災害対応資料集

・199301:1993年(平成5年) 北海道南西沖地震

【概要】

(1)被害の概要
北海道南西沖地震の本震は、平成5年7月12日の22時17分頃に発生し、震源地は北海道南西部(北緯42度47分、東経139度12分)、震源の深さは約34kmで、規模はマグニチュード7.8と推定されている。
各市町村の最大震度は5とされているが、被害が最も大きかった奥尻町の震度は、地震計が設置されていないため計測されていない。
また、北海道、東北地方の日本海側では大きな津波が襲来した。とくに震源地近くの奥尻島では、高さが最大21m(藻内地区)の津波が、地震発生直後の数分間で襲来したと考えられている。

①発生日時
平成5年7月12日(月)22時17分頃
②震源地
北海道南西部(北緯42度47分、東経139度12分)
③震源の深さ:約34㎞
④規模:マグニチュード7.8
⑤各市町村の最大震度(震度4以上)
震度5:小樽市、寿都町、江差町、深浦町
震度4:函館市、苫小牧市、室蘭市、倶知安町、青森市、むつ市

図1 北海道南西沖地震の震度分布図
(出典)北海道企画振興部南西沖地震災害復興対策室『北海道南西沖地震災害復興対策の概要』平成7年5月。

⑥被害状況
北海道南西沖地震による被害は、死者・行方不明者のほか、住宅や事業所等の建築物や道路、港湾、漁港、漁船等、多岐にわたっており、総被害額は約1,323億円に上っている。
この地震の主な被害状況(人的被害・住宅被害)は下表のとおりである。表中の5町村は災害救助法が適用された自治体であり、その死者・行方不明者の合計が全道の98.7%を占める。とくに奥尻町の被害の割合が大きく、青苗地区では、地震・津波とともに火災も発生し、焼失面積が約1.9ha、焼失棟数189棟の被害を受けた。

表1 北海道南西沖地震の主な被害状況(北海道内、災害救助法適用5町村)

町村名

人的被害(人)

住宅被害(棟)

死者・行方不明者

負傷者

全壊 

半壊 

床上浸水  奥尻町 

198 

143 

437 

88 

47  大成町 

10 

41 

35 

39 

24  瀬棚町 

20 

25 

13 

35  北檜山町 

32 

53 

64 

7

14

27

9

89

226

250

577

213

204

(出典)北海道企画振興部南西沖地震災害復興対策室『北海道南西沖地震災害復興対策の概要』平成7年5月。

(2)災害後の主な経過
・地震後の応急対策について、北海道は、地震発生の翌日、7月13日午前7時00分に「北海道南西沖地震災害対策本部」を設置し、実施した。
・また、復旧・復興対策については、8月9日に「南西沖地震災害復興対策推進委員会」を設置し、8月20日に「北海道南西沖地震災害復興対策室」を設置し、とくに被害が大きかった奥尻町では平成7年3月に「奥尻町災害復興計画」を策定した。

表2 災害後の主な経過(北海道の取組状況)【参考文献】

年  月日 項目 平成5年 7月12日

22:17 地震発生(前震)  

22:30 道に「北海道災害対策連絡本部」、空知、上川を除く12支庁及び東京事務所に「地方連絡本部」を設置 7月13日

0:18 陸上・海上自衛隊災害派遣檜山支庁に到着

0:30 災害救助法適用決定(奥尻町) (*)大成町、瀬棚町、鳥牧村、北檜山町はその後漸次決定

7:00 道に「北海道南西沖地震災害対策本部」、渡島、檜山、後志、宗谷、胆振の5支庁及び東京事務所に「災害対策地方本部」を設置

1600 奥尻町に「災害対策檜山地方本部奥尻対策部」を設置

災害対策本部員会議開催 7月14日

災害対策本部連絡員会議開催 7月20日

北海道南西沖地震被害に関する緊急要望(北海道東北自治協議会) 7月22日

北海道南西沖地震被害に関する緊急要望(全国知事会)

航空自衛隊災害派遣檜山支庁に到着 7月28日

知事から国に対する要望 8月9日

「南西沖地震災害復興対策推進委員会」の設置 8月20日

「北海道南西沖地震災害復興対策室」の設置  8月30日

「北海道南西沖地震津波検討委員会」の開催  10月1日 

奥尻町からの派遣要請による道職員の派遣 

奥尻町「災害復興対策室」の設置  1029日

「北海道南西沖地震災害復興計画(まちづくり)検討委員会」の開催  平成7年3月  

「奥尻町災害復興計画」の策定
1)北海道企画振興部南西沖地震災害復興対策室『北海道南西沖地震災害復興対策の概要』平成7年5月。
2)北海道奥尻町役場『北海道南西沖地震奥尻町記録書』平成8年3月。

 

○漁港内のがれき等の処理
・陸上の堆積物除去・処理については、災害廃棄物処理事業を適用した。
・漁港内の浮遊物・がれき処理については、ダイバーと人力、重機等により片付けを行った。漁港内に流れ込んだ自動車も同時にあげた。まず、優先的に漁港内の沈没したものを引き上げ、その後、浚渫を実施した。
・沈没した漁船については、港外、漁港外に関わらず、遺体が入っているかどうかをまず確認し、次に引き上げの可能性・必要性を判断した。
・漁港内外は浚渫を実施した。陸に打ち上げられた漁船の所有者を捜したが、所有者が死亡しているケースがあり、町で処理する例が多かった。
・北海道は、沈船等の引き揚げ費用は、漁船船主責任保険及び普通損害保険で対応可能とした。
○仮集積場所
・仮集積場を沿岸部分に小刻みに設定し、収集したゴミや堆積物等を貯めていった。可燃物は、仮集積場に集めた後、焼却した。ゴミの収集・分別についてはボランティアの協力も得て実施した。
・不燃物や廃棄する車等については一箇所に集めた。島内で鉄等の不燃物を処理するのは難しいため、島外の業者に引き取りを依頼した。
○回収したゴミ等の処理
・埋められるゴミ等は埋めた。湾内を浚渫した土砂は島外に出せなかったため、土砂捨て場をつくり野積みし、その後平らにした。
・港湾や漁港部分の堆積物除去作業の調整や実施は主に、北海道と北海道開発庁が行った。
・堆積物の集積場所については、量が非常に膨大であることやダイオキシンや産業廃棄物処理の問題もあるため、十分な検討が必要だった。

 

1)災害直後の体制
○北海道では、青苗地区の壊滅的な被害内容が明らかになり、集落及び地域の復興対策への取り組みが緊急に必要との認識の上、道の関係部局内部に、①まちづくりワーキンググループ、②漁村集落整備ワーキンググループ、③津波対策ワーキンググループ(外部委員会による検討)が設置された。
○まちづくりワーキンググループについては、8月9日に道庁内に推進委員会が発足したことから、ワーキンググループの案がそのまま「まちづくり対策プロジェクトチーム」に引き継がれた。
2)庁内体制
○南西沖地震災害復興対策推進委員会(平成5年8月9日設置:発災から27日目)
・被災地域の復興対策を総合的に推進するための、庁内の横断的な調整組織として、平成5年8月9日に総務部長(8月20日付けで企画振興部長)を委員長とし、関係各部の次長等で構成する「南西沖地震災害復興対策推進委員会」を設置した。
・同委員会の中に、復興対策の重点調題を検討する「まちづくり対策」、「水産業振興対策」及び「生活支援対策」の3つのプロジェクトチームをおき、それぞれの専門的、具体的な問題の検討を行った。
・まちづくり対策プロジェクトチーム:道路、公園、上下水道等の生活基盤整備対策、住宅、商店街など集落整備対策、土地対策、防災対策などまちづくり対策
・水産業振興対策プロジェクトチーム:漁港、漁船及び漁具対策、経営安定対策、沿岸整備対策など水産業の振興対策
・生活支援対策プロジェクトチーム:医療福祉、雇用、教育対策など住民生活の安定を図るための支援対策
・推進委員会の開催状況は下表のとおりである。
○南西沖地震災害振興対策室(北海道企画振興部)(平成5年8月20日設置:発災から38日目)
・復興対策に係る総合的施策の企画及び総合調整等を行う臨時特別の組織として、8月20日付けで企画振興部に「南西沖地震災害復興対策室」を設置した。同室は道における国、地元市町村などとの総合窓口として被災地域の復興対策に関わる総合的施策の企画及び総合調整等の事務を処理するとともに、併せて南西沖地震災害復興対策推進委員会に関わる運営事務を所掌することとした。組織図は下図のとおりである。

表 復興対策推進委員会等の開催状況

開催日 議 題 平成5年8月9日

・委員会の設置及び今後の進め方

・推進委員会書置要綱の制定 平成5年9月1日

・復興対策室設置に伴う復興対策の推進

・推進委員会設置要綱の一部改正

・今後の復興対策 平成5年11月

・推進委員会設置要綱の一部改正

・南西沖地震災害対策第4定補正予算の状況

・災害復興基金

・まちづくり計画素案

・水産業振興対策

・平成6年度予算 平成5年12月

・まちづくり計画素案

・水産業振興対策(奥尻町) 平成6年6月10日

・まちづくり復興計画

・水産業振興対策

・災害復興基金 平成7年3月27日

・復旧・復興事業の推進状況

・まちづくり整備の推進状況

・住宅対策の推進状況

・復興基金の運用状況

・奥尻町災害復興計画

・復興対策室の組織改正

図 南西沖地震災害復興対策室組織図

3)検討委員会
○北海道南西沖地震津波検討委員会(平成5年8月30日設置:発災から48日目)
・検討委員会:平成5年8月30日、平成5年10月1日に開催
・湾岸施設の復旧、今後の津波対策の検討
○北海道南西沖地震災害復興計画(まちづくり)検討委員会(平成5年10月25日設置:発災から43日目)
・まちづくり計画に専門家の意見を反映させるもの
4)連絡会議
○北海道南西沖地震奥尻町災害復旧公共事業推進連絡会議(平成5年8月9日設置:発災から27日目)
・構成:函館開発建設部、林野庁函館営林支局、防衛施設庁札幌防衛施設局、北海道檜山支庁、北海道函館土木現業所、奥尻町
5)市町村の復興体制
○奥尻町:平成5年10月1日に災害復興対策室を設置
○大成町:太田地区災害復興プロジェクトチームを設置
○北桧山町:建設課に太櫓復興対策係を平成6年度に設置
○瀬棚町、島牧村:特別な組織を持たず、総務課が兼任で復興対策にあたる。

【参考文献】
1)北海道企画振興部南西沖地震災害復興対策室『北海道南西沖地震災害復興対策の概要』平成7年5月。

 

○北海道が復興計画の策定に着手してから、町村の基本方針が固まるまでの経緯は、以下の段階に分けられる。
○1期:震災直後(平成5年7月12日)-平成5年9月まで
 (内容)・組織体制の整備、基本方針の検討
  9月16日 土地利用構想案の「全戸高台移転案」「一部高台移転案」の事業手法について検討
  9月24日 土地利用構想案について道が奥尻町に2案を提示
  9月30日 奥尻町は議会に上記2案を説明
○2期:平成5年10月-12月まで
 (内容)・各町村における地元の合意形成
  10月9日 「奥尻の復興を考える会」設立
  10月19日、28日 奥尻町が住民説明会を開催
  10月26日 道が防潮堤建設に関する説明会を開催
  11月8-12日 「奥尻の復興を考える会」での勉強会、アンケート調査実施
  11月22日 「奥尻の復興を考える会」の総会で一部高台移転案を要望
  11月22日 奥尻町が一部移転案を了承
   ・関係町村、道、国との協議
   ・道の復興計画案の作成(12月19日)
   ・町村への提示
○3期:平成6年1月-3月まで
 (内容)・事業手法の決定
・町村の基本方針の決定

【参考文献】
1)北海道企画振興部南西沖地震災害復興対策室『北海道南西沖地震災害復興対策の概要』平成7年5月。
2)北海道奥尻町役場『北海道南西沖地震奥尻町記録書』平成8年3月。
3)奥尻町『奥尻町災害復興計画』平成7年3月。

 

1)低利資金の確保
○災害復旧、応急対策事業等で一時的に多額の資金が必要となることに対応し、低利の資金を確保するため、北海道市町村備荒資金組合資金等の効果的活用を図る。
 (北海道市町村備荒資金組合資金)
  ・短期資金の貸付枠8億円(年利3%)
  ・短期資金の斡旋5億円(年利2.875%)
 (北海道市町村振興協会資金)
  ・短期資金の貸付枠10億円(年利3%)
  ・関係市町村に対する制度の周知について各支庁に通知
   (平成5年7月16日)。
2)特別交付税等の確保
○被害状況等を把握し、随時自治省(当時)に報告。
 ・災害救助法適用町村に普通交付税9月分の繰り上げ交付。
 ・公共施設被害の著しい町村に普通交付税9月分の繰り上げ交付。
・特別交付税(12月分)の交付。
 ・特別交付税(3月分)の交付
○自治省(当時)に公営企業関係分の被害状況を説明し、地方公営企業等災害復旧事業債の措置を要望。
○災害復旧に係る財政措置として次の措置を講じるよう自治省(当時)に要望。
①普通会計に対する財政措置
  ・特別交付税、地方債等による財政措置
②公営企業会計に係る財政措置
  ・地方公営企業等災害復旧事業債について低利資金の充当及び償還年限の延長
  ・地方公営企業等災害復旧事業債の元利償還金の補填のため一般会計が繰り出す額についての交付税措置
○平成6年度の復興対策費について特別交付税で措置するよう自治省(当時)に要望。

 

1)設置の目的
○平成5年7月12日に発生した北海道南西沖地震による災害に関し、被災者の救済を図り、地域住民の自立を支援するとともに、地域の総合的な復興に寄与することを目的とする。
2)設置主体
○災害救助法が適用された桧山管内の奥尻町、大成町、瀬棚町、北桧山町、後志管内の島牧村の5町村がそれぞれ設置した。
3)設置方式
○被災地町村では、国や道の補助制度を有効に活用するためには事業に精通した町村職員の参加が必要であるとの判断から、財団方式や公益信託方式等によらず、各町村による条例方式で設置を行った。
○義援金から被災者への見舞金として配分したものなどを除いた残余額を活用している。
○奥尻町災害復興基金事業一覧

1.

・生活福祉資金利子補給

・災害援護資金利子補給

・冬季暖房用灯油等購入費助成

・在宅福祉サービス負担金助成

・通学通勤交通費助成

2.商工・観光業の復興支援

①商工業振興対策

・中小企業再開費助成

・中小企業振興資金,災害資金利子補給

②観光振興対策

・観光案内板整備費助成

・地域イベント開催費助成

・観光復興大型イベント開催費助成

・観光復興キャンペーン助成

・観光案内所設備整備助成

・賽の河原休憩所整備助成

3.農林水産業の復興支援

①農林業振興対策

・営農施設等再建費助成

・共同利用農業機材整備助成

・米穀共同利用施設整備助成

・農業復興特別助成

②水産業振興対策

・共同利用漁船建造費及び利子補給

・共同利用中古船購入費助成

・水産業共同利用施設整備助成

・小型漁船船外機整備費助成

・共同利用倉庫整備助成

・小型漁船巻揚施設整備助成

・漁具購入助成及び利子補給

・ウ二・アワビ・ホタテ深浅移植助成

・鮮魚運搬費用助成

・製氷貯氷冷凍冷蔵施設整備

・アワビ資源回収支援センター整備

4.防災関連の復興支援

・防災行政無線戸別受信機購入助成

・町内会各地域避難路整備助成

・水難救難所体制強化支援

・避難所等非常用電源確保及び無線機整備

・災害用保安帽支給

・防災ハンドブック作成

・緊急避難用袋配布

・避難広場照明施設整備

・災害対策用備蓄飲料水整備

5.まちづくりの復興支援

・青苗地区下水道整備助成

・定住促進土地購入・住宅整備助成

・神威脇町内会温泉施設復興支援

・集会施設整備

・防犯街灯等整備

・まちづくりに係る公共用地取得

・まちづくりに係る分譲用地取得

・地域ゴミステーション整備

・被災地区まちづくり等復興整備

6.公園の復興支援

・津波資料館建設

・青描墓地公園整備

・被災公園復興整備

7.住民活動の復興支援

①住民活動関連対策

・高齢者スポーツ団体活動資材整備助成

・奥尻三大祭復興支援

・地域お祭り復興支援

②住居安定

・応急仮設住宅転出費用助成

・住宅解体費助成

・住宅基礎上げ工事費助成

・住宅取得費助成

・家具・家財購入費助成

8.その他復興支援

・被災児童生徒特別教育資金支給

・郷土芸能保存強化整備助成

・人材育成地域交流助成

・漁業青色申告会運営費助成

・共同テレビ受信施設復興支援

・復興基金支援施策ガイドブック作成

・津波犠牲者慰霊碑建立

・生涯学習センター建設

・高齢者生活福祉センター建設

・北海道南西沖地震災害記録誌作成

・災害応急仮設住宅整備

・神威脇町温泉保養所被災機器改

・その他特別復興対策支援
表 復興基金の概要(北海道)

項目

内容 主体(条例方式 災害救助法が適用された奥尻町、大成町、瀬棚町、北桧山町、島牧村 目的

・被災者の救済を図り、地域住民の自立を支援するとともに、地域の総合的な復興に寄与すること 基金の規槙

・奥尻町:132.6億円90.0億円

・大成町:6.0億円5.9億円

・瀬棚町:6.5億円6.0億円

・相山町:7.5億円6.3億円

・島牧村:5.0億円 基金の財源

・義援金257億円) 設立年月日

・奥尻町:平成5年21日

・大成町:平成5年17日

・瀬棚町:平成5年21日

・北檜山町:平成5年24日

・島牧村:平成5年20日 事業の予定期間

・3~4年 事業内容

・住宅取得費の助成等

・農業、水産業、商工観光業の振興対策のための営農施設、漁具魚網の再建費の助成等

・中小企業事業再開費の助成等

 

○基本的には地元の市町村の事業であるが、奥尻町にあっては、青苗地区の被害が甚大であり、町単独による建設が困難との判断から道営により、104戸の災害公営住宅を建設した。

 

○時期 平成5年11月10日
○北海道持家建設資金の支払利子に対する3年間の利子補給を実施

 

○被災住民向け住宅相談会を開催し住まいづくり、融資制度等についての説明と被災者個々との面談相談に対応。
・主催者:奥尻町、北海道住宅都市部、道立寒地住宅都市研究所、檜山支庁、住宅金融公庫、住宅建設事業者
○小規模世帯向けモデルプランの提供
・被災者に高齢の単身者、夫婦世帯等の小規模世帯が多く、建設資金をできるだけ抑えた住宅提供の要望もあり、小規模世帯向けの住宅情報が少ないことから、主催者がモデルプランを提供
 ・住宅規模2LDK、延床面積20.5坪、20.3坪

図 小規模世帯向けモデルプラン

 

○時期:平成6年9月16日
○対象事業者:奥尻島内・外の住宅事業者(函館建設業協会、檜山建設協会、北海道住宅建築協会函館支部、北海道住宅供給公社等37社)
○「奥尻町の住宅建設に関する建設事業者説明会」を開催し、今後の建設ラッシュ時における住宅建設の協力を要請。

 

○高齢者保健対策は、今後の高齢化社会へ向けて、平成5年度に策定した「奥尻町老人保健福祉計画」に基づき進めていくこととしている。しかし、災害発生による高齢者の生活環境の大きな変化から、平成6年度に高齢者の生活実態・福祉制度の利用意向調査を実施した。
○この調査結果をもとに、平成3年度に設置した特別養護老人ホーム「おくしり荘」を中核にショートステイ事業、デイサービス事業等の福祉サービスに併せて、高齢者世帯の住宅対策として、居住機能の他、介護支援機能、地域交流機能を総合的に提供する高齢者生活福祉センターを平成7・8年度に整備した。
○在宅生活への支援対策として、ホームヘルプサービス事業やデイサービス事業等を推進している。

 

○防潮堤の整備
・防潮堤の天端高は、津波波高を考慮し、北海道から、奥尻町、大成町等被災自治体に提示され、被災自治体内での検討を経て最終的な高さが決定された。
○奥尻町青苗地区岬周辺
・天端高:海抜5.9m-11.7mで市街地を取り囲む形で建設
・事業期間:平成5年度-平成7年度
・事業主体:北海道
○奥尻町初松前地区
・天端高:海抜11m、延長560m
・事業期間:平成6年度-平成7年度
・事業主体:北海道
○大成町太田地区(太田漁港南護岸から北側の漁港)
・天端高:海抜7m、延長171.9m
・事業期間:平成6年度-平成7年度
・事業主体:北海道
・南護岸から南側については道道の道路護岸の嵩上げにより防護

 

○港湾海岸区域内には、釣懸川、塩釜川の普通河川があり、この津波対策の有効な方法として北海道で初めての津波水門の設置が検討され、釣懸川水門が平成7年3月に、また塩釜川水門が9月に完成した。
○水門は、全閉において河川流量を排水できるフラップゲートが2門ずつ設置されており、治水面にも対応できる構造となっている。
○地震発生時に震度5程度を感知すると約1分間の非常放送後に自重降下を開始し、ゲートが全開する機能となっているため、万一の津波の襲来から河川及び周辺の地域を守ることができる。

 

○奥尻町青苗5区の岬周辺地区は、北海道南西沖地震において津波が通り抜け甚大な人的・物的被害が発生し、かつ高台まで距離があり避難が困難な場所である。
○そのため青苗5区は全戸移転することとなり、その跡地(移転促進区域)は建築基準決第39条に基づき町条例により災害危険区域に指定され、住居の用に供する建物が制限された。現在は、公園として利用されている。

 

1)合意形成過程
○育苗地区のまちづくりは、「全戸高台移転」と「一部高台移転」の2案に整理され、平成5年9月30日に議会に説明、10月19日に住民に対する説明会が開催された。
 《全戸高台移転案》
 抜本的な津波安全対策として、岬周辺と低地部の全戸を高台に移転し、既成市街地を含めた青苗地区の一体的なまちづくりを図る
 《一部高台移転案》
 港背後の低地部に漁師まちゾーンを形成し、ほかを高台に移転する
○説明会での住民要望
 漁業者:前浜に近く海の近くに住みたい
 商業関係者:まとまった住宅地の形成を望む
 高齢者:住み慣れた土地で再建したい
 若年層:住み慣れた土地に執着することなく安全な高台を望む
○住民組織の「奥尻の復興を考える会」は、町からの復興計画案についての説明(10月19日)及び道の防潮堤建設に関する説明会(10月26日) を受け、勉強会やアンケート調査を実施後、総会(l1月22日)を開催し、漁業者の強い声がある全戸高台移転は困難とし、一部高台移転案を採用した。町は、これを受け議会での了承を得て、復興方針について道に回答し、その後、復興計画素案が町に示された。
2)事業概要
 事業主体:奥尻町
 対象地区:奥尻町育苗地区岬周辺 ・事業期間:平成6年度-平成7年度
 総事業費:7億2千万円(国から3/4補助)、補助対象外分は奥尻町が単独事業で実施
3)事業内容
○集団移転促進事業計画を定め、平成6年8月19日内閣総理大臣の承認を受ける
○該当区域の住宅を全戸移転し、移転者等の住宅団地として2カ所を造成する
○移転者等から用地を買い取り、地区の排水終末処理場、記念公園等を整備する
○平成6年10月1日、移転促進区域内の跡地は建基法39条に基づき町条例により災害危険区域に指定し、住居の用に供する建物を制限
○土地の処理方法は、町が在来地を一括買収し、造成後被災者に同単価で分譲

 

○津波被害が甚大であった奥尻町の青苗地区では、被災者の再建意向として漁業者は現地再建、その他住民は高台移転を希望していたため、現地嵩上げ(漁業集落環境整備事業)と高台移転(防災集団移転促進事業)をあわせた被災地の復興がなされた。
1)事業概要
 事業手法:漁業集落環境整備事業(水産庁)
      上水道は簡易水道災害復旧事業(厚生省(当時))
 事業期間:平成6年度-平成8年度(3カ年)
 総事業費:約24億1千万円
2)事業内容
○青苗地区漁業集落環境整備事業基本計画を定め、平成6年6月13日農林水産大臣承認を受ける
○防潮堤の背後を盛土し、緑道(宅地、道路、公園、避難路)、上水、排水施設等を整備
○造成地の残土(約14万㎡)を市街地の盛土材に利用
○地区面積:事業面積95,100㎡、宅地180画地
○公共施設:道路(16路線)、緑道(7路線)、排水施設、終末処理場(育苗岬周辺地区に建設)、防災安全施設(防火水槽6基、街路灯26基)、緑地広場
○用地処理:町が在来地を一括買収し、造成後、被災者に分譲

 

○大成町太田地区は、海岸沿いを走る道道北桧山大成線の天端嵩上げと背後宅地の嵩上げにより集落再建を図ることとしたが、残存家屋も多かった。
○そのため、残存家屋を曳家により造成地に移転しながら順次整備を進めていくこととした。被災者の土地に対する愛着が強く、配分用地の決定同意が得られないなど問題が生じたが、残存家屋の曳家用地を確保することを用地配分の第一条件として調整を図ることとし、地区内での自主的な調整による原案を町が修正する形で最終配分が決定された。
 ・施工:平成7年度に30件、平成8年度に29件
○工期:住宅のジャッキアップ(2.2m程度)に約1週間、移動と据え付けに約1週間、全体で約1月。
○半壊家屋については、個人で補修(町の助成金利用)した後に曳家が行われた。
○居住者は、仮設住宅と地区会館に仮住まいした。

 

○地震、津波により被災した稲穂、青苗の両小学校は、「公立学校施設整備費」の補助を受けて校舎の新築工事が進められ、稲穂小学校は平成6年3月30日に、また、青苗小学校は平成7年3月30日にそれぞれ完成した。
○稲穂小学校は盛土上に校舎を建設し、育苗小学校は1階部をピロティ構造としている。

 

1)記録誌の作成
○被害状況を記録誌としてとりまとめ、地震災害の恐ろしさを永く後世に伝えるとともに、今後の地震災害対策の参考資料として役立てるため発刊し、町内全世帯及び関係機関に配布。
○北海道南西沖地震の場合は、義援金を原資とする災害復興基金の事業として行っている町が多い。
2)津波慰霊碑の建立
○犠牲者の供養と後世への伝承のための慰霊碑建立事業。青苗岬公園中央に北海道南西沖地震災害によって亡くなられた198名の名前が刻まれた慰霊碑が建立されている。
3)津波資料館の建設
○大被害の記録を後世に伝えるとともに、津波や地震の研究者、学者らの拠点とするための資料館の建設事業。

 

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