
・伯太町では全半壊を判定できる技術を持った職員がいなかったため、建築士に委託して実施した。それにより、全壊3世帯7棟、半壊世帯217世帯324棟という結果になった。
・その結果、災害救助法適用申請は発災して5日後の10月11日となった。

 

○被害把握の遅れ
・大雨、台風の災害と異なり、家屋被害が甚大であり、農家による農林地の点検が後回しになった。
・農地においては亀裂被害が多く、発見に手間取ったことも一因と考えられる。
○災害対応面での課題
・農地や水路、農道等は個人、水利組合、土地改良区が所有または管理者となっており、その災害復旧に当たっては所有者、管理者が市町村、県を通して国に申請する仕組みになっている。復旧事業の実施に当たっては一部受益者負担が伴う。
・公共施設の災害復旧と異なり、農林業の災害対応は、この受益者申請主義によって被災状況の把握や災害復旧の時期が遅れる傾向にある。
・今回のように家屋被害等が甚大な時に、被害状況の把握や応急工事に迅速に対応できる応援体制を今後市町村と県出先機関との間で構築する必要性を感じた。
○個人負担と災害査定
・今回の鳥取県西部地震では災害復旧事業の申請漏れが多くあった。その原因としては、「申請主義」に加え、申請時に個人負担率(受益者負担率)が決まっていないという制度的な問題もあるように思われる。
・補助率が決定するのは翌年の2月であり、市町村の職員の方も災害発生後に復旧事業を申請するかどうか判断する時期には「一体いくらかかるのか」ということを受益者に説明できないという問題がある。
・このため、今回の災害においては、家屋の復旧費用のこともあり、農地、農業用施設については「申請漏れ」が相当あったものと思われる。
・また今回の災害においては亀裂被害が多かったこと、特にため池等では被害の程度が分かりにくかったため、災害の査定等も低かったように思う。

 

・10月7日10:50~16:20 政府調査団約30名
・10月17日 8:30~16:35 衆議院災害対策特別委員会(議員8名;随行者9名)
・このほか、農林水産大臣、農林水産総括政務次官、消防庁長官、自治省財政局長などが、それぞれ視察調査

 

・建築士の人員不足が問題だった。応急危険度判定の調査も別で実施していたので、手が回らなくなった。そのため、鳥取市の建築士の資格を持つ職員に応援を要請した。その後、建築士協会に委託を出した。
・余震により「一部損壊」、又は「半壊」と判定された家屋に被害が発生し、再調査の依頼が多くあった。
・税の減免は、被害状況により減免基準を2/10、4/10、6/10と規定していた。そのため、全壊、半壊の被害調査とは別に税の減免用の調査を実施しなければならなかった。
・建築士の仕事量が多かった。できれば職員(応援を含め)だけで対応できるような体制が理想である。
・当初、外観目視のみの調査に対して苦情が出た。その後、内部調査を実施することにしたため日程調整が必要になり、さらに時間がかかってしまった。

 

・鳥取県では「り災証明発行」に際して、市町村への技術的支援を実施した。
・具体的には、全壊・半壊等の被害判定基準を、神戸市のマニュアルを参考に作成し、市町村の要望に応じ指導した。
・発行するり災証明の様式についても参考例を示した。

 

○建築技術者の派遣(次頁参照)
・り災証明は各種の住民負担(税金、授業料など)の減免、補助金・貸付金の交付、見舞金の支給、損害保険の算定など、官民にわたる様々な手続きにおいて、被害を証明する唯一のものとして、幅広く活用される。
・県では、主に職員に建築職員のいない郡部の町村を対象に、り災証明の発行の技術支援として民間の建築技術者の派遣を行った。
○鳥取県西部地震の経験をもとに鳥取県建築課では、次のような内容に配慮した独自のり災証明の調査実施マニュアルを作成した。
・組織の役割分担を明確にした内容とした。
・建築士の派遣など、受入配分などの環境作りについて、県が対応するように変更した。
○しかし、被害の認定基準の改訂への対応については、次のような点が今後の課題となっている。
・担当部局の教育については、役所の人間は数年で移動してしまうので、どこまで教育していくか問題である。まずは建築士協会に向けた研修会を実施することが先決である。
・建築士協会に対し研修会を実施していきたいが、県の職員で説明ができる人材がいない。

 

・一般的な補助金交付規定に従い、特に要領は作成しなかった。関係市町村が集まって意見交換し取り組んでいた。
・解体に対し、国からは補助は出なかった。県1/2、市町村1/2で費用を出した(実施主体は市町村)。
・補助金支給対象は、市町村の職員が調査に廻り対応した。全壊・半壊に関係なく、被災者が解体したいという意向に従い受け付けた。
・住民→市町村に申請→職員確認→住民が産廃業者に見積依頼→産廃業者が解体工事実施→市町村から産廃業者へ費用支払い。

 

・危険建物の解体費には国庫補助事業、県費補助事業が無く、町単独事業も視野に入れながら県と協議。
・県は何らかの財政支援を検討するとのことで町は実施要領を作成
・当初、助成金の交付を検討したが、県では町が事業主体で行う事業でなければ支援ができないとのことで、所有者から工事費の負担金を徴収することとし、要綱を定めた。事業の住民周知は10月末となった。
・事業は危険建物の認定を行い、解体処理を実施したが、危険建物の認定についての基準を設定してはあるものの、現実には目視等による判断となり、解体時期や事後確認となったものを対象にできなかったりと、一部には事業としての統制がとれなかった面もあった。
・また、解体業者については、本来見積もり等を行い事業着手すべきであったが、早期処理や所有者負担の関係もあり、1社見積もりで事業を行った。

図 民間の建築技術者の派遣(鳥取県)

・10月7日 一般廃棄物最終処分場にガレキ類(コンクリート・ブロック片、瓦、ガラス・陶器類、土砂等)の直接搬入受入を決定。場内整理の職員を配置、防災行政無線での住民周知を実施。
・10月9日 島根県廃棄物対策課より仮置場を指定するよう指導があり、駐車場を借り受ける。廃棄物の搬入について内容確認および分別を管理、監視する監視員1名を委託。
・解体木屑については通常の処理廃棄物ではなく、クリーンセンターで処理ができなかった。処理経費の節減と廃材の有効利用という観点から数日間炭焼窯での木炭化を実施したが、煙の周辺への影響やダイオキシン対策の面から中止した。
・その後、国庫補助制度による災害廃棄物処理事業で処理を行うよう決定した。

 

・地震発生後の応急対策が一段落した後は、生活の基盤となる住宅再建をはじめ災害からの本格的な復興対策に取り組むため、平成12年11月2日から、従来の県災害対策本部に替えて「鳥取県西部地震災害復興本部」を鳥取県行政組織規則第3条の規定に基づき設置した。
・災害復興本部の事務局として、総務部次長を室長とする「災害復興推進室」を併せて設置し、災害復興支援対策の進行管理、市町村の復興対策の把握・調整、災害復興本部の事務局業務など、的確な復興対策の推進に努めた。
・鳥取県西部地震災害復興本部の体制は、知事を本部長に、出納長、教育長、各部局長、防災監を本部員として構成された。主な業務は、土木・農林水産その他の施設の災害復旧に関すること、被災住民の生活再建・生産活動の支援に関することなどであった。
・災害復興本部は、県西部地震でのり面が大きく崩れ、最後まで通行止めとなっていた県道菅沢日野線が平成15年12月5日に開通するなど、災害復興対策が完了したことを受け、平成16年4月1日に廃止された。

表 復興本部会議の開催実績

回数  開催日  内容 
1  平成12年  1.鳥取県西部地震の今後の復興対策の取組みについて 他 
2  平成12年13日 1.国への緊急要望に対する措置状況について 

2.被災者向けパンフレットについて 

3.鳥取県西部地震関連で活用可能な事業について 他 
3  平成12年27日 1.住宅復興補助事業について 

2.被災者への激励品等の巡回展示について 他 
4  平成12年25日 1.震災支援策の状況等について 他 
5  平成13年4月2日 1.災害復旧・復興支援等の状況 

2.鳥取県西部地震関連支援対策(3月30日現在) 他 
6  平成13年  1.鳥取県西部地震関連支援対策(10月1日現在) 

2.復興施策に係る問題点及び今後の課題 他 

【参考文献】
1)鳥取県防災局防災危機管理課『平成12年(2000年)鳥取県西部地震 震災誌』平成19年2月。

 

・今回の災害において復興計画は策定されていない。
・但し、災害復旧については、現行の各種法令の規定により恒久的災害復旧計画を作成し、速やかに応急復旧を実施することとされている(「鳥取県地域防災計画」の「第16部復旧・復興計画、第1章公共施設の災害復旧」)。

【参考文献】
1)鳥取県防災局防災危機管理課『平成12年(2000年)鳥取県西部地震 震災誌』平成19年2月。
2)鳥取県防災会議『鳥取県地域防災計画』平成22年7月。

 

○対応状況
・震災発生後、震災情報の発信を島根県ホームページで行うべく、広報課から、随時、行う記者発表をホームページに即時掲載するよう要請があり、10月6日から10日まで24時間体制職員常時2名体制で対応した。
・震災等、非常事態が発生した時は、災害情報を求めて、住民からのインターネットによるホームページへのアクセスが急増するが、今回は震災発生直後にアクセスが急増した時間帯に情報発信が行えておらず、情報を求める住民への情報提供等の広報が滞った。
・今回は、システム障害という問題もあり、これについては、別途、対策が必要であるが、インターネットを利用した情報発信体制について、防災計画に定めが無く、連絡体制も出来ていなかったため、対応が遅れた。

 

・鳥取県西部地震で米子市は、各種減免措置などの申請手続きに際して、災害復旧相談室を設置した。まず、総合相談窓口を設置し、ここで各種相談窓口を紹介し、相談室の窓口では、担当者のパソコンで、直接住基、課税、固定資産税のデータが出せるようにしてあり、相談に来た人がその場で手続きがとれるようにした。(次頁参照)

図 総合的相談・申請窓口のレイアウト(米子市)

 

・鳥取県西部地震の際に島根県安来市では、高齢者への補助制度の説明に際して、図のような面談票を準備し、被災者が利用できる各種の制度についても同時に相談できるように配慮している。

 

○取組み状況(次頁参照)
・救助法適用後に、応急修理と土砂処置のパンフレットを作成して配布した。
・作成にあたっては、神戸市の支援隊から資料提供があり、それらを参考にした。
・主にビニールシートによる応急修理が中心であった。

 

・島根県では、震災被災地の高齢者等に対する住宅対策として、被災した住宅の修繕支援制度を創設した。
○概要
・被災地の高齢者等で、被災した住宅の修繕を震災対策の住宅資金により行うことが困難な人を対象にした必要な修繕
・災害救助法では、住家が半壊し、自らの資力により応急修理ができない者を対象に、居室、炊事場及び便所等日常生活に必要最小限度の部分の応急修理を現物支給することができる(532千円限度/世帯)が、本制度はこれの拡充措置となる。
○制度の内容
・対象者:高齢者(65歳以上)等で、市町村民税が世帯非課税であり、震災対策の住宅資金が利用できない人
・現物支給の対象範囲:居室、炊事場、風呂及び便所等日常生活に必要な修繕(原則として、10~200万円相当額)

 

・中山間地は特に高齢者率も高く、生活基盤の再建に困難を生じている事例が多いことから、被災者が安心して生活できる基盤整備を支援することによって、被災市町村が活力を失うことなく力強い復興に取り組むことを可能とするため、住宅の建設・補修及び石垣・擁壁の補修等に対して補助を行うこととした。

表 被災者住宅再建に係る支援事業一覧(鳥取県)

事業名  事業内容 
鳥取県西部地震被災者向け住宅復興補助金  補助対象の内容・下限の設定・本人負担額等事業の詳細な条件については市町村の定めたところによる。 

1  

鳥取県西部地震において被害を受けた住宅に関して、自らの居住の用に供する一の建物の建設又は補修を行う者に対し、補助金を交付する。 

(1) (補助対象限度額 

・負担割合:県※居住していた市町村内に建設する場合に限る。 

(2) (補助対象限度額 

・補助率:50万円未満の場合1/2 

50:県(3) (補助対象限度額 

・補助率:50万円以下の負担割合1/2 

50150万円以下の負担割合1/3 

・補助対象範囲:液状化によるものの基礎の復旧() 

※(1)(3)文は 

2  

崩落すると周囲の住宅等に被害を及ぼすおそれのある損壊した石垣・擁壁等を補修した者に対し補助金を交付する。 

・補助対象限度額:150方円)県
鳥取県西部地震被災者向け復興住宅資金利子補給事業  住宅金融公庫等の災害復興のための住宅融資を受ける者に対し、当初6年間、上限2.1%の利子補給を行う。
鳥取県西部地震被災者向け災害復興住宅建設資金貸付事業  住宅金融公庫等の融資を受ける者に対し、上乗せ融資を行う。 

○融資限度額 

・建設400方円) 

・補修200万円) 

○利率:2.1%(当初6年間無利子
鳥取県西部地震被災者向け民間賃貸住宅家賃負担軽減事業  被災者(り災証明書の「り災世帯の構成員」 

○事業主体:市町村○補助対象経費:市町村の家賃補助額・補助限度額:3万円(補助率1/2 
鳥取県西部地震被災者向け空き家活用型家賃負担軽誠事業  市町村が民間空家を借り上げて補修し、被災者に賃貸する経費について、補助金を交付する。 

・事業主体:市町村・補助対象経費: 

(l) 

(2)(l)の空家を借り上げた額と、被災者へ貸し付けた際の入居者負担額との差額・補助限度額:(1)の経費 

(2):1ヶ月あたり3万円()(1)及び1/2 
優良木造住宅助成事業  県産財を利用した優良な木造住宅を建設(購入30万円を助成。
優良分譲住宅供給助成事業  県住宅供給公社が供給する地域優良分譲住宅の購入者に対し、住宅金融公庫借入利率の1%を当初5年間利子補給する。
県営住宅の家賃減免  家賃の全額誠免(1年間(1年間
被災家屋等解体支援事業  被害を受けた市町村が生活環境保全に特に必要として実施する被災家屋等の解体に係る経費に助成。(補助率1/2 

 

・地震による被害として、民家の裏山崩壊は甚大なものがあり、危険な個所が多く残っていたため、国土交通省所管の「がけ地近接等危険住宅移転事業」の導入の検討も行ったが、家屋建築年度が採択要件に合致しなかったため、断念した家屋もあった。
・また、裏山対策として須山、福富地区を中心に県当局と協議の上、復旧治山事業、林地崩壊防止事業、避難関連急傾斜地崩壊対策事業、災害関連地域防災がけ崩れ対策事業(本町初事業)の導入を決定し、地元説明会を繰り返し実施し、調整を図り理解を得てきた。
・さらに、地元負担金を軽減する措置として、この度の震災に限り事業費(測量設計費除く)の12.5%を上限とする旨の決定をした。

 

○住民の健康対策のほか震災対策従事者に対する研修等が行われた
・メンタルケア相談対応者研修会
・メンタルヘルスリーフレット等の作成配布
・被災市町村職員の健康相談等
・被災市町村職員等援助者のための過労防止ホットラインの設置

 

・早期復旧に向けて、年内に災害査定を行う計画を立て、準備を行ったが、その後の余震で被害が増大する事態もあり、被害状況の把握、災害査定の設計書作成等において、苦慮することが多かった。

 

○路面災害復旧工法の標準パターン
・鳥取県西部地震では多数の道路路面が被災した。このため、鳥取県、島根県、岡山県の3県において、路面災害復旧工法の調整を行い、平成12年度「鳥取県西部地震」の路面災害復旧工法の標準パターン(3県統一事項)を定め、災害復旧にあたった。
○担当者の声
・当時を振り返ると被害の甚大さ、規模の大きさ、そして膨大な件数の報告とその確認に追われる多忙な毎日だった。
・初めて経験する地震災害査定を受ける上で従来と違う点は、目に見えない地下で被害が発生していることであった。見えるのは舗装にできたクラックやひび割れなどだけで、これらがどれくらいの被害を表しているのかについて阪神・淡路大震災の例を参考に調査を実施した。
・また、災害査定資料の収集や提案方法も、岡山県、鳥取県、島根県の3県統一基準資料によったが、被害額がどの程度か予想がつかなかった。

 

○県道3箇所、市道1箇所において、被害が激甚でしかも広範囲に渡っている道路について、この災害箇所と一連の効用を発揮するため未災箇所を含めて一定計画のもとに改良復旧することで、再度災害を防止する改良事業を実施することとした。

 

○港湾施設では負担法の対象とならない緑地施設の被害が境港で5箇所、また貨物の荷裁きや一時仮置きのために使用する野積場等にも多数の被害が発生した。このため、境港では港湾緑地の復旧にあたっては、災害関連港湾環境整備施設災害復旧事業により復旧を行うこととした。また、野積場等の復旧にあたっては公営企業災害復旧事業により復旧を行うこととした。

 

○被災施設のうち、東伯町内の中国自然歩道の被災箇所については、環境省復旧事業により平成12年度から13年度にかけて復旧。
○奥日野県立自然公園については、日野町が鳥取県補助事業により平成13年度に復旧。

 

○被害状況確認に管内を巡回したが、被害が大きく件数、金額とも把握困難であった。震災等の被害に伴う損害税務対策と復興資金の相談を受け付ける体制づくりに着手し、税理士による雑損控除の集団指導手配。復旧支援のために写真と被害の記録を呼びかける案内をFAXと共に全避難所に配付。
○以降、連日深夜まで連絡と案内で避難所回り等の対処を行った。また、「災害対策本部」を開設し、復旧相談として、運転資金、生産設備復旧資金、高齢者の住宅復旧資金借り入れ方法、悪質業者の対策、保険申請の罹災証明、災害損害の税務等の相談を行った。

 

○伯太町では、アグリマイティー資金(農業生産資金)借入れへの利子補給を実施した。
○梨落下の被害を受けた農家が運転資金や設備修理(ビニールハウスや機械修理)のために借り入れの実施に伴う利子補給を町で実施した。
○また、農地被害については全域にわたり畦畔の陥没や田畑の亀裂が約300箇所発生した。農災補助事業は400千円以上の事業費となっており補助災害として取り扱いができなかった。そのため、町役場ではこれらの災害について、JAやすぎはくた支所と連携しながらアグリマイティー資金の申請により50%の補助と利子補給制度を採用した。

 

○被害規模:農林水産業関係の被害総額は141億円(最近の30年間では最大級)
○被害の特徴:
・大雨、台風の災害と異なり、家屋被害が甚大であったため、農家による農林地の点検が後回しになったこと、又、役場も県の機関も担当を越えてライフライン確保や食料供給に優先的に当たったため、農林業関係の被害状況の把握が非常に遅れた。
・農地においては亀裂被害が多く、発見に手間取ったことも一因と考えられる。
○災害対応面での課題
・農地や水路、農道等は個人、水利組合、土地改良区が所有または管理者となっており、その災害復旧に当たっては所有者、管理者が市町村、県を通して国に申請する仕組みになっている。又、復旧事業の実施に当たっては一部受益者負担が伴う。
・公共施設の災害復旧と異なり、農林業の災害対応は、この受益者申請主義によって被災状況の把握や災害復旧の時期が遅れる傾向にある。今回のように家屋被害等が甚大な時に、被害状況の把握や応急工事に迅速に対応できる応援体制を今後市町村と県出先機関との間で構築する必要性を感じた。
○個人負担と災害査定
・今回の鳥取県西部地震では災害復旧事業の申請漏れが多くあった。その原因としては、「申請主義」に加え、申請時に個人負担率(受益者負担率)が決まっていないという制度的な問題もあるように思われる。
・補助率が決定するのは翌年の2月であり、市町村の職員の方も災害発生後に復旧事業を申請するかどうか判断する時期には「一体いくらかかるのか」ということを受託者に説明できないというシステム上の問題がある。
○このため、今回の災害においては、家屋の復旧費用のこともあり、農地、農業用施設については「申請漏れ」が相当あったものと思われる。
○また今回の災害においては亀裂被害が多かったこと、特にため池等では被害の程度が分かりにくかったため、災害の査定等も低かったように思う。
○二次災害の対応
・今回の鳥取県西部地震災害では、1)発見が遅れた、2)被害も分かりにくかった、3)災害復旧の申請漏れがあった、4)自力復旧が不十分、等の一般の大雨災害と異なる現象があるために余震や降雨による崩壊、陥没、漏水等の二次災害が多く発生している。この対策も非常に重要である。

 

[農地農業用施設復旧計画]
○県西部地域の被害が集中し、災害査定期間が年末までと決められているため、準備期間がわずかしかなかったため、県は市町村へ技術職員を派遣するとともに、土地改良事業団体連合会及びコンサルタント各社も、緊急の体制を整え、業界を挙げて市町村の要請にこたえた。
[林業関係復旧計画]
○山地災害の本格的な復旧対策については、国庫補助の災害関連事業等により、早急に復旧計画を策定された。さらに、人家裏の小規模な崩壊をきめ細かく復旧するため、県単独治山事業の補助率の拡充、採択基準の緩和が図られた。
○本震災は奥地の林道の被害が多かったため、林道災害に伴う住民への被害はほとんど無かったが、民家裏の土砂撤去工事のために通行する林道や、電気通信基地の管理に利用する林道の被災箇所は、緊急に応急仮工事が行われた。

 

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