災害対応資料集

・196001:1960年(昭和35年) チリ地震津波

【概要】

(1)被害の概要
1960年5月24日早朝、チリ地震津波は突如として日本の太平洋沿岸を襲い、北海道、三陸などを中心に死者行方不明者139名をはじめ、家屋、耕地、船舶及び水産関係に大被害を与えた。
中でも、岩手県沿岸では、津波の波高が高く、いくつかの湾において5m以上の大津波となり最大の被災地となった。

①チリ地震の概要
・災害の起因となった津波は、5月23日4時15分頃(日本時間)にチリ国の中部西海岸で発生した地震によるもので、太平洋をはるばる横断してきた極めてまれなものである。
・チリにおいては連日地震が発生し、その規模はマグニチュード7.75、8.75に達するものであり、これによりチリ国沿岸には大津波が押し寄せ、局地的には10mの大波となり大被害を与えた。

②津波の特徴
1) 津波来襲地域
・今回の津波は、日本の太平洋岸全域に及ぶものであり、波高が高く被害の大きかったのは比較的大きな湾、すなわち、大船渡、広田、山田、宮古であり、昭和8年津波で大被害のあった吉浜、田老、綾里では水位が低く被害も軽微であった。
2) 津波の形
・明治29年、昭和8年の津波は鎌首をもたげた直立状の大波が押し寄せ家屋をつぶしたが、昭和35年の津波はそのような形状ではなく潮が静かに上下するという状況であった。もっとも陸上部に侵入すると急激に流速を増し、河川を遡るときは小さい直立した形で進んでいる。
3) 津波の波長
・チリ地震津波の波長は長く約40分の周期で水位が上下するゆっくりとしたものであった。
4) 津波の波高
・津波の波高は全般的に、昭和8年、明治29年の方が高く、昭和35年の地震津波は低い。しかし昭和35年の津波と昭和8年の津波の著しい差は、昭和8年の時には湾の入り口で高く、奥に行くにしたがって低くなっているが、昭和35年の津波は港口で低く奥に行くにしたがって高くなっている。

図1 津波等波線図

(出典)岩手県『チリ地震津波災害復興誌』昭和44年3月。

表1 被害概要

人的被害(人)  家屋被害(戸) 
死者  行方 

不明者 
重傷者  軽傷者  全壊  流失  半壊  床上浸水  床下浸水 
57  5  31  277  465  497  1,209  2,990  1,517 

表2 主要被害額

土木被害  耕地被害  農林畜産関係  水産関係  商工鉱関係 
1,505,794  731,634  602,558  2,657,439  2,781,075 

(2)災害後の主な経過
・5月23日午前4時15分頃にチリ地震が発生し、4時50分頃、岩手県沿岸に津波が到達。「岩手県災害救助隊本部」「チリ地震津波災害対策本部」が設置された。5月27日には、「高田松原海岸復旧工事対策本部」が設置され、一ヶ月後に復旧工事は完了する。
・8月18日、「昭和35年5月のチリ地震津波による災害を受けた地域における津波対策事業に関する特別措置法」が施行された。

表3 災害後の主な経過(岩手県の取組状況)

年  月日  項目 
昭和35年 5月23日5月23日 4:15頃 チリ地震発生
   5月24日 4:50頃 津波到達
   6:20 自衛隊緊急出動命令
      岩手県災害救助隊本部を設置 
      チリ地震津波災害対策本部を設置 
      1130 災害救助法適用
   5月27日 高田松原海岸復旧工事対策本部設置(6月27日復旧工事完了)
   5月30日 第7回県議会臨時会 
   6月27日 昭和35年5月のチリ地震津波による災害を受けた地域における津波対策事業に関する特別措置法 公布
   8月18日 昭和35年5月のチリ地震津波による災害を受けた地域における津波対策事業に関する特別措置法 施行

【参考文献】
1)岩手県『チリ地震津波災害復興誌』昭和44年3月。

 

○昭和35年5月のチリ地震津波による災害を受けた地域における津波対策事業に関する特別措置法
・目的
 昭和35年5月のチリ地震津波による災害を受けた地域における津波対策事業の計画的な実施を図り、国土の保全と民生の安定に資することを目的とする。
・津波対策事業
 津波対策事業とは、チリ地震津波による災害を受けた政令で定める地域において、海岸又はこれと同様の効用を有する河川でチリ地震津波により著しい災害を受けたもの、及び、これらに接続し、かつ、これらと同様の効用を有する海岸又は河川について施行する津波による災害を防止するために必要な政令で定める施設の新設又は改良に関する事業

○対策事業の基本的考え方
 6月27日特別措置法、8月18日同法施行令に基づき「チリ地震津波対策審議会」が設立され、チリ地震津波対策事業計画が決定された。主な内容は次の通り。
・津波対策事業計画の策定基準
・津波対策事業計画の事業量
・津波防波堤計画

 

写真 復旧後の防波堤(高田海岸・上:第一線堤、下:第二線堤)
(出典)岩手県『チリ地震津波災害復興誌』昭和44年3月。

○北海道浜中町では、チリ地震津波を契機として危険地域を指定し、その区域内での建築制限を条例で以下のように定めている。

第3条 災害危険区域内においては住居の用に供す建築物は建築してはならない。但し、次の名号に掲げる建築物については、この限りではない。
(1) 季節的な仮設のもの。
(2) 主要構造部(屋根及び階段を除く)を鉄筋コンクリート造又は、これに準ずる構造とするもの。
(3) 基礎コンクリートとして、その高さを防潮堤の高さと同等以上とするもの。
(4) 地盤面の高さを防潮堤の高さと同等以上とした地盤に建築するもの。

【参考文献】
1) 岩手県『チリ地震津波災害復興誌』昭和44年3月。

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