・199501:1995年(平成7年) 阪神・淡路大震災
【概要】
阪神・淡路大震災は、平成7年1月17日(火)5時46分に発生し、震源地は淡路島北部(北緯34度36分 東経135度03分)、震源の深さは約14kmで、規模はマグニチュード7.3と推定されている。
①発生日時
平成7年1月17日(火)5時46分
②震源地
淡路島北部(北緯34度36分 東経135度03分)
③震源の深さ:約14㎞
④規模:マグニチュード7.3
⑤各市町村の最大震度(震度6以上)
震度7:神戸市、芦屋市、西宮市、宝塚市、北淡町、一宮町、津名町の一部
震度6:神戸、洲本
図1 阪神・淡路大震災の震度分布図
(出典)総理府阪神・淡路復興対策本部事務局「阪神・淡路大震災復興誌」平成12年2月23日。
⑥被害状況
阪神・淡路大震災による被害は、死者・行方不明者のほか、住宅や事業所等の建築物や高速道路、鉄道、港湾、ライフライン等、多岐にわたっており、総被害額は約10兆円に上っている。
この地震の主な被害状況(人的被害・住宅被害)は下表のとおりである。とくに神戸市内の長田区など老朽木造住宅密集市街地での建物の倒壊と火災の被害が激しく、また、避難生活者も約31.7万人に上った。
表1 阪神・淡路大震災の主な被害状況(兵庫県内、災害救助法適用市)
死者[人(%)] | 住宅被害(棟) | |||
全壊 | 半壊 | 計 | ||
神戸市 | 4,564(71.29) | 61,800 | 51,125 | 112,925 |
尼崎市 | 49(0.77) | 5,688 | 36,002 | 41,690 |
西宮市 | 1,126(17.59) | 20,667 | 14,597 | 35,264 |
芦屋市 | 443(6.92) | 3,915 | 3,571 | 7,486 |
伊丹市 | 22(0.34) | 1,395 | 7,499 | 8,894 |
宝塚市 | 117(1.83) | 3,559 | 9,313 | 12,872 |
川西市 | 4(0.06) | 554 | 2,728 | 3,282 |
明石市 | 11(0.17) | 2,941 | 6,673 | 9,614 |
加古川市 | 2(0.03) | 0 | 13 | 13 |
三木市 | 1(0.02) | 25 | 94 | 119 |
高砂市 | 1(0.02) | 0 | 1 | 1 |
洲本市 | 4(0.06) | 203 | 932 | 1,135 |
淡路市(注) | 58(0.91) | 3,076 | 3,976 | 7,052 |
計 | 6,402(100.00) | 103,823 | 136,524 | 240,347 |
(出典)兵庫県「阪神・淡路大震災の死者にかかる調査について」(平成17年12月22日記者発表)。兵庫県「阪神・淡路大震災の市町被害数値」(平成18年5月19日消防庁確定)。
(注)平成17年4月1日に合併したことによる。
(2)災害後の主な経過(兵庫県の取組状況)
・地震後の応急対策について、兵庫県は、地震発生直後の1月17日午前7時に「兵庫県南部地震災害対策本部」を設置し、実施した。
・また、復旧・復興対策については、3月15日に「阪神・淡路大震災復興本部」を設置し、3月30日に都市再生戦略策定懇話会による「阪神・淡路震災復興戦略ビジョン」を受け、7月31日に兵庫県「阪神・淡路震災復興計画」(ひょうごフェニックス計画)を策定した。
表2 災害後の主な経過(兵庫県の取組状況)
年 | 月日 | 項目 |
平成7年 | 1月17日 | 兵庫県南部地震発生 |
兵庫県「兵庫県南部地震災害対策本部」設置 | ||
災害救助法適用決定(神戸市、津名町、淡路町、北淡町、一宮町、東浦町、尼崎市、西宮市、芦屋市、伊丹市、宝塚市、以上、17日付で適用) | ||
1月18日 | 兵庫県「兵庫県南部地震災害対策総合本部」改組 | |
1月30日 | 兵庫県「兵庫県南部震災復興本部」設定 | |
2月6日 | り災証明書発行、義援金(第1次配分)交付開始 | |
3月15日 | 兵庫県「阪神・淡路大震災復興本部」設置 | |
兵庫県「阪神・淡路大震災兵庫県災害対策本部」改組 | ||
3月30日 | 都市再生戦略策定懇話会「阪神・淡路震災復興戦略ビジョン」を兵庫県に提言 | |
4月3日 | (財)阪神・淡路大震災復興基金設立 | |
7月3日 | 阪神・淡路大震災復興基金事業受付開始 | |
7月17日 | 兵庫県「被災者復興支援会議」設置 | |
7月31日 | 兵庫県「阪神・淡路震災復興計画」(ひょうごフェニックス計画)を策定 | |
8月20日 | 災害救助法に基づく避難所を解消、待機所開設(21日) | |
12月25日 | (財)阪神・淡路産業復興推進機構設立 |
【参考文献】
1)総理府阪神・淡路復興対策本部事務局『阪神・淡路大震災復興誌』平成12年2月23日。
2)兵庫県『阪神・淡路大震災−兵庫県の1年の記録』平成8年6月。
3)兵庫県『阪神・淡路大震災の死者にかかる調査について』(平成17年12月22日記者発表)。
4)兵庫県『阪神・淡路大震災の市町被害数値』(平成18年5月19日消防庁確定)。
5) 兵庫県『伝える −阪神・淡路大震災の教訓−』平成21年3月22日。
・発災後、神戸市には全国から無数の解体業者が集まってきており、その全てに対策を周知徹底するのは不可能と考えられたことから、アスベスト使用建築物を確認し、所有者及び請負業者に警告を発する必要があった。
・このため、神戸市では、環境庁の支援と日本石綿工業会加盟各社の協力を得て、3月に市内全ての半壊・全壊ビル(1,224棟)の調査を実施した。その結果、40のビルについてほぼ確実にアスベストが使用されていることが確認されたが、その他、建築年代や構造から使用可能性が大きいが確定はできないものが104棟もあり、さらに追跡調査(6月・11月に実施)が必要となった。
・調査の結果、アスベスト使用の可能性があったビルについてその持ち主に対し、指導警告文書を送付した。
○経緯
・阪神・淡路大震災では、国は個人や中小企業の損壊建物等の解体について、特例的に廃棄物処理法(廃棄物の処理および清掃に関する法律)の災害廃棄物処理事業として所有者の承諾のもとに市町村の事業として行い、公費負担(国庫補助1/2)の対象とした。
・公費負担の決定を受け、1月29日から、倒壊家屋等の処理の受付が開始され、翌30日には一万件に達した。
・これらのがれきの処理を円滑に進めるため、2月3日には4省庁連絡会議(厚生・運輸・建設・讐察)・国・県・市町の関係機関、各鉄道会社、その他関係団体により構成された「災害廃棄物処理推進協議会」が発足し、搬送ルートから適正な処分までの具体的な処理計画の策定が検討された。
・2月28日には、復興委員会(国の復興対策本部の諮問委員会)から、がれき等の撤去・倒壊家屋の処理に関する提言(8項目)が発表され、収集されたコンクリート等は、破砕処理した上で港湾整備事業・埋め立て事業に資材として活用することが明記された。そして4月14日に、「兵庫県災害廃棄物処理計画」が策定された。最終処分場として、1月19日には阪神間の不燃物がフェニックス埋立地で処分されることが決定すると同時に、企業庁生穂地区埋立地への受け入れを要請した。その結果、1月24日より尼崎市、伊丹市、芦屋市からのフェニックス埋立地への搬入が開始され、同26日より一宮町、東浦町、西淡町のがれき搬入が開始している。2月24日には、兵庫県は、解体した廃棄物の仮置き場のための用地として、被災地全体で46箇所、合計面積125万㎡を確保している。
○がれき処理への取り組み
・神戸市では、被災地全体での災害廃棄物の約半数を占めることから、解体作業に取り組むまでに時間を要し、3月に入ってからようやく解体作業が進みだしたが、リサイクル処分の必要から膨大な手作業を必要とする分別作業が伴ったため、仮置場が完全にパンクし、神戸市及び阪神間では、非常手段として野焼きが行われた。
・兵庫県では公共の土地や未竣工又は未利用の海面埋立地が多くあったため、最大時で55箇所129万㎡に及ぶ仮置場を確保することができた。伊丹市や川西市等の内陸部にある市では、自区域内に大規模な仮置場を設置することができなかったため、規模の小さい仮置場を数ヶ所分散設置することにより対応した。
・仮置場は、主に公園等の公共用地や開発予定の未利用地に設置されるが、公共用地は避難場所や仮設住宅地等の人的な対策に優先的に使用されるため、仮置場として確保できる場所は限られていた。そのため、一部の自治体では民間の用地も一部借用し、仮置場として利用した。
・宝塚市では河川敷の公園を仮置場として利用したが、洪水時の対応など防災上の問題もあることから、7月で受入れを終了した。
・仮置場の用地は、基本的には各市町が独自に調整し確保に当たった。しかし、淡路島では新たな仮置場を確保する際に、県(淡路県民局)が直接調整を行い仮置場を確保した。
・兵庫県では、倒壊家屋等の解体・撤去工事における粉じん・アスベストの飛散が問題となったため、1月31日以降、解体事業を実施する市町及び県建設業協会等の建設業関係団体に対し、1)解体工事現場で散水やシートでカバーすること、2)解体工事前に吹付けアスベストを除去すること、3)アスベストの除去及び処分作業は関係法令に基づくこと等を通知した。
・さらに、4)吹き付けアスベスト使用建築物の事前確認。5)工事着手前の現地調査等の実施及び結果報告。6)工事におけるアスベスト飛散防止対策の実施。7)工事完了後の報告を通知し、アスベスト飛散防止対策を一層徹底した。
・また、粉じん等による住民の健康への影響を防止するため、市町を通じ避難所等を中心にマスクを配布した。
・解体工事におけるアスベスト対策費用は極めて高額であり、時には、総解体工事費の半分以上となることもある。このため、公費解体にアスベスト対策費用含むことを決定する前の段階では、費用負担の問題から所有者及び業者への指導は困難をきわめた。
・アスベスト対策費用の公費負担については、有害廃棄物の適正処理の観点から、国の補助が受けられることとなった。
・しかし、公費負担の決定後は、一部の悪徳業者による手抜き工事が横行し、その指導もまた困難であった。
・政府は、1月17日に災害対策基本法に基づく「非常災害対策本部」を設置し、2月15日に、長期的な復興対策への国の支援策を審議する機関として「阪神・淡路復興委員会」を設置し、2月24日には、同委員会からの提言等を実行する組織として内閣総理大臣を本部長とする「阪神・淡路復興対策本部」を設置した。(次頁参照)
・兵庫県は、地震発生直後の1月17日午前7時に「兵庫県南部地震災害対策本部」を設置し、翌日「兵庫県南部地震災害対策総合本部」に改組した。「災害対策総合本部」の中に「緊急対策本部」(本部長:副知事)と「災害復旧対策本部」(本部長:副知事)を設置し、その下に、情報対策部や庁内対策部等の13部を設置した。その後、1月30日にも再び改組し、「総合本部」の中に「緊急対策本部」(本部長:副知事)と「兵庫県南部震災復興本部」(本部長:知事)を設置し、その下に22部を設置した。とくに、「兵庫県南部震災復興本部」には、総合調整部等の8部が設置された。(次々頁参照)
・兵庫県はその後、3月15日には、既存の組織の枠組みを超えた総合的な推進体制として、知事を本部長とする「阪神・淡路大震災復興本部」を設置し、創造的復興への取組をスタートさせた。「阪神・淡路大震災復興本部」には総括部等の12部が設置された。これに伴い、「緊急対策本部」と「兵庫県南部震災復興本部」を廃止し、「災害対策総合本部」を「災害対策本部」に改組した。(次々頁参照)
・「阪神・淡路大震災復興本部」は平成17年3月31日に廃止されるが、本部廃止後の庁内連携組織として、平成17年4月1日に知事を会長とする「阪神・淡路大震災復興推進会議」を設置し、震災復興に係る庁内の横断調整を図っている。
【参考文献】
1)総理府阪神・淡路復興対策本部事務局『阪神・淡路大震災復興誌』平成12年2月23日。
2)兵庫県『阪神・淡路大震災−兵庫県の1年の記録』平成8年6月。
3)兵庫県『伝える −阪神・淡路大震災の教訓−』平成21年3月22日。
図 組織体制(国)
図 組織体制(兵庫県、1月30日改正の組織)
図 阪神・淡路大震災復興本部組織(兵庫県、3月15日設置の組織)
○「神戸市復興計画」は、以下の経緯のとおり、第1段階で「神戸市復興計画ガイドライン」を策定し、第2段階でそれを具体化する形で策定された。
○平成7年1月17日 阪神・淡路大震災発生
1月26日 「神戸市震災復興本部」設置
2月7日 第1回「神戸市復興計画検討委員会」開催
・「神戸市復興計画検討委員会」は学識経験者27名と総括局長の28名で構成された。
・委員会の中に、「市民生活検討分科会」、「都市基盤検討分科会」、「安全都市基準検討分科会」を設置し、延べ14回の委員会、分科会を開催し、復興計画策定のためのガイドラインを検討・作成。
2月16日 「神戸市震災復興本部条例」、「神戸市震災復興緊急整備条例」等を公布・施行
3月23日 神戸の復興に向けての提言募集(~4月21日)
3月27日 第3回(最終)「神戸市復興計画検討委員会」開催
○「神戸市復興計画検討委員会」での検討を経て、3月27日に「神戸市復興計画ガイドライン」を発表
3月28日 復興計画についての職員特別提言募集(~4月21日)
3月29日 市政アドバイザー意識調査(阪神・淡路大震災と復興について)(~4月7日)
4月22日 第1回「神戸市復興計画審議会」開催
・「神戸市復興計画審議会」は学識経験者40名と市民代表25名のほか、市会議員、経済界代表、労働界代表、関係行政機関代表、市職員の合計100名で構成された。
・「市民生活小委員会」、「都市活力小委員会」、「安全都市小委員会」を設置し、延べ12回の審議会、小委員会を開催し、復興計画について審議。
6月26日 第3回(最終)「神戸市復興計画審議会」開催
6月29日 「神戸市復興計画審議会」会長から市長に答申
○「神戸市復興計画審議会」での審議を経て、6月30日に「神戸市復興計画」を発表
○「神戸市復興計画」における復興の基本的考え方は以下のとおりである。
・復興の基本的視点
(1)都市の機能性とゆとりとの調和
大規模な自然災害の前で、現代の機能的な都市の脆弱な一面が露呈しました。都市の機能性だけを追求するのではなく、安全の視点からゆとりのある都市づくりをめざします。
(2)自然の思恵・厳しさとの共生
神戸は海と山という自然に恵まれた都市ですが、その反面今回の震災をはじめ過去幾多の自然災害を経験してきました。自然の恵みだけでなく厳しさという一面をしっかりと認識して都市づくりを進めていきます。同時に都市の容量に配慮し、環境への負荷をできるだけ少なくして持続的な発展が可能な都市を創造します。
(3)人と人とのふれあいと交流
地震による甚大な被害にもかかわらず、市民は冷静さを失わず、お互いに励まし合いながら困難を乗り越えてきました。また、園内外からのボランティアなど支援の輪が私たちの大きな支えとなりました。このような神戸の市民性と人々の「ぬくもりとやさしさJをふまえ、これからもまちの主役は人という視点から市民主体の魅力あるまちを創っていきます。
・復興への基本的課題
①本格的復興に向けての市民生活と都市基盤の早期復旧
②震災の教訓を生かした災害に強い都市づくり
③すべての人が安心して暮らせる福祉社会の構築
④多様性、開放性に富んだ神戸文化の復興
⑤環境にやさしい持続的発展が可能な都市の創造
⑥21世紀を先導する国際都市としての再生・復興
⑦アジアのマザーポートとしての神戸港の早期復興
⑧情報ネットワーク社会の実現
⑨協働によるまちづくりの推進
⑩ボランティア活動の支援と広域連携の推進
⑪災害文化の継承と世界への貢献
・復興まちづくりの目標
復興にあたっては、単に震災前の姿に戻すにとどまることなく、震災の経験や教訓を生かし、より安全で快適な、にぎわいと魅力あふれるまちをめざし、「アーバンリゾー卜都市づくり」に資する復興を進めていきます。
<復興まちづくりの目標>
①安心して住み、働き、学び、憩い、集えるまち
②創造性に富んだ活力あるまち
③個性豊かな魅力あふれるまち
④ともに築く協働のまちづくり
【参考文献】
1) 神戸市『阪神・淡路大震災 神戸復興誌』平成12年1月17日。
2) 神戸市『神戸市復興計画〔概要版〕』1995年6月。
○兵庫県の初期対応
・1月18日午前6時20分、知事の緊急記者会見実施。以後22日までの間は、災害対策総合本部の会議終了の都度、定例的に被害状況、避難者の状況、緊急物資対策、住宅対策、ライフラインの状況等について、一日に2回ないし3回の発表。
・20日より地域防災計画による放送協定に基づきNHK、サンテレビ、AM−KOBE、Kiss−FMから定期的に生活情報を発信。
・ただし、避難所にテレビやラジオが配付されだすまでには震災後一週間程度を要した。また、避難の際にラジオを持出した人は8%程度だった。
○臨時災害FM局−復興通信FM796フェニックス
・2月15日臨時災害FM局−復興通信FM796フェニックス開局。これは、国の現地災害対策本部からの提案を受け、NHKなどによる放送設備等技術的な支援、番組の企画制作、放送運営にボランティアの参加を得て実現した。
・放送内容は、国、県、市町の災害対策本部発表等の情報をはじめ、緊急パトロール隊とも連携した取材情報、避難所からのレポート、弁護士、司法書士、医師等の専門家の協力による各種相談など。
・土・日曜日を含む毎日、正午から午後8時までの8時間にわたって放送。(3月末まで放送)
・放送協定については兵庫県が各放送局と締結していることから、神戸市として災害関連情報を提供する場合には、新たに放送枠を確保するため、各放送局と話し合う必要があった。
・広報番組については、レギュラー番組の再開とともに、わずかな時間でも毎日災害関連情報を提供できる番組として「神戸市災害対策本部からのお知らせ」を立上げた。
○広報誌の発行状況
・紙面による生活情報の提供として、震災ニュ−ス、ニューひょうご臨時号を発行した。
・震災ニュ−スは、避難所生活者に必要な情報等を盛り込んだA4サイズ(1〜4頁)のミニ情報誌として2月1日からスタートし、2月17日までの間に号外を含めて8回発行(各回10万部)。
・2月5日には月刊広報誌「ニューひょうご」の臨時号を発行した。すべての避難所生活世帯に行き渡るよう、従来より8万部増やして12万部とした。
・国の各省庁、都道府県に対しても、震災の実情報告と支援の要請のため、A1判カラーの写真ニュース(災害特報)を作成(28日150部)、東京事務所を通じて各省庁に配布。
○課題
・情報を必要とする人にタイムリーに届けられるかどうかが課題であった。
・避難所緊急パトロール隊や救護対策現地本部との連携により対応した。
○初期対応
・当初、市内の印刷会社を必死に探したが、仮に見つかったとしても配送方法などがネックとなった。
・市内で1軒印刷会社があったが、被災のため大量の印刷は難しく、第2号以降は、大阪の工場で印刷することとなった。
・「こうべ地震災害対策広報」第1号2,300部は、1月25日に発行。その後、2日に1回の頻度で発行した。
・配送は、区の物資輸送ルートの他、業者によるバイク隊を結成し、避難所を中心に、電柱や壁等1,000箇所に板張の広報紙を掲げた。屋外に張出すことから、広報誌には水に強い材質が選ばれた。
○発行に際しての工夫
・広報紙は速報性を重視し、避難所等に掲示されることも考慮してA3サイズ1ページものにした。
・配色については、張出した際に新号であることがすぐわかるよう、毎回色を変えた。さらに、毎号には次回の発行予定日を掲載した。
・その後、新聞配達の目処がついた2月17日からは、月2回、記録性と詳細さを重視した新聞折込み「広報こうべ」を別途発行。
・4月号からは、市外に避難している人に対して「広報こうべ」「区民広報紙」「こうべ地震対策広報」を届けるサービスを開始した。
・1月20日聴覚障害者への情報伝達について、県聴覚障害者協会と協議を行い、文字放送による情報提供及び手話通訳者の確保を決定。
・文字放送は、報道機関の協力の下、2月1日から3日にかけて避難所30カ所に専用テレビを設置。各都道府県から83名の手話通訳者の派遣を受け、各避難所や病院等において聴覚障害者を支援。
○情報センタ−の設置
・兵庫県では、県民等の問い合わせなどに対応する主な窓口として震災直後から総合本部室(庁議室)、同事務局(消防交通安全課)、情報対策部(広報課)などがあたったが、各部の情報・相談事業との連携と効果的な情報提供のため窓口を一元化し、1月24日に「情報センター」を設置した。
・情報センタ−では、日々最新の情報・資料の収集、データ更新を図りながら、8回線の電話を設置し、他府県職員の応援も得て土・日曜日を含め24時間体制で対応した。
・情報センターでは、専門的に回答を要するものについては、各部局に設置している住宅、福祉、教育等各種の相談所等につなぐ役割を果たしてきた。即答できない問い合わせには関係機関へ確認・調査のうえで回答するなどの対応を実施した。
・兵庫県は「被災者福祉なんでも相談」(電話相談)窓口を開設し、「介護」、「福祉施設の利用」、「車いす等介護・福祉機器の利用」など福祉にかかわるあらゆる相談に応じた。
・1月24日に相談窓口を設置し、毎日9時〜19時まで(震災後1カ月間は、24時間体制で対応)相談に応じた。
・情報収集にハンディのある障害者の専用電話及びファックスを1月27日に新たに設置し相談体制の充実を図ってきた。なお、この相談業務は、3月15日から新たに設置された震災復興総合相談センターに引き継ぐこととした。
・相談窓口を設置してから3月14日までの49日間における相談受け付け件数は総計3,862件で、その内訳は、「行政等による各種の援助金」が511件と最も多く、次いで「義援金・援助物資」467件、「住宅の確保」341件の順であった。
・高齢者にかかわる相談は、福祉施設への入所(134件)、住宅の確保(50件)をはじめとする457件であった。
・障害者にかかわる相談は310件で、その主なものは住宅の確保52件、各種施策の利用39件となっており、生活保護に関する相談は70件であった。
○初期の外国人への対応
・外国人県民への対応については、1月19日に、県警が生田庁舎内に外国人相談コーナーを設け、英語、中国語、ハングル、スペイン語による外国人県民の安否確認を中心とした24時間体制の相談を開始。
・20日からは、災害時における放送要請に関する協定に基づき、KissFMにおいて英語による外国人県民向けの震災情報を提供。
・24日に(財)兵庫県国際交流協会が通訳ボランティアの協力を得て、英語・日本語による「緊急外国人県民特別相談窓口」を開設。外国人県民が母国の家族等との連絡ができるようKDD神戸支店の協力により、この窓口に海外向け無料電話を設置。
・27日には、中国語、ポルトガル語、スペイン語による相談体制を整え、また、2月6日からは、特に専門的な対応が要求される法律と労働の分野での専門相談を開始。その他、海外報道機関からの要請に対し取材協力や情報提供を実施。
・外国人県民に震災関連情報を提供するため、5カ国語によるニュースレターを発行した。
○震災復興総合相談センター
・兵庫県は、「阪神・淡路大震災復興本部」の設置に伴い、生活再建や復興に向けて効果的な情報提供を行い、あらゆる分野に専門的に対応する総合的な相談窓口として「震災復興総合相談センター」を3月15日に設置し、従来の相談窓口数を16から24に増やして各種相談に応じた。
○基本財産(出資金)200億円
○運用財産(長期借入金)8,800億円
○合計9,000億円
(1)出資金・貸付金の財源は地方債の発行が認められ、その一定部分(5,000億円)については利子の95%が普通交付税により措置
(2)「阪神・淡路大震災復興宝くじ」の発行が認められ、その収益金(約90億円)を県・市が基金に交付
(3)義援金は兵庫県南部地震災害義援金募集委員会からの配分があれば基金に受け入れ
(次頁参照)
表 復興基金の概要
項目 | 内容 |
目的 | ・阪神・淡路大震災からの早期復興のための各般の取組を補完した被災者の救援および自立支援並びに被災地域の総合的な復興対策を長期・安定的、機動的に進めることにより、災害により疲弊した被災地域を魅力ある地域に再生する |
基金の規模 | ・9,000億円(当初6,000億円) |
基金の財源 | ・出捐金200億円(兵庫県2/3、神戸市1/3) ・長期貸付金8,800億円(設立当初5,800億円であったが増額された) ・宝くじ収益金交付金139億円 ・国庫補助金14億円 |
設立年月日 | ・平成7年4月1日 |
事業の予定期間 | ・10年 |
事業内容 | ・被災者の生活の安定・自立および健康・福祉の増進支援 ・被災者の住宅の再建など住宅の復興支援 ・被害を受けた中小企業者の事業再開など産業の復興支援 ・被害を受けた私立学校の再建など教育・文化の復興支援 ・被災地域の早期かつ総合的な復興 |
○1月下旬 住宅応急修理の実施については、震災直後から検討したが、下記の理由により実施をしばらく見合わせる。
(1)余震が続いており、応急的な修理では安心して家に戻ってくださいと言えない
(2)り災証明の発行が始まったばかりで、半壊・半焼の認定ができない
(3)膨大な数にのぼると思われる対象戸数に対して、修理にあたる業者の手配が不可能に近い
○2月12日 兵庫県から実施内容について事務連絡
(要件)
1)修理対象箇所 台所、トイレ、居室、屋根
2)経済的理由で自らでは修理できないもの
3)借家は対象外
○2月21日 兵庫県から要件の変更通知「震災で失業した者も対象とする」
○2月下句 余震が減少し、ライフラインも復旧してきたので、実施準備本格開始
(検討課題)工事範囲、修理方法、経済的条件の確認方法、PR方法、受付場所、作業スペースの確保、部内の実施体制、局内の応援体制等
「阪神間の各都市も実施準備中」との情報が入る。
○3月3日 神戸市建築協力会に協力依頼、実施体制に不安が残るも即時快諾
○3月3日 兵庫県から要件の変更通知「借家も対象とする」
○3月13日 実施内容について記者発表
○3月14日 「住宅応急修理事務所」を貿易センタービルに開設
市広報紙「こうべ地震災害対策広報第17号」にて広報
「申込書」を各区役所、支所等へ配付
○3月17日 申込み受付開始(郵送)
○3月26日 申込み受付終了(特別の事情のあるものを除く)
○3月27日 業者による現地調査及び修理開始
○6月下旬 実施予算要求(7月市会、補正予算)
○7月31日 応急修理終了
(1)当事業の資格要件、修理の内容等は知事が定め、実施は知事が市長に委任し、実施することになっている。資格要件、修理の内容等には、市としても日頃から検討を加え、緊急時に備えること。(実施時に、資格要件、修理の内容等について、検討する時間的余裕はない。)
(2)受付期間は余裕を持って決定すること。受付期間に関する苦情が多かった。
(3)広報には、配慮すること。通常の広報では、被災者に伝わりにくい。受付期間、資格要件、修理の内容等できるだけ分かりやすく、簡潔に。
(4)施工は神戸市建築協力会災害対策本部会員に依頼したが、直接、申請者と面談していただいたため、次の点について、大変なご苦労をかけた。
1)申請者との連絡が取れず、着工までに平常時の数倍の日数を要した。
2)1件あたり最大工事価格が税込みで、29万5千円の枠に対する理解を得ること。
3)修理箇所の限定に対する理解を得ること。特に浴室については強い不満があった。
4)電話連絡が取れず、何度も足を運んだ。
5)完了まで約5ケ月を要し、制度の趣旨に沿っているのかという苦情を受けた。
6)申請者は高齢者が多く、家具や荷物の移動も手伝ったり、工事内容の説明に手間取った。
○専門家の支援を得て、他府県の建築業者等が参加した建物修繕のシステムが実践された例がある。
(以下、引用)
被災建物の調査・判定・助言に基づき、住民が地元に戻れるよう、地方大工の応援と地元受け入れ工務店の協力を得、協議会、専門家の役割のシステムをつくりそれを実践した。建築施工者不足の中で、安全な建物に復帰させるための、信頼のおける建物修繕のシステムの提案であった。その背景として、単に自力復旧の中、建築施工者不足だけではなく、法外な価格と後のメンテナンスの期待できない他府県からの儲け主義的業者の乱入もあったことが挙げられる。その実践は、他府県の建設業者に依頼(野田北部の場合は福島県三春町)して施工チームを編成し、地元受け入れとして、神戸市内業者にその手配等の協力と後のメンテナンスを約束させるものであった。その効果は他の地区にも影響を与え、数地区においても、このシステムで実践された。
○相談所の開設
・震災直後は、震災に便乗した値上げ等に関する相談が多く、その後住宅の復旧が進むと工事費が高すぎるなどの相談がみられた。
・このような震災を利用した便乗値上げ、悪質商法等に関しては、兵庫県、兵庫県警、各市が物価ダイヤル、悪質商法110番などの相談所を開設した。
○情報紙よる啓発
・兵庫県は、物価ダイヤルに寄せられた相談をもとに、情報紙「物価と私たちのくらし」を作成し配布した。屋根修理の工事費の目安や賃貸住宅の家賃の便乗値上げ、外壁補修の適正価格、修理業者の日当等を記載し、便乗値上げや悪質業者への注意を呼び掛けた。
・また、神戸市も、悪質な修理業者への注意や相談先などを記載した情報紙「くらしのかわらばん」を作成し、避難所、区役所、駅等で掲示、配布した。
○賃貸住宅の需要動向と家賃調査
・兵庫県が実施した、被災地及び近郊不動産取り扱い業者約300杜から賃貸住宅等についての調査によれば「震災から半年ぐらいの間は、賃貸物件があると答えた業者は平均2〜3割しかありませんでしたが、11月、12月になると、5割の業者が物件があると答えています。また、空き物件は高額なものやワンルームタイプに限られており、現在もこの状況は変わりません。地域によっては新築物件が建ち始め、賃貸物件数が回復している地区もありますが、全体に慢性的な物件不足が続いている状況にかわりなく、県では今後とも住宅の受給動向や家賃の動きを調査、監視していきます。」(「物価と私たちのくらし」1996.1兵庫県生活創造課発行より)とされている。
○兵庫県(生活文化部生活創造課、県立神戸生活科学センター)
・平成7年1月17日〜2月31日までの間の相談受付は、673件となっており、商品別でみると、瓦・家屋補修関係が381件(内容は工事価格の相場がわからない、目安の価格を知りたい、というものが主なものである)で、その他、日用品が47件、不動産(家賃)47件、食料品が27件などとなっている。
○兵庫県警「悪徳商法110番」
・平成7年1月から7月20日までに受理した「悪徳商法110番」の相談件数は、90件で、平成6年の同時期の44件からほぼ倍増した。
・うち、34件が震災関連であり、県警生活経済課が、これらの相談をもとに計28事件を摘発し、延べ19人を逮捕、44人を書類送検している。
1)神戸市)
○神戸市は、倒壊家屋数の推計、約21万人を超える避難者の数、5万世帯を超えると予想された第1次被災者用住宅の募集の受付状況から避難世帯数を約7万世帯と想定し、この内の半数の3.5万世帯が応急仮設住宅を必要とするとの見通しをたて、市内における建設用地の確保状況等から、市内2万5千戸、市外1万戸の応急仮設住宅建設を兵庫県に要望した。
2)兵庫県
○兵庫県は「応急仮設住宅は原則として入居を希望する方々全員に提供する」方針を決定し、当面必要となる建設戸数を3万戸とした。この根拠は、避難所に避難している約30万人を、1世帯当たり3人として10万世帯を母数とし、1月23日の避難所緊急パトロール隊によるアンケート調査から得られた全壊・半壊7割(a)、自力住宅確保可能1割(b)をそれぞれ乗じて差し引きし(6万人)、このうち半数は一時提供住宅で対応することとしたため、応急仮設住宅の必要戸数は3万戸とされた。内、神戸市分には約2万4千戸が割り当てられた。
○しかし、遠隔地等における公営住宅への入居希望は少なく入居者が12,000人程度にとどまったことや、再度避難所での聞き取り調査を行った結果、最終的に応急仮設住宅の建設戸数を48,300戸(内、神戸市分には約32,346戸)とした。
[参考1]オープンスペース面積と応急仮設住宅建設可能戸数
○「平成9年度東海地震等からの事前復興計画策定調査報告書」(平成10年3月)では、応急仮設住宅の供給可能戸数について以下の算出方法を示している。
建設できる戸数=オープンスペース面積÷(60〜100)
○これは、厚生省事務次官通知では応急仮設住宅の1戸当たり基準面積(建築面積)は29.7㎡であることから、必要な用地面積はその概ね2倍(59.4㎡)と考えられること。また住宅・都市整備公団(現:都市基盤整備公団)が作成した応急仮設住宅の配置計画の手引きでは、応急仮設住宅1戸当たり面積を100㎡としていることによる。
[参考2]被害想定からの必要な応急的な住宅の推計方法例
○1995年12月に実施された阪神・淡路大震災における住宅被災激甚地域(神戸市、芦屋市、西宮市)の従前の居住者を対象としたアンケート調査結果では、住宅全壊世帯のうちの約90%および半壊世帯の15%が従前の住宅以外の住宅(再建した住宅も含む)に居住している*。
○この値をそのまま適用すると、震災後何らかの住宅確保対応が必要となる世帯数は以下の式で推計される。
(住宅確保対応必要世帯数)=(被害想定での住宅全壊世帯数)×0.9+(被害想定での住宅半壊世帯数)×0.15
○また、同調査によると、従前の住宅以外に居住している居住者における住宅タイプ別の比率は以下の通りである。
表 応急的な住宅の推計方法例
アンケート結果 | 推計 |
1) 応急仮設住宅(23%) 2) 民聞の賃貸住宅(33%) 3) 親族・知人宅同居(12%) 4) 自力で建設・購入(12%) 5) その他(20%) | 1) 応急住宅入居(28%) 2) 民間の賃貸住宅(33%) 3) 親族・知人宅同居(12%) 4) 自力で建設・購入(12%) 5) その他(15%) |
○この分類には公営住宅への一時入居が含まれていないが、兵庫県の資料によると、提供した応急仮設住宅約48,300戸に対し、公営住宅の空き家を利用して供給した一時提供住宅の入居設定数は地震発生1年後の1996年1月31日時点で11,689戸であり、応急仮設住宅供給量の24%であった。従ってその他のうち約5%(0.23×0.24)は、公営住宅への一時入居と考え、応急仮設住宅と公営住宅への一時入居を合わせた応急住宅への入居を、28%と設定できる。
○この阪神・淡路大震災における被災者の住宅確保対応に関するアンケート調査結果の値をそのまま適用すると、各対応別の世帯数は以下の式で推計される。
(各対応別の世帯数)=(住宅確保対応必要世帯数)×(事例調査結果に基づく各対応別の比率)
*室崎益輝「阪神・淡路大農災における住宅再取得過程とその支援方策に関する研究」、第31回日本都市計画学会学術研究論文集1996
1)公的住宅等の一時提供
○阪神・淡路大震災では、県営住宅や公社・公団・雇用促進住宅の空家や県外の公営住宅が一時提供住宅として供給された。また、兵庫県では、震災後まもなく兵庫県商工会議所連合会等を通じて、被災者受入可能な企業社宅や保養所などの情報収集を行い、県内外28企業から433戸の提供の申し出があり、被災地から近い社宅から入居が進んだ。このほか、民間賃貸住宅の提供の申し出もあったが、内容調査等の余裕がない等の理由から、行政から被災者にはあっ旋しなかった。
2)民間賃貸住宅の借上
○独自の借上げ方式による一時提供住宅として、兵庫県では国の支援を得て、民間賃貸住宅を災害救助法の仮設住宅として借り上げ、健康面で不安の大きい高齢者や障害者等を中心に供給した。
○借り上げ費用については、2箇年分の家賃(1月分)が、応急仮設住宅建設費の月額換算額と同額になるよう家賃を設定し、契約期間に応じた家賃を支払う方式であった。また、敷金・礼金等の一時金として家賃の2ヶ月分が支払われた。このような条件を提示した上で、貸主を募り、借上げの対象となる民間賃貸住宅を確保した。
3)公的宿泊施設での受け入れ、ホームステイ
○兵庫県は、県内で受け入れ可能な公的宿泊施設の調査を初め、近隣府県にもリストアップを依頼したが、応募者はほとんどなかった。
○ホームステイに関しては、全国からの申し出は11,750件に上ったが、6月までの斡旋の結果、成立したのは85家族、160人に止まった。鎌倉市では市民からのホームステイ申し出があり、周辺自治体にも呼びかけ提供したが、当初はあまり利用されなかった。しかし、親類、縁者がいる被災者を中心とすることで、2月半ばより利用者は徐々に増え、最終的には受入側の申し出件数643件、利用者82人であった。
4)一時提供住宅の募集方法
○阪神・淡路大震災での一時提供住宅の募集は、各被災市町が実施する応急仮設住宅の募集と併せて実施された。兵庫県では、1月26日に全国の公営住宅等の一時入居をあっ旋するために、大阪市内に建設省(当時)支援の「被災者用公営住宅等あっ旋支援センター」を設置し、全国の公営住宅等の空家状況をとりまとめ、作成した全国公営住宅等のリストを避難所等に配布して入居希望を募った。兵庫県内の公営住宅の空家については、県が窓口となり、公的住宅の空家リストを作成し、神戸市以外の被災市町に対して一律に割り振った。
5)一時提供住宅の入居状況
○兵庫県内を含む近畿圏への応募が多く、遠隔地に入居した被災者は少なかった。地域の知人や友人と離れる不安や一から友達をつくることになる子どもを抱える世帯は居住地を離れることを嫌った。救護策の情報から遠ざけられる危惧もあったとされる。入居期間が原則6ヶ月と仮設住宅の2年に比べて短かったことから、6ヶ月以内に希望する家賃と広さの賃貸住宅が見つかる保証はなく、少しでも使用期間の長い応急仮設住宅を選択したとの指摘もある。
6)一時入居から正式入居への転換
○建設省(当時)は、公営住宅等への一時入居を許可する通知と併せて、一時入居者が公営住宅法等の入居者資格要件に該当する場合には、必要に応じて、災害による特定入居として正式入居とすることが通知された。その後、建設省(当時)からに事務連絡により、一時入居者の居住意向調査が行われ、特定入居が促進された。
・神戸市の場合、当初は原則として応急仮設住宅の建設用地の選定基準を下記のとおりとしたが、直下の地震であったため、被災地(都市部)に応急仮設住宅を建設できる用地は少ない状況であった。
1. 市街化区域 2. 公有地 3. 有効面積は概ね1,000 ㎡以上 4. 上下水道完備
5. 道路状況良好 6. 大規模造成不要 7. 無償 8. 借用期間限定なし
・阪神・淡路大震災では、応急仮設住宅建設用地としての民有地の申し出が149件(電話応対は300件以上)、面積146haに達した。しかし、特に個人所有地については、広さや借地期間等の問題があり、ほとんど利用できなかったため、会社等が所有する比較的規模の大きい用地が借用されることになった。
・民有地の借用方法に関して、兵庫県は、原則無償で交渉したが、期間延長に当たっては有償の問題が発生した。
○応急仮設住宅の規模
・阪神・淡路大震災における応急仮設住宅の1戸当たりの敷地面積は80㎡/戸程度であった。効率の良い用地で60-70㎡/戸程度、効率の悪い用地で100㎡/戸以上が必要であった。
○応急仮設住宅の施工
・阪神・淡路大震災での応急仮設住宅の建設工期は平均32.43日、1日当たり建設戸数は245.9戸/日であった。応急仮設住宅の建設に従事した作業員数は、1戸当たり7.4人日/戸であった。
・阪神・淡路大震災では、応急仮設住宅の生産を行った工場の7割以上で資材不足があったということである。そのために、ユニットバスの設置が間に合わない状況もあった。
○応急仮設住宅の住戸タイプ
・阪神・淡路大震災で供給された応急仮設住宅の住戸タイプは、2Kタイプ(全地域)が38,992戸、1Kタイプ(神戸市のみ)が6,919戸、高齢者・障害者向け地域型(神戸市、芦屋市、尼崎市、西宮市、宝塚市)が1,885戸、地域型(神戸市のみ)が504戸であった。
・2K:従来からのタイプで、8坪の標準型がほとんどである。ユニットバスで、便所は水洗。6畳と4.5畳の和室と台所。
・1K:単身者用で、台所と6畳の和室。
・高齢者:障害者向け地域型・・・浴室、台所、便所は共用、廊下をはさんで居室が並ぶ形式。バリアフリー、緊急ブザーの設置、障害者仕様の便所等。
・地域型:2階建で6畳又は4.5畳の1部屋、便所、浴室、台所は共用。
○輸入仮設住宅の発注・建設
・阪神・淡路大震災では、第4次と第6次発注では輸入仮設住宅が発注された。第4次発注分では建設省(当時)から各国大使館に協力要請を行い、対応のあった2社、第6次発注分では兵庫県の公募により決定された9社によりそれぞれ建設された。
・輸入仮設住宅については、輸送コストが航空機の場合国内輸送の5-8倍、船便の場合国内輸送の1.5倍程度要した。また、輸入仮設住宅の建設にあたっては、輸入元の会社から技術者が派遣されたものの、外国人が日本で工事業務に携わる場合はビザの問題があることから、施工はほとんどの場合日本の業者が行った。輸入元の会社からの施工関係者はボランティアで従事するという形式で対処した。
○阪神・淡路大震災では、応急仮設住宅に入居する高齢者等に対する心身のケアを行うとともにコミュニティの形成やボランティア活動の拠点となる場として、ふれあいセンターを設置した。ふれあいセンターは、50戸以上の仮設住宅地に設置され、新規に建設あるいは近隣の既存施設や仮設住宅の空室が活用された。
・応急仮設住宅の管理については、当初、正式の委託契約を締結せずケースバイケースで対応したため、管理経費の捻出、管理人員の確保に加え、入居者からの苦情への対応といった管理方法において様々な問題が発生した。
・最終的には、県と被災市町の協議により被災市町が管理委託業務を受託し、入退去管理、苦情受付・処理、敷地内通路整備、雨水配水対策、防火安全対策、施設の維持管理等の多岐にわたる対応を実施した。
○居住環境の改善:街灯の取り付け、通路のぬかるみ防止のための砂利敷きや簡易舖装、排水溝の設置、ジュースや煙草の自動販売機の設置、大規模団地への商店の誘致。
○住宅改修、設備の改善・充実:玄関に庇を取り付け、高齢者・障害者のいる世帯を対象に、玄関・風呂に手すり、踏み台を取り付け、一部には玄関にスロープを設置。
・高齢者・障害者向け地域型仮設住宅では国の負担でクーラーが設置されることになり、国の負担対象以外については、神戸市の負担で、エアコンを設置。
○安全対策:消火器設置、風害防止の措置など。
○入居者の要望・苦情の受け付けとその処理:ふれあい推進員の任命、ふれあいセンターを設置して、入居者らによる運営協議会に自主運営をさせ、運営経費を補助するなどの措置が取られた。
○応急仮設住宅の募集方法:阪神・淡路大震災における応急仮設住宅の入居募集は、被災市町が当該地域の住民を対象に行った。神戸市では、第一次募集では全被災者を対象とし、登録制をとった。第二次募集では、国・県の指導により、弱者優先とし、第一次の登録者以外に追加者を募集した。第三次募集からはこの登録制を廃止し、その都度の応募制に切り替えた。
○応急仮設住宅の入居募集の課題:神戸市では、募集事務を厚生部門(民生部)20人とボランティア10人程度で実施したが、それでもマンパワーが不足し、第一次募集の段階では住宅局が応援した。また、り災証明書の発行に時間がかかる等の理由もあり入居資格確認にかなりの時間を要した。
○阪神・淡路大震災における応急仮設住宅への入居対象者については、国の指導もあり、兵庫県が社会的弱者を優先する旨の取扱方針を定め、各市町に通知した。取扱方針で定める入居対象者の優先順位は、第1順位として老人世帯、心身障害者世帯、母子世帯、第2順位として高齢者(65歳以上)を含む世帯、多子(18歳未満の子ども3人以上)世帯等である。
○弱者優先の選定基準としたため、他の被災者からは不公平感による苦情が多く聞かれた。
○兵庫県は、被害が甚大な地域を対象に巡回相談事業を実施した。これは、応急仮設住宅地における自治組織等の設置による団地内コミュニティの設立を支援することを目的に、仮設住宅地の地域の実情等を考慮した支援策を講じるものである。
○また、被災者の生活再建に向けた総合的な相談対応や支援を行うために、ふれあいセンター等を活動拠点として訪問指導を行う生活支援アドバイザー制度が創設された。内容は恒久住宅確保や生活支援のための情報提供、相談・支援、関係機関(福祉、保健、就業等)との連絡調整、ボランティアとの連絡等であった。
○被災者を公営住宅に受け入れている事業主体においては、8月8日付の建設省通知に基づき、一時入居者に対して居住意向調査を行って、正式入居を希望する被災者への対応が図られた。
○兵庫県では、一時使用期限が経過した後も引き続き現住宅に正式入居を希望する者に対して入居を認めた。正式入居の資格は、従前に居住していた住宅が、り災証明書により全壊・全焼又は半壊・半焼であることが証明でき、かつ現に一時使用住宅へ入居していることが証明できる場合とした。正式入居ができるのは、一時使用許可期限が満了した日の翌日からであり、住戸ごとに定められている家賃の3か月分の敷金と家賃を納付することが必要とされ、共益費の負担、自治会活動への参加が義務づけられた。
○移転費用の融資:厚生省(当時)は、仮設住宅統廃合に伴う移転費用については、県社会福祉協議会の生活福祉資金融資制度で対応することとした。
○芦屋市は中学校グラウンドに建つ仮設住宅を撤去することとし、「行政の都合で移転する以上、移転先の希望は最大限聞く」とするとともに、移転補償費を単身5万円、2〜4人世帯6万円、5人以上7万円を出すこととした。
○阪神・淡路大震災では、震災後2年の時点で、仮設住宅にはまだ数万の人が住んでいるのに、一方で民間賃貸住宅に空き家が出始める状況となった。民間賃貸住宅の供給が進み、過剰感もあって入居率・賃料が低下し、特定優良賃貸住宅以外の公的に助成のない一般の民間賃貸住宅を再建した家主は、さらに厳しい状況となった。
○その背景には、震災で更地になったのを機に新たにマンション経営をしようという人が増え、その後、超低金利もあって賃貸から持ち家に変えたり、自宅の再建が終わって一時入居の借家から出て行くなど、民間賃貸住宅入居者の動向が需給バランスを大きく崩したことが指摘され、こうした市場が正常化するためには10年かかるとも言われる。
【参考1】低家賃賃貸住宅の被災戸数(被害想定戸数)からの推計例
○阪神・淡路大震災の激甚被災地域(神戸市、芦屋市、西宮市)において、従前の居住者を対象として1995年12月に実施されたアンケート調査結果*では、住宅全壊世帯のうちの約90%および半壊世帯の15%が従前の住宅以外の住宅(再建した住宅も含む)に居住している。この値をそのまま適用すると、被災後何らかの住宅確保対応が必要となる世帯数は以下の式で推計される。
(住宅確保対応必要世帯数)=(被害想定に基づく住宅全壊世帯数)×0.9
+(被害想定に基づく住宅半壊世帯数)×0.15
○また、兵庫県の調査によると、応急仮設住宅入居世帯の68%が公的借家を希望しており、従前借家に入居していた世帯(55%)がすべて公的借家を希望したとしても従前持ち家であった入居世帯(30%)もその4割が公的借家を希望した計算になる。また、応急仮設住宅入居世帯のうち、その大半(86%)が年収400万円未満であり、前述の比率は概ね年収400万円未満の世帯における比率に近いと考えられる。この結果に基づき以下の流れに沿って低家賃の賃貸住宅への入居需要世帯数を推計する。
図 低家賃の賃貸住宅への入居需要世帯数の推計
○具体的には以下の式により推計する。
(低家賃の賃貸住宅供給対策需要量)
=(住宅確保対応必要世帯数)×(推計対象地域の年収400万未満世帯比率)
×{(年収400万未満世帯の借家比率)十(年収400万未満世帯中持ち家比率)×0.4}
*室崎益輝「阪神・淡路大震災における住宅再取得過程とその支援方策に関する研究」第31回日本都市計画学会学術研究論文集(1996)
阪神・淡路大震災の公営住宅入居募集では、次のような対策を実施した。
○募集上の配慮
仮設住宅入居枠
社会的弱者優先枠
グループ募集
○徹底した広報
申し込み案内書の分かりやすさ
広報誌、ポスター、ビデオ
募集相談会(仮設住宅触れ合いセンター)
戸別訪問による応募相談
事前見学会
○阪神・淡路大震災の際、兵庫県は、災害復興公営住宅等を主に低所得世帯を対象に供給する方針をとった。
○供給に当たっては、世帯人員や年齢構成に応じて、住戸タイプを設定するとともに、入居者間のコミュニティ形成が図れるよう、高齢者世帯と一般世帯がともに居住できるように配慮した混住型の住戸配置にすることとした。さらに、災害復興公営住宅等の入居者には高齢者が多いことを考慮して、高齢者世帯が安心して生活できるよう、バリアフリー住宅やシルバーハウジング、コレクティブハウジング(協同居住型集合住宅)を供給することとした。
○災害復興準公営住宅(特定優良賃貸住宅)については、特定優良賃貸住宅供給促進事業の要件である最低戸数10戸以上を、被災者等*に賃貸するものについては、戸数が5戸以上10戸未満のものについても、特定優良賃貸住宅に準ずる住宅として取り扱うこととなり、住宅の建設に要する費用及び家賃の減額に要する費用の一部が国庫補助対象となった。
○家賃の支払いの猶予
・建物の損傷により一時的に居住が不能となった住宅並びに建物及び地域の被災状況等を総合的に判断して居住に支障があると認めた住宅について、平成7年1月、2月、3月分の家賃を各支払期日に支払いができなかった場合は、それぞれ支払い期日から最長3か月間支払いを猶予(遅延利息の免除)する。
○減免の対象住宅及び減免の内容
1)住宅の損傷を補修するまでの間、仮移転を必要とし、一時的に住宅を使用できない住宅については、仮移転の日から戻り入居が可能となる日までの間の家賃を免除する。
2)周辺の火災、建物の被災状況等により、公団の避難勧告が出される等、避難せざるを得ない状況が発生したことにより一時的に住宅を使用できなかった住宅については、1月17日から避難勧告の解除等により居住の安全の周知措置が図られるまでの間の家賃を免除する。
3)住宅等の損傷により、その使用に当たって一部支障が生じた住宅については、主要な補修が完了する日までの間、損傷程度に応じて家賃を20%又は50%減額する。
○減免額の算定方法
減免額=家賃月額(円)×減免期間×(減額の場合は)減額率(%)
(注)減免期間
ア 建物の補修等が完了し戻り入居が可能となった日を1週間経過した日まで
イ 当該地域又は住宅等の安全の周知措置が図られた日を1週間経過した日まで
ウ 主要な補修が完了し、概ね住宅の機能が回復したと認められる日まで
減額率:当該住宅の被災度に応じて3ランク(Aランク50%、Bランク20%、Cランク0%)に区分
○阪神・淡路大震災では、復興基金を通じた各種支援が実施された。(次頁参照)
○そのほか、兵庫県・神戸市では、被災者の中には、自力再建を行う意欲はあるものの、年齢要件等によって融資等が受けられないというケースがある。そのため、リバースモーゲージ(持ち家を担保に、死亡するまで自宅に住みながら自治体・民間金融機関から年金型の生活資金融資を受け、死後その担保となっていた自宅を売却し清算する制度)の考え方を活用し、復興基金の利子補給事業等を用いた高齢者向け特別融資制度を設けた。
○神戸市・災害復興住宅特別融資(個人向け)制度
・震災により被害を受け、神戸市内に自ら居住するための住宅を建設・購入又は改良する人に新築(建設、購入)は1,500万円(住宅金融公庫を利用できる住宅に限る)、中古は1,000万円、改良は500万円以内を融資する。
○西宮市
1)個人住宅資金融資斡旋特例制度
・市内に自ら住むために住宅を新築または購入する人に1,300万円以内を年利3.3%で融資を斡旋する。また、市内で被災し自分の住んでいる住宅を整備しようとする人に500万円以内を10年以内で、年利2.5%で融資を斡旋する。
2)民間賃貸住宅資金融資制度
・個人で賃貸住宅を市内に新築する人に1戸あたり100万円以上800万円以内、総額1億円以内を、25年以内で年利3.0%で融資する。但し、被災者が入居し、そのうち3割以上が低所得者、家賃は市で決めた基準以下であること等が要件。
3)西宮市被災学生用住宅再建支援制度
・個人が震災時市内で学生等を対象に賃貸していた住宅を再建しようとする建物で大学等の斡旋の対象となるものに1戸(1部屋)当たり300万円まで融資するもので、期間は25年以内で利率は1.3%。
○芦屋市・災害復興住宅特別融資(個人向け)制度
・地震により被害を受け、市内で自ら居住するための住宅を建設・購入・改良する人に新築(建設・購入)は1,500万円、中古は1,000万円を年利3.3%で、改良は600万円を2.5%で融資する。
・償還期間はそれぞれ25年以内、20年以内、10年以内。償還期間中は固定金利だが、利率は情勢の変化があった場合に変更する。
表 復興基金を通じた各種支援事業概要
事業名 | 事業概要 | |
1 | 災害復興準公営住宅建設支援事業補助 | 特定優良賃貸住宅制度を活用する土地所有者等への助成 |
2 | 特定借上・特定目的借上公共賃貸住宅建設支援事業補助 | 特定借上・特定目的借上公共賃貸住宅を活用する土地所有者への助成 |
3 | 被災者住宅購入支援事業補助 | 住宅購入資金借入金に対する利子補給等 |
4 | 被災者住宅再建支援事業補助 | 住宅建設資金借入金に対する利子補給等 |
5 | 民間住宅共同化支援利子補給 | 共同住宅建設資金借入金に対する利子補給 |
6 | 被災マンション建替支援利子補給 | マンション再建資金借入金に対する利子補給 |
7 | 被災マンション共用部分補修支援利子補給 | 補修額が高額となる分譲マンションの共用部分補修費借入金に対する利子補給 |
8 | 住宅債務償還特別対策 | 住宅を再建又は購入する者の既存住宅ローンに対する利子補給 |
9 | 県・市町単独住宅融資利子補給 | 県・市単独住宅融資に対する利子補給 |
10 | 被災者向けファミリー賃貸住宅建設促進利子補給 | 被災者向けファミリー賃貸住宅融資利子補給 |
11 | 学生寄宿舎建設促進利子補給 | 学生寄宿舎建設資金借入金の利子補給 |
12 | 総合住宅相談所設置運営事業補助 | 住宅建築総合相談所設置・運営費補助 |
13 | 復興まちづくり支援事業補助 | 復興まちづくりセンター運営費補助 |
14 | 宅地防災工事融資利子補給 | 宅地防災工事資金借入金に対する利子補給 |
15 | 被災宅二次災害防止対策事業補助 | 融資を受けられない被災者に対する宅地の応急復旧工事費補助 |
16 | 大規模住宅補修利子補給 | 住宅補修借入金に対する利子補給 |
17 | 高齢者特別融資(不動産活用型)利子補給 | 市町が創設する高齢者特別融資(不動産活用型)の借入者に対する利子補給 |
18 | 定期借地権方式による住宅再建支援事業補助 | 定期借地権方式による住宅等の再建に対する補助 |
19 | 民間賃貸住宅家賃負担軽減事業補助 | 民間住宅に入居する中低所得の被災者の家賃に対する補助 |
20 | 生活福祉資金貸付金利子補給等 | 恒久住宅への移転のための生活福祉資金利用者への利子補給等 |
21 | 復興土地区画整理事業等融資利子補給 | 復興土地区画整理事業及び復興市街地再開発事業により清算金を支払うこととなる権利者の資金調達に対する利子補給 |
22 | 小規模共同建替等事業補助 | 小規模な共同建替、協調建替等への補助 |
23 | 被災者向けコレクティブ・ハウジング等建 設費補助 | コレクティブ・ハウジング等の建築に際し、協同居住空間の整備費の一部を補助 |
24 | 隣地買増し宅地規模拡大利子補給 | 宅地が狭小なため隣接地を購入する資金に対する利子補給 |
25 | 景観ルネサンス・まちなみ保全事業補助 | まちなみ形成上重要な建築物等の外観的復元、施設整備等に対する補助 |
26 | 高齢者住宅再建支援事業補助 | 高齢のため融資等が受けられずに自己資金で住宅再建をした被災者を支援 |
27 | 災害公営住宅入居予定者事前交流事業補助 | 災害公営住宅の入居予定者の事前交流事業に対する補助 |
28 | 被災宅地二次災害防止緊急助成 | 未復旧の被災宅地の二次災害防止のための復旧事業に補助 |
29 | 公営住宅入居待機者支援事業補助 | 災害復興公営住宅等への入居までの間、一時的に入居できる住宅を提供する事業に補助 |
30 | 災害復興グループハウス整備事業補助 | 災害復興グループハウス整備事業を補助 |
31 | 持家再建住宅等入居待機者支援事業補助 | 持家再建予定者等が、持家等に入居できるようになるまでの間、一時的に入居する住宅の家賃負担を軽減する事業に補助 |
32 | 公営住宅特別交換(暫定入居)支援事業補助 | 公営住宅の暫定入居制度を推進するための支援 |
・神戸市は、私道の公共性に鑑み、市民生活のための最低限度の通行機能を確保するとともに二次災害防止を図るため、一定の要件のもとに、応急措置が必要と思われる私道について、市民の申出に基づき市が応急措置を実施した。
○要件
・阪神・淡路大震災により被災した私道
・幅員が2m以上(側溝を含む)
・不特定多数の住民が利用していること(当該道路の両端が既存の公道または私道に接しており行き止まりでないこと。ただし、行き止まりであっても道路に面して10戸または30名以上の住民が現に居住しているまたは居住していた場合は対象とする。)
・私道の関係権利者の施工承諾及び当該私道を今後も一般交通の用に供する誓約が得られること
○申出資格者
・私道の関係権利者(所有者、地上権者等)及び利用者の代表者
○応急措置の範囲
・路面に著しく通行障害を及ぼしているものの除去(段差、ひび割れ補修等)
・法面の崩壊防止のための応急措置(法面排水工、板柵工、シート張り等)
・排水機能の回復(仮排水路等)
○兵庫県は、宅地の被害状況の把握及び二次災害の防止を図るため、宅地防災相談所を設置するとともに、宅地防災パトロールを実施した。
○危険な宅地被災箇所の周知
・兵庫県は、梅雨期をむかえた平成7年6月、土砂災害等の二次災害が予想されることに対し、危険箇所を記載した塘図の配布等により周知を行った。
・神戸市は、県が定めた土砂災害危険箇所のほか、宅地被災地区における擁壁崩壊等による被害が予想される箇所を加えた二次災害予想箇所を2,577か所指定し、被害が予想される世帯、地区等を示した住宅地図を区役所、消防署等に置いて閲覧できるようにした。
○制度の創設
・擁壁は個人財産であるため、補修に対する公費補助制度はなかったが、国・兵庫県は宅地所有者の経済的負担を軽減するため、公共事業による実施、補助制度の創設等を行った。
・国・兵庫県では災害関連緊急急傾斜地崩壊対策事業の採択基準を擁壁を含むよう改正し、4月1日から、次の1)〜5)の条件すべてを満たす場合には補修費用の9割を補助することとした。
1)高さが3m以上あること、2)移転適地がないこと、3)崩壊した場合、5戸以上の建物に被害が及ぶこと、4)河川、道路、公共施設等に著しい被害を及ぼすおそれのあること、5)修理費が600万円以上であること
○制度の補完
・上記の条件に合致しない場合には、住宅金融公庫の宅地防災工事資金等の融資を受けて補修することとなるが、阪神・淡路大震災復興基金では、被災者負担の軽減及び融資の促進によって早期の二次災害防止を図るため、利子補給により当初5年間は無利子になるようにした。
・また、基金では、高齢者等で住宅金融公庫の融資等を受けられない場合、工事費の1/2を補助することとした。
○民間被災宅地の応急措置
・神戸市は、二次災害の危険性が予想される被災擁壁が多く存在し、被災した土地所有者の経済的負担を軽減するため、次の要件に該当する場合、市で応急措置を講じた。施工対象の改善勧告等を受けた所は市内で1,845か所あり、そのうち419か所で応急措置が講じられた。
○対象となる擁壁等
・阪神・淡路大震災により被害を受けたもの
・宅地造成等規制法に基づく改善勧告、改善命令または行政指導として改善要請を受けた者で二次災害(住宅等の建築物等への被害)防止策が必要と市長が認めるもの
○対象者:個人
・市に対し応急措置の申出のある者
・関係権利者の施工同意を得られる者
・所得制限(災害援護資金の要件と同一)に該当する者又は経済的負担の観点から特に必要と認める者
○応急措置の範囲(直ちに本格復旧工事の必要な所は除く)
1)仮排水工、2)崩土・被害擁壁の除去及び切土、3)崩壊防止のためめネット工、4)土のう、シート張、5)土留め柵工
○目 的:
・被災宅地の復旧にあたって、公共工事に採択されず、住宅金融公庫等の融資制度も利用できないなど宅地復旧が不可能な者に対し、二次災害の発生を防止するため応急復旧工事に要する経費を補助する。
○補助対象者:宅地所有者
○採択要件:
1)宅地造成等規制法に基づく勧告、改善命令、建築基準法に基づく改善命令または県あるいは市から宅地の改善に関する通知等の行政措置を受けたもの
2)被害度が大きくそのまま放置すると二次災害のおそれが大きい被災宅地の所有者
3)高齢者等で住宅金融公庫等の融資を受けられない者
○補助対象等
・危険物除去及び応急復旧工事に要した費用(工事費用の限度額300万円)補助率1/2(限度額150万円)
○制度概要
・神戸市、芦屋市、西宮市は、被災した民間宅地擁壁のうち、次の条件を満たす場合に限り道路災害復旧事業(復旧工法は原則としてブロック積(石積)擁壁)として市で施工する。
1)被災した擁壁が幅2m以上の公道に面していること
2)擁壁が倒壊して道路保全上復旧が必要と認められるもの
3)擁壁の高さが2m以上(芦屋市は1.5m以上)
4)擁壁の敷地を市へ原則として寄付してもらえるもの
○阪神・淡路大震災では、兵庫県及び兵庫県下の特定行政庁は「兵庫県南部地震により被災を受けた既存不適格建築等の復旧に対する事務処理方針」を定め、建築基準法の弾力的な運用を図った。具体的には次の項目について弾力的な運用を図った。
・大規模の補修について(第2条第14号関連)
・修繕工事の権造上の安全性について(第20条第2項関連)
・浄化槽の構造について(第31条第2項関連)
・接道規定について(第43条関連)
・用途地域について(第48条関連、施行令第137条の4)
・容積率について(第52条、第59条の2関連)
・日影による高さの制限について(第56条の2関連)
・応急仮設建築物の取扱について(第82条関連)
○神戸市では、以下のような建築規制の運用が行われた。(■は震災後3年間に限る)
表 建築規制の運用
項目 | 内容 |
建築確認申請 | ■戸建て住宅の接道規定 ■共同住宅・長屋の接道規定 ■用途不適格の建築物の建て替え □建ぺい率の緩和 □日陰規制の緩和 ■位置指定道路の基準の緩和 |
許可申請関係 | ■仮設建築物の取り扱い ■仮設建築物の取り扱い ■仮設住宅の取り扱い ■日陰規制、用途不適格許可の取り扱い ■震災復興型総合設計制度の創設 □総合設計制度の拡充 |
条例による届出関係 | ■共同住宅に附置する駐車場台数 ■附置義務駐車場の敷地外設置の緩和 |
その他 | ■申請等の手数料の免除 |
○道路が不足しているため住宅等の再建が進まない地域において、建築物の既存不適格問題の解決、土地の有効利用、防災性の強化等を図るため、土地所有者が自らの土地の一部を道路に提供することにより、住宅等の再建と道路の整備を地域(グループ)で協調して計画・実施する場合に、その活動を支援する制度。
○この制度は、近隣が協調して住宅等を再建し、併せて道路整備に取り組むもので一定の要件を満たす場合に、①整備計画の作成支援、②住宅建設資金融資に係る利子補給、③私道の整備助成を行うものである。
○対象:容積率の既存不適格建築物で震災から3年以内に着工するもの
○補助の内容:低層住宅復興型、中高層住宅復興型があり、従来の総合設計制度より敷地面積、有効公開空地率などの適用条件を引き下げ、容積率の割り増しを震災前の延床面積を限度に引き上げる。
○対象要件の拡充
・地区面積要件の緩和1,000㎡→地区面積500㎡又は敷地面積300㎡
・マンション建替えタイプ要件の区分所有者は、被災当時の区分所有者を含むものとし、マンション滅失に備えた手当てを実施する。
○補助事業の拡充
・すべてのタイプのプロジェクトの対象施設を補助対象とする。
・消防施設、避難施設等、監視装置、建築物の防災性能強化(特殊基礎工事等)の各施設を補助対象とする。
○非常災害時かさ上げ補助率の適用 国費1/3→2/5
・芦屋市では、優良建築物等整備事業を活用し、建築設計費、建設費の一部を補助。
○建築設計費、建設費の補助
1)要件
・地区面積が概ね1,000㎡以上(500㎡以上でも対象となる場合もある)
・中高層の耐火建築物または準耐火建築物を建てること
・原則として幅員6m以上の道路に4m以上接すること
・空地要件を満たすこと
2)補助対象
・調査設計計画費(事業計画作成費、地盤調査費、建築設計費)
・建築物除去等費(建築物除去費、整地費)
・建物整備費の一部(通路・広場等の空地、供給処理施設、エレベーター・廊下等の共用部分等の整備費)
3)補助額:補助対象事業にかかる費用の2/5以内
○利子補給制度
1)被災マンション建替支援利子補給
・住宅金融公庫の災害復興住宅資金融資等を受け被災した分譲マンションを再建する区分所有者及び住宅供給公杜等が建替えを代行したマンションを購入する被災者。
・限度額は1,140万円以内。
2)被災マンション共用部分補修支援利子補給
・被災分譲マンションの補修に要する費用のうち、住宅金融公庫の災害復興住宅(共用部分補修)融資資金で1戸当たりの借入額が100万円以上、災害発生から2年以内に融資の申込みが行なわれるケースが対象。
・限度額は150万円以内。
3)補給率
○両制度とも当初5年間は2.5%、6~10年は公庫融資の年利率から3.0%を減じた年利率となっている。
○敷地全てを公社が買収、定期借地権マンション建設の後、基の区分所有者へ分譲する方法
○居住者の経済的な問題で、この方法を適用したが当初は役員以外の理解が得られず、ねばり強い説得で、マンション所有者全員一致で建て替えができた。負担額の平均は500~600万円
○コンサルタントにより地上権方式が採用される。公社が地上権で借地、新しいマンションを建設。マンシヨン建設後は、地上権をはずし、建物を事業に参加した土地所有者に分譲するもの。転出者や保留床については、公社が持ち分を買い取り、第三者へ売却する。
神住住計第1001号
平成7年1月30日
建設大臣 野 坂 浩 賢 様
神戸市長 笹 山 幸 俊
罹災都市借地借家臨時処理法の適用について(申請)
平成7年1月17日に発生した兵庫県南部沖地震のため、本市の市街地を中心に下記のとおり多大の被害が生じました。
羅災地は、借地入、借家人も多く、これらの市民の住生活等の安定を図るためには、借地、借家の緩和j関係を保護することが適当と考えます。ついては、本市を罹災都市借地借家臨時処理法の適用地域としてご指定いただきますよう申請いたします。
−−−−記 −−−−
1 被害状況
(l)避難人数(1月28日現在) 213,024 人
(2)全壊・半壊棟数(1月29日現在) ・全壊 24,680 棟
・半壊 29,299 棟
(3)焼失面積(1月20日現在) 1,021,995 ㎡
2 所有関係別世帯数(昭和63年住宅統計調査)
所有関係別 | 世帯総数 | 割(%) | |
主世帯総数 | 482,440世帯 | 100.0 | |
持家 | 248,170 | 51.4 | |
借家 | 223,980 | 48.6 | |
公営 | 42,280 | 18.9 | |
公団公社 | 23,510 | 10.5 | |
民営 | 141,390 | 63.1 | |
給与住宅 | 16,790 | 7.5 |
・伊丹市は、市内の民間賃貸住宅に居住していて一部損壊以上の被害を受け、その解体により住宅を失った高齢者・障害者等の世帯で、建て替えられた民間賃貸住宅に入居する場合、従前の家賃と新たな家賃との差額の2分の1(ただし月額2万5千円を限度)を補助する家賃助成及び敷金として、家賃助成月額の3か月分を補助する敷金助成を実施。
・倒壊した家屋から運び出した家財道具の保管場所がない被災者のため、兵庫県倉庫協会、大阪府運輸倉庫協会、大阪府倉庫協会などは利用可能なトランクルームの情報サービスを行った。
・兵庫県倉庫協会には、4月28日までに2,131件の問い合せがあり、そのうち909件が受託された。
・芦屋市では被災市民の家具等の一時保管場所として、独自に仮設物置を300個設置した。
○設置場所 芦屋市浜風町地先(南芦屋浜埋立て地内)
○募集個数
タイプ 大きさ(幅×奥行き×高さ) 募集個数 使用料(月当たり)
A 5.4m × 2.4m × 2.65m 160個程度 15,000 円
B 2.0m × 2.0m × 2.2m 140個程度 5,000 円
○利用可能期間等
・平成7年4月15日~8月15日(その後平成8年3月31日まで延長)
・設置場所の出入りは9時30分から16時30分(その後10時から16時に変更)に制限されており、また4輪自動車でしか出入りできない。
・なお、仮設物置の設置場所は市営住宅の建設予定地になっており、予定通り3月31日をもって寄託者に明け渡しを命じるとし、引き続き保管を希望する場合には民間業者をあっせんする。
○応募資格
・全壊又は半壊のり災証明を受けたもので1世帯1個のみ
○阪神・淡路大震災では、国の雇用維持対策として、雇用調整助成金制度や生涯能力開発給付金、中小企業事業転換等能力開発給付金及び中小企業事業転換等能力開発給付金制度の特例的な運用が行われるとともに、被災事業の再開に伴う雇用確保を支援する助成制度が創設された。また、兵庫県は、雇用調整助成金制度を補完する形で、雇用維持奨励金制度を復興基金事業として創設した。
(1)「被災地しごと開発事業」
○趣旨:仮設住宅の生活を余儀なくされて自宅に引きこもりがちになった被災中高年令者の民間企業での就職のきっかけ作りとして実施。
○事業内容
・仮設住宅入居者か、全壊(全焼を含む)の家屋被害のあった45歳から60歳までの被災者を対象として、ビラ配り通行量調査などの軽労働を提供するという事業(1日5,000円,月10日以内)。
・「被災地しごと開発事業」に登録していた者に対しては、就職等を希望し、支援を希望する者に対し、自立支援推進員が個別面談等を行い、就職等に向けた講習、職業訓練及び職場体験・就業体験の受講を指導し、就業を支援する。
(2)「いきいき仕事塾」
○趣旨:被災地に住むおおむね55歳以上の方々を対象として、「いきいき仕事塾」を開設することにより、生きがいづくりを支援。
○事業内容
・被災地に住む高齢者を対象に、被災各地域において生きがいづくりや仲間づくりにもつながる知識等を習得するための各種講座を開設。
・週一回の講座で参加者には2,000円が支給される。
(3)いきがい「しごと」づくり事業補助(復興基金)
○事業内容
・被災高齢者等の新たないきがいとしての「しごと」の場・機会を提供する先駆的な事業を行うグループに対し、それに要する経費の一部を補助。
・いきがい「しごと」への就業等を支援するための事業に要する経費を補助。
(4)被災地求職者企業委託特別訓練等事業補助(復興基金)
○事業内容
・中高年被災地求職者に対する企業委託方式の特別訓練事業等に要する経費を補助。
(5)被災者雇用奨励金(復興基金)
○事業内容
・被災者を新たに雇い入れた事業主に対する奨励金及び震災により離職を余儀なくされた者を新たに雇い入れた事業主に対する奨励金を、それぞれ一定の要件に該当する場合に支給。
・補助内容:雇用者1人あたり50万円を支給
(6)雇用維持奨励金(復興基金)
○事業内容
・被災地域を中心とした地域における雇用の安定を図るため、事業主が講じた雇用維持のための措置に要した経費の一部を支給。
○補助内容:雇用維持に要した経費の1/8または1/9
(7)被災者就業支援事業(復興基金)
○事業内容
・中高年齢の被災者(登録者)に対し、きめ細やかな相談援助や、民間企業での就職やシルバー人材センター、コミュニティビジネスなどの就業等を支援する事業に要する経費を補助。
○趣旨
・雇用創出のために国が設けた特別奨励金は45歳以上を対象としているため、学校を卒業しても仕事が見つからない人への対策がないこと、臨時雇用ではなく正規の雇用であるがその対策が不十分なことから、福祉や教育などの分野で重点的に雇用を拡大することを目的に実施。
○事業内容
・県職員給与を一律5%カットし、その財源をもとに雇用を創出する対策を実施。
・民間での雇用創出策を助成するための基金を創設
・公共部門での雇用拡大策として、保育所の保育士増員や被虐待児への心理的ケアを行うセラピストの配置、学校図書館の司書の充実など実施
・教員の新規採用を行い、小学校1、2年生の30人学級を、市町村と協力しながら実現。
○支給申請方法
・市町村が住民票等から対象者をリストアップし、郵送による支給手続を行っているところ(例:神戸市)、遺族からの申請に基づき支給事務を行っているところ(例:芦屋市、西宮市)等市町村によって申請方法等は異なる。
・神戸市の例
①市が住民票等から遺族を調査
②通知書、必要書類等を遺族に郵送
③返送された申請書を確認
④口座振込みにより支給
○支給事務開始時期
・神戸市の場合、震災後約2か月経過した3月16日から順次郵送を開始、芦屋市は2月17日から、西宮市は2月26日から受付開始と、市町によって支給事務開始時期は異なる。
○支給方法:「口座振込み」または「銀行渡り小切手」により支給
○その他:支給された災害弔慰金は、非課税扱いとなる。
○震災関連死の認定
・震災後、震災に関連する傷病等で死亡した場合は、死亡原因等の確認事務、審査会による審議を経るため、処理に長期を要するケースが多い。
○各市町における給付事務、相談等の開始は、4~7か月後と市町によって異なる。
○時期支給申請方法
・神戸市の場合、各福祉事務所で申請、相談を受付
・西宮市及び芦屋市では、問い合わせ専門窓口を設置して対応
・芦屋市では、身体障害者手帳(1級)の交付申請をした場合に、市から直接交付事務の連絡を行った
○生活福祉資金の特例措置として実施されたもので、所得制限はなく、簡単な手続き(身分証明書や印鑑、保証人の署名・捺印で可)で10万円(又は特に必要と認められる場合は20万円)を借りることができることから、申込者が殺到した。
○神戸市の場合、1月28日から貸付けの受付が開始され、当初は、「当分の間、受け付ける」とされていた。その後、2月9日に急きょ受付が締め切られ、その旨の広報が不十分で、締切り後の貸付け希望者への対応に苦慮した。
○経緯等
・貸付原資の予算措置が間に合わないことから、県社会福祉協議会が金融機関から融資を受けた。
・窓口となる市町の杜会福祉協議会に、他府県や県内の被災地以外の杜会福祉協議会から計210名の職員の派遣を受けた。
・弔慰金制度の実施見込みや義援金の第一次配分もなされる等、所期の目的をほぼ達成したことなどを総合的に勘案して、2月9日をもって終了した。
○被災自治体の中には、下記のような助成措置を講じているものがある。(次頁参照)
○また、西宮市では外郭団体の「水道サービス協会」において、受水槽の点検・修理、水洗トイレなどの修理を行っている。
表 上下水道の助成概要
融資等種類 | 実施市 | 限度額 | 融資等目的 | 返済条件 | 備考 |
排水設備の修繕費貸付 | 神戸市 | 1工事 50万円 | 水洗トイレの器具等の修理、配水管修理 | 無利子、20~36回の均等償還 | 新規制度 |
水道工事費の貸付 | 西宮市 | 20万円 | 水道の改造工事 | 無利子、20回以内の均等償還 | 既存制度 |
水道工事費の分納 | 西宮市 | − | 水道の新設・改造工事 | 6ヶ月~9ヶ月の分割納付 | 既存制度 |
家庭用水道管改造資金融資 | 尼崎市 | 30万円 | 水道の改造工事 | 市中金利、36回以内の元利均等償還 | 既存制度 |
○被災自治体における水道料金については、下記のとおり減免等の措置が講じられているが、その内容は自治体によって次のようになっている。
表 上下水道の水道料金の免除措置
市名 | 免除措置等の概要 |
神戸市 | 市内全世帯、事業所を対象に、上下水道基本料金(1,210円)を1か月間免除する。早期に復旧した家庭で漏水や断水家庭への供給で通常の使用料を大幅に上回った場合は再計算に応じる。1月17日以前に検針した上下水道料金の請求は、通常の納付期限から2か月延長できる。 |
西宮市 | 断水しなかった一部地域を除き、1月17日から2月28日までの上下水道料金の全額を免除する。 |
芦屋市 | 市内全世帯について、1月17日から3月15日までの間(一部地域は1月31日まで)の水道料金は、全額免除とする。また、平成6年度5期前期分(12月、1月)の給水料金及びメーター使用料ついても減額措置を講じるとともに、納期を延期する。 |
宝塚市 | 一部地域を除き1か月分の水道料金を全額免除とする。 |
明石市 | 地震発生以後に検針した上下水道料金の基本料金を全世帯で1期(2か月)分免除する。 |
○学校施設の復旧対策
・県立学校については、1月21日、兵庫県より各学校長宛てに、ガラス修理、急配水設備の改修等を指示しており、被害の大きい学校については建物の危険度調査を実施し、使用禁止等の措置を行い、二次災害の防止に努めた。
・市町立学校については、1月30日から2月3日にかけて、文部省や他府県の技術職員37人の応援を受け、応急危険度調査を実施した。そしてこの結果を踏まえ、仮設校舎の建築計画を策定し、建築に着手した。また3月6日から10月13日にかけて、公立学校の災害復旧に係る文部省・大蔵省の災害現地調査を実施し、併せて復旧工事を行った。
・私立学校については、学校側の要請により、文部省の技官が約90校について危険箇所の調査を実施している。
・阪神・淡路大震災では、被災校がそのまま避難所となり、避難住民の生活との関係から、事前調査や国の査定がはかどらなかったこと、また8月から9月にかけて公共・民間の他の解体・建設事業と競合したことなどから、学校施設の解体・建替え等の補修工事は大幅に遅れた。
○現行制度では、国庫補助の対象となるのは校舎の建替え等の場合に限られているが、校舎そのものは被害を受けていないものの、避難所として利用されていることにより教室が使用できない学校があった。このため、文部省(当時)との協議の結果、これらの校舎が仮設校舎を建設する際にも補助の対象とすることが認可された。
○私立学校施設の復旧に関しても、現行制度で国庫補助の対象となるのは学校教育法の第一条校の私立学校のみであり、学校法人が設置する専修学校及び外国人学校に対しては補助の対象外となっている。しかし、阪神・淡路大震災ではこれらの私立学校に対しても特例的措置として、(財)阪神・淡路大震災復興基金による補助(私立学校仮設校舎補助、私立学校復興支援利子補給、私立専修学校・外国人学校施設等災害復旧費補助)を行った。
表 被災者を対象とした教育支援制度
制度名 | 対象 | 助成内容 | 申請要件など |
公立幼稚園保育料など減免 | 公立幼稚園 | 入園料・保育料 (平成7年12月分まで) | 全・半壊の被災など |
就学奨励金 | 小・中学生 | 給食費・学用品など | 被災により、市民税の非課税世帯または減免の扱いを受けた場合など |
私立高校授業料など減免 | 私立高校生 | 入学料・授業料 (平成7年12月分まで) | 全・半壊の被災など |
給付奨学金 | 高校・高専など | 国公立5,500円/月 私立11,000円/月など |
被災の程度を考慮して認定 |
○日本育英会では、奨学金の貸与について被災者特別枠(一部損壊以上の被災者が対象)を設定し、定期(5,6,7月及び10月)以外の時期における採用、所得基準についても震災後における実態に応じた所得とすることなどにより対応している
○申請先
・大学生………各大学
・高校生等……日本育英会都道府県支部
○貸与月額……いずれも自宅外
・高等学校 国公立18,000円 私立30,000円
・大学 国公立41,000円 私立54,000円
○兵庫県南部地震による国公私立大学の入試日程の変更情報を大学入試センターのハートシステムで提供した。変更情報の一覧表は、兵庫県内被災地域の多くの県立高等学校で閲覧可能であり、また、ハートシステムの端末を、県教委、5県立高校に設置した。
○特例入試の実施
○被災した受験生を対象とする特例入試(再試験・再募集)を3月下旬から4月上旬にかけて実施した。特例入試を実施する大学及びその概要については、大学入試センターにおいて、次の方法により情報を提供した。
○ハートシステム〈NTTのビデオテックス通信網=キャプテンを利用〉
・端末を県教委、5県立高校他計11か所に設置し、志望大学の情報検索を可能とした。(ガイドブック「国公立大学の特例入試の概要」の発刊)
・被災地域の教育委員会や高等学校等に配備した。
○受験地における宿泊場所のあっ旋
・国立オリンピツク記念青少年総合センター
・(財)内外学生センター(大阪、京都、神戸各学生相談所)
○西宮ボランティアネットワーク(NVN)によるコーディネート業務
・ボランティアの受付は当初市役所の人事課で行っていたが、市役所全体の機能が混乱している中でボランティアに的確な指示を出すことができなかった。このような状況の中で、行政と連携した新しい形としてのボランティアネットワークとして、西宮ボランティアネットワークが誕生し、ボランティア受付業務をボランティア自身が行った。
○ボランティア活動のコーディネートに関する課題
・阪神・淡路大震災では、ボランティアの受付・登録の際に、活動調整を行うボランティアセンターが区単位で整備されていなかったため、それぞれの避難所や被災地からのボランティアニーズに迅速に対応できなかったことが指摘される。実際に、市町社会福祉協議会ボランティアセンターは、災害当初、一部の市町を除き平時のボランティア推進体制が十分に機能せず、大量のボランティアニーズとボランティアを効果的に結びつけることができなかった。このため、ボランティアと行政をつなぐコーディネートの機能を確立するとともに、各機関の連携を強化しておく必要がある。
・被災状況等の情報提供やボランティア活動に関するニ一ズの把握と情報提供を行う窓口がなく、全国のボランティア団体等に必要な活動要請を行うことができなかった。また、市役所全体の機能が混乱している中でボランティアに的確な指示を出すことができなかった。このため、ボランティア団体の中に中枢機能を組織するシステムを持たせることを検討し、行政との連絡や連携について、あらかじめ確認しておく必要がある。
・阪神・淡路大震災では、経験豊富なコーディネーターがほとんどいなかったこと、緊急時にボランティア拠点の中枢機能を組織する民間等スタッフの参加システムがなかったことも問題として指摘された。このため、災害発生時に全国から集結したボランティアを機動的に活用するために不可欠であるボランティアコーディネーターが不足しないよう、コーディネーターの要請・研修体制の早期確立・充実を図るとともに、地元ボランティアとの連絡・結合体制の確立を図る必要がある。
○仮設診療所等の設置
・震災により被災した医療機関の復旧が遅れている地域や、避難所及び応急仮設住宅付近の一時的な人口増加に伴い医療ニーズが拡大した地域に対して、応急的な仮設診療所の設置の必要性があった。このため、兵庫県は、国の補助を得て、仮設診療所(9施設)及び巡回歯科診療車(10台)が設置された。
表 災害復興ボランティア活動に対する助成
区分 | 助成の対象となる経費 | 構成人数 | 助成額等 |
一般活動費助成 | ボランティアグループが活動を行うために要する一般的経費 (交通費・通信費・ボランティア保険掛け金等) | 5人以上のグループ | ・年活動日数が6日以上の場合 年額3万・年活動日数が24日以上の場合年額6万 |
特別活動費助成 | 当該ボランティア活動固有の経費(原材料購入費・活動機器・機材の借上げ費等) | 5人以上のグループ | ・1事業当たり15万円以上 (3万円未満は対象) ・1グループ年間2回を限度 |
○医療機関に対する復旧支援
・震災により被害を受けた医療施設等について、その復旧に要した経費に対して災害復旧費補助事業(国庫直接補助事業)による支援を行った。なお、阪神・淡路大震災では、病院群輪番制病院、救命救急センター等の政策医療を担う民間病院及び看護婦宿舎が新たに補助対象となり、かつ、公的病院の補助率が1/2から2/3へ引き上げられた。
・阪神・淡路大震災では、被災した病院や在宅当番医制等の政策医療を担う診療所の復旧・再建支援として、これらの病院を新たに「医療施設近代化施設整備事業」の補助対象とした(補助率2/3)。
○民間医療機関への復旧支援策についての課題
・阪神・淡路大震災では、民間医療機関の再建に対して、国の助成や復興基金による融資への利子補給等の支援が行われている。
○福祉施設の復旧に際し、「阪神・淡路大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に対する法律」の適用により、社会福祉法人設置の福祉施設の復興が行われた。
○「こころのケアセンター」の設置
・被災者のPTSD等に長期的に対応し、かつ被災精神障害者の地域での活動を支援するため、阪神・淡路大震災復興基金の助成を受け、兵庫県精神保健協会が開設・運営した。精神科医を約80名配置したほか、精神科ソーシャルワーカー、心理職等の専門職員を配置し、被災者の心の健康回復に対処した。
・その他のこころのケアの実施として、神戸市では6箇所に地域精神保健活動の拠点としての保健所精神救護所を設置したほか、避難所への精神巡回医療、被災者全員に対するPTSDの啓発冊子の配布、ボランティアの燃え尽き症候群防止のための公演会や研修会の開催等を行った。
○こころのケア事業に関する課題
・阪神・淡路大震災によって、PTSDが注目されたが、震災によって新たに精神障害が発症するケースの増加ばかりでなく、震災により既往症状が再発するケースも増加したため、通常以上の医療ニ一ズが発生した。このため、精神科医・精神科ソーシャルワーカー・心理カウンセラー等の専門職員の確保策を検討しておくことが必要である。
○阪神・淡路大震災復興基金での事業例
表 阪神・淡路大震災復興基金での事業例
事業名 | 事業内容 |
アルコールリハビリテーション事業補助 | アルコール依存者の社会的自立を促進するアルコールリハビリテーションホームの設置、運営を補助 |
「こころのケアセンター」運営事業補助 | 被災者のPTSD(心的外傷後ストレス障害)等への対応など、地域に根ざした精神保健活動の拠点として設置される「こころのケアセンター」(1カ所)及び「地域ケアセンター」(16カ所)の運営を補助 |
○阪神・淡路大震災では、被災した子どもたちのこころのケアのため、1月20日から児童・生徒の被災状況に関するヒアリングを実施した。2月2日には、北海道教育大学藤森助教授夫妻より、北海道南西沖地震の体験をもとに作成した「危機介入ハンドブック」を、また3月20日には、日本小児医学研究会より「災害時のメンタルヘルス」の寄贈を受けたため、これらを各教育機関へ配布し、子どものこころのケアに対する配慮を依頼している。
○2月20日〜3月24日には、「災害を受けた子どもたちの心の理解とケア事業」を展開するとともに、またこの期間中の2月21日と3月23日には「災害を受けた子どもたちの心の理解とケア研修会」を開催した。
○神戸市震災復興緊急整備条例(平成7年2月16日神戸市条例第43号)(次頁参照)
○神戸市においては、震災復興緊急整備条例が施行され、「重点復興地区」「震災復興促進地区」を指定し、市街地整備を行っている。
○重点復興地区では、土地区画整理事業及び市街地再開発事業を適用し面的な整備、住宅の供給を図っている。
1)復興計画の中での位置づけ
○神戸市は、復興計画において道路整備に関する施策として、
・道路の安全性・快適性の向上(コミュニティ道路、歩道の拡幅・設置等)
・道路のバリアフリー化(段差の切り下げ等)
・災害時における避難路としての機能、延焼を防止する防火帯としての機能等の役割を考慮した、格子状広域道路網・街路網の形成を掲げている(目標別復興計画より)。
○各施策のうち、市民生活や都市基盤の復旧・復興にとって緊急かつ重要な施策を「シンボルプロジェクト」として選定しているが、そのひとつに「多様性のある交通ネットワークの形成」が掲げられている。これは、災害時に確実で円滑な交通を確保するため、海・空・陸の複数の交通手段を活用し、多重かつ代替性のある交通ネットワークの形成を図ることを目的としたものである。
2)交通ネットワークに関する課題
○高速道路、鉄道など高架構造物の倒壊、沿道建物の倒壊、路面崩壊などにより、被災地内の道路容量は大きく低下した。国内の東西交通を担う主要幹線が被災地を通過していたことから、国内東西交通にも大きな打撃があった。
○この地震では、わが国の東西交通を担う主要幹線が神戸市を通過していたため、東西間の交通は壊滅的な打撃を被った。また、唯一残された中国自動車道も宝塚付近で橋梁が損傷し、地震後10日間は通行止めで長期間交通規制が続いた。このため、国道9号や舞鶴自動車道等の日本海への迂回が発生し、日本海ルートへ向かう道路でも大渋滞が発生した。
○神戸市復興計画では、港湾における防災拠点及び防災支援施設の整備を位置づけ、物流空間としての整備・再開発のみならず、親水空間としての役割をも重視した再開発を掲げている。また神戸市は、復興計画の一翼を担う計画として、震災前の「神戸港復興計画」をもとに、「重点整備による早期復興」「災害に強い防災港湾づくり」「市街地の復興との調和」を加えた新たな神戸港復興計画を策定し、港湾関連施設の整備を図っている。
○阪神・淡路大震災における都市公園の利用状況を調べた調査(「大都市都市公園機能実態共同調査」(平成6年度)及び「兵庫県都市公園利用実態調査」)によると、神戸市内367の都市公園のうち48%公園が避難地や物資の配給拠点、ボランティア団体等の活動基地や駐屯地等として使用された。街区公園等の市街地の小規模な公園も、自宅の見える避難地として、また家財道具の一時保管場所等として活用された(「阪神大震災緊急調査報告書」平成7年6月、(社)日本造園学会)。
○これらの状況を踏まえ、神戸市復興計画では、街区公園や近隣公園を地域防災拠点のひとつとして位置づけ、整備を図る方針を掲げている。
○阪神・淡路大震災では、断水下の非常用水として河川水が利用されたが、親水性護岸の整備されていない箇所では利用が困難であった(「阪神大震災緊急調査報告書」平名7年6月、(社)日本造園学会)。このため、神戸市復興計画では、河川緑地軸の形成を目指し、その一環として親水性護岸の整備を推進している。
○阪神・淡路大震災の際、架空方式の電柱類は倒壊し、緊急輸送や消防活動、通行等の障害となった。また、地下埋設の電線類は、車道・歩道の損壊により損傷を受けた。神戸市復興計画では、防災上の安全性の向上と都市景観への配慮により、電線類の地中化の推進を掲げている。しかし、道路の損壊により地中化された電線が損傷を受けた場合、その復旧には相当な時間を要するという問題点が指摘されている。
○兵庫県内では、震災当初、約126万5千戸が断水し、被災地外の自治体から工事応援を受けたものの、被災地の上水道が仮復旧したのは2月28日、また下水道の仮復旧は4月20日と、復旧に長期間を要したことから、住民のイライラがつのり、復旧の見通しについての問い合わせが多くみられた。
○また、各被災自治体では、断水期間中、自衛隊の支援などにより給水車による給水のほか、学校・避難所、路上に24時間給水可能な臨時給水所を設置し、被災者に対する給水の確保に努めていた。
○なお、集合住宅の場合は、受水槽までの上下水道管の復旧が完了しても、建物内の給排水管等に損傷がある場合、復旧工事・費用が自己負担となることもあって、各戸への通水及び排水には更に長期を要している。
○阪神・淡路大震災では、復興期の都市施設整備計画が住民の反対により取り消しや縮小となった例がある。例えば、東灘区森南地区では、新駅設置に伴う駅前広場と道路の拡幅が土地区画整理事業に含まれていたが、住民の反対により、結果的に都市計画道路の17m道路を計画から削り、南北道路の一部を拡幅する修正案となっている。
○このため、都市計画道路等の計画されている都市施設を震災後もそのまま復興計画に位置づけるのかどうか、すなわち既存の計画の扱いや復興期におけるその位置けについて検討する必要があった。
○阪神・淡路大震災復興基金により、民有の海岸保全施設の復旧・復興のための資金借入れに対して、当面5年間、1%の利子補給を行った。
1)文化財の復旧事業の実施
○兵庫県は、平成7年1月19日より、被災市町教育委員会への問い合わせ、文化庁担当官及び近畿2府3県の専門職員の協力を得て、国・県指定文化財等についての被害状況調査を実施した。調査の結果、国指定文化財は546件中45件が、県指定文化財は717件中54件が被災していることが判明した。
○このため、平成7年度から平成9年度の3箇年を原則期間として、被災を受けた国・県指定文化財のうち建造物を中心に復旧事業を実施することとした。ただし、重要伝統的建造物群保存地区内の個人住宅の修復は、平成6年度より国庫補助事業により緊急対応し、平成8年度終了を目指して実施された。
○また、文化財所有者の負担軽減のため、災害復旧に係る国庫補助のかさ上げ、「阪神・淡路大震災復興基金」やモーターボート収益金による助成及び文化財保護振興財団による助成を得て復旧事業を行っている。
○各種助成措置の方策は次のとおりである。
(1)国・県・市町指定文化財:災害復旧事業の所有者負担額の1/2を復興基金により助成。
(2)未指定文化財のうち、建築学会が調査した景観形成建築物及び同候補物件、並びに市町指定文化財候補物件について助成。
(3)文化財保護振興財団の協力により、修理費の募金活動を実施。
2)文化財の復旧に当たっての課題
○文化庁が修復するのは国指定の重要文化財のみであり、文化財指定を受けていない建造物の修復には費用面での困難が伴った。小規模の神社等では、倒壊した建物の建築部材が再利用できる場合でも、修復するには新築よりも費用がかさむという理由から取り壊してしまったところも多かった。
3)文化財レスキュー事業の実施
○文化庁・東京国立文化財研究所などの国関係機関及び文化財・美術関係団体の協力により「阪神・淡路大震災被災文化財等救援委員会」を設置し、県内の寺社、個人住宅、博物館・美術館・資料館等の被災に伴う文化財等の廃棄・散逸を防止することを目的とした「文化財レスキュー事業」を実施した。救援の対象には、国・県・市町指定文化財のほか未指定の文化財も含み、費用は無償とした。
○兵庫県では、被災直後から産業被害の状況把握に精力的に取り組んだ。しかしながら、通信網と交通網のダメージが大きく、また個別企業等の被害が大きいことから全容の把握は困難を極めた。県としても被災地の巡回、写真撮影、被害調査の聞き取りを行うとともに大企業、商工会議所、商工会連合会、業界団体、組合、外資系企業に組織的に電話照会を行い、県警発表の家屋倒壊・焼失状況等を勘案しながら、被害額の推計に努めた。
表 神戸市総合相談所の事業概要
事業名 | 事業主体 | 事業概要 |
総合相談所での相談の実施 | 国 兵庫県 市 民間 | ■総合相談所での相談の実施 [事業概要] ・震災に伴う神戸・阪神間の経済環境の変化に対応するため被災地域に総合相談所を開設し、被災企業等の金融・税務・法律等の経営相談を実施する [7年度−11年度]・7年度事業 上記事業の実施(相談件数:16,198件(7月末現在)) |
国 兵庫県 | ■被災中小企業組合等の相談事業の実施 [事業概要] ・被災中小企業組合の今後の運営に関する金融・税務・法律等の個別専門指導等の実施に対し助成する [7年度−11年度]・7年度事業 被災中小企業組合復興支援事業 補助率 10/10(県1/2、国1/2)対象 兵庫県中小企業団体中央会 内容 移動中央会の開催 2回 個別専門指導の実施 18回 |
表 地域経済復興に関する国の特例措置および地方公共団体独自の施策(1)
事業名 | 事業主体 | 事業概要 |
創設・拡充された中小企業金融公庫等の融資制度の活用による中小企業の緊急復旧・本格復興の支援(災害復旧貸付制度の実施) | 国 兵庫県 市町 復興基金 | ■緊急災害復旧資金融資制度の創設 ・融資対象者 事業所の建物に直接被害を受けた中小企業者等 [融資目標額4,000億円(県2,900億円、神戸市1,100億円)] ・資金使途 店舗、工場建設(仮設含む)等に要する設備資金及び災害復旧に要する運転資金 ・融資条件 限度額 企業5,000万(組合1億円) [うち運転資金3,000万円、組合6,000万円] 利率 2.5% 期間 10年(措置3年) 信用保証 必要 利子補給 対象者:事業所が全・半壊(全・半焼)した中小企業者等 対象限度額:融資額のうち2,000万円以下 期間:当初3年(3年間実質無利子) |
兵庫県 神戸市 | ■緊急特別資金等の融資対象者の拡大 ・融資目標額 600億円 ・融資対象者 平成7年1月18日以降、1ヶ月間の売上げが前年同月比20%以上減少し、かつ、その後2ヶ月間を含む3ヶ月間の売上げが前年同月比20%以上減少または減少見込みの者 ・融資条件 限度額2,000万円 利率2.8% 期間5年(据置1年) 信用保証原則必要 |
表 地域経済復興に関する国の特例措置および地方公共団体独自の施策(2)
事業名 | 事業主体 | 事業概要 |
創設・拡充された中小企業金融公庫等の融資制度の活用による中小企業の緊急復旧・本格復興の支援(災害復旧貸付制度の実施) | 国 兵庫県 神戸市 復興基金 | ■中小企業災害復旧貸付制度の充実強化 政府系中小企業金融機関(中小企業金融公庫、国民金融公庫、商工組合中央金庫、環境衛生金融金庫直接被害を受けた特別被害者に対して ・貸付金利の引き下げ[当初3年間3.0%→同実質2.5%] ・貸付限度額の引き上げ→[1,000万円→3,000万円] ・貸付期間及び据置期間の延長[10年(据置2年)→15年(据置5年)] ・利子補給 対象者:特別被害者(直接被害者)のうち事業所が全・半壊 (全・半焼)した中小企業者等 対象限度額:融資額のうち2,000万円以上 期間:当初3年間(3年間実質無利子) ■小企業等経営改善融資(マル経)の貸付限度額の引き上げ ・国民金融公庫 被災企業者のうち、特に経営基盤が脆弱で担保力の乏しい小企業者等について貸付限度額を引き上げる(550万円→750万円) |
宝塚市 (類似制度創設市:尼崎市、西宮市、芦屋市、伊丹市、川西市) | ○災害復旧融資制度の創設 被災を受けた中小企業の災害復旧のための設備資金・運転資金等を低利で融資する。 ・中小企業振興事業災害特別資金 資金使途 災害複旧のための設備資金または運転資金 限度額 1,500万円以内(据置3年以内) 貸付期間 10年以内貸付利率年2.5% ・小規模企業振興事業災害特別資金 限度額500万円以内(他は同上) | |
国 | ○本格的事業復興のための災害復旧貸付制度の拡充 ・融資条件 限度額 中小企業公庫1.5億円→3億円 国民金融公庫3,000万円→ 6,000万円 ・期間(設備資金) 10年(措置2年)→ 15年(措置2年) | |
中小企業への既往融資償還猶予等条件変更弾力化 | 国 兵庫県 市町 | ○既往債務の返済猶予 [事業概要] ・中小企業融資制度の返済猶予:1年聞の償還期間延長 ・中小企業設備近代化資金等の償還免除 ・中小企業設備近代化資金等の返済猶予:2年以内の償還期間延長 ・政府系中小企業金融機関の既往債務の返済猶予 ・中小企業事業団の高度化融資の償還期限延長:3年以内(現行2年以内)延長 |
国 兵庫県 | ○中小企業設備近代化資金貸付金等の償還期間の延長 被災した中小企業者に対する設備近代化資金貸付及び設備貸与に係わる償還期間等を延長する。 近代化貸与 現行5年(据置1年)→7年(据置1年) 設備貸与(割賦) 現行4年半(据置6ヵ月)→6年半(据置6ヵ月) | |
信用保証制度の充実、信用保証料の補助 | 県信用保証協会 | ○信用保証制度の充実−被災した中小企業に対する信用保証限度額を拡充 |
国 兵庫県 市町 民間 | ○信用保証協会基本財産の造成 保証協会は基本財産の60倍を超えて保証できないことになっており、現在の保証協会の基本財産の状況では、中小企業の災害復興への取り組みに支障をきたす恐れがあるため、基本財産の緊急造成を行う。 | |
市 | ○信用保証料の補助 災害復旧融資を利用する中小企業等に対し、信用保証料を市が負担する。(神戸市、尼崎市、西宮市、伊丹市、芦屋市、宝塚市、川西市) | |
中小企業への緊急災害復旧資金融資等への利子補給 | 洲本市 | ○政府系金融機関等の融資制度利用者に対し、利子補給を行う。 (類似制度創設市) ・明石市、津名町、淡路町、一宮町、五色町、東浦町、緑町、西茨町、三原町、南淡町 |
表 地域経済復興に関する国の特例措置および地方公共団体独自の施策(3)
事業名 | 事業主体 | 事業概要 |
中小企業設備近代化資金貸 付金等規模拡大 | 国 兵庫県 | ○被災地域における設備資金需要に対応し、被災中小企業者の事業活動再開を支援するため、設備近代化資金貸付および設備貸与の事業規模の拡大を図る。 |
事業用地等の情報提供、あっ旋 | 国 兵庫県 | ○事業用地の情報提供とあっ旋 被災工場で一刻も早い操業再開を希望する企業のため、県下の産業団地、その他一般用地、空工場等に関する情報を収集し、総合相談所を通じて情報提供を行う。 |
仮設工場、店舗、事務所等の設置支援 | 国 兵庫県 神戸市 | ○仮設工場の設置支援 ケミカルシューズ、機械金属業界等に対し、本格的な操業に備え、受発注取引ルートの確保を図るため、当面の応急措置として仮設工場を設置し、早期事業再開を支援する。 |
国 兵庫県 市町 復興基金 | ○第3セクタ一等が共同仮設店舗を設置し、商業者に賃貸する事業や商業 者の団体が共同仮設店舗を設置する事業に対し支援することにより、商 業の早期復興を図る。 ・中小企業高度化事業 第3セクタ一等が共同仮設店舗を設置し、商業者に貸与する場合に、その設置に必要な資金の一部を融資する。 ・共同仮設店舗緊急対策事業 商業者の団体が共同仮設店舗を設置する事業に対し、その設置に必要な資金の一部を助成する。 | |
事業共同組合等の共同施設の機能復旧支援等 | 国 兵庫県 | ○被害を受けた事業共同組合等の共同施設の復旧に要する経費の一部助成 ・対象 事業共同組合、共同組合 ・対象施設 倉庫、生産施設、加工施設、検査施設、共同作業場、原材料置場、販売施設 ・補助率 3/4 |
兵庫県 市町、民間 | ○復興支援チームによる商店街・小売市場の指導 | |
商業基盤施設、商業施設の整備に対する補助・低利融資 | 国 兵庫県 | ○商業基盤施設整備に対する補助・低利融資 ・商業基盤施設等整備に対する補助 被害を受けた商店街・小売市場のアーケード・カラー舗装等の商業基盤施設の再整備に要する経費の一部を助成することにより、円滑な商店街・小売市場の復興を図る。 ・災害復旧高度化事業 商店街・小売市場がアーケード・カラー舗装等の共同施設や共同店舗等の施設を再整備する場合、その整備に要する費用の一部を融資する。 |
国 兵庫県 | ○商業基盤施設整備に対する補助・低利融資 ・商店街等の共同施設等の復旧に対する補助 被害を受けた商店街・小売市場のアーケード・カラー舗装等の共同施設や共同店舗等の施設の復旧に要する経費の一部を助成する。 ・災害復旧高度化事業 商店街・小売市場がアーケード・カラー舗装等の共同施設や共同店舗等の施設を復旧させる場合、その復旧に要する一部を融資する。 |
○復興基金事業として、被災した商店街・小売市場が整備する共同仮設店舗の建設費等に対して助成を行った(補助率1/4、助成限度額建設の場合1,000万円;リースの場合500万円)。
○商店街・小売市場共同施設建設費補助事業として、被災した商店街・小売市場が設置するアーケード、カラー舗装等の共同施設の建設費に対する補助を行った。
○工業施設の復興に当たっては、中小工場の事業再開支援策として金融支援と仮設工場の建設を中心に実施されたが、被害が大きかった地域においては、建築基準法第84条(被災市街地における建築制限)の地区指定により、建築活動が震災直後から2か月間制限されるとともに、市街地開発事業等の都市計画決定により、建築活動が制限された。